鴉と黒ウサギが異世界から来るそうですよ!?   作:黒須 紅

8 / 14
ゲスいお坊ちゃまだそうですよ?

 夜になった。ゲーム自体には勝利することができたが、耀が浅くはない怪我を負った。その耀の怪我も治り、後は血が元に戻るのを待つのみとなっているため、大兎は自身の部屋でくつろいでいた。

 

 「つかなんで《古竜(ゲドガルド)》がいたんだろうな、ニャン吉」

 

と、いきなり隣に居る友人に話しかけるような気軽さで言葉を発した。コレは彼が親の転勤により転校の多かった子供時代、イジメられていた彼が孤独に耐え切れず作り出した〝エア友〟で――

 

《わしに聞くに。そもそも今何時だと思ってるにか!もうよい子猫()は寝てる時間だに!》

 

あるはずもなく、彼の使い魔?であるヴィショウブ・エレランカへと話しかけていただけだった。

 

「……はい、すいません」

 

 苦笑しながら猫に謝る青年。実にシュールである。

 すると外からまるで、高速で迫る槍を第三宇宙速度に匹敵する速度で殴り返したさいに摩擦によって空気が破裂したかの様な音が聞こえた。

 

「つか十六夜はなにやってんだ?なんかすげぇ音が聞こえるんだけど」

 

 ちなみに十六夜と断定しているのはやれる人間が十六夜しか居ないからである。なんとなく外の様子が気になった彼は部屋を出ようとする。すると雨も降っていないのに大きな落雷の音がした。

 

「……えーっと。また、面倒事か?」

 

 彼の予想は的中し、大慌ての黒ウサギたちに連れられて〝サウザントアイズ〟の店へと行くことになった。もちろん怪我をしていた耀〝は〟留守番である。

 

「えーっと、月光さん?どうかなされましたか?」

「俺は今、機嫌が悪い。話しかけるな四肢と首を胴体と泣き別れさせられたいかこのクズが」

 

 月光は今から寝始めようとしていたためとてつもなく不機嫌にだったが。

 そうして彼等が〝サウザントアイズ〝を訪ねたとき、そこには店番の女性と白夜叉、そして一人の青年がいた。

 

「うっわ、本物のウサギじゃん!実物始めて見たよ。しかもミニスカにガーターってすげぇエロイな!君ウチのコミュニティに来いよ。三食首輪つきで可愛がるからさぁ」

「黒ウサギの美脚は私たちのものよ!貴方には指一本たりとも触れさせないわ!」

「そうです黒ウサギの脚は、って何を言ってるんですか飛鳥さん!」

 

 黒ウサギの全身を舐めまわすように見る青年の視線をさえぎるように飛鳥が黒ウサギの前に立ち、毅然と言い放つ。内容が内容だけに黒ウサギが何所からともなくハリセンを取り出し飛鳥に突っ込みを入れたが。

 

 「……」

「月光、気持ちは分かるが落ち着け、今やったら大手商業コミュニティを敵に回すから」

 

 月光がとても、それはもう不機嫌な顔で腰の凶剣(スペル・エラー)に手を伸ばすが、大兎に止められる。まぁ自分の眠りをさえぎった理由がこの様な下種な人間であれば仕方がないことなのかもしれないが。

 結局仕切りなおすことになり、客室へと通された。

 

 「僕がペルセウスのリーダー、ルイオスだ。今日は僕になんの用があるのかな?」

 

 そして黒ウサギは今回、ペルセウスの〝所有物〟であるヴァンパイアが〝ノーネーム〟の敷地を荒らしたとして、両コミュニティ同士の決闘で雌雄を決しろとルイオスに要求したが、ルイオスは〝証拠がない〟と一蹴する。

 

「でも、そうだな君が僕の所有物になると言うのならあのヴァンパイアを君たちに渡してもいい。ほら、君は月のウサギなんだろ?」

 

 ルイオスの言葉に激昂した飛鳥はルイオスを〝支配〟しようとしたが、実力が及ばず、逆に彼が振り下ろす鎌の刃に引き裂かれそうになる。しかし、それを隣に居た月光が凶剣(スペル・エラー)で受け止める。

 

「なんなんだよオマエ」

「天才だ。だから俺にキサマのような無能で貧弱で工業廃棄物に劣る価値しかない下等生物が話しかけるな、ゴミが」

 

 月光の言葉を挑発であると認識した彼はさらに鎌を振るおうとするが、十六夜がその鎌を弾き飛ばす――白夜叉に。

 

「おい、おんしワシのような美少女に向かって鎌を……」

「喧嘩売ってるんなら利子つけても買うぜ?もちろんアケイチだけどな」

 

 結局今回は黒ウサギが話を保留にして終わった。

 そして、白夜叉に引き止められた十六夜、大兎、月光の三人は先の客室でくつろいでいた。

 

「さて、おんしらに残ってもらったのはほかでもない、〝ペルセウス〟に決闘を強制させるために必要なギフトゲームの情報を教えておこうと思っての」

「ならさっさと教えろババア、コッチは暇じゃないんだ長くなるなら茶のひとつでも出せ」

「ハッ弱い犬ほどよくほえるってか」

「あ゛ぁ゛?誰が弱いだと負け犬」

「あ゛ぁ゛?テメェ以外居ねぇだろ」

「よし、表に出ろそろそろ上下関係を叩き込んでやる」

「上等だ」

「やめろ馬鹿。それで、どんなゲームなんだ?白夜叉」

 

 呆れたような顔をしている白夜叉に苦笑しながら問う大兎。白夜叉は呆れたような雰囲気のまま情報を口にする。その情報を聞いた彼等は店の外に出る。十六夜はすぐさま教えられた二つのゲームのうちの一つに向かう。

 

「で、どうすんだよ月光」

「ここ二日ほど徹夜続きで早く寝たいんだが」

「どうしたんだよ?」

 

 大兎は続く言葉が分かっているかのような態度で月光に問う。彼の態度に月光は眉を顰めるが、気にせず言葉を続ける。

 

「俺は仲間は裏切らない主義だ」

「じゃあ、しょうがねーな。行くか、って先に行くなっての」

「キサマが遅いだけだ。迅速に行動しろ」

 

 そう言って彼等は月の明かりが照らす道を歩き始めた。




ハーメルンよ、私は帰ってきた!
受験勉強を終え、体調不良に負けず、マシンの不調とスランプを乗り越えました!
待ってくださっていた読者の皆様、ありがとうございます!
次からはもっと早く投稿できるよう精進させてもらいます!

十六夜の台詞のアケイチは仕様です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。