少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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番外2 彼らには奪えなかったもの

 

 

 駆紋戒斗の機嫌がすこぶる悪い。

 チームバロン№2であるザックはリーダーが発する威圧感を背中にひしひしと感じていた。

 

(それもこれもみんなあのクソガキどものせいだ)

 

 

 数時間前。チームバロンはあるチームからステージを奪いに行った。

 

 リトルスターマイン。最近現れた、小学5年生6人だけで構成されたキッズダンスチームだ。

 

 そんなコドモのお遊び同然の集団が、“ビートライダーズホットライン”でランクインしていないにも関わらず放送された。

 戒斗の主義は「弱者は然るべき所に収まっているべし」。ただ物珍しさだけで話題になった上に、強いわけでもないのにビートライダーズと呼ばれた。戒斗にはそれが許せなかったのだ。

 

 だからわざわざロックシードを相手に渡してまで潰そうとしたのに。

 

 そこで高い音が響いた。ふり返る。戒斗が乱暴にイスを立った音だったらしい。

 

「どこ行くんだよ」

「――風に当たってくるだけだ」

 

 戒斗は階段を登って白いディーラーを出て行った。吹き抜けの天井に長く足音が反響した。

 

 ザックと、同じテーブルに座っていたペコが、重ねて長く息をついた。――ようやくあのプレッシャーから解放された。

 

 

 

「あーあ。もー今日最悪だー」

 

 ペコがテーブルに突っ伏した。

 気持ちは分かる。チームバロンは負けたのだ。たかが小学生の仲良しこよしグループに。

 

「何回も言うな。気分悪ぃ」

「けーどさー、ザックぅ、俺らいつも通りやったのに」

 

 スリングショットで敵チームのロックシードを、持ち主の手から弾き飛ばす。

 ザックとしては、卑怯と言わば言え、の精神だ。戒斗の意思に反していても、彼は彼なりにチームを守りたい。

 

 だが今日はそのスリングショットが失敗した。

 

 ペコが狙いを外したわけではない。ターゲットの少女と少年が、()()()()()()()()()()()()()()()()()錠前を握りしめていたからだ。

 

「錠前ってさあ、正直大の男の俺らの手よりデカイよなあ――」

「ああ。だから戒斗みたいに指に通しとくか、掌全体で1コ持つか。あのガキどもの手なんて滑り落ちそうなくらいに見えたのに――」

 

 ザックとペコは同時に黙した。

 

(特に女のガキのほう。チビのくせに、とんでもねえ目で睨んできやがった)

 

 もはやあれは執念の形相だった。

 渡さない、奪わせない、と。

 ステージ以上の何かを守り通そうとする貌は、立派にビートライダーズのものだった。

 

 ――と言えば戒斗がさらに怒るので言わないが。

 

 せめてもの救いは、リトルスターマインがランク外のチームだったためランキングが変動しなかったということくらいだ。

 

(ごっこ遊びが許せなくて潰しに行ったのに、ごっこ遊びだってとこに救われてる辺り、皮肉過ぎんだろ俺ら)

 

 ザックはイスにもたれて上を仰いだ。視線の先の階段から帰ってくる戒斗が、その時には気を静めてくれていることを、今は祈るばかりである。




 チームバロンがリトスタに負けて帰った直後のお話。
 パチンコが当たってもロックシードを手放さないくらいに咲もチューやんも緊張・興奮状態だったのです。自分たちのたった一つの居場所を守るために。ゲーム後、彼らの手にはロックシードを握った痕が残っていたんです。

 ザックさんは苦労性な気がします。不機嫌な戒斗にもビクつくより「やれやれ」と思っていそうな気がします。むしろビクつくのはペコの役w

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