少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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第69話 DJサガラの援護

 

 

「舞」

「――」

「まーいっ」

「……ねえ紘汰。ほんとなのかな。戒斗がバロンやめたって」

 

 舞は路上でぴたりと立ち止まった。後ろで紘汰も立ち止まる気配。

 

「バロンの連中がそんな嘘言う必要はないから、マジなんだろうな」

 

 チームバロンの戒斗とは踊れないと他のチームが言うから、舞は戒斗を説得しに行った。

 だが、白いカーディーラーに戒斗はいなかった。

 やめたのだ、とザックとペコから聞かされた。さらにはペコから、合同ダンスイベントにチームバロンも参加させてくれと逆に頼まれた。

 

「紘汰、知ってたの」

「知らなかったよ。でももしかしてやるかも、とは思ってた」

 

 舞は俯いたまま両手を握りしめる。

 

(もしかすると戒斗、自分が合同イベントの邪魔になると思ったからやめたんじゃ……だったら、どうしよう。あたしのしたことが、戒斗からダンスを奪ったんだとしたら――)

 

「あんま重く考えんなよ」

「紘汰……」

「あいつのことだから、舞が思うような殊勝な理由でやめたとは限らないって。とにかく、チームバロンが参加するんだ。これでもう一度みんなを説得しに――」

「紘汰さん! 舞さん!」

 

 目の前の角から光実が飛び出して来た。しかも何やら興奮した様子で。

 

「どうしたの、ミッチ」

「これ、見てください」

 

 光実が差し出したのは彼のスマートホン。正確にはその画面だ。

 

《ハロー、沢芽シティ! 帰って来たぜ、DJサガラが! 今日一発目のニュースは~、なななななあんと! ビートライダーズオールスターステージの開催のお知らせだ!》

 

 DJサガラの映像を観たとたん、紘汰は険しく眉根を寄せた。最近増えた、舞の知らない、舞が遠く感じる紘汰の姿。

 

《さながら戦国時代のように暴れまくってたビートライダーズだが、彼らは抗争終了を宣言し、近々全チーム合同でダンスイベントを開催するそうだ。これを見逃す手はないだろう?》

 

 舞は紘汰や光実と顔を見合わせた。確かに“ビートライダーズホットライン”は情報配信番組だが、いつのまに合同イベントの情報が彼に入ったのか。

 

《実はこの合同ダンスイベント、過去に例がなかったわけじゃないんだぜ? まずはこの映像を観てくれ。チェケラ!》

 

 舞は目を見開いた。流れたのは、チーム鎧武とチームリトルスターマインのコラボレーション・ステージの映像だったのだ。

 映像は、凰蓮が介入する直前までの分が流れて、閉じた。

 

《なかなかビートに乗ったライダーズだろう? この時こそたった2チームでの開催だったが、今度のステージはスケールが違うぜ! 何せビートライダーズのトップランカーが大集結だ。どうだい? そんな世紀のビッグショーを観てみたくはないか?》

 

 画面にリアルタイムでのコメントが流れる。「すげえ」「きれい」「かっけー」――

 

 もうぼんやりとしか思い出せない。自分たちより一回り小さな少年少女との共演。

 合同ステージは凰蓮の介入でうやむやとなり、咲が泣いてしまったりと、大変だったことばかりが記憶に先行していた。

 

 それが、ビートライダーズが一番苦しい時に、舞を助けてくれた。涙が出そうだ。

 

「舞っ」

「舞さん」

 

 味方が誰もいない、独りぼっちの戦いだと思っていた。けれども違った。

 味方は過去の自分たち自身。つまり、足跡(そくせき)。歩んだ道が間違いでなかったという確信が、舞たちの強力な味方。

 

「~~っあたし! もっかい声かけ行ってくる!」

「僕もお供しますっ」

「じゃあ俺は別のチーム回ってみるな!」

 

 舞は今までとは打って変わった明るい足取りと表情で、走り出した。




 舞は実は戒斗がやめたことにショックを受けたんだよって話。

 ユグドラシルで言ったようにビートライダーズ、正確には紘汰を支援してくれたサガラでした。拙作ではせっかくコラボ回を書いたので使わない手はない! と思ってここで投入しました。
 自分がやったことが正しいと確信できれば、人間怖いものなしです。面映ゆい言い方をするなら、「あなたのしたことは間違いなんかじゃなかったんだよ」って言ってもらえたようなものですから。

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