少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

72 / 85
第72話 参戦! アーマードライダーナックル

 

 

「――踊ろう」

 

 やがて掠れた声で、けれどはっきりと、舞が言った。

 

「あの人の、言う通りだよ。お客さんが、一人でもいるなら、踊ろう。みんなで、みんなでビートライダーズの、意地を、意地を見せようっ」

「やりましょう」

 

 光実も舞に続く。

 

「ここで踊らなきゃ、一生後悔する!」

 

 舞と光実の言葉に、次々と続く言葉が上がる。

 

 咲が講師を見ると、講師は今度、優しい満面の笑みを返した。

 そうだった。アマチュアであろうがごっこ遊びであろうが恥じることなど何もなかったのに。邪魔されようが、やめる道理などなかったのに。

 

「咲」

「ヘキサ……」

「踊りましょ。いつもどおりに。センセーが教えてくれたとおりに」

「――、うん」

 

 ヘキサが差し出した手。咲は拳を解いて、ヘキサの手を握り返した。

 

 

「ぐぬぬっ……ならしかたないわね!」

 

 凰蓮が手を叩いた。するとクラックが開き、インベスが3体召喚される。観客や野次馬から悲鳴が上がった。

 

「皆さーん! またビートライダーズがアブナイ怪物を出しましたよ~」

 

(何てヤツ! ビートライダーズが怪物を出すからやっつけに来たんじゃなかったの!? 自分でインベス出して、あたしたちのせいにして、めちゃくちゃだこいつ!)

 

 咲はヘキサを見返した。ヘキサは肯く。咲はドライバーを出しながら即席ステージを飛び降り、紘汰の横に並んだ。

 紘汰は、咲の行動を受け容れた。

 

「センセーは離れててっ。――これ以上はあたしたちがゆるさない」

「ああ。邪魔させるか。ここは俺たちのステージだ!」

「「変身!!」」

 

《 オレンジアームズ  花道・オン・ステージ 》

《 ドラゴンフルーツアームズ  Bomb Voyage 》

 

 紘汰は鎧武に、咲は月花にそれぞれ同時に変身し、即席ステージに上がったインベスに挑んだ。

 

『そこは俺たちのステージだって――!』

『――言ってるでしょーが!』

 

 二人で息を合わせてインベスを即席ステージから蹴り落とす。そして、次々と増えるインベスと、さらにはブラーボに変身した凰蓮との乱戦にもつれ込んでいく。

 

「紘汰さん、僕もいきますっ」

『ここは俺たちに任せろ!』

 

「――待ってくれ!!」

 

 それはこの場面で上がるはずがない人物からの声だった。

 

「ザック、まさかっ」

「今ここは鎧武だけのステージじゃない。リトルスターマインだけのステージでもない。お前たちだけに戦わせない!!」

 

 ザックが取り出したのは、量産型の戦極ドライバー。

 月花は驚く。――あれは戒斗がユグドラシルから脱走する時に持ち出したものだ。

 

 ザックは力強くベルトを装着してから、クルミの錠前を開錠し、バックルにセットした。腕は下から上へ。カッティングブレードが叩き落とされる。

 

「変身ッ!!」

 

《 クルミアームズ  Mister Knuckle-man 》

 

 クラックが開き、クルミの形をしたアームズが落ちて、ザックを装甲した。巨大な拳を携えた、クルミ色のアーマードライダーがそこにいた。

 

『俺はチームバロンのリーダー、ザック――アーマードライダーナックルだ!!』

 

 その名乗りは、月花や鎧武、他のビートライダーズが一瞬戦いを忘れるほど、雄々しく、猛々しかった。

 

 

 性懲りもなく即席ステージに上がったインベスを、ナックルは巨大な拳で殴りつける。ラッシュ、アッパー、そしてストレートパンチが決まる。インベスが爆散した。

 

『インベスは任せてくれ!』

 

 クルミをモチーフとした拳は次々とインベスを殴りつけ、粉砕する。

 ナックルの勇姿は、月花を、そして鎧武を勢いづけるには充分だった。




 もはやこの回でザックより他に語ることなし。
 白状すると見た目がアレなんで最初は作者「えー?」と思っていたんですよ。でもザックの変身タイミングと決意のリーダー宣言を観たら、自分もうだめでした。オチました。はい。カッコイイよザック! 彼の変身シーンだけ何度もリピートしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。