ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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忙しさは変わりませんが、なんとか休憩時間や待ち時間の合間を見つけて書いていってます。
1年のブランクをなんとかしたいです。


グランベルへ・・・。

長い回廊を早足に進める・・・。

バーハラにてフィノーラ陥落の報を受けたアルヴィスは険しい顔をしており、苛立ちを隠せないでいた。

 

「荒れてますね・・・。」黒いローブをまとった、シルエットからして女性である者が回廊の柱より出てくる。それはまるで闇から這い出てきたかのような参上であるがアルヴィスは全く気にしない。

 

「お前たちはまだ表に出てくるな、目立つ。」

 

「ふふっ。私達と接触していると分かれば、いかにレプトールと言えども力を貸すことはしないでしょうからね。死んだランゴバルドも同じく、ね・・・。」

 

「・・・これだけは言っておく。俺はお前たちの存在は認めるが、決してロプト教団の再建と復活は容認しない。誰も差別のない世界を作り出す為にお前たちの力を借りているだけだ。」

 

「存じております。アルヴィス様のそのお言葉のお陰で私達は生きてこれたのです、これからも私達をお導きください。」

 

「わかればいい。・・・ここ一年姿を見せないと思ったら容姿まで変えて現れるとは・・・、よほど手を焼いているようだな。」

 

「申し訳ありません。カルトが予想以上に強く、思うように計画を運べずにいます。」

 

「ふっ・・・。そうだろうな、俺の魔力に匹敵する男だ。そう簡単にはやられはしないだろう。

奴がヘイムの力を宿していると発覚すれば厄介だ。今は握りつぶしてはいるが露見すれば奴らは官軍となる、先手は打ったが・・・。」

 

「では・・・。」

 

「ああ、先程国中にクルト殿下の娘が見つかった事と婚姻を発表した。奴の噂など出回ったところでさざ波のように潰えるだろうが、元は完全に断たねばならぬ、わかっているな。」

 

「はっ!ヴェルトマーに駐留しているレプトールに出撃を命じます。我らは奴の秘密を握っている身、否応無く応じるでしょう。」

 

「うむ、奴に悟られぬなよ。」

 

「かしこまりました・・・。」再び闇に溶け込む、漆黒のローブを見つめるアルヴィスの目は鋭く、さらに険しくなっていくのである。

 

 

 

 

フィノーラをでて数日、シグルドの軍はさらに南下を始めていた。

フィノーラの街からヴェルトマーまで直線距離としては大した事はないのだが、間にある高い崖に阻まれており南から迂回するしかなかった。

その間には不毛な砂漠が続くのみ。流石のアーダンもフルプレートアーマーは装備出来るはずもなく、輸送部隊に預けて軽装での移動となる。

騎馬部隊もまた馬より降りて歩む、とくに砂地が深いこの地域は敵味方共に騎馬はまともに進軍できない。地殻変動の際は流砂すら発生しかねないとの報告があり、一軍が一夜にして消えたという伝説すらある・・・。

一矢報いる前に自然災害に合うわけにはいかない、急ぐ気持ちを捨ててゆっくりと確実に進んでいった。

 

「ここまで進軍したがグランベルには動きがないな。どう動いてくると読んでいる?」シグルドもまた、直射日光と舞い散る砂埃を避ける為に白い布地で全身を保護していた。フィノーラの町で町長より進軍の方法を聞いたシグルドが全員に支給した物である。

 

「そろそろグランベルとの国境付近の筈だ、そこで待ち伏せして一気に進軍してくるだろう。退路は砂漠、撤退できない挟み込みが完成する。」カルトは再び竹筒より水を一口飲んで補給する、一気に飲まずに少しづつ飲むことが脱水から身を守ると町長からの助言であった。

 

「あとは誰がそこで待ち伏せしているか、だな・・・。ヴェルトマーはアルヴィスが公爵だが、近衛の立場からバーハラにいるだろう。配下の者でもかなりの側近が護っている筈だが、我らを確実に撃破しようとするならロートリッターが出張ってくる・・・。後は国内に残っているレプトールくらいだな。」

 

「・・・レプトール卿か、奴だけは討たねばならぬ男だ・・・。父上とエルトシャンの仇、しっかりと取らせてもらう。」ローブの中にある聖剣の柄を握り、誓うように呟く。

 

「大局を見誤るなよ、奴らの首を取ることが全てではない。俺たちはレプトール、ランゴバルド両公爵の陰謀と、この世界にうごめく教団を世に知らしめる為の戦いだ。・・・そして全てを動かした、アルヴィスの計画を阻止すること。それができなければ意味がない。」

 

「アルヴィス卿、陛下の信頼を受けていた彼が、全ての計画者とは・・・。今だに信じられない。」

 

「・・・アルヴィスは、血が滲む思いでグランベルの為に働き、ようやく陛下の信任まで得たのに、マイラの血の為に抹殺されてしまう事を恐れたんだろう。巷では未だに魔女狩りと称して火炙りにされるくらい、マイラの血の生き残りを抹殺しようと世界が動いている。

・・・奴が誰もが住みよい世界を作ると言っていたのが、それは自身もその中に入っていたのかも知れないな。」

 

「・・・アルヴィス卿の苦しみにつけ込んだロプト教団、・・・許さないぞ。」

 

「そうだな、アルヴィスの目を醒ます為にまずは奴らの本性を引きづり出したい所だ。尻尾を出してくれればいいのだがな。」

 

二人はそこで会話が止まってしまう。まだそれを実証し、具体的な計画が見当たらないからだ。

アルヴィスに真実を伝えようとすれば必ず教団の妨害が入る、そこを押さえることができれば彼も少しはこちらの話を聞いてくれる可能性がある。これではまだ賭けとしても無謀すぎるくらいだ・・・。

なにより、この真実を話す時はどのような場で打ち明けられる事ができるかにもよる。

処刑寸前の申し開きでは話にならない・・・。こちらに優位性を持たせた状態に持ち込むにはどうすればよいのか、結論はカルト自身にあった・・・。

 

「ナーガの書、これをなんとしても手に入れないとな・・・。」カルトの小さな言葉にシグルドは驚嘆する、生唾を飲み込む音が鮮明に聞こえた・・・。

 

「ナーガの書・・・、クルト王子が殺害された時に消えたと聞いているが・・・。」

 

「それは嘘だ、おそらく教団かアルヴィスが都合のいいように言い換えていたんだろう・・・。

国内でも極秘だったんだが、ナーガの書は長くロプトウスの書を封印していて使用できない状態だった。

それが数年前、教団の暗躍と共にその封印が解けた。この意味がわかるか?」

 

「・・・その封を解いたのが教団だからか?」

 

「・・・正確に言えば教団がアルヴィスを唆して封印を解かせたんだ。奴らにヘイムが施した封印は触れる事もできないが、アルヴィスにはファラの聖痕とロプトの血がある。だから解く事が出来たんだ。

」シグルドはカルトから語られる話に背筋が寒く感じる、砂漠の暑さなど吹き飛ぶかのようであった。

 

「そして、ロプトの血故にアルヴィスはナーガの書に触れる事も出来ず驚愕したそうだ。ナーガに忌み嫌われ、世界から抹殺される・・・。彼はその恐ろしさが肌で感じただろう、だから教団にその心の弱さをつけ入られたのさ。」

 

「彼また運命に翻弄されているのか・・・、アルヴィスのためにも終わらせるべきだ。・・・この悲しい運命は私で終わらせる。」ティルフィングの柄を握りしめて呟くシグルドにカルトは満足する。

 

運命の扉は確実にシグルドとカルトを抹殺するだろう・・・。

その限られた時間、運命が決する刹那まで運命の在り方を変える、それが二人の決意であった。

運命に少しでも抗う為には知らなければならない、全ての事象と背景を知らなければ虚無の真実を掴むだけである・・・。

 

「真実は常に一つではない。」

それは錯覚や憶測が飛び交い、一握りの知識では間違った解釈となり、誤認されてしまう。アルヴィスの人生を知れば、善悪だけでは裁けない事情があるのだから・・・。

 

カルトの脳内で考え、出た一言にシグルドは目を丸くする。

 

「忘れてくれ、何となく出てきた言葉だ・・・。」苦笑いをしてその場を濁すカルトだった。

 

暫く、二人は無言となるがシグルドはどうしても話の先が気になり口火を切る。

 

「それで、ナーガの書は今何処に?」

 

「・・・ヴェルトマーだ。封印しているからか、ここまでヴェルトマーに近付いて微かにナーガを感じるようになった・・・。バーハラではアズムール王に場所を感知されるから信頼する部下の多いヴェルトマーに移したのだろうな。」

 

「・・・ヴェルトマーを制圧しないとナーガは手に入らない、制圧すれば本当に謀反人となる・・・。シグルド、その時はどうする?」

カルトの言葉にシグルドはふっ!と笑顔を向ける、その迷いなく笑うその顔にはカルトすら予想外だった。

 

「落とすさ・・・、ここまできて来て躊躇う事などない。

命をかけて信じてくれたエルトシャンやキュアン、エスリンに会わす顔がない。それに私を信じてついて来てくれたみんなにも、だ。」

 

「・・・決まったな、俺が死ぬまでお前は死ぬなよ。」

 

「いや、それは私の台詞だ。」

 

二人の視界の先には大軍・・・、二人は決死を決めるのであった。

 

 

 

 

「そろそろ、前線に戻ってはいかがですか?レプトール卿。」

 

「前線になど転移ですぐに戻れる!いい加減にはぐらかすのはやめろ!」激昂したレプトール卿は、机を叩いて副官であるアイーダ将軍に詰め寄る。

アイーダはレプトールの逆鱗にも全く動揺する事はなくその厳しい目線を正面から受け止める、炎のように燃える視線を冷ややかに・・・。

 

「この戦いが終わればアルヴィス様はレプトール卿に力添えしてアグストリアを制定する、と何度も申しております。」

 

「なぜ今まで放任していたのだ!今更風行きが怪しくなったからワシを都合のいいように使いよって!!

・・・ブルームがアグストリアを幾度となく攻め入っているが一向に攻略できん。」

 

「アグストリアがシレジア、ヴェルダンと同盟で固く結ばれたのは予想外でした。シレジアの鉱石、ヴェルダンの食料、アグストリアの最新軍備が揃えばいかにリッターと言えども攻め落とすのは至難でしょう。・・・ですから時を待て、と言ったアルヴィス様の忠告を聞かずに攻め入るような事をするからですよ。」

 

「アルヴィスの言う通り働いても一向に計画が進んでないじゃないか!俺がアグストリアの王、ドズル家がイザークの王にするといって計画を始めたのはヴェルトマー家なのだぞ。」

 

「ですから、今は我らの命運を握るシアルフィ家に退場してもらう方法を画策しているのではないですか?

あなたにとってもシグルドが生きているのは都合が悪いでしょう?」

アイーダはレプトールの横にまで迫ると追撃の一言を刺す。

 

「それとも、情に任せて麗しき姫君達のお孫さんでも抱きたくなったのですか?」

 

「おのれ!」再び机を拳を突き立てるレプトールだが、次は魔力を帯びており木製の机に電撃が走ると途端に炎が上がる、そしてゆっくりと立ち上がるとアイーダを睨んだ。

 

「いいだろう・・・、お前達が何を企んでいるか知らんが乗ってやる。俺はアグストリアの王になれればグランベルには興味がない。

その約束は違うなよ。」

 

「アルヴィス様に再度ご報告しましょう、シグルドとカルトを亡き者にすればすぐにその悲願達成するでしょう。」アイーダは畏ると敬礼する。

 

「・・・では、行ってくる。後の事は頼んだぞ。」レプトールは転移魔法でその場を後にした。

 

 

「・・・行ったようですね。」部屋のレースより湧き出るフレイヤ、アイーダは再び敬礼する。

 

「はい、・・・後は計画通りに・・・。」

 

「ええ、後の始末をつけましょう。アルヴィス様も望んでおられます。」フレイヤの笑みは歪んでいた、だがアイーダもまた敬愛するアルヴィスの命令には絶対であ疑う事は微塵もない。

 

「アルヴィス様の伝令を聞いてフィノーラの精鋭部隊を下げさせた甲斐があります、ヴァハに命じて集中砲火させましょう。」

 

「ふふふ、あとはシグルド達がどう動いてくるかです。奴らには細心の注意を払いなさい。念のために私の腹心もヴェルトマーに駐留させます、何かあったら彼が水面下に役に立ってくれるでしょう。」

 

「ありがとうございます、では軍備を急がせます。」アイーダはその場を退室する。

アルヴィスに全幅の信頼を置いているが、教団の者達には一定の距離を置いておきたかった。特にあの女は得体が知れない・・・、まるで実態と本体が全く違うものかのような錯覚を覚えて身が震える。手汗をかいており、拭いを懐から出して拭くくらいであった。

畏怖、というよりも純粋な恐怖を感じている。足を止めれば膝が震えてしまうだろう・・・。

 

(アルヴィス様はお優しい方だ・・・、強く振舞っているが時折何かに不安に怯えている顔が見える。そして、何かに憤っておられる。

本当にあのおぞましい教団を導いて正しい方向へ向かえるのだろうか?)

アイーダの不安は日々強くなっていた・・・。アルヴィスを信じるが故に感じる未先への不安がアイーダの葛藤につながっているのだった。

 

 

 

決戦の火蓋が切られたのは、シグルド達が砂漠を越えた瞬間であった。カルトの予想通り、砂漠の踏破した瞬間に間隙もなく攻め込むフリージの軍勢・・・。

重装歩兵で固めたフリージ軍はバーハラからの援軍も期待した布陣であくまで待ち伏せに徹底しており、大きな動きはなくゆっくりとこちらを圧迫するように動き出す。

カルトは既に援軍の可能性も考えており前列には騎馬で固めていた。時間の浪費は無駄な消耗と、フリージの軍に余裕を与える事になる。

こちらはまだ重装歩兵であるアーダン将軍の隊は装備を整えていない、装備の切り替えが早い騎馬部隊が前線に立つ事となった。

 

アゼルのエルファイアーが先制の口火を切る、前線に立つ重装歩兵はその猛る炎に飲み込まれて焼死する。

対抗する雷の魔道士の反撃が始まるが、騎馬はその機動力を生かして左右に分かれて散開する、命中した騎馬がいるがフリージよりも被害はずっと少ないかった。その中でもレックスの斧騎士部隊の破壊力は重装歩兵の鎧を突き破り、傭兵騎団はその経験豊富な技量で役割を果たす。

傭兵達は刃が通りにくい相手でも対処は熟知しており、武器破壊を狙う者から隙間を縫うような攻撃で戦闘不能に追い込んでいった。

 

序盤は有利に動いたが、混戦になるに従いフリージに押し返されていく・・・。敵味方が混ざり合い出すとアゼルの炎は使えず、騎馬の機動力が失うと重装歩兵が有利に進み出したのだ。

前線が再び押し戻され、倒れる騎馬部隊が多くなるに従いクロード神父が治療が遅れ出し、リザーブを始めて使った時に勝負に出た。

 

「私が出る!」シグルドはティルフィングを掲げてアレクとノイッシュの持つシアルフィ騎士団が前線に向かう。

バイロン公がイザークでグリューンリッターを失い、シグルドの持つわずかな騎士の一団がいままでの激戦をくぐり抜けてグリューンリッターの一員になってもおかしくないまでに成長した。正式に聖騎士の勲章を得たアレクとノイッシュは隊長格になれる逸材。

そのシアルフィ騎士団が真価を問われる一戦に身を投じるのだった。




アレク パラディン
LV26
力 20
魔力 5
技 19
速 21
運 14
防 13
魔防 4

追撃 見切り

FEの緑の方担当
見切りは魅力的ですが、子供の能力が・・・。

ノイッシュ パラディン
Lv28
力 23
魔力 4
技 22
速 16
運 11
防 16
魔防 3

突撃 必殺

赤担当の人
攻撃的なスキルをお持ちですがアレク同様成長率が・・・。
個人的に好きな人で、アイラとかブリギットあたりとくっつけたら凄まじく子供が攻撃的になります。

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