少年少女の戦極時代   作:あんだるしあ(活動終了)

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第25話 泣き虫咲

 

 

《スイカアームズ! 大玉・ビッグ・バン!》

 

 大玉スイカは無人の客席を縦横無尽に転がり、全てのインベスを噴き飛ばし爆散させた。それどころか、受け止めようと飛び込んだブラーボさえ吹き飛ばした。

 

 月花も龍玄もチームのメンバーも、ぽかーんとそれを見ているしかなかった。あまりに圧倒的で、反則級だ。

 

 ひょこ、とスイカの頭頂部から鎧武が頭を出した。

 

『すげえぞ、ミッチ! こいつは使えるぜ』

 

 チーム鎧武もリトルスターマインも揃って快哉を上げた。笑顔で手を打ち鳴らした。

 

 

 ――喜びの中にあって、誰も気づかなかった。一体だけ難を逃れたインベスがいて、落ちたロックシードを食べて巨大なイノシシ型インベスに成長したことに。

 

 

 一番に気づいたのは龍玄だった。

 

『――やばい!』

 

 龍玄は即座に巨大なイノシシインベスの前に出てブドウ龍砲を連発した。そこをすかさず、スイカを鎧った鎧武が押さえにかかる。

 

 スイカ鎧武の猛攻に、イノシシインベスが逃げ出した。

 

 鎧武がスイカになって転がり、龍玄はロックビークルに乗ってそれぞれインベスを追って行った。さらにブラーボが去った。

 

 ロックビークルのない月花に追うことはできない。月花は錠前を閉じて変身を解除した。

 

 

 

 

 

『咲!!』

 

 駆け寄って来たのはリトルスターマインのメンバー。

 その中で、ヘキサの顔を見た咲は、今まで堪えてきた想いを溢れさせていた。

 

「…めん…」

「咲?」

「ごめん…ごめんねぇ、ヘキサ…っ、はじ、はじめ、て…お兄さ、と…ぶ、ぶた…い! まも、れ、まもれ、なくて…!」

「あ……」

 

 ヘキサや仲間も、咲が言う所に気づいて、気まずい表情をした。それが咲の涙腺をさらに刺激した。

 

「ごめっ、ごめんなさ…うぇーーーん!!」

 

 咲はその場に座り込んで泣いた。泣きじゃくった。

 

 ヘキサを喜ばせたくて、ヘキサの思い出を増やしたくて設けたコラボレーション・ステージだった。それなのにこんな形で潰れてしまい、その潰した相手に自分では敵わず。

 結局、咲には何もできなかった。瑕になる思い出を作ってしまっただけ。

 

 咲が泣いていると、ふわりと温かい感触が包んだ。

 

「あいかわらず咲は泣き虫ね」

 

 ヘキサが咲を抱き締めてくれていたのだ。

 

「…ご、めん…うぅっ」

「いいよ。そんな咲だから、わたしもみんなも咲が大好きなんだもん」

 

 ヘキサの手が優しく咲の髪を撫でる。きっと泣きたいのはヘキサのほうなのに。

 

「だいじょうぶ。ちゃんとわかってるから。咲がわたしのためにがんばってくれたこと。咲、大好きよ」

「ヘキ、サぁ…う、ぇ…!」

 

 紘汰と光実が帰るまで、細く小さく、咲は泣き続けた。




 実は泣きやすい子なんですよって話。しかも友達のことで泣くんですよ。その辺を分かってるので仲間たちは認めてて咲が好きなんですよ。
 ブラーボ編なのにギャグで終わらなくてすみません<(_ _)> 大人にとって大したことなくても子供にとっては大事なことがあって、それを壊されたら怒るし泣くんだという気持ちが伝わっていれば書き手としては幸いです。

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