ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻)   作:Edward

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またまた、更新が遅れてしまいすみません。
最近のシグルド公子、活躍する機会がないです。


敗走

アンフォニー城の攻略戦はヴォルツ率いる傭兵騎団は森林での戦いで兵力を失う中、フュリーと剣を交えた傭兵は退却し後方にいる隊長格の元へと帰還した。

 

「ベオ、どうだ?」歴戦の傭兵は劣勢にも関わらず、動じる様子もなく帰還した傭兵に問いかける。

 

「このままでは敗北は決定的だな。」

「そうか・・・。ベオ、お前はどうする?」

 

隊長は全てを見抜いている、ベオと呼ばれたその男は沈黙のまま真意を見据える。暫し気不味い雰囲気を過ごした後、隊長格の男は笑みを浮かべた。

 

「ふっ、傭兵にどうするとは無粋であるな。今までの給金では割に合わない仕事だ、お前は他所へ行くつもりなのだろう?」

 

「ああ、金は欲しいが割に合わない仕事はしたくない。

何よりあのマクベスは気に入らない。」

 

「俺たち傭兵は自由だ、戦うも死ぬも選ぶ事ができる。好きにすればいいさ。ただ、俺の前には敵側として出てこない事だ。」

隊長格の男は途端に殺気を伴ってベオを見据える、それは各地を傭兵として活躍し生き残ってきた猛者の忠告。

彼はベオが抜ける事への怒りでも、呪いでもなく純然たる警告を発しているのである。

 

『お前に俺は勝てない』

 

ベオはその言葉に打ちのめされる。

自身の腕にも多少の覚えがありそれなりに名声を得ていると思っていたがこの男、ヴォルツにはかなわなかった。

技の巧みさ、その大剣とは思えない剣捌き、そして人馬一体の技術にベオは未だ到達できず彼と数度手合わせをしても競り負けてしまうのであった。

 

「ああ、あんたとやりあうつもりはない。俺もまだまだやり残している事があるからな。

それよりどうするのだ、このままではみんなやられちまうぞ。」ベオの耳にもすぐ先で行われている撃剣が響いている、そろそろ本腰を入れねば戦線を離脱するにも戦うにも手遅れになってしまう。

 

「そうだな、負け犬同然に尻尾を巻けばこの先の仕事にも支障がでる。それなりの奴を首をあげて、退散する。」

 

「わかった、わたしも次の雇い主があるまでは同行しよう。」

ベオは大剣を抜いてヴォルツとともに行動し始める。ヴォルツは自身の能力に過信はしていない、状況を見定める事に長けたこの男はどんな劣勢にも生き延び金と名声を上げてきた猛者、この度の戦闘も生き延びてヴォルツ隊を維持するだろう。

ベオこと、ベオウルフは目標の男の背中を見ながら生き延びる戦いに身を投じてくのであった。

 

 

 

「馬鹿者!なんだこの様は!

これではグランベルに攻め込むどころか、この国の存在が危ういではないか!」

シャガール王は戦況の報告に怒りを露わにする、ノディオンの反旗は想定内として戦力の要であるハイライン敗走の事態にシャガール王はワイングラスを叩き割る悪態をつく。

家臣は小さくなってこの雷雲が吹き抜ける事を待つが、その怒りはそうそう過ぎ去るわけではない。荒れる国王はその矛先を狙わんと見渡すばかりであった。大臣達がそそくさとその場を逃げていく中で、漆黒のローブを纏った女性がシャガールの元へ足を運ぶ。その足取りに音はなく、シャガールも側まで来ている事に気付かないでいた。

「フレイヤ!よく儂の前にこれたものだな!」

 

「陛下、私はただ貴方様の望むままに申したまでです。

お決めになられたのは陛下ご自身ではないですか。」

 

「ぬ、貴様あ〜!」

 

「陛下には、まだ手があるではないですか。

地下に放り込んでいるあの男を人質するか、奴を解放を条件にすれば生き延びましょう。」

 

「馬鹿な!儂があんな奴らごときに命乞いをしろと言うのか!!ましてや人質をとるなどアグストリアの恥を晒すようなものだ!!

奴はこの手で処刑せねば気が済まぬ!」

 

「それも陛下のお決めになった事、そのようになされるが良いでしょう。

処刑する前に奴から情報を引き出してみせましょう、上手くいけば切り開く突破口があるやもしれません。」

 

「そ、そうだな。では早々にやってくれ、終わったらすぐに斬首刑にしてやる!」

 

息を巻いて玉座に戻るシャガールに冷笑を浮かべながらその場を後にする。

(馬鹿な人・・・)

 

シャガールの利用価値は既に無い。ディアドラを擁するシアルフィ軍がアグストリア領に誘導し、各地を制圧した段階で今回の計画はすでに成立している。

シャガールが後にどのような結果を出す事になっても些末な事にすぎない、気になる事案は地下に囚われているカルトの存在のみであった。

マンフロイ大司教ですら、かの者の存在に言い知れぬ不穏分子であると認識した。ここで摘み取っておく必要がある。

地下牢獄に着き、兵に退出を申し出ると早速カルトと相対する事となった。

 

 

 

 

「あんたは?」カルトは痛む身体を起こし、鉄格子向こうの存在に声をかける。

 

「初めまして、私はシャガール陛下のお付きのフレイヤと申します。」フレイヤはフードを外して微笑みと共に一礼する。

 

「俺に何の用だ?」

 

「まあ、酷い傷!まずは治療致しますわ。」

 

「構うな、致命傷はない。それよりも話は何だ?」

 

「・・・・・・バランを殺したのは、あなた?」

 

「バラン?誰だ、それは?」

 

「ダーナの南、古戦場の砦・・・。」

 

その一言で全てを理解したカルトは一歩引き、フレイヤを睨みつける。

フレイヤの微笑みは残虐な笑みへと変貌する。

 

「やはり、あなただったのですね・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「バランを殺した罪も、ここで精算してもらいましょう。私との会話が終われば斬首に処すると陛下は言っておられました。

あなたなら、その直前に逃げる可能性があると思っていたのでここで封殺させてもらいます。」

 

フレイヤは魔力を解放させると途端に雰囲気ががらりと変化し、カルトは悪寒が走る。まだサイレスの杖により魔力を封じられている今、逃げる事も攻撃に転じる事も出来ない。

だが・・・。

 

「・・・待っていたぜ。」カルトは小さく呟く。

 

「なに?」フレイヤはその言葉を耳に補足する、今から殺されようとしている者にしては可笑しな発言に耳を貸してしまう、彼は笑みすら浮かべているのだ。

 

「あんた、フレイヤと言ったか。シャガールのお付きと言っていたがそれは嘘だな、その魔力をヴェルダンで感じた事がある。暗黒教団の者だな。」

 

「・・・・・・。」

 

「確かにバランと思われる者は俺が倒した、子供を暗黒神の生贄にしているような外道は殺されて当然の報いだ。

そしてフレイヤ、あんたも裏で暗躍しているようなら容赦はしない。」

 

「何を馬鹿な事を、処刑される寸前の貴様に何が出来るのかしら?

その気になれば今ここで処断してあげてもいいのですよ。」

 

「そうは、ならないさ。」カルトは目線で合図を送ると、デューは飛び出しフレイヤに斬りかかる。

 

「!・・・。」デュー袈裟斬りをフレイヤは視線の端で視認し、ロープの中よりショートソードを装備し受け止める。金属の打ち込む高い音が響いた。

 

「まさか、伏兵がひそんでいるとはな。」フレイヤから笑みは消え、デューを静かに睨みつける。

その異質な笑みにデューすら寒気を感じるのであった。

 

デューはその寒気を乗り越え、さらに攻撃を加える。

デューの連続攻撃は非常に無駄がないが、フレイヤの防御一辺倒の剣捌きの前ではダメージを与える事は出来ないでいた。

デューの強攻撃を受け止め、鍔迫り合いになった時フレイヤは魔法による集中を始める。

 

「だめだ!魔法が来るぞ、奴に集中させるな!」

 

デューは咄嗟に切り替えて、一歩離れるとすぐさま連続攻撃に移る。

フレイヤはまた襲いかかる剣の波状攻撃に忌々しさを覚え、再び防御に入らざる得なくなった。

 

一方、カルトはサイレスの杖の効力はあるが自身の魔力で一気に打ち破る。

クレメンテの魔力程度では、カルトにサイレスの杖では抑える事は出来ない。あえてその効力に対抗せず、受ける事により奴らから接触してくる可能性に賭けていたのであった。

ウインドで鉄格子を破損させるとデューの支援に入る。

 

「リザイア!」

 

光のオーラがフレイヤの身体を包むと、フレイヤは苦しみ出しその場に蹲る。

魔力で防御を行っているがカルトの魔力の前に打ち負けフレイヤから体力を奪い攻撃と回復を行ったが、フレイヤの魔法防御も相当であり思っ程体力を奪う事は出来なかった。

 

デューはカルトの前まで後退し、フレイヤの出方を待つ。

一気に攻め込みたい気持ちはあるが、不気味な魔力を持つこの女性を前に迂闊な攻撃は危険と感じた。

 

「その光の魔法、やはりあなたは異質な能力をお持ちのようですね。誰から受け継いだのかしら?」

 

「答える義理はないな。」

カルトはすぐさまウインドを放ち、その後にデューが飛び出した。

フレイヤは魔法防御を高めてウインドを殺し、デューの攻撃をショートソードにて受け流す。

 

「リライブ!」まずは傷ついた身体を動けるようにしなけばならない、カルトは先程のリザイアに加えさらなる回復を急ぐ。

 

「この〜。」デューがまともに一撃を加えられないのか、珍しく気合の声がかかった。

デューはイザークの盗賊剣士で、腕はなかなかに立つ。それでも一撃を与えられないのはフレイヤの剣技もなかなかの領域なのだろう。

 

「デュー!深追いするな、そいつの本分は魔法だ。今のまま魔法を使わせないように隙を与えるな!」

 

デューはその言葉を無言で受け取り、大振りをなくした丁寧な剣技に戻っていく。フレイヤはまた苦境に立たされ、防戦に専念していた。

回復を終えたカルトはデューが距離を開けた瞬間を狙うため意識を集中させ時を待つ。

 

その行動を見たのかフレイヤは、ショートソードを巧みに操り攻撃回避を優先した行動を止め魔法を使う準備に入る、デューも魔法を阻止する一撃を繰り出すがまるで気にする様子はなく、袈裟斬りを受ける。

 

「ヨツムンガンド」たちまちあたりより有象無象の邪気が立ち込め、デューを包むように迫る。

「ウインド!」咄嗟に風の塊をデューに当ててその場から強引に引き離して難を逃れる。

 

「ヨツムンガンド」

 

「なっ!ウインド!」次はカルトに向かって放たれた邪気は地面にウインドを放ちその場から離れる。

 

「ヨツムンガンド」次はカルトの着地地点を狙い次の魔法を放つ。ついにカルトはその邪気の爪を被弾する事となった。

「うあああ!」カルトは必死に魔力を集中させ、魔法防御を行うがその強大な魔力におびただしいダメージを受ける事となった。

身体を蝕ませる、邪気に当てられたカルトはすぐさま回復に入る。フレイヤもほぼ同時に回復に入った。

 

が、フレイヤは一瞬に回復を終わらせて見せた。カルトはその速さに目を疑うがフレイヤはすぐさま第二波のヨツムンガンドを放った。

それもまた被弾したカルトはその場に崩れるように倒れる。

(嘘だろ、あれだけの質量の魔法を立て続けに何度も使えるなんて。魔力の底が見えない。)

 

カルトは必死に立ち上がるが、邪気に当てられたカルトは時間が経過するごとにダメージが蓄積されていくように酷くなっていく。

 

「まだまだ青いわね、それだけの能力を持っていてもあなたの経験不足では私に勝てないわ。」

デューも体勢を立て直して参戦してくれるが、防御に回らない彼女に斬りつけても同様にヨツムンガンドをもらい、昏倒する。

 

「エルウインド!」デューに貰った僅かな隙にフレイヤに巨大な竜巻状の上位魔法を叩きつける、彼女には大きなダメージを与える事は出来ないが周囲の砂埃を巻き上げるので時間が稼げる。

デューになんとか近寄るとワープの杖を使い、脱出を図る。

 

「無駄よ!」フレイヤはショートソードでカルトに斬りつける、背中を斬られたカルトは転がり吐血する。

 

「くっ!」カルトは再び魔力をありったけぶつけようと解放を急いだ。

 

フレイヤはさせぬとばかりヨツムンガンドを放とうした時、デューが背後より剣を突き立てた。

「ぐはあっ!」フレイヤから初めて驚愕の声が響く、デューの一撃は必殺の一撃とも言えるものであり。彼の剣技により、カルトのリザイアの如く体力を奪っていく。

 

「いいぞ!デュー!離れてくれ!!」

デューは突き立てた剣もそのままに、一足飛びでその場を離れる。

 

「オーラ!」

カルトの最大顕現である光魔法がフレイヤに襲い掛かる。

光の柱が降り注ぎ、浄化の力がフレイヤを包み込んだ。

 

 

 

白い爆発が終わった時、二人の前にフレイヤの姿は見当たらずデューは右往左往としていた。

 

「やった、のかな?」

「いや奴は逃げたよ、転移の魔力が僅かに感じた。」

 

「そっか、じゃあ早く逃げよう!

早くしないとアグスティのお偉いさんがやってくるよ。」

 

「そうだな、これ以上は危険だな。」カルトは転移の準備に入りだすと、デューは看守室からカルトの押収された白銀の剣を渡した。

そして二人は転移の光に消えていくのであった。

 

 

同じ頃、マッキリーのクレメンテ司祭がノディオンのエルトシャン王の前に敗北し陥落した。彼はクレメンテ司祭を捕縛し、さらに北のアグスティに向かおうとしていた。

そこにカルトが合流したのは脱出した2日後の事であった。




カルト LV23
マージファイター(に近い)

HP 41
MP 62 ※ゲームには存在しないです、あくまで私の主観。
力 13
魔力 24
技 18
速 21
運 15
防御 11
魔防 15

剣 C
光 ☆
火 B
雷 B
風 A

スキル

追撃 連続 見切


魔法名 MP消費量
ウインド 3
エルウインド 5
ライトニング 4
リザイア 7
オーラ 9

ライブ 3
リライブ 5
リブロー 6
リザーブ ※ 人数と範囲による。
ワープ ※ 人数と距離による。
マジックシールド 8 杖を失った為、現在使用不能

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