ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 〜 氷雪の融解者(上巻) 作:Edward
難しすぎてうまく進みません。
「シレジアのカルトです、グランベルとの同盟により救援に参りました。」
「君がシレジアのカルト公か、その若さで内戦を制圧するなんて驚いたよ。」シグルドは挨拶を交わして一言を受けた。
「いや、あれはレヴィン王の働きによるものだ、俺は手助けしただけにすぎない。」
「いや、王位即位の時の演説を新聞で見たが、レヴィン王ははっきりとカルト公の力添えがなければ私は即位を避けて逃げ出していたと伝えていたじゃないか。」
「まあ、そのことはまたゆるりと話そう。ユングウィは奪還できたがこの有様では取り戻して一件落着とは行かなそうだ。やつらの戦力はまだまだエバンスに残されているらしいし、ユングウィの公女さまも見当たらないんだろ?」カルトの言葉にシグルドは真剣な眼差しを戻した。
「確かに、エーディンもまだ見当たらないと情報が入ってきている。一刻も早く、現状を把握しないと・・・。」
「シグルド公子、エーディン公女はヴェルダン領に連れ去られた可能性が高い、やつらは若くて美しい女性を連れ帰った節がある。急いでエバンスで救出しないと厄介なことになるぞ。」
「!!なっ、それはどういうことですか?」シグルドも隣にいる従者であるオイフェもカルトの次の言葉に息を飲んだ。
「ここを通る時に市民の声を聞かなかったか?娘が連れて行かれた、妻がさらわれたと言っていたじゃないか。情報部だけの声だけでなく市民の生きた声を第一に考えないと、情報に翻弄される事になる。」
カルトの一言にシグルドも、オイフェも言葉をなくしてしまった。シグルドは能力は高いがまだまだ戦の本質が見えていなかった。
戦で一番犠牲になるのは市民たちであるのだ、その市民を直視せずエーディンの行方ばかり追っておるシグルドやオイフェには聞こえていた悲鳴を悲鳴としか捉えていなかった。
その叫びを聞いていたカルトだからこそ、私は救われたのだとマリアンは実感したのだった。
「もしエバンスからさらにヴェルダン領に連れさらわれた場合を考えてみると、無理に攻め込めば次は俺たちが侵略者になっちまう。国家間の意見を考えれば、エバンスで奪還してグランベルに早々とヴェルダン領から帰還するのが現状の最良策と思える。」
「た、確かに。シグルド様、カルト公のおっしゃる通りです。すぐさまエバンスに向けて進軍しましょう。
ユングウィの後処理は私が指示しておきます。」
オイフェはカルトの言葉に逸早く察知し、行動を促す。予想以上に時間がないことを自覚した彼の動きは素晴らしく、カルトは笑みを作ったのだった。
「俺の部隊がすでに近くで待機をしている、跳ね橋をあげているが我らの天馬騎士団の前に地理の不利はないからな。」横にいるフュリーに合図を送ると呼応して彼女は頭上にいる天馬を呼び寄せ、たちまち大空へ飛び立っていった。
「天馬を見たのは初めてだが、あそこまで訓練されていると人馬一体の感じがするよ。」
「彼女は我がシレジアの天馬騎士団の四強の一角、天馬の扱いは彼女が一番とまで言われている。
彼女たちに任せておけば奇襲は必ず成功する。」
シグルドは無言で頷き、カルトの意見に従ったのだった。
「カルト!」
混成部隊となり、各国の部隊が思い思い進軍する中でシレジア騎士団の先頭を行く私に声がかかった。
振り向くとそこにはしばらくぶりのアゼルと、初対面の者が私の横に追従する。
「アゼルか、数ヶ月ぶりだな。」
「君こそ!突然グランベルに来たかと思えばすぐにシレジアに帰って、帰ったかと思ったら突然シレジアの内乱で君が活躍してセイレーン公になったと新聞が踊った時はひっくり返りそうになったよ。」
アゼルの突然のまくし立てにカルトは少し反省する、グランベルにいた間は彼に迷惑と混乱を引き起こさせてしまった事を思い出す。
「すまない、急を要する事態が立て続けに起こってしまい説明をしていなかったな。」
「ううん、それでグランベルの僕の所に訪ねてきた理由をそろそろ聞けるのかな?」
「・・・・・・・・・、アズムール王にお会いしたのはシレジアの前国王が崩御寸前でその瞬間に内乱になることはわかっていた。
だからレヴィンと計画して俺がアズムール王にお会いしてシレジアとグランベルを同盟するように取計らったのだ。しかし、会談中に前国王が危篤状態と聞いたので急いで祖国に帰る形になってしまった。」
「そういうことだったのか?しかし、いきなり直訴に近い無理な内容をよく一人でやりきろうとしたね。
無茶というよりも無謀だよ。」
アゼルの驚きよりも呆れたと言った発言にカルトは乾いた笑い声が出そうになるがぐっと堪える。
これはカルトの方便で、アズムール王との関係確認が取れたことで後ほどできた同盟提案であり本当の理由をここで暴露することはできない。現在カルトの秘密を知る者はレヴィンとラーナ様と親父だけであった。
「その後の大筋は新聞の通りだ、国王崩御して異を唱えるマイオスこと俺の親父とダッカーの叔父貴に説得したレヴィンを引き連れて攻め入ったのさ。親父は捉えた後大幅に軍縮を条件でトーヴェ公に監視付きで現状維持、叔父貴は説得も虚しく徹底交戦の末に戦死した。後味は悪かったがレヴィンもやる気を出してくれたし、結果良好って所だな。」
カルトの言葉にアゼルは視線を強めた事にカルトは警戒を感じた。そこに不快な意思表示があり、そして拒絶に近い感情が瞳に投影されていることが伺えた。
「たしかにこれで親族によるシレジアは反王政派は潰えた、でもそれで八方が治るわけではない。次の反王政派が出来るたびに君とレヴィン王は血の粛清を続けるつもりか?叔父さんに当たる人を死に追いやり、次はその子供達が反対派に回った時も粛清を続けるつもりなのか?」
アゼルの言葉にカルトは正面から向き合い、言葉の重みを受け止める。
アゼルの瞳を見つめていると数ヶ月前とは違い、彼にもしなやかな強さが出てきている事に気付きカルトは微笑んでしまった、まるで弟の成長を喜ぶ兄のように透明な笑顔をアゼルに向けてしまう。
アゼルはその笑顔に戸惑ったが、その意を汲み取り避難をすることはなかった。
「すまない、今の言葉に笑顔は失敬だな・・・。
アゼル、確かにその通りだ。俺たちのした事は正義ではない。シグルド公子は内乱を収めたと言ってくれたが、他にも親族殺しや独裁的と言われている面もある。
俺もレヴィンも正義なんて物はどうでもいいんだ。シレジアの国に、民に危害を与えるものは正義であったとしても除外しなければならない。それが民の上に立つものの正義であり、責任であると俺は思うからだ。」
「それでは、王政は一体何の為にあるというんだ?君たちは何がしたいんだ。」
アゼルはレヴィン王とカルトの行動に全く理解ができないでいた、民を導く存在であることが諸公の存在であり選ばれた人種と教育されてきていた彼にとっては異文化では括れないほどに混乱をきたす内容であるからだ。
「レヴィンも俺も目指していることは一つさ、王政の撤廃だよ。権力集中の廃棄、民による指導者選任による民主国家を設立することが夢なんだよ。」
「なっ!」
「快楽を貪っている者が貴族というだけで民を虐げている王政体質にはうんざりしていたのさ、レヴィンも王として即位を決意したのはこの計画を最高権力の立場から行おうとしてるんだよ。
ラーナ様にお教えしたらさぞ、お悲しみになるだろうが、きっと許してくださると信じている。」
アゼルはそのスケールの大きさに呆気に囚われるしかなかった、自身の保身どころか立場すら投げ出すような思想を持っているカルトにアゼルの常識は及ぶことができず頭も中で反芻しても受け止められるものではなかった。
兄も、アルヴィスも差別のない世界を作ると奮闘しているが、カルトの唱える民主主導で政を行うなんて思考は一切ない。自分が民を導き、平定する為の手段としてどのように進めていくのかを考えているのである。
「さて、おしゃべりはここまでのようだ。フュリーが奇襲してくれている間に一気に跳ね橋を降ろしてしまおう。」
カルトは平野の向こうに見える国境線にもなっているユン川が見え、そう伝える。
対岸の向こうには大量のヴェルダン兵が跳ね橋をあげて再び侵攻を始めようとしているのだが、天満騎士団の上空からの牽制でまだ跳ね橋は下げられていなかった。
その一因にグランベル側の川にはシレジアの魔道士部隊が天満騎士たちの支援を行っていたのが大きい。
上空からの手槍による投擲攻撃を風魔法で追い風にすることで遠距離かつ、武器の速度をあげていてヴェルダン兵は苦戦をしている。
追い風になるということは向こう側では逆風になるので弓の攻撃は、天馬達には届かずにヴェルダン兵のみが傷ついてしまい跳ね橋までたどり着いていなかった。
しかし、それは序盤の接触だけにすぎない。徐々に態勢を整え出したヴェルダン兵が決死の突撃で跳ね橋あたりまで到達しようとしていた。
「フュリー様、このままでは跳ね橋が抑えられます。跳ね橋が下されれば、魔道士部隊の被害が・・・。」
後方で戦況を確認していたフュリーに前線からの報告が副官よりなされた、もう少し時間を稼ぎたいところだがこのままでは報告者の言う通り魔道士部隊がヴェルダン兵の前線部隊と正面衝突となる。
「そうね、ここまで時間が稼げただけでも充分・・・と言いたい所だけど私の計画はここからよ。
お願い、私の代わりに指揮をお願いしてもいい?」
「あ、あの一体何をなされるおつもりですか?」
「今のタイミングで私にしか出来ないことがあるの、15人ほど連れて行くから単独ではないし無理をするつもりはないの。お願い。」
突然のフュリーの申し入れに副官は思いとどまららせようと思案するが、シレジア四天馬騎士である彼女の成される事に彼女は承諾をしてしまうのであった。
「大丈夫、いざとなれば奥の手もあるから心配しないで。
あなた達は相手に上空から陽動して後方からくるシアルフィ軍に前衛をお願いして、私はそれに乗じて回り込みます。」
「わかりました、どうぞくれぐれもお気をつけて。」
「ありがとう、いつも無茶をおしつけてごめんなさい。
でもあなたがいるから私は安心できる、いつかきっとお礼はするつもりよ。」フュリーは近くにいる者達を連れてさらに高く舞い上がっていくのであった。
ユン川の戦闘はさらに激しさを増していく、三千近くものヴェルダン兵がとうとうシレジアの天馬騎士と魔道士の攻撃を物量ではねのけ、跳ね橋におろすことに成功し一気に渡り始めた。
フュリーの指示通りに動いていた天馬部隊と魔導士部隊はすでに後方へ逃れており、代わりにシアルフィ軍400にグランベルの協力部隊、主にアゼルの連れてきた炎の魔道士50にレックスの騎士団50。
そしてキュアン王子の援軍であるレンスターの騎士団200、シレジアの天馬部隊が100に魔道士部隊が50である。
戦力を数で言えばシアルフィの混成部隊は1/3の戦力であるが、各部隊の戦闘能力はヴェルダン兵とは違い統率が取れており攻撃方法も多彩である。
各騎士団を全面に立て上空からは天馬部隊、後方からの魔法攻撃に回復援護まで機能しているため、ヴェルダン兵には対処できない攻撃の数々に疲弊が早く、たちまち恐慌状態に陥った。
シグルドや各諸公達は、戦闘経験の浅い者の鍛錬も兼ねておるのか後方で前線に出ることなく出方を伺っていた。前線と支援も落ち着いており、実践をこなすには適当なものであった。
「シレジアの戦い方をしかと見させていただきしたが見事ですね、同盟国なっていただいたことを感謝しました。」
シグルドはカルトに投げかける、もしここにシレジアの天馬部隊がいなければユン川跳ね橋を通過して広域に散らばられてしまった恐れもある。
他の領地に入られてしまい、ユングウィと同様の略奪が行われるとシアルフィに責任追及にまで発展しイザークにいる父上が危うい事になる。
カルト公はそこまでを即座に考え及び配下を待機させていた事に感謝した、私やキュアン達は西からの進軍だったのでユングウィに全軍向かうしかない。北からのグランベル公子達は空中部隊のような奇襲部隊はないので跳ね橋を下がるまで手出しはできず、逆に奇襲を受ける可能性があった。
「俺たちは騎馬部隊が少ないからな、どうしても奇襲攻撃に近い戦い方になっちまう。正面からのぶち当たれば大国グランベルに挑む馬鹿はいないさ。だから、今回の騒乱は腑に落ちない。」
「それは、今イザークへ兵力が投入されているからではないのですか?」シグルドは模範とも言える回答を口にする、彼は実直で好感は持てるのだが指揮官としては向いていない。やはり軍師とも言える人物が必要と感じる。カルトはシグルドの危うさを垣間見てしまうのだった。
「確かに、今なら現にユングウィを制圧して資金から領地を手に入れることに成功したが、態勢を立て直したグランベルにヴェルダンは勝てると思っているのか?」
シグルドはそこでカルトを見張りカルトの言いたいことが少し飲み込めた、ヴェルダンは最終的には勝ち目のない戦いに望んだ意図が読めないのである。
勝ち目のない弱小国が大国に挑む時、それは大義名分がある場合が多い。
イザークのマナナン国王が謎の死を遂げて、前後状況からグランベルに謀殺されたとなり決起したマリクル王子のように、決死と亡国になろうとものような意思がない限り、無謀な戦いを起こすことはないのである。
ではヴェルダンはどうだろうか?彼らには大義もなければ、理不尽を受けてもいない。
グランベルは同盟を結ぶ事はほとんどないが、不可侵条約により互いの領土の保証を締結している。
その中でヴェルダンはユングウィを襲って領土を奪い、金品から人身までヴェルダンに持ち帰ったのだ。
エーディンはヴェルダン領に連れさらわれている状況をまだ飲み込めていなかった。
「シグルド、この騒乱の裏で何かが動いている。目の前だけの戦闘に集中していると取り返しか付かなくなる。お互い気をつけよう。」カルトはそう言って、再び前線に目を見張るのであった。
マリアン
ソードファイター
LV1
剣 B
HP 22
MP 0
力 7
魔力 0
技 10
速 11
運 3
防御 5
魔防 0
スキル 追撃
鉄の剣
リターンリング
カルトの髪飾り《スキル 祈りが追加》
彼女もようやくシビリアンからソードファイターに昇格、一般人だったのでスキルなどなく
兵種スキルの追撃のみ。 慰みでカルトの髪飾りに祈りが入っている事にしました。
空想の世界ですが、リアリティにいってみたいです。 《カルト以外は》