少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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番外3 変身を練習してみた

 

 とある休日。チームリトルスターマインは野外劇場に集合した。

 

 つい先日、彼らは戦極ドライバーと呼ばれる変身ベルトを手に入れた。その試運転のために集まったのだ。

 

 

「咲、ほんとにいいの?」

「モチロン。さいしょっからそのつもりだったもん」

 

 この期に及んで、とは思わない。いつでも心配してくれるのがヘキサなのだ。

 

「んじゃ、始めよ。ナッツ」

「あいよ。――えーと、まずそのベルトをおなかに当てる」

 

 ナッツがタブレットの映像――主にアーマードライダー鎧武の変身シーンを見つつ指示を出す。

 

「こう? ――わひゃっ」

 

 バックルをへその辺りに当てると、自動でベルトが現れて咲の腰に巻きついた。最初は驚いた咲だが、落ち着くと感心した。

 黒一色だったバックルに、何かの横顔らしきものがイニシャライズされている。

 

「次はー、ロックシードのロックを開ける」

 

 咲はポケットからドラゴンフルーツの錠前を出し、ロックシードのサイドスイッチを押して錠前を開く。

 

《ドラゴンフルーツ!》

 

 空にジッパーが円を描き、上空に巨大なドラゴンフルーツが現れた。

 

「うお! なんか言った上に出てきた」

「……かぶりもの?」

「え!? あたしこれかぶるのぉ!?」

「んでー…と、ベルトのくぼみにロックシードをはめこむ。カギの部分が上っぽい」

 

 不安ながらも、言われた通り楕円の錠を上に向けてバックルに嵌め込んだ。

 

「はめたらぁ……カギを穴にかけて閉める」

「こう?」

 

《ロック・オン!》

 

「またなんか言った上にファンファーレ!」

「……多機能」

「最後。横に付いてるナイフでロックシードを切る。あとはじっと立ってお待ちください」

「き、切れるの、これ? ロックシードって金属じゃ……」

 

 おそるおそるカッティングブレードを握り、倒す。するとオモチャのままごと野菜のように、あっさりと黒い粒々だらけの白い断面があらわになった。

 

《カモン! ドラゴンフルーツアームズ!》

 

「え?」

 

 ぼすん!

 

 予想よりはとても少ない痛みで、巨大なドラゴンフルーツが頭に落ち、咲の視界を塞いだ。

 

「え、ちょ、えー!」

 

《Bomb Voyage!!》

 

 視界が開けるが、それはつい先ほどまでの視界ではなかった。窓ガラスから外を覗いた時にも似た、そこにあるのに隔てられている感覚。

 何より、いつも同じ高さの目線にいる仲間たちを、今は見下ろしている。

 

『え、なに、どうなったの!? 今のあたしどうなってんの!?』

「……写メでよければ」

『見せて!』

 

 チューやんがスマートホンのカメラで咲を撮り、スマートホンを差し出した。

 咲は勢い込んでスマートホンの画像を見た。

 

 唖然、である。

 

 スーパーヒーロータイムに出て来そうな女ヒーローのミニスカ型バトルスーツそのままだ。上半身が鎧のようなデザインで、色が紅色と白のツートンでなければこのまま出演できるだろう。横でちゃっかりピースサインを決めるモン太より頭一つ分は背が高い。

 

『……マジ?』

「咲……かっこいい」

「すげー」

「え!? これかっこいいの!?」

 

 ナッツ全力のツッコミは、キラキラモードのヘキサとモン太には届かない。

 

「なあなあ、他になんか出ねえのか? 武器とか」

『ど、どうだろ』

「きっとあるよ。この際だからとことん試してみましょ。ね?」

 

 

 仲間の夢を壊せなかった咲は、この日の夕暮れまでアームズの機能を彼らに披露し続けることとなった。




 だからバロン戦で思い切って戦えたんだよというお話。

 主人公の紘汰でさえ初変身であれだけ動揺したのですから、もっと幼い咲はすごく気が動転したでしょう。よかったね、実践中に初変身じゃなくて(←作者のくせに何をry

 ヘキサとモン太は……このくらいの歳ならまだスーパーヒーロータイムのお世話になっているはず。というかみんななっているのですが文字数のポリシーで残る二人が書けず無念です(T_T)

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