ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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外伝書くのが楽しいです。
ストーリーとは違い、好きに自分の構想を入れる事ができます。
春になり、なんだが家族とか恋人とかの話が出来ると心が弾みます。




思慕

「ラーナ様!ラーナ様ではありませんか、お久しぶりでございます!」

カルトは嬉々としてラーナへ膝をついた。

 

「ふふっ本当に久しぶりねカルト、あなたの活躍はよく聞きます。シレジアとしてとても嬉しい限りですよ。」

 

「ははっ!至上の喜びでございます。」

カルトのレヴィンとは打って変わっての対応に周りからざわつき始める、それはフュリーやクブリ、マリアンも意外すぎて目を点にしているのである。

 

「ははっ!カルトには母上を連れてきた方が堪えると思ってな、どうだ?きいたであろう。」

 

「まあ、レヴィン!私をそのような事のために同行を許したのですか?母を何だと思っているのですか?この子は・・・。」

憤るラーナに対してカルトは立ち上がり、カルトは嬉々としてままであった。

 

「いいではないですかラーナ様、私はお会いできて嬉しい限りでございます。

そうだ!先日産まれた子供をご覧になってください、今は妻も床についたままなので是非こちらへ!」

カルトの一人歩きする言葉にラーナは困った顔をするがそのまま宴の席を放ったらかしてラーナをさらうように退席するのであった。

シレジアの一同は唖然としたままで追うことも出来ず、立ち尽くしてしまう。レヴィンだけが大笑いでその姿を見送るのであった。

 

 

「すまんな、カルトは母上に弱い所があってな。しばらく会ってなかったから全開になったみたいだ。

フュリー久々だな、お前にも会わせたい人がいるんだ。」

そう言って更に背後に佇む人が1人いた。

 

「フュリー、随分逞しくなりましたわね。」

 

「お姉様!」

フュリーは涙交じりに姉であるマーニャに抱きつく、マーニャはフュリーの背中に腕を回して受け止める。

 

「先程、厩舎にいるファルコンを見させていただきました。あんなに老齢のファルコンと心を通わせるなんて、あなたはには天馬乗りとしての才能が開花したのですね。」

 

「姉上のお陰です、姉上が腕の上がらない私をずっと見てきてくれたお陰です。」

 

「カルト様に感謝しなくてはなりませんね。」

 

「・・・姉上、シェリーの事ですが。」フュリーは姉より離れ俯く。

 

「わかっています、あなたがあのファルコンの背に乗っているという事はシェリーは・・・。」

 

「申し訳ありません!姉上から賜ったシェリーを、私は!」

 

「・・・事情はわかりませんが、シェリーはきっとあなたを庇って命を全うしたのではないですか?

あの子は納得して命を懸けたはずです、いつまでも泣かないの。あなたは胸を張って生きなさい。」

マーニャの言葉にフュリーは涙を拭き取り力強く頷いた。

 

「はい、お姉様!もう泣きません。それにシェリーはまだ、私の手にあります。」シェリーは魂を剣に宿り未だにフュリーを護り続けている、あの剣を持つ限り彼女には失った物など一つも無いのである。

 

「あのファルコンの名を教えて、異国の地からやってきた古の魔獣の名を・・・。」

 

「はい、ヴェルダンの深き森で見つけましたエルダーファルコンでヴェンデイと名付けました。」

 

「ヴェンデイ・・・。いい名前ね、あなた達の活躍を期待しているわ。」

マーニャがフュリーの頭を撫でている時に1人の白髪の少女がピョコっと現れる。

左手には大皿があり少女が食すには違和感があるくらいの大きな肉ばかりを乗っけてある、それをまた少女の口には入るとは思えない大きさの肉塊を右手で放り込む。

 

「読んだか?フュリー、何の用だ。」一瞬で租借し一気に食道に流し込むや2人の抱擁に割って入った。

 

「むむっ!フュリー、それは生殖行為か?残念だがそれは同性だぞ?」

 

「ヴェンデイ!」フュリーの叫びにマーニャが硬直し、説明にはまた時間が掛かるのであった。

 

 

 

「まさか、あのファルコンがこの子であるとは・・・。ヴェンデイ殿失礼しました。」

マーニャは深々とヴェンデイに謝罪する、フュリーに事細かくこのヴェンデイと名付けたエルダーファルコンの偉大さを説明する。

ヴェルダンの国では神の使いとされまでされている存在。知能は人間を凌駕しており、人間にも扱えない魔法を多々持つ神獣である事を伝えた。

 

「あっはっはっは!ようやく説明してくれて助かるよ。

こいつときたら、私を見つけてから十日間どんなに追っ払ってもついてきて大変だったよ。喚き散らすわ、手が掛かるわで・・・。

まさか、私がこんな小娘に根気負けるとはあの時は思わなかった。」

 

「ヴェンデイ・・・あまりあの時の事は・・・。」

 

「そうであったな、まああのカルトは私の事は分かっていたそうだが知らん顔しておったからな。」

からからとしているヴェンデイにフュリーは内心はらはらものであった。

 

「ふふっ、フュリー。あなたは本当に立派になりましたね。

ここまであなたが成長しているのなら、あなたにお願いしたい任務があるの。聞いてくれないかしら?」

 

「姉上?」

 

「あなたには、レヴィン王の親衛隊としての任務に就いて貰いたいの・・・。」

 

「私が、ですか?でも、カルト様の天馬隊は?」

 

「私が引継ぎます。」マーニャの発言に一同が驚く。シレジアの天馬四天王の最強の一角であるマーニャがシレジアの離れ、最弱のフュリーが変わりに務めると言うのだ。

 

「姉上!それはどういう事ですか?そんな、突然・・・。」

 

「シレジアはカルト様とレヴィン様のお陰で随分と平定されました。

ダッカー様が討たれ、マイオス様が自粛され、分散されていた戦力もシレジアに集中してパメラもディートバもシレジアに尽くしてくれています。

あなたもそろそろシレジアに戻って自国の任務を尽くして欲しいのです。」

 

「・・・わかりました、明日シレジアに帰国します。」

 

「フュリー、突然でごめんなさいね。パメラとディートバにも説明しています。暫くは2人の指示に従ってね。」

突然の任務交代にフュリーの頭は混乱を極める事となる、マーニャの顔に少し憂いがある事をヴェンデイは見逃す事は無いのであった。

 

 

 

「どういう事だ、マーニャ。」宴の中、バルコニーに連れ出したレヴィンはマーニャに詰め寄った。

 

「レヴィン様・・・。」

 

「私の婚約を受けてくれない、そういう意味なのか?」

 

「・・・私は、戦いでしかレヴィン様を支える事が出来ない女です。どうか、お許し下さい。」

マーニャは頭を深く、深く下げて謝罪する。

 

「それに、レヴィン様には私よりも相応しい方がいます。」

 

「・・・フュリーの事を言っているのか?」

 

「あの子のお気持ち、察してあげて下さい。あの子は私よりも先に、あなたをお助けしたい一心で天馬騎士を目指しておりました。

才能もなかったあの子が、あなたの為に努力して私をも超えるくらい素晴らしい天馬騎士となりました。

シレジアで彼女を見て感じてみて下さい、きっと私より相応しいと思うでしょう。」

 

「・・・分かった、君がここまで言うのであれば言う通りにしよう。

私も意地だ、君が帰ってくるまで意思が変わらない事を見せてくれる。」

 

「まあ・・・、ご無理をされずラーナ様にお孫様を見せてあげさせて下さい。」

 

2人の意思がアグスティの夜を焦がすのであった。

 

 

 

 

宴の夜、エスリンの出産で女児が誕生した報告が入りますます盛り上がりを見せる。朝までつづきそうな勢いの宴に残る屈強な男共の狂宴にアゼルは意識を朦朧として飲まされていた。

 

「アゼル!どこかにいい女はいないのか?とうとうエーディンまでヴェルダンの王子にほだされてめぼしい人がいななくなってきたぞ!」

 

「んー?シレジアの魔道士部隊にも綺麗な女性がいたよ。レックスならアタックすればいいじゃないか?」

 

「な〜にロマンの無い事言ってんだ!俺たちゃ公子なんだぞ、何処ぞの馬の骨に引っかかったら親父共に何言われるかわかったもんじゃない。」

 

「確かにね、じゃああのノディオンの姫様にアタックすればいいんじゃない?」

 

「あれは・・・、確かにべっぴんさんだが俺には合わない気がするぜ。」

 

「・・・確かにそうかもしれないね。」

 

「アゼル!いいよなあ、お前は約束されている人がいるから余裕でよお〜。」

 

「な、何言ってるの?僕も最近会ってないからわからないよ。彼女、ちょっと突っ走る所があるから何処かでいい人に出会って一気に嫁いでいる気がするよ。」

 

「・・・お前も、気苦労が多いな。」

妙な雰囲気漂う2人の会話に割って入る者はいなかった。

 

 

 

「ねえ、シルヴィアちゃん。いい踊りだったよ。アンコールお願い!」これはアレクである。

 

「あ、いいですよ〜。ちょっと大人っぽい踊り、見せてあげる。」

 

「アレク、やめないか!シアルフィの品位を下げるんじゃない!」ノイッシュはアレクを嗜めるが酒癖の悪い相棒はこの悪癖を止める様子はなかった。

 

「ど、どうせ俺は遅いがネックな重装歩兵だ。

今回みたいな戦いで追いつけるわけが無い、チクショー!」

 

「アーダン、君もグダを巻くのもいい加減にしてくれ!

アレク!踊り子さんに手を出さない!」

 

「くっ!エーディン様!!」ぶつぶつとつぶやきながらヤケ酒を煽るミデェール、フラッシュバックのように思い出しては酒に走り潰れていく彼はもう廃人になるのではとノイッシュは思ってしまう。

 

「ミデェールももう酒は辞めるんだ、あの時ちゃんと祝福していたではないか?」

 

「わかっているさ、わかってはいるけど・・・。」

 

「騎士なら騎士らしく主人の祝福をしないか。」

 

「そうだけど・・・、エーディン様!!」またテーブルに突っ伏してしまい、新たなボトルを手に取るのである。

ノイッシュの苦悩はまだまだ続いていくのである。

 

 

 

シグルド、キュアン、ジャムカ、カルト達は我が子を眺めながらの談義をしている。

これだけの貴族達が一斉に出産ラッシュとなり乳母達もそうでで母親達のフォローにより、一つの場所に移されて対応となっていた。

 

シグルド「キュアンの初子は女児だったのか・・・。」

 

キュアン「ああ、それもノヴァの血も色濃く継いでいるようだ。ゲイボルグはこの子が受け継ぐのか・・・、こればっかりはどうにもならないな。」

 

エスリン「あら?男も女も無いですわ、この時代はどの子も強くなくてはなりませんよ。」

 

シグルド「はははっ!エスリンの気質が受け継がれればレンスターも安泰だな。」

 

エスリン「お兄様!もとはと言えば・・・。」

 

シグルド「わかった、わかった。エスリンが勝気な性格になったのは私と父上の所為だな。」

 

キュアン「フィンを鍛えるのも程々にな。」

 

エスリン「あなたまで!」

 

シグルド「まあまあ、エスリン譲りのキュアンの後継者の誕生に祝福しようではないか。」

 

ディアドラ「シグルド様、セリスも構ってやって下さい。」

 

シグルド「すまないディアドラ、つい・・・。」

 

 

 

ジャムカ「なんだか、随分と所帯じみて来たな。」

 

エーディン「まあ、あなたも人の事は言えない立場ですよ。」

 

ジャムカ「・・・、キンボイスの兄貴にも見て欲しい所だな。」

 

エーディン「ええ、落ち着いたらヴェルダンに行きましょう。・・・あなた。」

 

 

 

カルト「ラーナ様、どうですか?アミッドの愛らしさは?

是非お抱きになってください。」

 

ラーナ「ええ、こう抱いているとレヴィンが産まれてきた時を思い出します。」

 

カルト「レヴィンの奴ならすぐに本当のお孫様が産まれますよ。」

 

ラーナ「まあ!カルトったら♪」

 

エスニャ「カルト様、そう簡単に言わないで下さい。

子供を産むのは大変なのよ。」

 

カルト「そうだったな、エスニャの叫び声が一番大きかったような気がしたよ。」

 

エスニャ「カルト様!」

 

 

シグルド達ははまだ自身の運命を知らないでいた、今ここに集う子供を達が将来襲い来る暗黒の時を切り開く運命の子達である事を・・・、アミッドがこの狂いつつ事象を変えてゆく宿命を背負っている事を・・・。

今はこの刹那の時を両親の愛情を受けて育っていく事を願う一堂であった。

 

 

 

 

再び狂乱の宴に参加戻る、フィンはあの悲しい漢共に脇見もくれずテーブルに積まれた食べ物を漁っていた。

かれは線が細い体型をしているがなかなかの大食漢で、白髪の少女と食べ比べのように競っていた。

 

「人間の癖になかなかやるではないか、私と互角とはな。」

 

「人間の癖にって・・・、君みたい子に負ける訳にはいかないよ。」

 

「むう、私を甘く見おって!」さらに大皿に乗った肉厚のある骨付肉に手を伸ばし、一気に頬張る。

フィンの負け時と隣の皿の炒め物に手をつける。

 

「ちょっと、フィン!聞いているの?」

 

食べ物勝負にラケシスに呼ばれていることに気付かなかったフィンは耳を引っ張られる。

 

「痛い!いたたた!ラケシス様、酷いではないですか?」

フィンは耳を押さえて振り向く。そこには普段の有事に着ているプレートメイルではなくパーティドレスに身を包み、髪を結い上げたラケシスの姿であった。

化粧を施した彼女はまるで雰囲気が違っており、普段の彼女が凛々しい戦乙女と例えるなら今は美しき女神であった。

 

フィンは大皿を落とすがウェンディは器用に空中で拾い上げ、曰くありげな笑みを残して退散する。

(ちっ!あの食欲具合ならフュリーの生殖相手にぴったりだと思っていたのに、あれもつがいだったか。)

 

「あの、あのあの・・・。ラケシス様、私めに何か?」

 

「・・・踊るわよ!」

 

「・・・へっ?」

 

「もうっ!じれったいわね!」

 

ラケシスはフィンの手を取ると、宴の中心にフィンを連れ出す。そしてシルヴィアの踊る場にて諸侯達のダンスの輪に加わったのだ。

ラケシスはフィンの右手を自分の左手に合わせ、左手を腰に回させると軽快なステップでフィンを引っ張る。

 

「あのあの、ラケシス様!私はダンスなど・・・。」

 

「あなたも立派な騎士なのでしょう。淑女をリード出来ないようでは騎士とは言えませんわ、これも鍛錬でしょう。」

 

「ラケシス様、これはまさか・・・。」フィンは青ざめる、口に出す事すらラケシスに対して怒りを吹きあげるような気がしてそれ以上は言えないでいたがラケシスは察したのかフィンが言えない代わりに発言する。

 

「そうよ、これが今回の訓練よ。

淑女に恥をかかせた挙句、一人鍛錬場に残すようでは騎士とは言えませんわ。産後に臥せているエスリン様に変わりましてあなたを鍛錬してあげます。」

 

「・・・今回は優しい指導を賜りたいと思います。」

 

「あなた次第、ねっ!」

曲が変わり、ビートの早いダンスに変わる。フィンの足がもつれそうになるがラケシスの素晴らしい足捌きに転倒は免れるが、右に左に切り替えさせられるフィンはもう混乱状態であった。

くすりと悪戯に笑うラケシスの厳しい鍛錬は続いていくのである。




この後の話ですが、シルヴィアのお相手を考えてますが未だに結論が出ません。
クロード×シルヴィアはちょっとさすがに・・・ですね。
あれ、モロですからね。
アルヴィス×ディアドラもかなりですが・・・。

聖戦の系譜発売時はR18とかR15とか細かく指定無かったのですが、現代ではこのゲーム任天堂から販売できたのかな?色んな団体から抗議が来そうで恐いです。
もしかして、それが原因でリメイクが難しいのではと考えてしまいます。

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