とある魔術の恋色光線   作:青柳

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プロローグ
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 夜中、博麗神社の境内は静まり返っていた。

 この神社の住人である博麗の巫女と鬼が眠っている中、一人の人物が神社を訪れていた。

 

「それにしても今日は冷えるぜ」

 

 魔女を思わせるような白黒の服を着た“普通の魔法使い”霧雨魔理沙は、身体をぶるぶるとふるわせながらほうきから降り、縁側の方へ向かった。

 

 ほうきを片手に歩く彼女の首からは烏天狗から“借りてきた”カメラが下がっていた。

 

 そもそも、彼女がなぜ、こんな時間に神社を訪れているのか?

 

 そもそものきっかけは、山の巫女にあった。

 

 

 

 *

 

 

 

 さかのぼること数時間前。

 魔理沙は、守矢神社を訪れていた。

 

「寝起きドッキリ?」

「はい。昔、テレビで見たことあるんですけれど、アイドルや芸人さんの意外な素顔がみれて面白かったですよ」

 

 わきの露出した青色の巫女服を着た守矢神社の風祝、東風谷早苗は目を輝かせていた。

 

「どうしてまたそんな話を?」

「いや、霊夢さんに寝起きドッキリを仕掛けたらどうなるのか気になりまして……やってくれませんか? 一応、カメラは新聞に使うという条件付きで借りられそうなので」

「なんで私がやるんだよ!」

「誰も一人で行ってくれなんて言ってませんよ。博麗神社の賽銭箱の前に夜明け前に来てください。私も行きますから」

「本当だろうな?」

「えぇ。本当ですよ」

 

 そう言って、早苗はニコリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 *

 

 

 

 その後、山を下りるついでに烏天狗からカメラを借り、軽く使い方を教えてもらって今に至るのだ。

 

 そもそも、写真はカメラの持ち主である烏天狗がとればいいと思うのだが、早苗はどうしても魔理沙が写真を撮る方がいいというのだ。

 

 まったく持って意味が分からない。

 

 そんなことを考えているうちに賽銭箱の前に到着した。

 わざわざ、境内に入るところでほうきから降りたのは早苗の指示だ。

 

 何でも、相手に気づかれて起きてしまっては終わりなので物音をできるだけ立てたくないのだという。

 別にそれはほうきに乗って来ようが、来なかろうが変わらない気がするのだが、それを踏まえたうえでそうした方がいいと早苗が迫ってきたのだ。

 

「それにしても遅いぜ。それとも私が早すぎたのか?」

 

 夜明けまではまだ、時間がある。

 魔理沙は賽銭箱の前に座って休むことにした。

 

「にしても、こんな夜中だからか、少し眠いぜ……」

 

 気づいたら、魔理沙は眠りについていた。

 

 

 

 *

 

 

 

 魔理沙が博麗神社に到着してから約30分後、遅れる形で早苗が到着した。

 

「あれ、魔理沙さんまだ来ていないみたいですね」

 

 そんなことを言いながら、賽銭箱ではなく近くの茂みに隠れた。

 

 彼女の手には、守矢神社の奥で眠っていたビデオカメラがあった。

 もともと、故障して動かなかったのだが、知り合いの河童に頼んで修理してもらったのだ。

 

「あややややや。もしかして、それが噂のビデオカメラってやつですか?」

 

 そんな早苗の横にいて、ビデオカメラを覗き込む少女がいた。白い半そでシャツにフリルのスカート、赤い高下駄をはいているその人物は、本来ならその場にいないはずの烏天狗、射命丸文である。彼女は興味津々といった様子で早苗の手元を覗き込んでいた。

 

「はい。そうですよ。これで魔理沙さんへの逆ドッキリの一部始終を収めます。まぁ霊夢さんに協力を仰ぐのが大変でしたが、それだけに完成度は高いはずです」

「それは楽しみですね。これで、つまらなかったらわざわざ大切なカメラを貸した意味がありませんし」

「えぇ」

 

 もちろん、これをやるうえで魔理沙には、自分がドッキリを仕掛けている側だと思わせるためにいろいろと工夫をした。

 まず、上から見られて、自分たちがいるのがばれてしまったら元も子もないので、適当なことを言って彼女には境内に入る時点でほうきから降りるように強く言っておいた。

 

 霊夢に対しては、何が起ころうが“寝たふり”を続けてくれと頼んである。

 あとは、ビデオカメラを文に託して、魔理沙と一緒に博麗神社に入るだけだ。

 

「それじゃ、私は行きますのでお願いしますね」

「はい。了解しました!」

 

 元気よく敬礼する文に軽く手を振り、茂みを出て歩き出す。

 そもそも、この企画自体、諏訪子が霊夢か魔理沙が死ぬほど驚いているところを見てみたいという何気ない一言で始まっているとはいえ、失敗するわけにはいかない。

 

 しかし、賽銭箱の前まで来た早苗が目撃したのは、先ほどまで魔理沙がそこにいたと物語るようにおかれていた文のカメラのみであった。


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