僕とキリトとSAO   作:MUUK

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今日、模試がありました……。
よってテンションがクソ低いです……。

第九話……どうぞ……。


第九話「儚き剣のロンドーⅡ」

「…………で?」

「「へ?なに?」

 

アスナの質問に僕達は完全なシンクロで返してしまった。

アスナは僕らを数秒間に渡ってジロリと睨んでいたが、ため息をついた後、口を開いた。

 

「…………何じゃないわよ。あなたがわたしをここに座らせたんじゃない」

 

どうやら質問は僕に向けたものではなく、僕らを広場のベンチに座らせたキリトに向けたものだったらしい。

 

「え、あ、そ、そうだっけ。ごめん、ちょっと考え事してて……」

「考え事って……キリト君とライト君も、あの鍛冶屋さんに強化頼みに来たんじゃないの?」

「え、な、なんでわかるんだ?」

 

キリトはびっくりしてるようだったが、ユウとの会話で思考を読まれることに慣れてしまっていたので、僕はあまり驚かなかった。

 

「ボス戦の後、《レッド・スポテッド・ビートル》狩りしに行くって言ってたでしょ。なら、片手剣用の素材集めに決まってるじゃない」

「お……おお」

 

何かキリトが感動してるな。そんなにすごいことあったかな?

そのキリトの反応には、アスナも怪訝な顔をした。

 

「……何、その反応?」

「いや……ほんの四日前まで、パーティメンバーの名前表示すら見つけられなかった人のお言葉とは思えなくて……あ、ひ、皮肉じゃないよ。マジで感心してんだ」

 

パーティメンバーの名前表示を見つけられなかった?それ、一ヶ月前の僕じゃないか!

こんなことを言うと真剣に呆れられそうなので黙っておく。

 

「最近いろいろ勉強してるから」

 

怪訝さを半額くらいにした表情でアスナがそう言った。

それを聞いて、何故かキリトがニヤニヤしてる。うーん、ちょっと気持ち悪いかな。

 

「そうか、うん、そりゃいいことだ。MMO世界じゃ、知識があるとないとじゃ何をやるにも結果が全然違うからな。知りたいことがあったらいつでも聞いてくれよ、なんせ俺は元テスターだからな、十層までなら全街の商品のラインナップからmobの鳴き声までばっちり網羅……」

「キリトっ!」

 

その声を聴覚野が音として感じ取ったとき初めて、その声が自分の口から出たものだと認識した。

いやしかし、僕にキリトを咎める権利は無い。

僕はキリトが許せなかったのではなく、あの時、キリトを止めることができなかった僕自身が……。

今キリトは変装をしている。それは、キリトも心の底では、周りから『ビーター』などと思われたくないと思っているという証拠に他ならない。

キリトがボスのLAを取り、ドロップした『コートオブミッドナイト』。本来ならば、着て街を歩けば勇者と謳われるはずだったそれが今、『ビーター』の代名詞に意味を堕としてしまっているのだ。

これからも、キリトが一人で背負うものの重さを考えると、僕は、悔まずにはいられない。

あのとき、ユウの制止を振りほどき、いつものような猪突猛進のバカだったらと。

僕の憂鬱な感傷を止めたのは、アスナの透き通った水晶のような声だった。

 

「……元テスターへの恨みや妬みを一人で背負おうだなんて、無茶しすぎのかっこつけすぎだと思うけど……それはあなたが決めた選択なんだから、わたしは何も言わないわ」

 

彼女は、僕がうじうじと考えていた問題に、彼女なりの答えを出し、自分の中で完結させたようだった。

しかし、僕は今からアスナの無干渉という決定に逆らうことをしようとしている。

 

「僕は……本当はあんな事して欲しくなかった。確かにあの場で標的をキリトに絞らせなければ、最悪の場合元テスターと新規参加者との対立という構図になっていたかもしれない。でも……それでも……僕は君をこんな状況に晒したくはなかった……」

 

こんなことを言っても無駄でしかないだろう。むしろ、キリトを苦しませることになるかもしれない。独りよがりと詰られるかもしれない。

でも、僕はこの剣士に僕の意思を伝えたかった。

でも、キリトの返した答えは、僕に重くのしかかった。

 

「…………ゴメン……」

 

違うんだ!キリトは何も悪くない!そんな脳の命令は僕の口に届かず、唯間抜けに開閉するだけだった。

 

「「「…………」」」

 

しばしの沈黙。

それを破ったのはアスナだった。

 

「えーっと……。わたしも今日、あの鍛冶屋さんにこの剣の強化をお願いしようと思って来たのよね」

「え……」

 

驚きの声は、キリトから漏れたものだった。

僕は、アスナの言葉を聞き、細剣使いの腰に下げられた得物を見やった。真珠のような光沢の鞘に収められた剣の名は『ウィンドフルーレ』。僕の記憶では、確か結構なレアものだったと思う。

 

「それ、今+4だっけ?」

 

そんなキリトの問いに、アスナは小さく頷いた。

 

「強化素材は自前で持ち込み?どんくらい持って来た?」

「えーと……『プランク・オブ・スチール』が四個と、『ニードル・オブ・ウインドスワプ』が十二個」

「へえ、頑張ったな。……でも……」

「うーん、それでも+5の成功率は八割ちょっとか」

そのキリトの暗算の速ささえも、僕の心をチクリと刺した。

「賭けるには充分な数字じゃないの?」

 

僕は、普通ならアスナの言葉に肯定の意を返しただろう。しかし、さっきの四連続失敗を見た後だと八割じゃ不安になってしまう。

 

「まあ、普通はそうなんだけど……さっきの一幕見ちゃうとなあ……」

 

どうやらキリトも僕と同じ意見らしく、どうしようもなく歯切れが悪い。

するとアスナは鍛冶屋を一瞥し、言った。

 

「コインの表が出る確率は、一回前の結果にかかわらず常に五十パーセントよ。さっきの人が何連続失敗しようと、わたしやあなたの強化試行には無関係でしょ?」

「そう……なんだけど……さ……」

 

アスナの言葉にキリトはたじろいてしまった。

僕が見た限りじゃ、アスナは超絶的に理性的だが、キリトは究極的に直感的だ。だからこそ、この二人、一見水と油のようでいて案外お似合いだったりする。

そして、恐らくキリトも思っているであろうことを僕は口にした。

 

「いやあ、アスナ。ギャンブルには流れってものが……」

 

そう言った僕をアスナの極寒の視線が貫いた。

アスナさんの絶対零度!一撃必殺!ライトは倒れた!

キリトはそんな僕を見て苦笑を浮かべていたが、その瞳にはどちらかと言うと安堵の色が浮かんでいた。

やっぱり同じことを思っていたようだ。

 

「なあ、アスナ」

 

キリトはアスナに体ごと向き直り、真剣な声音で言った。

 

「な……何よ?」

「成功率八割より九割の方が好きだよな」

「…………それはまあ、そうだけど」

「九割より九割五分の方が好きだよな」

「…………それもまあ、そうだけど」

「なら、妥協はよくないと思うんだ。どうせそこまで素材を集めたんなら、もう一頑張りして九割五分を目指すべきじゃないだろうか」

「………………」

 

アスナは怪しむような目つきでキリトを見つめている。

僕はというと、苦笑せざるを得なかった。というかキリト……アスナを人柱にする気まんまんじゃないか。

 

「ええ、確かにわたし、妥協は嫌いだわ。でも、口だけ出して体を動かさないヒトも同じくらい嫌い」

「…………え?」

 

この時点で、僕にはもう先の展開が見えてしまった。

まあ、天誅かな……。

 

「そこまで言うからには、わたしが完璧を追求するのを手伝ってくれるんでしょう?キリト君、ライト君。ちなみに、ウインドスワプの針のドロップ率は八パーセントですから」

「「………………え?」」

 

なんで僕まで巻き込まれてるの?

 

「そうと決まれば、さっさと狩りに行きましょう。三人なら、暗くなる前に百五十匹は狩れるわね」

「「……………………え?」」

 

僕が山登りをする前、素手で挑んでどうしようもなかったあの蜂をアスナがどっかの誰かと百五十匹も狩るらしい。

誰だろうな。そんなバカみたいなことする奴。

 

「それと、わたしと狩りするなら、その派手なバンダナ外してほしいわ。悪いけど全然似合ってない。それと、素手で狩り続けるなら、ノルマで針五本ね」

 

どうやら、僕らみたいだ。

 

 

三日前ーー『ウルバス』

 

「で、お前ら。装備どうする?」

 

ユウがティア、リーベ、そしてアタシ優子に向けて言った。

どうする?と言うのは、初期装備から何に変更するか、と解釈していいだろう。

その質問に真っ先に反応したのは、リーベだった。

 

「ボクはできれば、召喚獣と同じで両手斧にしたいな」

 

そういえば、彼女の現実である愛子が使役する召喚獣の得物は両手斧だったっけ。使っているうちに愛着でも付いたんだろうか。

そこで思考を切り上げ、アタシはユウの質問に対する答えを出した。

 

「アタシは、片手剣のままがいいわ。最近やっと扱いに慣れてきたんだもの」

 

アタシがそういい終わると、皆はティアの方を向き、答えを待った。

 

「…………」

 

なかなかに決めかねているようだ。そんなティアを見兼ねての提案か、それとも利己的にそう考えたのか、ユウがティアに言った。

 

「ティア、もし迷ってるなら、長柄武器(ポールアーム)にしてくれないか?」

「……ユウがして欲しいならそうする。でも、なんで?」

「いや、単純に俺らの中に後衛を務められる奴がいなかったからなんだが……」

「パーティに中距離武器がいないというのは結構な痛手じゃったからのう」

 

これは、ゲームをしたことのないアタシでもだいたい理解できた。確かに後衛がいるといないとじゃ、全然攻撃回数が変わってくるだろう。

 

「よし、じゃあとりあえず装備屋に行くか!」

 

そして、アタシ達はユウを先頭に装備屋へと歩を進めた。

 

 

「うーむ。姉上になら、これがよいのではないかのう」

そう言って秀吉がオススメしてきたのは、『クロムライト・ソード』という、その名の通りクロム光沢を持った剣だった。

 

「うん。じゃあそれにするわ。あの、すいません。これ下さい!」

『あいよ!毎度あり!』

 

システムに規定された返答をNPC装備屋が返したところで、アタシの所持金残高が半分となり、アイテムボックスにニューアイテムのタグが浮かんだ。

とりあえず装備。

 

「重っ!何よこれ!こんなの振り回せるわけないでしょ!」

「いや、姉上はリアルでソファを振り回……」

「試し斬りしてみようかしら」

「すどころか、鞄を持ち上げるのにも苦労しておったのう!そうじゃった、そうじゃった!いま思い出したわい!」

 

秀吉が理解力のある子で良かった。危うく『ホリゾンタル』のモーションに入りかけていた。

 

「でも、実際姉上の筋力ステなら扱いきれない代物でもないんじゃが……」

「ふーん。じゃあ『スモールソード』が軽過ぎただけなのかもね」

 

アタシの後ろでは、リーベが両手斧を、ティアが長槍を思い思いに振り回していた。

 

 

「よし。じゃあ『マロメ』に行くか!」

「ちょ、ちょっと待って。本当にライトを置いてって大丈夫なの?」

 

ずっと置いていくとは言ってたのだが、まさか冗談じゃなかったとは……。本当にユウとライトは友達なんだろうか。若干疑わしくなってきた。

 

「ああ、大丈夫だ。ついさっきあいつから『エクストラスキル身につけて、お前なんか問題にならないくらい強くなってやる!バーカバーカ!』っていうメールも届いたことだし」

 

本当にユウとライトは友達なんだろうか。結構疑わしくなってきた。

 

「……あと三時間で日が沈む。出るなら急いだ方がいい」

 

そのムッツリーニの情報を受け、アタシ達は『ウルバス』を後にした。




うーん。やっぱり動きがないですね。
結果、この話で何も起こってませんからね……。
書いててびっくりしました。何もしてないのに四千文字いってるって。

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