不気味に木々がうごめく森と化した『フォレス・ガロ』の本拠をジン、飛鳥、耀、大兎、月光の五人は歩いていた。ジンが木々を見てポツリと呟く。
「……居ませんね」
かれこれ二十分ほどガルドを探して森を彼等は歩き回っているがガルドの姿は無かった。
「雑魚の分際で俺の手を煩わせるとは何事だ」
「いや、もうホント疲れるから黙ってろよお前」
「ふむ、ミジンコにも劣る脳しか持っていないお前では人様の言葉は理解できんか。さっさと池で魚にでも喰われていろ」
「てめぇホントにぶっ飛ばすぞ?」
胸倉を掴みかかみあい今にも殴り合いを始めそうな二人をスルーして彼等三人はガルドが潜むと思われる館へと歩を進めた。
それを見送った大兎と月光は何もない空間を見つめる。
「……行った?」
「問題なくな。しかしなぜこんな奴がここに居る!」
するとそこから人型の異形が出てきた。
異形、その名が示す通りそれは化け物だった。身長は電柱ほど、全身青黒い肌をしていて、胴体からは数百もの触手が生えている。そして頭にはいくつかの牙が生えた口が幾つもある。
「あいつらも行ったし、暴れても問題ないな」
「今すぐ殺してやるからそこを動くな《
月光の言葉と同時に大兎が駆ける。
《
それに彼等は立った二人で対峙している。
《ソノママキエロソノママキエロ》
月光と大兎の脳に呪いが入ってくる。その呪いを月光は
「祓え、
「拒絶しろ『
月光の胸に
一方の大兎の体は『
両者は足を止めずに
「アレ?オカシイナァ僕の力がキカナイナンテ」
そのまま触手が月光を襲う。触手が月光の体を喰らう、直前に大兎が身を滑り込ませる。右腕を喰われ、左脚を喰われ、脇腹を喰われ、心臓を喰われる。そして大兎は一回死ぬ。すると一瞬で彼の体は修復される。
そして月光は触手を大兎を囮に掻い潜り、その足らしきモノへと
「祓え、
神を、魔を、呪いを、人間を、あらゆるものを呪う魔剣が
「馬鹿が、遅いんだよノロマ」
薄く笑って、後方で右手に炎を宿す大兎を見つめる。
「さっさとやれ、ノロマ」
「こいつうぜええええ!まぁいいやほいっと」
そして彼の右手に宿るあらゆるものを燃やし尽くす貂魔の炎を放つ。それと同時に彼の右半身が蒸発する。しかしその炎は
「あああああ!マジ面倒くせぇな。なんで神種が居るんだよ!」
「〝神〟種だからな。一応神として認められたんじゃないか?」
彼等が倦怠感を体中に滲ませていると大型の獣のような叫びが盛りに響き渡った。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「お?終わったみたいだな。つか、今回俺ら何もしてないよな~」
「ふん、あの程度の雑魚はあいつらのような無能に任せていればいい」
「お前何様だよ」
「俺様だ」
などと言い合って彼等は黒ウサギたちの待つ居住区の入り口へと歩を進めた。
いやー難産だった。何がってガルドに当てたら瞬殺だし、かといって敵も違和感ありすぎるとアレだし。いやまあ古竜も違和感バリバリですが。
今回は七話目にしてやっと『黒』のお披露目です。やりすぎた感もありますが……
報告 四話の大兎のギフトカードに貂魔の炎を追加。