ゼロの使い魔の奇妙な冒険   作:不知火新夜

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学院内に『土くれのフーケ』が侵入したっ!才人とルイズはこれを止めようとするも、マジックアイテム『破壊の杖』は盗まれ、逃げられてしまう。そして翌朝に結成される捜索隊に加わる才人とルイズ達…もう、逃がしはしないっ!


11話

俺とルイズ、キュルケとタバサ、そしてロングビルの5人…そう、土くれのフーケを確保する為に派遣された面々…は、奴が潜伏していたであろう森の廃屋に、屋根無しの馬車で向かっていた。

中々のチョイスである…其々馬に乗って、でははぐれる面子が出かねないし、同じ馬車でも屋根付きだと奇襲の際に咄嗟の行動が取れないからな。

…それにしてもこの女、妙に違和感があるなぁ…さっきの言動といい、オールド・オスマン付きの秘書というそれなりに責任の重いポジションに就いているのに今こうして手綱を握っている…確か日本の自動車による送迎の場合、運転手は立場的に一番下の奴が務めるべきだった筈だし、馬車も違わねぇ筈だが…

 

「ミス・ロングビル、手綱なんて付き人にやらせれば良いじゃないですか」

「良いのです、私は貴族の名を無くした者ですから」

 

同じ事をキュルケも思っていたのか疑問を投げ掛けるも…その返答は余りに意外、それは『貴族では無くなった』!

…イマイチ底が知れねぇ所はあるがそれでも重罪を平気で犯すような破綻振りは微塵も感じられねぇし、もしさっき言っていた事が本当であればその能力は物凄く高いと推測出来る…尤もそうで無ければオールド・オスマン付きの秘書になどなれる筈も無いっ!

…貴族の座を追いやられる様な存在では決してありえない筈なのだ。

 

「え?だって貴方はオールド・オスマン付きの秘書なのでしょう?」

「ええ。ですがオールド・オスマンは貴族や平民だという事に余りこだわりを持たないお方なので」

「差し支えなければ、事情をお聞かせ願いたいわ」

「やめときな、キュルケ」

 

謎が深まるばっかりだったが、今ロングビルの素性をあれこれ考えても仕方ない、今は土くれのフーケを確保する事が先決なのだ。

それに…あそこまで有能だろうロングビルが追い出される等、相当な事だ。

そう思い、俺はそれを聞き出そうとするキュルケを止める。

 

「昔の事を根掘り葉掘り聞く物じゃあ無いぜ?人には1つや2つ、トラウマがあるもんだ」

「あらダーリン。暇だからお話しようと思っただけよ?」

「…俺はお前をハニーと呼んだ覚えは微塵もねえし、今現在は呼ぶ様な存在じゃあねぇ。そんな存在になりてぇなら…自分の言動1つ1つが誰かを知らねぇ内に傷つけているという事を自覚しな」

「わ…分かったわ、気を付ける」

「ちょっとサイト、何キュルケと気軽に話しているのよ!キュルケも私の使い魔が何ですってぇ!?」

「想い人よ、悪い?まだ私の片思い中ですけどね」

「ちょっと注意しただけだ…あ、そうだルイズ」

「な、何よ?」

「…ちょっと話がある。耳を借りるぜ」

 

俺とルイズ、そしてキュルケの間の口論の最中にふとルイズに伝えるべき事を思い出し、ルイズを呼び出す。

突然の呼び出しに若干戸惑うルイズであったが、俺の口調に並々ならぬ雰囲気を感じ取ってくれたか、素直に耳を貸してくれた。

…そしてそれと同時に俺とルイズの周りの音声が聞き取れなくなる…どうやら他の3人の内の誰かが気を使ってサイレントを掛けてくれたらしい。

その好意に今は甘え、ルイズとの内緒話を始めた。

 

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それから数時間後、俺達が乗った馬車は深い森に入った…此処が、フーケが潜伏している森らしい。

 

「此処から先は徒歩で行きましょう」

 

ロングビルの提案で皆揃って馬車を降り、進んでいく。

…しかし昼前だというのに薄暗いな…まあ単純に木が密集しているからなのだが、この状況で襲撃されでもしたら厳しいな。

こんな薄暗さでは狙いを定めるのも一苦労だし、俺も刀剣をふるのに気を使わなければならない。

キュルケの火の魔法では周囲への被害が計り知れないし、ルイズの爆発魔法は…言うまでもない。

だが一方で、あんなデカいゴーレムを操るには狭すぎるし、岩とかを飛ばすにも草や落ち葉で音を察知されそうだ。

そこら辺も考慮してのチョイスだろうから…何かしらの罠が道中に隠されているか、今の状況とはまるっきり違う空間…例えば木が広範囲に渡って生えていない空地とか…に、ロングビルが言っていた廃屋があるのかも知れない。

と、考えていると…後者が的中した様だ、大分開けた空間があり、そこに件の廃屋があった。

 

「私の聞いた情報だと、あの中にいるそうです」

 

ロングビルが補足するが、中に誰かがいる様な気配は感じられない。

流石に察知されてもうトンズラされたか、或いは罠が掛けられているか、もしや両方か…しかしあれ以外に手掛かりと言えるものは何1つない以上、調べる以外の選択肢は無い。

 

「此処は偵察兼囮を出すのがセオリーだよな。で、誰を出すか…ああ、俺って訳ね、分かりましたよ」

 

うっかり何をすべきか口走ってしまった為に「言い出しっぺだから」と言わんばかりの視線でその偵察兼囮となった俺だが…まあ最善策ではあるな。

此処は正直フーケのホームだと言っても過言では無いのだ、こちらは初めて入ったばかりで勝手が分からない一方、向こうは少なくとも何時間かは潜伏して周囲を把握している。

いたらの話だが、こちらの準備が整わない内に奇襲を掛けるなど容易い事、詠唱に時間が掛かるメイジなら余計だ。

その点俺は(ルイズもだが)スタンドがあり、突然の攻撃にも、少なくとも身を守る位なら出来る。

そう思いつつシルバーチャリオッツを発現させ、廃屋から姿が見えない様に身を隠しつつ接近していく。

…1分経つか経たないか位で廃屋に辿り着いたが、此処まで罠らしい兆候もフーケらしい気配も全く感じられない。

やっぱりトンズラしちまったか、或いは奇襲の気配を廃屋の中から伺っているのか…いずれにせよ、覚悟を決めるかっ!

 

ドォン!

 

「覚悟しやがれっ!…ちっ居ないか」

 

デルフリンガーを構え、ドアを蹴破りつつ引き抜き突きつけるが、フーケの気配は無く、罠が発動したらしい反応も感じられない。

…逃げられたか、そう判断した俺は後方のルイズ達にOKのサインを出す。

 

「私は周囲の様子を探ってきます」

 

ルイズ達が廃屋に入って来る中、ロングビルだけは周囲を探ると言い、その場を去る…まあ、良いか。

 

「それにしても…本当にこんな所にフーケが潜伏していたのかしら?」

「同意。使用していた雰囲気が感じられない。恐らく一時的な物」

「それに中は隠れる場所なんざ1つも見掛けねぇし、隠れ家には正直向かねぇな。ミス・ロングビルの言葉通りだったとしても、入って直ぐに出ちまったのかもな…お?」

「どうかしたの、サイト?」

 

廃屋の中を探していたら、ふと他のと比べて真新しい感のある箱が見つかった。

もしかしたらこの中に、フーケの手がかりになる様な物が…って、

 

「破壊の杖」

「随分とあっけないわね」

「何で盗んだ物だけ残して去ったのかしら…不自然極まりないわね…」

 

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

俺はフーケの手がかりが入っていないかと箱を調べたら、入っていたのはロケットランチャーだった。

な…何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

デウス・エクス・マキナだとかご都合主義だとか、そんなチャチなもんじゃ(ry

 

「お、オレェ…何でこれが入っているの…しかも『破壊の杖』て…」

「これについて知っているの、サイト?あ、まさか、貴方の元いた世界にあった凄い宝物だとか!?」

「はしゃぐんじゃあ無いわよキュルケ!今はフーケを追っているんでしょうが!」

「今は何故これがあるかと、フーケの所在を探るべき」

 

これについても物凄く気になるが、その話は後にしようと考えたその時、

 

ドォォォン…!

 

「きゃぁ!」

「な、何、いったい!?」

 

直ぐ近くに巨大な足音らしき轟音…まさかフーケのゴーレムかっ!

そう判断し、俺達4人は外へと飛び出すが、そこに待ち受けていたのは、

 

グシャア!

 

さっきまで居た廃屋をグーパンチ一発でお釈迦にした、フーケが操っているらしいゴーレムだった。

 

「ファイヤー・ボール!」

「エア・ハンマー」

 

それを見るや即座に得意の魔法を発動するキュルケとタバサだったが…あの巨体ではびくともしなかった。

 

「無理よ、強すぎるわ!」

「戦略的撤退」

 

効かないと判断した2人が即座に撤退しようと後ずさりするが…そういやぁルイズの姿が見えないな…まさかっ!?

 

「行っけぇぇぇぇぇぇ!」

 

ドグァ!

 

「やっぱりいやがったかっ!全くっ!」

 

ゴーレムの背後に回り込み、キラークイーンに体当たりさせるルイズの姿がそこにあった。

 

「何してんだルイズ!無茶が過ぎるぞっ!逃げろっ!」

「嫌よ!フーケは私が捕まえて見せる!あいつを捕まえれば、誰ももう私をゼロのルイズとは呼ばないでしょ!」

 

分かっているのかルイズは…幾らキラークイーンの破壊力がAだからって、周りに大量の土がある状況下では無い様な物だし、シアーハートアタックはキュルケがいる以上、無闇には使えない。

俺のシルバーチャリオッツだってあんな回復力の前では、こっちが根負けする方が明らかに早い。

第一そんな事は昨日の時点で理解している筈だ…それを何でだ!

 

「サイト…アンタ昨日言っていたわよね?私には、アンタの恩師である『ジョジョ』達と同じ『黄金の精神』を持っているって。大切な存在を想い、周囲を想い、どんな苦難にも正面から向き合い、逃げずに立ち向かう、そんな揺るぎない意志があるって!私が此処で背を向けて逃げ出す何てしたら、それはジョジョに対する、これ以上にない侮辱よ!アンタの今までの生き様を、存在自体を真っ向から否定する事よ!それだけは絶対に嫌!ちょっとばかりの困難で背を向けるなんて貴族じゃない!使い魔の誇りすら守れないなんて貴族じゃないわ!」

 

!…ルイズ、そこまで俺を、ジョジョを考えての事だったのか…だったらこの平賀才人、逃走も躊躇も容赦もせんっ!ご主人様と共に、あのゴーレムを直々にぶちのめすっ!

 

「行くぜルイズ!」

「勿論よっ!」


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