少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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番外6 少年少女、前を

 

「この街にまともなオトナはいないのかぁーっ!!」

 

 海に向かって叫ぶ少女に、通りすがりの人々がぎょっとした。

 

 

「……どうどう」

「ごめん、チューやん――でもハラ立つ」

「……わかる」

 

 今日もリトルスターマインは各所のチーム説得のために出かけていた。

 

 今日の相手は、咲らを侮るに留まらず、インベスゲームをやめる代価に金を要求してきたのだ。チューやんが無言で止めなければ咲はブチ切れていた。

 

 コドモだから取り合ってもらえないのは我慢できる。だがインベスゲーム中止について目先の問題しか見ず、あまつさえ金品や女を要求されるのは我慢ならない。

 チーム鎧武が回った時など、舞の身柄を要求されたことがあったという。もちろん「そういう意味で」だ。要求自体は蹴ったが、紘汰が「あんな怖ぇミッチ初めてだった」と言っていた。

 

 着実にインベスゲームの意図を知る人間は増えているのだが、インベスゲームをやめさせるところまでは行けないのが現状だ。インベスゲームをやめたらステージ占有権をどう決めればいい、という意見が大半なのだ。

 

「そもそもステージが東西南北の4つしかないからいけないのよっ。1チームに一つステージがあればナワバリ争いなんてしなくていいのに」

 

 言って、咲は自分の言葉に違和感を覚えた。

 華々しいステージが少ないから奪い合う。条件が狭いから争う。需要に対して足りない供給。

 

(まさかプレイヤーズパスを配ったとこからユグドラシルの手の内だったっていうの……?)

 

 リトルスターマインはフリーステージを使わないからプレイヤーズパスは持っていない。だがもしあれさえもユグドラシル・コーポレーションの発行物なら。

 

(オトナはあたしたちをどこまで踊らせれば気がすむのよ!)

 

 咲は激情に任せて手近な手摺を蹴った。

 脛に当たって、しゃがみ込んだ。

 

「……だいじょうぶか?」

「~~~~っ」

 

 所詮は子供。手摺にさえそう嗤われた気がして、悔し涙が滲んだ。

 

 すると頭に大きな掌の感触。顔を上げると、チューやんが咲を撫でていた。

 

「……ヘキサなら、こうしてくれた」

 

 ヘキサはチューやんの頭を撫でたこともあるのだろう。

 

 平均男子より背が異様に伸びてしまった彼が相手でも、ヘキサは普通の男子として接する。そのネタでからかわれてばかりの彼は、そうしないヘキサを大切に想っている。

 

 モン太も、ナッツも、トモも、それぞれ大小の理由があれど、ヘキサを中心に回っているのは間違いない。

 

 そのヘキサがたった一つ望んだことが、自分たちと共に踊ることだった。

 他のチームを説得して回っているのは、巡り巡ってヘキサのためなのだ。

 

 結論付けた咲は憤然と立ち上がった。

 

「チューやん、次行くよっ」

「……りょーかい」

 

 ヘキサの、咲たちの踊る「時間」を守るため、少年少女は前へ進む。




 タイトルは某プロの曲の歌詞から拝借させていただきました。
 紘汰やミッチが頭を悩ませている間、チビッコたちも頑張ってたんだぞという話。

 最新話でゲスいチームが出た上、戒斗曰く「他のチームはみんなそう」だそうですので、リミッターカットが出回る前からこういうチームもいたんじゃないかと妄想して書いてみました。ミッチは舞のこととなると人が変わりますよねd(^_^)

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