鴉と黒ウサギが異世界から来るそうですよ!?   作:黒須 紅

1 / 14
あぁ、駄ウサギが呼んだようだ
召還されるようですよ?


 私立宮坂高校生徒会室。今この部屋には二人の男子生徒が居た。ポテチを食いながら座っている少年、鉄 大兎(くろがね たいと)と、コーラを飲みながら大兎の前に座っているのがこの生徒会室の主である生徒会長、紅 月光だ。

 日時は十月一日。彼等は三日前に世界を崩壊の危機から救ったりしているのだがこれからの物語には今のところ関係しないので一旦おいておくことにする。まぁそのような大事を終えて若干燃え尽き症候群にかかった二人の前に突然二枚の手紙が落ちてきた。二枚の手紙にはこう書いてある『鉄 大兎殿へ』『紅 月光殿へ』と。

 その手紙を見て、二人は同時に眉を顰める。

 

「なぁ月光」「おい、大兎」

 

 同時に言葉を発したことに対して同時に顔を顰めて、次の言葉を発する。

 

「コレ何?」「コレは何だ」

 

 お互いがソレについて何も知らないことを悟った二人はやはり同時に顔を顰める。

 

「よし、せーのっで開けようぜ」

「なぜオレがオマエのような単細胞生物以下のいう事を聞かなければいけない」

 

 そんな彼の毒舌を華麗にスルーして言葉を続ける。

 

「いくぞ、せーのっ」

 

 大兎は楽しそうに、月光は苦虫を噛み潰したような顔で手紙の封を切る。手紙にはこう書いてあった。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

 我らの〝箱庭〟に来られたし』

 

 二人の視界が次の瞬間一気に開けた。

 

「「はああああああ!?」」

 

 視界の先にある地平線は世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。

 眼下に広がるは巨大な天幕に覆われた都市。

 二人の眼前に会ったのは――完全無欠に異世界だった。

 

「ちっ大兎」

「なんだよ、ってオイ!!」

 

 月光は大兎の体を引き寄せるとその背中の上に座りクッション代わりにしていた。

 

「下僕は下僕らしく俺のクッション代わりになれ」

「テメェ後で殺――」

 

 大兎が言葉を言い切る前に地面に激突した。そしてその数瞬後、隣にある湖に三つほど水柱が出来上がった。

 

「……ふむ」

 

 この解析不能な状況に、とりあえず月光は大兎を起こすことにした。

 

「起きろ奴隷」

「グハッ!!テメェ殺すぞ!!」

 

 鳩尾を全力で蹴り上げて、だが。そして大兎が月光に掴みかかる数秒前に湖から三人の少年少女が起き上がってきた。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり出された挙句、空に放り出すだなんて!」

「右に同じだクソッタレ、一歩間違えればゲームオーバーだぜ。コレなら石の中に呼び出されたほうがまだマシだ」

 

 ヘッドホンをつけた少年と、黒いロングの髪の少女が文句を言っている。もう一人のショートカットの少女は三毛猫の安否を確認している。

 

「……いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

「俺は問題な「ハッ殺してみろ奴隷。下克上なんてものが成功すると思うなよ」い……」

「そう身勝「ハッほざけ」手ね……」

 

 言い合っていた二人が大兎と月光に怒鳴る。

 

「「そこ、五月蝿い!!」」

「「あ゛ぁ゛!?」」

 

 怒鳴られた二人は本職の方も真っ青なメンチを二人にきり、二人の引いた様子を見て落ち着く。

 

「まぁいい、一応確認しとくけどお前らにもあの手紙が?」

「そうだけど……私の名前は久遠 飛鳥(くどう あすか)よ。気をつけて頂戴。そこの猫を抱きかかえたあなたは?」

「……春日部 耀(かすかべ よう)以下同文」

「そう、よろしく春日部さん。野蛮で凶暴そうなあなたは?」

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻 十六夜(さかまき いざよい)です。粗野で凶暴で快楽主義と三拍子そろったダメ人間なので、容量と用法を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

「そう、説明書をくれたら考えておくわ。最後に、さっきまで喧嘩していた貴方達二人は?」

「なぜ、俺が貴様等ごときのために自己紹介なぞしなければならない」

「ちょっと黙ってろよオマエ。えーと、こっちのが紅 月光。ご覧の通り傍若無人を絵に描いたような奴だから、気をつけてくれ。んで、俺が鉄 大兎だ。よろしく」

「そ、そう。よろしくね鉄君」

 

額に青筋を浮かべて大兎に返事をする飛鳥。

楽しそうにケラケラ笑う十六夜。

我関せずを貫く耀と月光。

苦笑いを浮かべる大兎。

 

(うわぁ、問題児ばっかりですねぇ)

 

「まぁいいそこに隠れてる奴にでも聞くか」

「あら、貴方も気づいていたの?」

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?お前らも分かってたんだろ?」

「……風上にたたれたら嫌でもわかる」

「気配も誤魔化して無い奴を見つけられんわけが無いだろうが」

「そもそも耳が隠れて無いしな」

 

そう言って五人全員が隠れている彼女を睨む。

 

「そんなに怖い顔をされては黒ウサギは死んでしまいます。ここは繊細な黒ウサギの心臓に免じて穏便に話を聞いてくれませんか?」

 

その言葉に対する返答は

 

「断る」

「却下よ」

「……お断りします」

「出直してこいクズが」

「ちょっと無理かな」

 

一応補足。上から十六夜、飛鳥、耀、月光、大兎の順番です。

 

「わーい、取り付く島も無いですね!!って言うか四番目の貴方酷すぎじゃ――ぎゃふん」

 

黒ウサギが目尻に涙をためながら顔をあげると、耳の根元を持った耀が居た。

 

「初対面で黒ウサギのステキ耳を引き抜きにかかるとはどういう了見ですか!!」

「好奇心のなせるわざ」

「自由にもほどがあります!」

 

そこに幽鬼のごとく忍び寄る二人。

 

「ほぉ、コレは本物なのか」

「あら、なら私も」

 

黒ウサギの耳を左右から一本ずつ掴む十六夜と飛鳥。

 

「ちょ、ちょっと助けてくださいませ!!」

 

その言葉に見下すような眼で黒ウサギを哂う影1つ。苦笑しつつも干渉する気が無い影1つ。

 

「黒いウサギなんぞ二匹もいるか」

「あーまぁあんな呼びかたしたんだし……自業自得だよな」

 

 藁をも掴む思いで彼等を頼った黒ウサギだったが、残念なことにその願いは届かなかった。

 

「「えい♪」」

 

「きゃああああああああああああ」

 

 黒ウサギの絶叫は近隣に響き渡った。




いつか天魔の黒ウサギ完結おめでとう!!
最終巻は泣ける展開でしたね。そんなわけで完結祝いのクロスオーバーです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。