「この街にまともなオトナはいないのかぁーっ!!」
海に向かって叫ぶ少女に、通りすがりの人々がぎょっとした。
「……どうどう」
「ごめん、チューやん――でもハラ立つ」
「……わかる」
今日もリトルスターマインは各所のチーム説得のために出かけていた。
今日の相手は、咲らを侮るに留まらず、インベスゲームをやめる代価に金を要求してきたのだ。チューやんが無言で止めなければ咲はブチ切れていた。
コドモだから取り合ってもらえないのは我慢できる。だがインベスゲーム中止について目先の問題しか見ず、あまつさえ金品や女を要求されるのは我慢ならない。
チーム鎧武が回った時など、舞の身柄を要求されたことがあったという。もちろん「そういう意味で」だ。要求自体は蹴ったが、紘汰が「あんな怖ぇミッチ初めてだった」と言っていた。
着実にインベスゲームの意図を知る人間は増えているのだが、インベスゲームをやめさせるところまでは行けないのが現状だ。インベスゲームをやめたらステージ占有権をどう決めればいい、という意見が大半なのだ。
「そもそもステージが東西南北の4つしかないからいけないのよっ。1チームに一つステージがあればナワバリ争いなんてしなくていいのに」
言って、咲は自分の言葉に違和感を覚えた。
華々しいステージが少ないから奪い合う。条件が狭いから争う。需要に対して足りない供給。
(まさかプレイヤーズパスを配ったとこからユグドラシルの手の内だったっていうの……?)
リトルスターマインはフリーステージを使わないからプレイヤーズパスは持っていない。だがもしあれさえもユグドラシル・コーポレーションの発行物なら。
(オトナはあたしたちをどこまで踊らせれば気がすむのよ!)
咲は激情に任せて手近な手摺を蹴った。
脛に当たって、しゃがみ込んだ。
「……だいじょうぶか?」
「~~~~っ」
所詮は子供。手摺にさえそう嗤われた気がして、悔し涙が滲んだ。
すると頭に大きな掌の感触。顔を上げると、チューやんが咲を撫でていた。
「……ヘキサなら、こうしてくれた」
ヘキサはチューやんの頭を撫でたこともあるのだろう。
平均男子より背が異様に伸びてしまった彼が相手でも、ヘキサは普通の男子として接する。そのネタでからかわれてばかりの彼は、そうしないヘキサを大切に想っている。
モン太も、ナッツも、トモも、それぞれ大小の理由があれど、ヘキサを中心に回っているのは間違いない。
そのヘキサがたった一つ望んだことが、自分たちと共に踊ることだった。
他のチームを説得して回っているのは、巡り巡ってヘキサのためなのだ。
結論付けた咲は憤然と立ち上がった。
「チューやん、次行くよっ」
「……りょーかい」
ヘキサの、咲たちの踊る「時間」を守るため、少年少女は前へ進む。
タイトルは某プロの曲の歌詞から拝借させていただきました。
紘汰やミッチが頭を悩ませている間、チビッコたちも頑張ってたんだぞという話。
最新話でゲスいチームが出た上、戒斗曰く「他のチームはみんなそう」だそうですので、リミッターカットが出回る前からこういうチームもいたんじゃないかと妄想して書いてみました。ミッチは舞のこととなると人が変わりますよねd(^_^)