「「インベスゲームをやめるぅ!?」」
図ってもいないのに声を合わせたのは、チームバロンの№2と3、ザックとペコ。
彼らだけではない。残る4人のメンバーも困惑して顔を見合わせている。
ここ数日、連絡もなく、カーディーラーにも現れなかった戒斗が、帰って来るなりの宣言。ザックでなくとも叫びたくなる。
「アンタまで何言い出すんだよ。鎧武の連中にほだされたのか?」
「奴らの言い分が正しかった。インベスゲームは俺たちを使い捨ての駒にするためのものだった。それが分かっただけだ」
チーム鎧武の言い分は、「インベスゲームはインベスの事件の犯人をビートライダーズに仕立て上げるために流行らされた」という内容だった。
その時は難癖をつけて一蹴したザックたち。だが、まるで予言のように、市民の反感は全て自分たちビートライダーズに向いた。以前にペコがケガをした時など、病院側から治療を断られたくらいだ。
「無関係な連中が俺たちをどう思おうが放っておけばいいじゃねえか」
「そうっすよ。このままゲームやめたら俺らランキング4位で放置なんですよ」
「観る人間がいなくなってしまえば、ランキングそのものが成り立たない」
“ビートライダーズホットライン”はリスナーの投票でランキングを決める。だが今はバッシングのせいで、リスナー投票どころか番組の配信さえ行われていない有様だ。
――“だれも観に来ない『一番』は本当に『一番』なんでしょうか”――
掠めた幻聴を、ザックは頭を振って払った。
だが戒斗はザックの思案を知ってか知らずか、ポケットから小インベス召喚用の低クラスロックシードを、テーブルに放り出した。
「お前らも錠前を出せ」
困惑の空気を一番に読んだザックは、ポケットからあるだけのロックシードをテーブルに落とした。
ザックがやれば3番手のペコも続き。やがてチームバロンの全員がテーブルにロックシードを出し終えた。
「戒斗、どうすんだ、これ」
「錠前ディーラーに叩き返しに行く。そもそもこんな代物があるからビートライダーズはおかしくなったんだ」
劇的、と言ってもいい。戒斗は変わった。いや、戻った、というべきかもしれない。ロックシードがなかった頃の戒斗はこんな男ではなかったか。ザックは一人密かに思い返した。
「……俺たちはあちこちのチームから恨みを買ってる。身を守る術くらい持たせろよ」
「なら各自一つだけ持て。それで充分だろう。もうこんなモノはダンスに使わない」
しなやかな指がロックシードの一つを軽く弾いた。その目の奥には、かつてチームバロンの誰もが認めた鋭利な輝きがあった。
その目のまま、戒斗は、何の前置きもなく、告げた。
「俺はチームを抜ける」
時間軸ではユグドラを脱走して戻った直後です。
本作では物分りがいいと評判?の戒斗。18話で大体自分の分析と違わない性格だと分かったので、18話よりかなり前に書いた小話ですが投稿する決意がつきました。
リトルスターマインとのインベスゲームから、バロンになり、本編とは少し違う道を歩んだ我が家の戒斗の、これが答えです。