招待状だそうですよ?
月光、十六夜、ジンの三人は書庫で本を読んでいた。ジンは夜通し読んでいたせいで舟をこいでいるが。
「御チビ、紅起きてるか?」
「……くー……」
「この程度なら問題はない」
「御チビは寝ちまったか、まぁ俺のペースに合わせてたんじゃしょうがねぇか」
十六夜とジンの最近の生活は朝から書庫に篭り、夜中までずっと本を読むというものだった。
月光は書類が片付いた時に未知を求めてここに訪れる。
「そろそろ寝るか、ジンも運ばねぇといけねぇしな」
「勝手にしろ俺も部屋にもど「させるか!」る」
いきなり現れた飛鳥が十六夜の頭に飛び膝蹴りを放つ。
「甘い!」
「グボァ!」
が、十六夜はジンを盾にして回避。
「おいおい、お嬢様シャイニングウィザードはヤバイ。御チビが死んだらどうする」
「盾にしたのはあなたじゃない。はい、とりあえずこれを読んで」
十六夜が目を通した手紙には、北側の年の祭りへの招待状があった。
「おらぁ!こんなこと隠してやがったのかあいつら、行くしかねぇなオイ!」
「行くしかねぇな、オイ」
無表情で耀が追従する。
「……はぁ」
めんどくさいことになることを悟った月光はため息をついた。
――――
数時間後、黒ウサギとレティシアは農園に居た。
農園の現状を憂いながら黒ウサギとレティシアが話していると、食料等の買出しに行っていた大兎が歩いてくる。
「ん?どうしたんだレティシア、黒ウサギ」
「主様か、いや農園の現状を話していてな」
「これを作物が育つまでに戻すにはだいぶ時間がかかりそうなのですよ」
「あー、ギフトゲームとかでも難しいのか?」
頬をかきながら大兎が黒ウサギたちに問う。
「まず私たちは〝ノーネーム〟だからな、
「黒ウサギだけなら〝箱庭の貴族〟としての特権でいけるんですが、黒ウサギも長く本拠を離れるわけには行かず……」
このような話を三人がしていると、リリがあわてた様子で走ってくる。
「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁん!た、大変ー!」
リリが渡してきた手紙を読むとそこには、
『黒ウサギへ
北側の四〇〇〇〇〇〇外門・三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。
貴方も必ず来ること。あ、あとレティシアもね。
私たちに祭りのことを意図的に黙っていた罰として今日中に私たちを捕まえられなかった場合
P/S ジン君は道案内として連れて行きます』
「……」
「……」
「あれ?俺と月光も巻き込まれてる?」
「な、何をやっているのですかあの御馬鹿サマたちはああああ!」
黒ウサギが叫ぶ、のを横目にレティシアが大兎に聞く。
「ところで大兎、君はまだしもなぜ月光も巻き込まれたと?」
「ん?いや、俺アイツとの付き合いも大体一年くらいになるし、常人よりは修羅場をくぐってきてるから、月光は絶対いやそうな顔で否定すると思うけど信頼関係はあるんだよ」
「うん」
「アイツって滅茶苦茶傍若無人な性格だろ?でも俺やほかの仲間は自分で望んであいつをリーダーにしてるわけなんだ。何でかわかるか?」
そう、紅 月光という少年は自身の天才性に裏づけされたとても大きな自信を抱えている。その大きすぎる自我をリーダーとして選んだのは大兎を含む彼の仲間たちである。それはなぜか?
「うーん?……いや、わからないな」
「……修羅場、それこそ命のやり取りをする場面だとさ、やっぱり誰かしら怪我とかを負うだろ?そしたらそいつを犠牲にした方がリスクが少ないのはわかるだろ?」
「……あぁ、そうだな」
何かを思い出したのか苦い顔をするレティシア。それにかまわず大兎は話を続ける。
「そりゃ俺みたいに不死者だったり、守ってくれるやつが居るならまだしもそういうのも居ないやつなら自分から「見捨てろ」って言うやつもいるだろ?でもアイツはそんなやつにも、見捨てろと言ってくる上司の奴らにも絶対にこう返すんだよ」
「なんて言うんだ?」
「月光に「何でこのコミュニティから出て行かないんだ?お前の実力なら引く手数多だろう?」とか聞いてみろ、絶対同じように返すから……アイツは絶対に、誰にでも『俺は仲間を見捨てない主義だ』って言うんだよ。そんなやつがこの程度で脱退するわけないだろ?だからそこで聞こえてるっぽい黒ウサギも一度落ち着け」
〝とりあえずは白夜叉のとこに行くか〟そうつぶやいて大兎は黒ウサギに向かって歩き出した。
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