少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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第55話 脱出② ドライバー奪還

 

 

 咲たちはビルを出る前に戦極凌馬のオフィスへ向かった。目的は自分たちの戦極ドライバーを取り戻すこと。

 

 幸いにもオフィスには凌馬も湊もいなかった。

 自分のドライバーとロックシードを取る紘汰と戒斗に倣い、咲もドライバー、そしてドラゴンフルーツとヒマワリの錠前を取り返した。

 

「おい。お前、どうしてDクラスの錠前を持っている。インベス用か?」

「べつに。ただ、なんとなく、いつか使えたらなって思っただけ」

 

 数あるロックシードの中で、これ一つだけが実をつけない花の種。自分の名前が「咲」だからか、花であるこのロックシードに親近感を持っていた。

 

(光にまっすぐ向かう花。ロックシードの中では確かに最低ランク。でも、小学生のあたしたちでさえビートライダーズになれたんだもん。いつかこれだって咲くかもしれないから)

 

 けたたましい警告音が鳴り響いた。咲は思案をやめて顔を上げた。

 

「バレた!?」

「急ぐぞ!」

「でも今の画像、裕也が…!」

「仕方ないです! 行きましょう!」

 

 戒斗が走り出し、光実が紘汰を乱暴に引っ張って行った。

 咲は慌てて彼ら殿(しんがり)につく形で、オフィスを脱出しようとした。

 

 

「  本当にそれでいいの?  」

 

 

 言葉のはずなのに、それはまるで上質な鉄琴の音のように咲の鼓膜を震わせた。

 ふり返る。白い裳裾をなびかせて、一人の女が咲の後ろに立っていた。

 

「え……舞、さん? 何で舞さんがここに――」

 

 

「  あなたは今  運命を選ぼうとしている  」

 

 

 黒と赤のオッドアイが、ひた、と咲を見据える。

 

 

「  その花を咲かせてしまえば  もう二度と後戻りはできない  」

 

 

 花を咲かせる。咲はとっさにヒマワリの錠前を見下ろした。これを、咲かせる?

 

「――それでもあたしは、帰るって決めたんだ」

 

 どれだけ闘争の巷に踏み込もうと、血に汚れようと。仲間の下へ帰るために戦うと決めたのだ。

 その道のりの中でこのロックシードを使わねば戦えない時が来たなら、咲は迷わずヒマワリロックシードをバックルにセットするだろう。

 

 その想いを伝えようと顔を上げた時、――白い女はすでにいなかった。

 

(な……んだったの、今の。幻覚? はくちゅうむ、ってやつ? 舞さんがこんなとこにいるわけないし。でもあんなそっくりで、てか同じ顔で)

 

「おいガキ! 早くしろ!」

「ご、ごめんなさいっ」

 

 考えは一度捨てて、咲は先に行った彼らを追って走り出した。

 

 

 

 

 

 咲たちはエレベーターで降りられるだけの階数を降り、タワー地下のどこかの廊下を走っていた。

 

 初瀬の時と同じで、紘汰たちと咲では歩幅に差がありすぎる。だがそんなことを言っている場合ではない。

 咲はぜいぜい息を鳴らしながら紘汰らと離れまいと走り続けた。

 

「地下にヘルヘイムに繋がるクラックがあります。一旦そこから脱け出してロックビークルを使いましょう」

「分かっ……おわ!?」

 

 咲たちの行く手を阻んだのは、前後からやってきた黒影トルーパー部隊だった。




 咲がついに謎の少女とファーストコンタクトです!
 さまざまな分岐点で現れた彼女は、咲にとっての分岐点でも現れます。
 まだドラゴンフルーツは序の口。ヒマワリロックシードこそ実は本命だと言わんばかりに。
 さあこれから咲の「変身」はどうなってしまうのでしょう。そして彼女たちは無事にユグドラシル・タワーを脱出できるのか。
 待て次回!(>_<)

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