鴉と黒ウサギが異世界から来るそうですよ!?   作:黒須 紅

4 / 14
力試しだそうですよ?

 凍る湖面と雪原、そして太陽が沈む世界に大兎と月光は立っていた。ほかの五人も端のほうで観戦している。

 

「さて、見せてもらおうかの、おんしたちの力を」

 

 彼等の眼前には〝東側最強のフロアマスター〟である和服を着た白髪(はくはつ)の少女――白夜叉だ。

 

「あれー?なんでこんなことになってんだ?」

 

 大兎が心底不思議そうな顔で呟く。先ほどまでは箱庭の詳しい説明を聞いて、こらえ性の無い十六夜、飛鳥、耀の三人が白夜叉の試練に挑戦して、耀がクリア条件を満たして終わったはずなのだ。まぁ耀のギフトが動物の言葉を解するだけでなく、その特性も手に入れるというのも分かったが、今は置いておいてもいいや、などと考えて大兎は臨戦態勢に入る。すると大兎と月光の前にギアスロールが現れる。

 

『ギフトゲーム名〝白夜への挑戦〟

 

 ・プレイヤー一覧 鉄 大兎

          紅 月光

 

 ・クリア条件 ホストに実力を認めさせる又はホストの戦闘不能

 ・敗北条件 降参又はプレイヤーの全滅

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                               〝サウザントアイズ〟印』

 

 最強のフロアマスターに実力を認めさせるなんて、普通であれば顔を真っ青にして震えるのが普通である。流石の月光も冷や汗の1つでも……

 

「〝見せてもらおうか〟だと?冗談はその外見の癖に白髪(しらが)なことだけにしておけよ。貴様ごときがこの俺の力を理解できるわけが無いだろうが」

 

流す訳が無く、逆に挑発を返していた。白夜叉から怒気があふれ出す。その怒気は観戦している十六夜にすら逆に冷や汗流させるほどで、そんな怒気を真正面から受けている大兎は彼等と同じく、いやそれ以上に冷や汗を流す。

 

「お前何様だよ」

「俺様だ」

 

訳も無くのんきに月光に話しかけていた。そう、彼等はこの程度では動じない。なぜなら……

 

「いや、まぁこの程度の圧力なら『黒守』以下だと思うし大丈夫だと思うけどさぁ」

 

大兎の言うとおり、仏門に下り力が下がっている今の白夜叉よりも強い化け物たちと戦っていたからだ。伊達に世界は救っていないという事である。

 

「ゴチャゴチャ言うなさっさとやるぞ」

「しょうがねぇか。お前稲妻使わねぇんだろ?ヘマすんなよ」

「天才であるこの俺がヘマなどするわけが無いだろうが。『(ひっきょむ)』を使わないなんて言っている貴様のほうこそヘマするなよ」

 

 彼等は事前の話し合いで全力を出さないことにしていた。将来『決闘』を挑むことになるかもしれない相手にむやみに手札を見せたく無いというのが1つ。もう1つは単純で、

 

「まぁタイマンならともかく月光と()るなら負けないだろうからねー」

 

そう、単純に全力を出さなくても勝てるからだ。力が減少している中で尚且つ手加減までするという白夜叉よりは彼等は強かった。

 そしてその会話を終えた月光が無言で腰の剣を抜く。その剣は細く、長い剣だった。刃の無い、突くためだけに鍛え上げられた漆黒の刀身。月の(イメージ)が装飾された、シンプルな形状の柄守(カップガード)。それはいわゆる、フェンシングで使う刺突剣(エペ・ラピエル)のような武器だった。しかしエペとも細剣(レイピア)とも違う。そんな特徴的な剣を構えて月光は白夜叉に声をかける。

 

「残り少ない貴重な寿命を無駄に消費させてしまって悪かったな婆。コッチの準備は完了だッ!」

 

 その言葉と同時に月光が剣を持っていないほうの手から札を放つ。魔術が込められたその『呪符』は白夜叉へと迫っていく。白夜叉が左手で払うと同時に札は爆発した。

 

「なっ!」

「俺を忘れるなよ!」

 

 爆発により軽い火傷を負った白夜叉に人間を超えた速度で大兎が迫る。白夜叉は右手に持った扇で大兎の拳打を捌く。だが、剣を持った月光が駆けてくるのを見て顔色を変える。大兎が思っていたよりも重く、速い拳打を放ってくるので実は結構手一杯なのだ。なので、距離をとろうと牽制に大兎の首めがけて扇を振るう。だがそれは悪手だった。

 

「残念、アンタの負けだ」

「何?」

 

 しかし勢いのついた腕はそのまま振り抜かれる。その手にあった扇は大兎の首の皮を切り、頚動脈を断ち切り、肉を削ぎ、骨を真っ二つにして、反対側へ突き抜けた。

 

『え?』

「は?」

「大兎さん!!」

 

 眼球からの情報を理解していない問題児+ジンと、拳打の速さと重さから避けると思った白夜叉の呆けた声が放たれる。そして悲痛な叫びを上げる黒ウサギの声を背に、性質の悪い冗談のように、又は三流の喜劇のようにあっさり大兎の生首が飛んでいく。首を失った体からは致死量を遥かに超える血液が流れ地面に紅い水溜りを作る。そうしてあっさりと彼の人生は終わった。

 

「「ひっ」」

「おいおい、冗談だろ」

 

 リアルな人の死に耀と飛鳥の二人は小さく悲鳴を上げ、十六夜は顔を引きつらせる。そして彼等を横目に月光は白夜叉が見せた隙を突く。呆けている白夜叉にいとも容易く彼の持つ剣が突き刺さる。人ならざるものを相手にするために作られた彼の剣は白夜叉を貫いた後も勢いを保ち、そのまま地面に突き刺さる。そして彼は呪文を紡ぐ。

 

「動きを封じろ凶剣(スペル・エラー)

 

 その一言で白夜叉は指の一本すらも動かすことができなくなる。彼の持つ剣――凶剣(スペル・エラー)が白夜叉の動きを奪ったからだ。そうして月光は白夜叉を見下ろし宣言する。

 

「俺の勝ちだ。さっさと賞品を渡せ」

 

 彼はさっさと凶剣(スペル・エラー)を腰に戻す。そして少しあたりを見渡した後、お目当てのものを見つけた彼はそこに歩を進める。

 

「勝負なんて言っている場合ですか月光さん!大兎さんが……」

「うん?」

 

 慌てふためいている黒ウサギを見て小さく笑いながらお目当てのもの――大兎の生首を胴体に向かって放り投げる。

 

『えええええええええええええええ!?』

 

 白夜叉を含めた全員が驚愕の声をあげるなか大兎の生首は胴体へ向かい飛んでいく。そして、首が無いままの胴体が手を伸ばして自身の生首をキャッチする。そして生首を首の断面にくっつける。ぎゅ!という音が鳴って……

 

「さんきゅー」

『きゃあああああああああああああああ!』

「うわあああああああああああああああ!」

「うぉ!」

 

 あっさり首が繋がった。それで元通り。そこには傷一つ無い大兎の姿があった。

 

「落ち着け愚民共が。このゴキブリよりもしぶといゾンビもどきは十五分間に七回死なないと死ねないだけだ」

「誰がゾンビもどきだテメェ!」

 

 なんていうやり取りを月光たちが始めたときやっと黒ウサギ、十六夜、白夜叉の三人が現実に戻ってくる。

 

「どうゆうことだ白夜叉。十五分間に七回なんて分かりやすい不死者聞いたことねぇぞ」

「白夜叉様、黒ウサギも初耳なのですが何か心当たりはございませんか?」

「残念ながら私も聞いたことが無い。あの小僧……何者だ?」

 

 そこに大兎と月光が歩いてきた。

 

「さっさとギフトカードとやらをよこせ」

「まさか不死者なんて聞いて無いぞ!なんていわないよな?」

 

 言わなくとも大兎の心配するようなことは起きない。猿が鳥に〝空を飛ぶなんてズルイ〟といったところで意味ないのと同じで白夜叉が〝不死者だとは聞いとらんぞ〟などと言っても〝知らなかったほうが悪い〟で済まされるのがギフトゲームであり箱庭なのだから。

 

「あ、あぁほれコレがおんしらのギフトカードじゃ」

 

 白夜叉がそう言った次の瞬間に、大兎と月光の前にギフトカードが現れた。

 

七色に輝く薄桃(ラベンダー)色のカードに 鉄 大兎 《(まじゅつ)》 ヴィショウブ・エレランカ 貂魔の炎 iq3wyr8yszdihasjv

稲妻のようなライト・イエローのカードに 紅月光 凶剣(スペル・エラー)

 

と書かれていた。




うわー大兎のカードの文字化けしてる部分はナンナンダー(棒)
えー書きダメが無いのに一日二話投稿なんて馬鹿なことをした偽善 悪です。
えー白夜叉があんなにあっさり負けたのは手加減していたこと+油断していたこと+大兎があっさり死んだこと、という三つの条件があったからです。
えーではまた次回。

十六夜のカードに最初水樹がなかったようにその場にいないため今は月光のカードには凶剣しか表示されていません

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。