その灰は勇者か? それとも……   作:人間性の双子

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どくけしそう

一部の猛毒を除いて解毒出来る薬効を持つ植物。
噛むと独特の苦みがあり、その一口だけでも弱い毒なら治してしまう。
やくそうと揃って用いる事で回復呪文と解毒呪文の併用よりも高い効果を発揮するらしいが、今や知る者はない。

悟りを開いた真に賢き者だけがそれを知る事があると言われているが……。


穏やかな時間の後で

「どうだろうか?」

 

 あの思い出したくもない時間が終わり、目覚めた私はステラやフォンと共に朝食を食べ、装備を整えるべく店へ来ていた。

 そしてあの最後の戦いの甲斐もあり、遂に私は”どうのつるぎ”と”かわのよろい”という勇者らしく見える格好になる事が出来た。

 

「うん、似合ってるわ。やっぱり勇者って言えば剣よね」

「はい。勇者様はどうですか?」

「それは、動いてみなければ何とも言えないな」

 

 装備した感じでは問題ないように思える。だが、あくまでも装備した時点で、だ。これで戦闘や行動をしてみなければ何とも言えないのが本音である。

 

「そう言うと思った。なら、アリアハンへの道中で確かめて」

「いきなり実戦は困るのだが……」

「なら、村のすぐ外で軽く動いてみるのはどうでしょう?」

「いや、出来れば村の中で確認を……」

「「出来るだけ早く村を発とうと言ったのは勇者(様)じゃない(ですか)」」

 

 揃って笑顔を向けてくる二人に、私は何も言えなくなる。そう、実は今、二人は怒っているようなのだ。それも、そうした原因は私にある。

 

 話は朝食時まで遡る。宿の一室で朝食を取りながら今日の事を相談していた時の事だ。

 

「そういえば、仲間をもう一人加えるとして、男性がいいか女性がいいか希望はあるだろうか?」

 

 今にして思えば、私がそう問いかけた事が全ての始まりだった。

 そう告げると、フォンとステラはまさかそんな事を聞かれると思っていなかったらしく、揃って虚を突かれたような表情を見せたのだ。

 

「いや、二人は女性だろう。故に男性であれば、色々と気にする事も増えるかもしれないと思ったのだ」

「ああ、そういう事ですか。ご心配なく。もし下心を持つ方ならばそれ相応の対応をさせていただくまでですので」

「あたしも。にしても、言われて思い出したわ。男の魔法使いは基本老人が多いのよ。若いのもいるけど、どうしても即戦力となると……」

 

 そう言って苦い顔をするフォン。老人、か。それは確かに不安要素だ。いくら後方から魔術を使うにしても、いざと言う時は自分で身を守らなければならない。

 例えば、昨日の最後の戦いなら、ステラだったから逃げて囮になってもらう事が出来たが、あれが老人であればそれは難しいのだ。

 

 若者であれば体力面で問題はなさそうだが、逆に魔術の方が未熟という事か。

 

「呪文の威力はかしこさに比例しますからね。どうしても魔法使いは年齢を重ねた方が重用される傾向ですし」

「そうなのか?」

「そうよ。王家に仕える宮廷魔導師なんて、ほとんどお爺さんなんだから」

「稀にお若い方もいるそうですが……」

 

 何故かステラが苦い顔をする。見ればフォンも似た顔をしていた。

 

「何かあるのか?」

「「若いと御付きの女性を御手付きするらしいの(です)」」

 

 返ってきた言葉が私にはすぐ理解出来なかった。が、少ししてやっと意味が理解出来た。要するにいかがわしい事をするのだろう。

 成程、若ければ煩悩に負け、老いれば体力に負けると言う事か。これはもしかすればどの人間にも言える事なのかもしれない。

 

「だが、それは王家のお抱えの話なのだろう? 冒険者の方はどうなのだ?」

「冒険者としての魔法使いは……」

「ルイーダさんのお店に登録していた方達は、お年を召した方が一人とお若い方が二人程でした」

「ただ、若い方の一人はあの時下品な笑いを上げてたわ。だから、実質二人しかいないわね」

 

 フォンがさらりと告げた言葉に、ステラがあの時の事を思い出したのか少しだけ苛立つような顔を見せた。どうやら彼女の中では、まだあの夜の事は許せない事らしい。

 

「なら、その残った若い魔法使いに賭けるしかないな」

「あ、でも、私達が酒場を出た後で登録に来ている方がいないとも限りません」

「どうかしら? あの厄介な連中の事だし、今頃もうアリアハンを出て、勇者は女二人を仲間にしてスケベしてるぞとか言いふらしてるかも」

「す、スケベって……」

 

 何やら恥ずかしそうにこちらを見やるステラだが、私は生憎すけべとの意味が分からない。しているぞと表現するからには、何らかの行動なのだろうが……?

 

「すまないが教えて欲しい事がある」

「「スケベの意味なら察して(ください)」」

「……分かった」

 

 二人揃って目を吊り上げてきたので、私はそこで質問を飲み込む事にした。おそらくあまり良い意味ではないのだろうとは分かったために。

 と、そこで思い出した。あの酒場であの男が口にしていた言葉を。おそらくすけべとはあの時の事を指すのだろう。

 

 ただ、もしそうだとすれば少々見過ごせない話になる。

 

「二人共、もし先程の話が現実だった場合、どうする?」

「え? さっきの話って……」

「ああ、あいつらが勝手に嘘を言いふらすってやつ?」

「そうだ。私は構わないが二人は困るだろう。こんな子供とそういう関係と思われるのは」

 

 そう言うと二人は目を素早く瞬きさせると互いを見る。何だろう? 私の言葉におかしな点はなかったと思うが……。

 

「あの、勇者様はそういう話を平然と話されますけど、恥ずかしいとかはないんですか?」

「恥ずかしい? 何故だ?」

「うぇっ?! え、ええっと……」

「あたしを見るなっての」

 

 ステラに縋るような眼差しを向けられ、フォンが面倒だと言わんばかりの顔をした。が、若干の間の後その顔がステラから私へと向けられる。

 

「ったく、勇者? あんた、デリカシーってもの知らないの?」

「でりかしー……?」

 

 聞き覚えのない言葉だ。そう思って首を傾げると、フォンは大きくため息を吐き、ステラが信じられないと言う顔をした。

 

「ゆ、勇者様……さすがにそれは……」

「もしかして勇者って、魔王を倒すために全ての時間を鍛錬だけに注いでいたのかしら?」

 

 何故か憐みを含んだ表情を私へ向けるフォン。ステラはそんな彼女の言葉に小さく驚き、確認をするように私を見つめてくる。

 

 魔王を倒すために鍛錬に励む、か。アルスがどう過ごしていたかは私には分からない。ただ、おそらく今の私のようではなかったはずだ。

 でりかしー、というものを彼なら知っているか分かっていたはずだ。やはり私では彼らしくはなれないのだろうな。

 

「いや、そんな事はない。ただ、父のようになりたいと思っていた事は事実だ。フォン、ステラ、私はどうも他者の心情を察する事が苦手のようだ。昔、ある騎士に助けてもらった事があるのだが、その騎士が何を思い秘めていたのかを私は察する事が出来なかった。少なくない時間を共に過ごしたのに、だ」

 

 今も思い出せる。先に行ってくれと言われ、ならばと部屋を出た後で微かに何か聞こえたあの時の事を。刃で何かを斬る音と気付いて、慌てて戻って見た光景を。

 部屋の奥、彼が座っていた位置に残されたその装備を見た時、私は己の愚かさを噛み締めたのだ。太陽のようだと思っていた彼も、所詮同じ不死だったのだと。その内に闇を抱えていないはずがなかったのだと。

 

「騎士……ね。何か、あったんだ?」

「ああ。その騎士は古き友との約束を果たすために旅をしていたそうだ。その友は、いずれ自分がアンデッドとなってしまうと言っていたらしく、そうなった時はその騎士の手で無に還して欲しいと。その約束を果たした時、彼は私に先にその場を離れるように告げた。それに私は何も思わずその場を離れて……」

 

 どう言ったものかと、そう思った時ステラが口元を手で隠した。

 

「まさか、自害されたのですか?」

「……そっか。その騎士にとって約束を果たす事が生きる意味だった。それを果たした後、友の後を追ったって事ね」

 

 私が静かに頷くとステラが無言で十字を切って祈る。フォンも悲痛な表情を浮かべていた。

 その姿が私には驚きだった。あの世界では、他者の死を、それも不死の死を悼む者などほとんどいなかった。

 だが、この世界は違うのだ。誰もが誰かの死を悼み、悲しみ、祈るのだ。きっと、あの世界でも火が陰る前はそうだったように。

 

 しばらく室内に沈黙が訪れる。ただ、私は二人の気持ちが嬉しく思えた。きっとあのカタリナの騎士もあの大らかな声で笑ってくれているだろう。

 そして、こう言って盃を掲げているはずだ。二人の心優しい乙女に太陽あれ、と。

 

 だが、ここで私は気付くべきだったのだ。こんな話をすればどうなるのかを。

 

「ところで、勇者様はその騎士とどう知り合ったのですか?」

 

 その質問に対して、私は上手く答える事が出来ないと思い、必死にはぐらかしたのだ。詳しい話はしないと騎士と約束した、と。

 それでも出会いぐらいはいいだろうとフォンに詰め寄られ、いつ頃の事か程度は教えてくれてもとステラにねだられ、約束したの一点張りでそれらを退けた結果、今に至るのだ。

 

 さすがにあの世界での出来事を詳しく話す訳にはいかない。今回はつい納得してもらう理由として使ってしまったが、もう二度としないようにと心に誓う。

 私は村を出ようと先を歩く二人を見ながらそう強く決意していた。そして、二人の怒りを解くために少し急ぎ足で前へと出た。

 

「ステラ、フォン、すまない。二人を信じると言っておきながら、あのように露骨な態度を取っては信を失うのも当然だと思う。その分、ここからアリアハンまでの行動でそれを少しでも取り戻そう。どうかそれで許して欲しい」

 

 言い終わると一礼して二人へ誠意を示す。しばしそうしていると、やがて頭上からクスクスと笑う声が聞こえてきた。

 

「勇者様、頭を上げてください」

「……許して、もらえるのだろうか?」

「クスッ、ええ。やっぱり勇者って不思議ね。朝みたいに人間味が希薄な事もあれば、今みたいに人間味溢れる時もある。どっちが本当の勇者なのかしらね」

 

 思わず息を呑む。フォンの観察眼は鋭い。おそらく前者が本来の私だ。後者は、アルスらしくあろうとする私、だろう。

 

「どっちも勇者様ですよ、フォンさん。人は様々な面を持つものです。勇者様も人間なのですから色々な顔を持っています」

「ステラ……」

 

 微笑みながらそう断言したステラに、私は内心でそっと感謝を捧げる。本当に彼女は慈愛に満ちている。神に仕える身だからだろうか?

 

「ま、そうね。勇者、もう気にしないでいいわ。人間、人に言えない事の一つや二つあるもんだし」

「はい、そうです。では、行きましょう。勇者様、先頭をお願いしますね」

「ああ」

 

 やっと二人が普段の二人へ戻った。それが嬉しく思え、私は頷いて二人へ背を向けて歩き出す。この背を預ける事が出来る、大切な仲間達を守るために……。

 

 

 

 二度目のアリアハンへの旅路はあっさりと終わった。道中で現れる魔物達を、今の私は容易く蹴散らせるようになったからだ。

 ”かわのよろい”の防御力を頼りに、多少強引に”どうのつるぎ”で攻撃する事が可能になったためだ。それに攻撃力が上がった事もあり、全ての魔物を一撃で倒せるようになったのも大きい。

 

 それによって三人でレーベへ向かった時よりも圧倒的に早くアリアハンへ戻る事が出来た。

 

「もう着いてしまいましたね」

「ホントね。お昼を過ぎると思ってたんだけど」

「まだ昼まで時間があるな。ならまず酒場へ向かい、新しく魔法使いが登録されたかどうかだけでも聞いてみよう」

「「はい(ええ)」」

 

 こうして私達はルイーダの酒場へと向かった。案の定酒場は開いていたものの冒険者達はみな留守にしており、いつかのように女主人がいるだけであった。

 そして、そこで私達は信じられない事を知る。

 

「「「全員登録解除?」」」

「そ。ま、あたしなりにあの時の事へ対処したってとこさね。若いのに立派な志を見せたアルスを、よりにもよって年長の男共が嘲笑ったようなもんだ。ったく、男ならそこで意気を感じて立ち上がるのがスジってもんだろ」

 

 どうやら女主人としてはあの男達の態度は許せないものだったらしい。ステラが同意するように頷いているし、フォンでさえ無言で何度も首を縦に振っていた。

 

「で、笑った奴らは勿論、あの時何も言えない出来ない奴も登録解除してやったのさ。まぁ、それから登録に現れた奴もいるけど、魔法使いはねぇ……」

 

 最後には渋い顔をする女主人に私は理解する。いないのだろう、新しく登録された者の中に魔法使いは。

 

「分かりました。ステラ、フォン、行こう。もうここでするべき事はない」

「待ちな。アルス、あんたこれからどうするんだい?」

 

 店を後にしようとした私へ女主人はそう問いかけてきた。これから、か。城下やレーベで聞いた話から向かうべき場所はある。ただ、そこへ行くには魔法使いが必要不可欠と思っていたのだ。

 

「ナジミの塔へ行こうと思っています。そこに旅を進める上で必要なものがあるそうなので」

「ナジミの塔ねぇ。つまり、そこへ行くには魔法使いがいるんだろ? 何せ、向かうならレーベからの方が近いしね」

「そうなのですか?」

「おや、知らなかったのかい? レーベから南東に行ったところに近道というか裏道があるのさ」

 

 思わぬ情報だ。これだけでもここに来た価値がある。私達は西にあるという洞窟からしか行けないと思っていたからだ。

 だが、それでも戦力不足は変わらない。しかし魔法使いはいない。どうするべきかと、そう思っていると……

 

「いっそ戦士でも入れる?」

「戦士を?」

「盾になってもらうんですか?」

 

 私の疑問へステラが続けた言葉にフォンが頷く。成程。今は私が二人の盾役だ。それを、より強靭で逞しい戦士にやってもらおうと言う訳か。

 ただ、それでは空への対策にはならない。その辺りはどうなっているのかと思い、私はフォンへ視線を向ける。

 

「フォン、それでは」

「空飛ぶ魔物対策でしょ? 分かってるって。屈強な戦士ならあたしを担いで投げてもらえるわ。それで限定的だけど対策出来る」

「そ、そんな無茶苦茶な……」

「あっはっはっ! いいね、あんた達。さすがは勇者一行だよ。そんな風に魔物と戦うなんて聞いた事ないね。いや、実にいいよ」

 

 心から楽しげに笑い女主人は私達を見た。その顔はどこかアルスの母にも近いものがある。

 

「ふふっ、戦士なら二人ぐらい登録者がいるからまた夜に来な。それに、もしかしたらそれまでに魔法使いも登録に現れるかもしれないしね」

「分かりました。では、また後で」

「ありがと、ルイーダさん」

「失礼します」

 

 そうして店を出た私達は、夜までどう過ごすかを話し合う事にした。アルスの生家へ行く事も考えたが、今回は止めておくべきと思ったのだ。

 ないと思うが、ステラやフォンが今朝の話をアルスの母へ尋ねると困った事になるために。

 

 城へ向かう橋近くにある広場で腰を下ろし、私達は息を吐いた。

 

「さてと、どうする?」

「この近くではレベル上げも難しいでしょうし……」

「かと言って何かやるべき事がある訳ではない」

「そうなのよねぇ」

 

 私の言葉にそう返してフォンは大の字になった。ステラはそんな彼女に小さく笑っている。

 

「ふふっ、フォンさん? そうしてもいいですけど寝ないでくださいね?」

「……無理かも。お日様がポカポカしててあったかいし、風は気持ちいいし、お昼寝するには最高だもん」

「そうですね。本当に、今日もいい天気で平和です」

「平和、か。たしかにそうかもしれない。ここは、だろうが」

 

 今も世界のどこかに魔王がいて、その侵略に怯える者達がいる。未だ現れぬ勇者を待ちわびているだろう、人々が。

 

「勇者様……」

「ちょっとぉ、せっかく人が微睡んでる時にそんな事言わないでよ。それじゃ、まるであたしが悪者みたいじゃない」

「いや、そういう訳ではないんだ。ふと思ったのだ。魔王がいて侵略しているという、実感が感じられないなと」

 

 そう、魔王は既に現れて十年以上経過していると聞く。おそらくこの世界の者達が抵抗しているからだとは思うのだが、それにしても穏やか過ぎる気がする。

 もしや、魔王がその侵略を進められない理由でもあるのだろうか? あるいは、魔王は待っているのかもしれない。自分を倒しに来ようとする存在を。

 それを完膚なきまでに打ち破り、この世界に住む者達へ絶望を見せようとしているのではないだろうか?

 そうだ。人は心を折られる事で死ぬのだ。不死でさえそうであったのなら、正しく生きている者達がそうならぬ道理はない。

 

 読めた。魔王の狙いはこの世界から希望を失わせる事だ。この世界に生きる者達の生きる意志を、心をへし折ってしまう事だ。

 この光溢れる世界に、絶望と言う名の闇をもたらす事なのだ。

 

「あー、うん。それは思うわ。だけどね、それはこういう大きな城下町や都市だけ。辺境の村なんかは常に不安と隣り合わせよ」

「そうか……」

「はい。ロマリアやポルトガなどはその国力もあって魔物の侵攻に抵抗出来ますが、バラモスの居城に近い村はその侵攻によって滅んだと聞きます」

 

 つまりアリアハンはそういう意味では平和な方なのだ。いや、違うか。この国でさえもゆっくりと魔王の手が迫ってきているのだろう。

 この平和は偽りに等しく、故にそれが偽りとならぬ前にこの平穏を壊すものを討たねばならぬ。あの世界では、偽りの平和どころか平穏さえもなかった。

 もしそれがあの世界にあったのなら、あの祭祀場だけがそれだろうか。あの場所には、偽りの平穏があったように思える。

 

「ならば、私達はこの雰囲気をどこでも感じられるようにしなければならないのだな」

「……そうね」

「はい、そうしたいです」

「で、勇者? 夜までどうするか決まった?」

「そうだな……」

 

 フォンの明るい声に私は考える。と、そこで私の腹から音がした。すると二人が、一瞬瞬きしたかと思うと揃って笑い出した。その明るく楽しげな声に私も自然と笑みが浮かぶ。

 

「まずは食事にしよう。その後は、ここへ戻って昼寝でもしないか?」

「あははっ、勇者にしてはのんびりとした提案じゃない。うん、あたしはそれでいいわ。ステラは?」

「クスッ、私もそれで構いません。そんな時間は、またしばらく取れないでしょうから」

「決まったな。では早速」

 

 立ち上がって食事を取れる店へ行こうとした時だった。二つの可愛らしい音がしたのは。

 見ればフォンとステラが恥ずかしそうに俯いている。どうやら空腹だったのは私だけではないらしい。

 

「ははっ、体は正確で正直だな。昼時になったと私達へ教えてきたようだ」

「う~っ、恥ずかしいけどそうみたいね。そうとなればさっさと食事にしましょ」

「そ、そうですね。それにしても……ううっ、恥ずかしいです」

 

 微かに頬を赤らめて歩くフォンとステラに、私は小さく笑みを浮かべてしまう。あの音は私にとって生きていると、そう強く感じられる感覚なのだが、彼女達には恥じらいとなる事が不思議に思えて。

 だが、それが二人には違う意味合いに取られる事は何となく分かってきているので、私は顔を二人に向けず歩く。

 

 が、どうもそんな事は彼女達にはお見通しらしい。

 

「あ、勇者様? 今笑ってますよね?」

「そんな事はない」

「嘘だぁ。勇者、声が笑ってるわよ。ほら、正直に白状しなさい。今白状すれば正拳突きで許してあげる」

「あの、フォンさん? いくら何でもそれはちょっと。勇者様が倒れてしまいますし」

「いいじゃない。乙女の恥じらいを笑ったんだもの。それぐらい覚悟してもらうのよ。さっ、ちゃっちゃと吐く」

「分かった分かった。謝るからそれは許してくれ。お詫びになるかは分からないが、私が食べる食事から何でも一品持っていってくれて構わないから」

「中々いい心がけね。何を頼んでもらおうかしら」

「ふぉ、フォンさんってば……」

 

 嬉しそうに鼻歌混じりに歩き出すフォンを見つめ、私とステラが苦笑する。ああ、本当にいいものだ。これが平和か。これが命ある者のあるべき姿か。

 これを守れるのなら、私はどんな事でも成し遂げよう。そう強く思わせてくれる二人の乙女に、私は心の中で感謝を捧げる。本当に、私はいい仲間を持ったと。

 

 ちなみに、食事処でフォンから言われたのは何でもいいから肉を使ったものという注文だった。それに従い、店の者へ尋ねたところ薦められたのは”鶏の香草焼き”という物だったので、それに人数分のパンとスープを付けてもらう事にした。

 

―――ハーブが効いてて皮はパリパリ。うん、美味しいっ!

 

 こう言ってフォンは鶏を半身程食べた。残った半身を私はステラと分け合って食べ、中々贅沢な昼食となった事を記す。

 それにしても、食べるという行為は何故こんなにも胸を温めるのだろうか。腹を満たすと何とも言えない感覚になる。あの世界ではついぞ味わう事のなかった感覚だ。

 

 これは、何というのだろうか? 満足感に近いものなのだろうとは思うが、似ているようで違うとも感じている。この感覚は、何というのが正しいのだろう?

 そんな事を考えながら歩いていると私達は先程の広場へと戻ってきた。周囲には走り回る子供達や、長椅子に座り語り合う老夫婦などがいる。

 平和というのがどういうものかを、この光景は私に教えてくれていた。そして、これを守らなければいけないとも。

 

「はぁ~……お腹いっぱいだし、お日様も風も気持ちいいし、絶好のお昼寝日和ね」

「ふふっ、そうですね。こうして地面へ背中を預けて寝転がると、子供の頃を思い出します」

「ステラも子供の頃はフォンのようにわんぱくだったのか?」

 

 意外だ。そう思って言った一言に、フォンがごろんと体の向きを変えて私を軽く睨みつけてくる。

 

「何よ、その言い方は。どうせあたしはわんぱくだったわよ。今だって男勝りって言われるでしょうし?」

「だが、それがフォンだろう? 何故怒っている?」

 

 男勝りだろうとわんぱくだろうとフォンはフォンだ。私は別にわんぱくだった事を貶している訳ではないし、非難している訳でもない。

 

「ゆ、勇者様……」

 

 だが、どうやらステラの反応を見るにフォンはそう受け取ってはいないようだ。

 

「ふんっ! いいわよいいわよ。どーせあたしは可愛げのない暴力女だもの。わんぱくで、男勝りで、色気のない小娘よ~っだ」

「? いや、可愛げがない事はないだろう。ステラもフォンも乙女らしいところが多々見受けられるし、何より可憐だと私は思うのだが?」

「……ホント、勇者って分かんない。ね、勇者はあたしとステラをどう見てるの? 仲間として見てる? それとも女として見てる?」

 

 急に真剣な表情でこちらへ問いかけてくるフォンに、私は戸惑う事しか出来なかった。何せ私は二人の事を女性であり仲間と見ているからだ。どちらか一方として見る事など出来ない。

 ただ、何となくだがそう答えてはいけない予感がしていた。フォンがわざわざ真剣な表情で問いかけたのだ。これは、私も真剣になって答える必要があるだろう。

 

 ならば、答えは一つだ。

 

「二人は仲間である前に女性だ。故に、私は女性として見て扱っているつもりだ」

「「っ」」

 

 横になっていては真剣さが伝わらないと思い、体を起こしてフォンとステラを視界に入れて告げたところ、何故か二人が息を呑んでこちらを見つめてきた。

 何度か似たような事があるが、今回こそ理解出来ない。私は恥ずかしい事も言っていないし、おかしな事も言っていないつもりだ。

 

「……ステラ、これも?」

「……多分、そうだと思います」

 

 少しの間見つめ合った私達だったが、フォンとステラが同時に苦笑しお互いへ目をやってそう言い合った。が、すぐに私へ顔を戻して……

 

「「勇者(様)、もう少し言動に気を付けて(ください)」」

「……よく分からないが二人がそういうのなら気を付けよう」

 

 どこか呆れ混じりではあるが好意的な雰囲気を感じ取り、私は安堵するように答えた。そして、フォンは本当にそのまま眠ってしまい、私はどうしたものかと考えた。

 と、そこで思い出したのだ。この世界の文字を学ばねばならないと。フォンもステラもレーベで何の戸惑いもなく文字を読んでいた。ならば、今が教わる好機かもしれない。

 

「ステラ、まだ起きているだろうか?」

「はい、どうかしましたか?」

「その、情けない話なのだが私に読み書きを教えて欲しいのだ」

「読み書き、ですか?」

 

 そこで私はこう説明した。母は私の事を案じて幼い頃より体を鍛える事を優先させてきたと。故に勉学へ割く時間も機会もなかったのだと。

 それを聞いてステラは疑う事もなく、むしろそうだろうと理解を示したのだ。それほどオルテガ殿の武勇はあちこちに轟いていたのだろうな。

 

「分かりました。では、早速今夜から始めましょう」

「今夜?」

「はい。可能ならば一日使って教えたいところですが、この状況ではそれは難しいでしょう。なので、寝る前の時間を少し使って勉強していただきます」

「宿で寝れない時はなしと、そういう事か?」

「そうですね。さすがに野宿の時はお休みです。これは、町や村などで宿泊する場合だけにしましょう」

「分かった。ステラ、貴女に感謝を。しばらくの間、世話をかける」

「ふふっ、お気になさらないでください。……私でも、勇者様のお役に立てるのなら嬉しいですから」

 

 最後にステラはそう言って少しだけ影を見せる。それが、私に一瞬だけあの火防女を思い出させた。自分には私の役目へ役に立てる事などないに等しいと、そう言っていた彼女の申し訳なさそうな表情を。

 

「そんな事はない」

「え……?」

「ステラ、貴女は私の役に立ってくれている。貴女が私と共にいてくれるだけで、私はどんな時でも恐れる事なく戦えるのだ。例え癒しが使えずとも、魔物を倒す事が出来ずとも、貴女がいてくれる事で私は心強くあれるのだ。この背に、誰かがいてくれ、その誰かが私を支えてくれている。それが、何より大事な事なのだから」

 

 あの世界で彼女達世話になっていた者達へ言えなかった事を、ステラを通して告げるように私は想いを吐露した。

 あの辛く長い旅路。その中で私が心折れずいられたのは、他ならぬあの者達のおかげだ。ああ、そうか。火の無い灰だった私にも、ちゃんと価値はあったのか。あの世界の私にも、信頼を向けてくれていた者達がいたのだ。

 

「ステラ、あの時貴女からもらった言葉をここで返そう。もっと自分を認めて欲しい。貴女は、立派に私の旅を支えてくれている。これからも、私やフォンを支えてくれると嬉しい」

「グスッ……勇者様ぁ」

 

 気付けばステラが泣いている。その涙さえも美しい。生きているとは、光の世界とはここまでも素晴らしいものか。だが、ステラは涙よりも笑顔の方が似合っている。そう私は強く思った。

 

「ステラ、泣いた貴女も綺麗ではあるが、出来れば笑っていて欲しい。貴女には、いつもの明るい笑顔こそが良く似合う」

「グスッ、勇者様ったら、それじゃ口説いてるみたいです」

「くどく? ああ、口説くか。そんな事はない。私は世辞で言ってるのではないんだ。ステラだけではない。私は、泣き顔よりも笑顔が見たいのだ。いつか、誰もが笑顔でいられるような世界にしたいと、そう思っているのだから」

 

 そう、あの世界もそう出来るものならしたい。不死の呪いなどなく、陰る事のない光が照らす、そんな世界に。

 可能ならば、彼女にもその時には微笑んで欲しいものだ。火防女としてきっとその心を押し殺していた、あの女性にも。

 

「うふふっ、勇者様らしいです。世界中が笑顔で溢れるようにと、そう願っているのですね?」

「ああ、そうだ。いつか必ずそうしたいと思う。そのためにも、ステラが必要なのだ。分かってくれただろうか?」

「ええ、しっかりと。でも、少し残念です」

「ん?」

 

 やっとステラに笑顔が戻った。だが、目元を指先で優しく拭いながら彼女は私にそう言った。何が残念なのだろう。そう思って見つめていると……

 

「今のが、勇者としてではなく貴方様の言葉だったら良かったのに」

「……勇者ではなく私の?」

「ふふっ、何でもありません。それで勇者様? 今夜はご実家で泊まる方向で良かったですか?」

「…………そうしたくないがそうするよりないか。Gを節約できるのならするべきだと思うしな」

「分かりました。では、私もお昼寝させていただきますね?」

「ああ、ゆっくり寝てくれ。私も、横になりながら風を感じている」

 

 そう答えて少しすると、ステラからも寝息が聞こえ始めた。フォンとステラが寝ている事を確認し、私はゆっくりと体を起こす。

 吹き抜ける風がとても心地良く、陽射しも強すぎず温かだ。こんな環境は、あの世界には残念ながらない。

 

 周囲へ目を向ければ、子犬と戯れる子供やその母なのだろう女性が微笑んでいたり、別の場所では城の兵士だろう者が巡回しながらその様子に笑みを浮かべていた。

 と、私の近くで何か動く音がした。目をやれば、フォンが寝返りを打ったようで、私の傍へと近付いている。陽射しに背を向けているので、眩しくなったのもあるのだろう。

 

「私の体が作る影に逃げてきたか」

 

 顔だけを見事に影に入れて、フォンは満足そうな笑みを見せていた。本当に、この世界は素晴らしい。陰ることのない光。それがあるだけでここまで人は変わるのだ。

 朝と夜。光と闇。それが交互に存在するだけで、世界は、人は、ここまで精気に満ちて生きる事が出来るのだから。

 

「ん?」

 

 と、今度は逆の方から音がした。振り向けばステラも私の方へと寝返りを打っている。彼女も私の作る影へ顔を入れているので、眩しさからの行動だろう。

 

「これでは寝たくても寝れないな」

 

 私を挟んで眠る二人の乙女達のため、私はそのまま日暮れまで体勢を維持する事になった。地味に辛かったが、これもまた二人のためと思えば苦ではなかった。

 やがて日が落ち始めた辺りでフォンが目覚め、ステラを起こして酒場へ向かう事にした。まだ眠そうなステラへフォンが呆れた表情で声をかけながら、私達は再び酒場へと辿り着く。

 

 店からは以前のような活気がなく、本当にあの時の者達を登録解除したのが手に取るように分かった。

 

「入ろう」

「はい」

「ええ」

 

 扉を開け、中へ足を踏み入れると、そこには閑散とした光景が広がっていた。

 テーブルは空きばかりで、座っている者達もどこか覇気がない。これならばあの者達の方が良かったのではと思ってしまうぐらいだ。

 

「いらっしゃい。ま、見ての通りだよ」

「うわぁ、これはこれで酷いわね」

「フォンさん……」

 

 女主人の言葉にフォンが苦い顔で返す。そんな彼女をステラが窘めるも、私もフォンと同意見に近い。

 

「それで、戦士の方は? ここにいないようですが」

 

 魔法使いは望めそうにないので、フォンが言ったように戦士を探したが店内には見当たらない。女主人は、私の問いかけに企むような笑みを浮かべると指を上へ向ける。

 

「あんた達のお目当ては二階だよ。そこで一人で飲んでる」

「へぇ、二階か。あたしもチラッとしか見なかったけど、わざわざあんなとこで飲んでるって」

「どちらか、ですね。そこまで来て誘われるという自信があるのか、あるいは……」

「一匹狼な性格だからだと思うよ。ま、とにかく会ってきな」

 

 女主人の言葉通り、まずは会ってみなければ始まらない。そう思って私は一礼し店の奥にある階段を目指す。その後をフォンとステラが追ってきて、私達は二階へと向かう。

 ギシギシと音を立てる階段を上がると、下程ではないが酒の匂いがした。見れば露出の高い格好をした女性が酒瓶が並べられた棚の前に立ち、こちらを見ている。

 

「ハァイ、坊や達。ここは男女共に十八歳未満は立ち入り禁止よん」

「あたしは十八だから問題ないわね」

「私もです」

「酒は飲まないから見逃してはもらえないだろうか? 用さえ終わればすぐ立ち去る」

 

 視線を奥へ向ければ、こちらに背を向けて飲んでいる者が一人。その体は、以前見たあの戦士の男よりも鍛えられているように思える。

 

「アラアラ、中々真面目で素直な坊やね。今夜は坊やしかイイ男来ないかもしれないし、お姉さん、気に入っちゃったわ。名前、教えて?」

「私か? 私は」

「はい、行くよ勇者。さっさと用事済ませて帰らないといけないんだから」

「そうですよ勇者様。ご自分で言った事ですからね」

「あ、ああ……」

 

 名乗ろうとしたところ、フォンとステラに両腕を掴まれてしまい、そのまま奥へと連行される。一体何なのだ? ただ、あの女性はそんな私達を見て楽しげに笑っていた。

 あの笑みは、アルスの母が二人を初めて見た時に似ているな。もしや、彼女もああ見えて母なのだろうか? なら、あの格好は止めた方がいいと思うのだが……。

 

 そんな事を思っている内に私を引きずる動きは止まり、私は二人から解放された。振り返ればそこには先程見た戦士殿の背中がある。

 

「酒を楽しんでいるところをすまない。少しだけ話を聞いてもらえないだろうか?」

「何だい?」

 

 こちらへ顔を向けず、戦士殿は低くした声で問い返してきた。こちらへの軽い威圧なのだろうか? ただ、思ったよりは声が幾分柔らかい。どうやらあの戦士とは対応が異なるようだ。

 

「私はオルテガの子、アルス。亡き父の遺志を継ぎ魔王退治を志している者だ。もし貴公さえ良かったら、私達と旅路を共にしてもらえないだろうか?」

「……魔王退治、ねぇ」

「信じられないって?」

「いや、そんな事はないさ。ただ……」

「ただ? 何ですか?」

 

 そこで戦士殿はこちらを一瞥した。その眼差しに鋭さはないものの、こちらを射抜くような印象を覚えた。

 ただし、その瞳は澄んでいた。あの世界では見る事の出来なかったぐらいに、眩しく輝いていた。

 

「そっちが欲しいのは、戦士じゃなくて魔法使いだと思うんだが、どうだ?」

「「っ!?」」

 

 告げられた言葉はまさに私達の本音を言い当てていた。先程私達の構成を見ただけで、どこが欠点であるかを的確に見抜いたのだ。

 フォンとステラが息を呑んだのはそういう事だろう。観察眼はあるらしい。それだけでも仲間に加えたいと思うには十分過ぎる程の能力だ。

 

「そうだ」

「へぇ」

「「勇者(様)?!」」

 

 だからこそ、上辺の話ではこの者は動いてくれない。私達が本当に欲しいのは魔法使いだが、それをいつまでも待っていられる程世界に猶予はない。

 今もどこかで魔物の侵攻に怯え、震えている者達がいるのだ。ならば、私は一刻も早く魔王を打ち倒してルビス様を救い出し、アルスの体を本人へ返して元の世界へ戻らなければならない。

 

 私はこちらへ視線だけを向ける戦士殿を見つめて言葉を続ける。

 

「だからと言って、いつ登録されるかも分からない者を待てる余裕はない。今も世界は魔物の脅威にさらされている。叶う事ならば今すぐにでも魔王の前へ行き、その首を取ってしまいたいぐらいだ。だが、そんな事は今は無理だ。私は弱く未熟。勇者と謳われた父にさえ、追いついていないのだから」

「おやおや、中々殊勝な事を言うじゃないか。あのオルテガの子で勇者見習いだって言うからどんな奴かと思ったが、意外と自分を客観視出来てるみたいだな」

「っ! こいつっ!」

「フォン、いいんだ。この者が抱く想像の方がおそらく正しい。勇者の子ともなれば、親の威光や権勢を自らのものと勘違いする者も出よう。私は、そうでなかっただけの話だ」

「勇者様……」

 

 私のために文句を言おうとしたフォンを制して、私は目の前の戦士殿を見つめ続ける。相手はずっと私の事を見つめている。まるで、仲間になるに相応しいか否かを判断しているかのように。

 

「父と同じ程の武勇や才覚を有しているかは分からない。ただ、父を超える程世界に平和と安寧を求めている自信がある。どうか、貴公の力を貸してはもらえないだろうか? せめてナジミの塔から帰ってくるまででもいい。その道中で私が貴公の力を貸すに相応しいかどうか判断してもらいたい」

「ナジミの塔か。成程、どうやらようやく腕試しらしい。いいさ、ならまずはそこまでの時間で判断してやるよ」

 

 そう言って戦士殿が立ち上がって兜を取ると、長い髪が流れ落ちるように現れる。その瞬間、フォンとステラが驚いたように目を見開く。それに気付かないまま、戦士殿はこちらへ振り向いた。

 

「「ええ~っ!?」」

「どうしたのだ、二人共。驚くような事はないと思うのだが?」

 

 何故か二人は戦士殿を見て目を何度も瞬きさせている。私はそんな二人の反応が理解出来ず首を傾げるしかない。ただ、そんな私を見て戦士殿は意外そうな表情を見せた。

 

―――どうやらお前だけは気付いてたみたいだな。私が女だって事に。




ドラクエ3の魅力の一つは仲間を選べる事。ただし、それは悲しいかなゲームの話です。

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