とある休日。チームリトルスターマインは野外劇場に集合した。
つい先日、彼らは戦極ドライバーと呼ばれる変身ベルトを手に入れた。その試運転のために集まったのだ。
「咲、ほんとにいいの?」
「モチロン。さいしょっからそのつもりだったもん」
この期に及んで、とは思わない。いつでも心配してくれるのがヘキサなのだ。
「んじゃ、始めよ。ナッツ」
「あいよ。――えーと、まずそのベルトをおなかに当てる」
ナッツがタブレットの映像――主にアーマードライダー鎧武の変身シーンを見つつ指示を出す。
「こう? ――わひゃっ」
バックルをへその辺りに当てると、自動でベルトが現れて咲の腰に巻きついた。最初は驚いた咲だが、落ち着くと感心した。
黒一色だったバックルに、何かの横顔らしきものがイニシャライズされている。
「次はー、ロックシードのロックを開ける」
咲はポケットからドラゴンフルーツの錠前を出し、ロックシードのサイドスイッチを押して錠前を開く。
《ドラゴンフルーツ!》
空にジッパーが円を描き、上空に巨大なドラゴンフルーツが現れた。
「うお! なんか言った上に出てきた」
「……かぶりもの?」
「え!? あたしこれかぶるのぉ!?」
「んでー…と、ベルトのくぼみにロックシードをはめこむ。カギの部分が上っぽい」
不安ながらも、言われた通り楕円の錠を上に向けてバックルに嵌め込んだ。
「はめたらぁ……カギを穴にかけて閉める」
「こう?」
《ロック・オン!》
「またなんか言った上にファンファーレ!」
「……多機能」
「最後。横に付いてるナイフでロックシードを切る。あとはじっと立ってお待ちください」
「き、切れるの、これ? ロックシードって金属じゃ……」
おそるおそるカッティングブレードを握り、倒す。するとオモチャのままごと野菜のように、あっさりと黒い粒々だらけの白い断面があらわになった。
《カモン! ドラゴンフルーツアームズ!》
「え?」
ぼすん!
予想よりはとても少ない痛みで、巨大なドラゴンフルーツが頭に落ち、咲の視界を塞いだ。
「え、ちょ、えー!」
《Bomb Voyage!!》
視界が開けるが、それはつい先ほどまでの視界ではなかった。窓ガラスから外を覗いた時にも似た、そこにあるのに隔てられている感覚。
何より、いつも同じ高さの目線にいる仲間たちを、今は見下ろしている。
『え、なに、どうなったの!? 今のあたしどうなってんの!?』
「……写メでよければ」
『見せて!』
チューやんがスマートホンのカメラで咲を撮り、スマートホンを差し出した。
咲は勢い込んでスマートホンの画像を見た。
唖然、である。
スーパーヒーロータイムに出て来そうな女ヒーローのミニスカ型バトルスーツそのままだ。上半身が鎧のようなデザインで、色が紅色と白のツートンでなければこのまま出演できるだろう。横でちゃっかりピースサインを決めるモン太より頭一つ分は背が高い。
『……マジ?』
「咲……かっこいい」
「すげー」
「え!? これかっこいいの!?」
ナッツ全力のツッコミは、キラキラモードのヘキサとモン太には届かない。
「なあなあ、他になんか出ねえのか? 武器とか」
『ど、どうだろ』
「きっとあるよ。この際だからとことん試してみましょ。ね?」
仲間の夢を壊せなかった咲は、この日の夕暮れまでアームズの機能を彼らに披露し続けることとなった。
だからバロン戦で思い切って戦えたんだよというお話。
主人公の紘汰でさえ初変身であれだけ動揺したのですから、もっと幼い咲はすごく気が動転したでしょう。よかったね、実践中に初変身じゃなくて(←作者のくせに何をry
ヘキサとモン太は……このくらいの歳ならまだスーパーヒーロータイムのお世話になっているはず。というかみんななっているのですが文字数のポリシーで残る二人が書けず無念です(T_T)