少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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第53話 一人はみんなのために

 

 

「インベスゲームをやめるって?」

 

 声を上げたのは、チームバロンの№2、ザックだ。

 

「そう。前から言ってるでしょ。わたしたちがロックシードを使ったら、街の人たちは怯える一方よ。誰もステージに来てくれなくなる。あのインベスがわたしたちと無関係だって証明しなきゃ」

 

 リーダーの裕也はいない。頼みの綱である紘汰も光実もガレージに来なくなった。世間の風評は酷くなる一方だ。

 だから舞なりに必死で考えて、彼らがいない今、自分でもできることをしようと、こうしてトップランカーに集合をかけたのだ。

 

 バロンからはザックとペコ。インヴィットは城之内に近しい女子二人。レイドワイルドは初瀬に近しい男二人。リトルスターマインは全員で。この会合に集まった。

 

 なのに――

 

「そういう綺麗事言えるのってさあ、やっぱりランキング首位の余裕ってわけ?」

 

 インヴィットの女子には考えてもいなかった部分を穿たれ。

 

「大体さあ、この会合、リーダー一人も来てねえじゃん。何でリーダーでもない奴が仕切るような真似してんだよ」

 

 ペコからはできれば省みずにいたかった現実を突きつけられ。

 決裂の空気が色濃く流れ始める。舞は俯き、諦めかけた。

 ――だが。

 

「さっきから聞いてりゃ、ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。オトナのくせにあたしらより、あったま悪っ」

 

 立ち上がったのは、リトルスターマインのナッツだ。

 

「そもそも。リーダーいなきゃ、あんたたち何も決められないの?」

「……ガキのおれたちよりガキ」

「何のための№2なんだか」

 

 リーダー不在発言の主、ペコがむっとした色を呈した。

 

「リーダーいないんならさ、むしろリーダーが帰ってきた時のために、ちょっとでも踊りやすいステージ用意してやりてえもんじゃねえの。そのためにインベスゲームやめなきゃいけないんなら、おれらはやめるよ」

 

 モン太が舞を見上げて、ぽんと腕を叩いた。

 

「だいじょーぶだって、舞ねーさん。おれたち、最初のカイトとのバトル以来、インベスゲームしてねえもん」

「え、そうなの?」

 

 そういえばチームバロンに勝ったはずなのに、リトルスターマインは相変らずランキング外扱いされていた。

 

 ――舞たちの拠り所でもあった“ビートライダーズホットライン”も今となっては放送されなくなったので、もうランキングがどうだの言えなくなったが。

 それでも他のチームがランキングに固執するのは、いずれまた何もなかった日常に戻れると、どこかで信じじているからか。

 

「うん。もともと、おれらがステージにしてるとこってあんま目立たないし、人来ねえし」

「……来るのは近くの小学生とか、もっと小さい子だけ」

「つまりそれってランキングも場所取りも関係ないからどうでもいいってことじゃん」

「ことじゃん」

 

 またインヴィットの女子二人がイヤな穿ち方をしてきたが、これにもヘキサが平然と答える。

 

「場所取りの勝負なら、あれ以来よく、いどまれましたよ?」

「こいつらに勝って有名になってからしばらくは、うるさかったわね。ダンスのウデでバトってたの」

 

 こいつら、とナッツはザックとペコを親指で差した。

 

「ダンス?」

「うん。その場でダンスして、拍手多かったほうの勝ちって。なー」

「「ねー」」

 

 カルチャーショック。まさに舞を襲った感覚はそれだった。舞だけでなく、ザックやペコ、他2チームのメンバーもまじまじと子供たちに注目した。

 

 ビートライダーズはそもそもストリートダンサーが徒党を組んだものだ。ここ数ヶ月でインベスゲームにライダーバトルと新しい様式が次々出てきたから忘れていたが、舞たちは本来ダンサーだ。ダンスで戦うのはしごく真っ当だ。

 

(あたしたち、今まで何やってたんだろ……)

 

 インベスゲームで勝つこと、アーマードライダーとなった紘汰と光実に勝ってもらうこと、いつしかそれらが舞の中で当たり前になっていたことに、舞はようやく気づいた。

 

「ねえ、チームバロンさん」

 

 ヘキサがザックとペコの前に回り込んで彼らを見上げた。

 

「ずっと上を目指すバロンの人たちのシセイ、とてもステキだって思います。でも、だれも観に来ない『一番』は本当に『一番』なんでしょうか?」

 

 言うだけ言って、ヘキサは輪の中心に戻ってきた。

 

「じゃあ何だよっ。お前らリーダー無視してチームの方針決めんのかよ!」

「それがわたしたちのチームのため、わたしたちビートライダーズみんなのためになることなら、リーダーは帰ってきても絶対反対しません。わたしたちが咲を信じるように、咲もわたしたちを信じてくれてますから。信じてもらえたわたしたちは、よいよいと思える判断をみんなで下しただけです」

 

 誰もが呆気にとられる中、ヘキサを中心に、リトルスターマインの全員が力強く笑んだ。




 これタイトル逆じゃね? と思われた方もおられるでしょうが、いいんですこれで。
 今は咲も戒斗も紘汰も、ユグドラシルに囚われて一人一人が奮闘し自問自答しています。紘汰は街を守るため、咲は日常を維持するため、巡り巡ってみんなのために頑張っています。なのでこのタイトルにしました。

 今回は「カッコイイ子供たち」を目指して書きました。ちょっとでもリトスタをカッコイイと思ってくだされば書き手としては大成功です(*^_^*)
 

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