僕とキリトとSAO   作:MUUK

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やたー!中間テストがおわたー!
思わず撥音便が抜けちゃう程嬉しさに打ち拉がれております。
でも、一ヶ月後には期末があるという鬼畜仕様。いやあ、世間は世知辛いですねっ!
というわけで、まず投稿です。



第三十八話「イチャイチャ…!?」

頭がこれまでの人生で最も真っ白になった。イヤイヤマテマテ。今、アレックスは何て言ったんだ?とっても魅力的な単語が聞こえたのは、僕の気のせいなのか?

兎も角、アレックスの言を頭の中で反復してみよう。そうすれば、僕の聞き間違いだと解る筈だ。

きせいじじつ……既成事実?どうしよう……やっぱり既成事実としか聞き取れ無い……。既成事実ってつまり、健全な男女が行うと言われている伝説のアレ?大人の階段を、ジェットエンジンでホップステップジャンプしちゃう奴?つまり、僕の推測が正しかったって事?

いや、そんな筈は無いだろう。そういう事は好きな相手とするものだ。僕とアレックスじゃ、そもそもの前提からして成り立たない。

じゃあ、アレックスが僕を好き?それも無いだろう。少なくとも、僕なら好きな相手に糸ミミズや超激辛生姜焼きを食べさせたり、麻痺毒入りの水を飲ませたりしない。

なら、考えられる可能性は、既成事実の意味が違うという事ぐらいだ。

うーん。やっぱり事故に見せかけた殺人の線が濃厚だろうか。確かに殺人なら、行ってしまえば既成の事実だ。

やだなあ。死にたく無いなあ……。

 

「ごめん……既成事実は出来れば作りたくないや……」

「なっ……まさか、そんな……絶対にOKを貰えると確信していたのに……」

 

残念ながら、僕は自らの死を快く肯定するような自殺志願者ではない。そんなのは、わざわざティアの横で女の子と喋るユウみたいなものだ。僕はユウほどバカじゃない。大事な事なのでもう一度。僕はユウほどバカじゃない。

 

「ああ……ライトさんの愛は何処へ消えてしまったのでしょう……。もしかして、ポケットの中にでも隠してるんですか?一回叩くと愛が二つって寸法ですねっ!」

「愛をビスケットに例えるのはいささか軽すぎるような気がするんだけど……」

 

そもそも、愛ってポケットに隠せる物なのだろうか?という事は、愛とは質量を持った物体として存在するということなのだろうか。そうなると、なるほど愛が重いというのは比喩でもなんでもなく、客観的事実の叙述という訳だ。

そんな、意味が無さ過ぎる思考を中断して、僕は『既成事実』について考える。

今のアレックスの反応からして、どうやら『既成事実』とは殺人を指す言葉では無いらしい。むしろ、今の反応で殺人の事だったとすれば、一体アレックスは僕をどんな人間だと思っているのだろう。すくなくとも、Mとかそういうレベルでは無い。

ダメだ。幾ら考えても埒が明かない。ならいっそ、アレックス本人に聞いてしまおうか。そう思い、僕はアレックスに訊ねた。

 

「ねえ、既成事実って具体的に何をするの?」

「そ、そんな事を女の子に聞いちゃうんですか!?」

 

何故かアレックスの顔は爆発しそうな程真っ赤に染め上げられている。

そんなに恥ずかしいがるような事聞いたかな?というか、堂々と既成事実って言っちゃう人が、内容を聞かれて口ごもるとは此れ如何に。

するとアレックスは、意を決したような顔つきで僕に向き直って言った。

 

「こ、子作りの事ですよぉ……」

 

穴があったら入りたいと顔に書きながら、アレックスは更にもう一段階顔を赤くして言った。

頭がこれまでの人生で最も真っ白になった。

あまりにも早い人生記録の更新に戸惑いつつも、僕は思った。え?マジで?よっしゃああぁぁあッ!と。

でも、本当にそういう事で納得していいのだろうか?僕にはどうにも、実は勘違いでした的なオチであるような気がして仕方が無い。

兎も角、もう一歩踏み込んでアレックスに聞いてみる事にしよう。楽しくなってきた。

感想を間違えた。これは決して、アレックスに羞恥プレイを強要している訳ではない。飽くまで、僕は真実が知りたいだけなのである。アレックスに恥ずかしいセリフを言わせて楽しんでいるなどという事は断じてない。

僕は真剣な眼差しを作り、少し低くした声でアレックスを問いただした。

 

「もっと具体的に、する事の内容を教えてくれないかな?」

「うぅぅ……。何で麻痺ってるライトさんが主導権を握ってるんですか……」

 

おっと。肝心なところに気づかれた。だが、ここで弱気を見せるのは完全なる愚行!一気に攻め立てる!

 

「質問の答えになってないよ?さあ、早く答えるんだ!」

「えっと……その……ちゅー、とか……」

 

数分前に声を大にして既成事実とか言ってたにも関わらず、消え入りそうな声音でアレックスは呟いた。

それにしてもチューとは、随分と当たり障りのないところから攻めてきたものだ。だけど、僕の猛攻はまだまだ止まらないよ!覚悟しろアレックス!激辛生姜焼きの恨みを思いしれ!

 

「ほら、他にもする事があるでしょ?」

「え?ちゅーの他にする事があるんですか?」

 

あれ?意外な反応だ。これまでの流れなら、ここはもっと恥ずかしがる場面だろう。

もしかして演技か?いや、アレックスが嘘をつけないことはとっくに知っている。

でも、この場合嘘をついてるとしか思えないし……。

うーん……取り敢えず、アレックスの質問に答えてみようかな。

 

「ほら、その……」

 

一瞬、続きを言うのを躊躇ったが、言いかけてしまったものはしょうがない。覚悟を決めて、僕は続く言葉を放言した。ええい、ままよ!

 

「セックスとか……」

 

ああ、ヤバイ。恥ずかしい。こんな事を僕はアレックスに強要して楽しんでいたのか。今更ながら何たる外道なんだ、僕。

というか、女子に言うセリフじゃないよなあ、これ。完全にセクハラだけど……まあ、アレックスだしいいや。

しかしアレックスは、僕の言葉に不思議そうに首を傾け、疑問形で言った。

 

「セックス?性別ですか?」

「ほえ?性別?」

 

何故だろうか。話が噛み合っていない気がする。何故いきなり性別なんて単語が出て来たんだろう。

取り敢えずもう一度、もう一度だけ確認してみよう。

 

「だって、子作りってつまりそういうことでしょ?」

「えっ!?子供って、ちゅーで出来るんじゃないんですかっ!?」

 

これまでの人生で最も頭が真っ白になった。またもや人生記録更新である。今日は厄日か。

しっかし、アレックスは本気で言っているのだろうか?子供の作り方を知らない女の子なんて、女子高生どころか、女子中学生にも居ないと思っていた。

というか、中学校の保健体育で習わなかったっけ?

僕の言えたことじゃないが、アレックスの学歴が心配になってきたので、取り敢えず訊ねてみることにした。

 

「アレックス。ちゃんと中学校に通った?」

「あれ?言ってませんでしたっけ?私、小学校も中学校も行ってないんですよ?」

 

ワァオ。義務教育とは何だったのか。

僕が放心していると、アレックスは慌てた様子で訂正した。

 

「ああっ!すいませんっ!言葉足らずでしたねっ!実は私、帰国子女でして、十六に日本の高校に転校してきたんですっ!」

「それでも義務教育は受けるものなんじゃないの!?」

 

それとも、僕が浅学なだけで義務教育が存在しない国もあるのだろうか?

 

「ああ、なるほど。そういう疑問ですねっ!大雑把に説明すると、そっちの国では、私立の小学校に通っておりまして、恥ずかしながら小五の時に退学させられちゃったんですよね〜」

「一体何をすれば小学五年生で退学処分を科されるんだ!」

 

男子高校生が教頭室を爆破しても退学処分にはならないのに!

 

「あれ?知りたい?知りたい感じですか?でもなあ、黒歴史だしなあ。どうしよっかなあ?」

「いや、むしろ恐ろしいから聞きたくないかな……」

 

そんな僕の言葉を、アレックスはブンブンと首と手を振って否定した。

 

「いやいや誤解ですっ!私はそんなに悪い事してないですよっ!まあ、説明すると長くなるんですが……」

 

なるほど、退学には事情があったのか。確かに、普通に考えて小学生で退学なんてただ事じゃない。

説明しようとするアレックスに、僕は真摯に耳を傾けた。

 

「それは、ラブリーチャーミングな敵役だった小学生の私が、遠足で迷子になっていた時の事でした」

 

どうやら小学生時代の彼女はロケット団だったらしい。

 

「何の敵なのさ!?」

「人類の」

「壮大過ぎる!」

 

するとアレックスは、辟易した顔で言った。

 

「なんなんですか?あんまり大声出さないで下さい。今は真面目な話をしているんですよ?」

「そう思うなら真面目な話にボケを挟まないでよ!」

「いいですね?これからはツッコミ無しですよ?」

 

いいだろう。そっちがその気なら、ツッコミ無しのボケの虚しさを教えてやる!

僕の沈黙を肯定と受け取ったのか、アレックスは説明を再開した。

 

「そこでまあ、遭難ついでにカエンタケでも採取して、クラスの男子の給食に混ぜ込んでやろうと謀りながら森の中を歩いてたんです」

 

カエンタケの毒性。

摂取後10分前後の短時間で症状が現れる。初期には消化器系の症状が強く、腹痛・嘔吐・水様性下痢を呈する。その後、めまい・手足のしびれ・呼吸困難・言語障害・白血球と血小板の減少および造血機能障害・全身の皮膚のびらん・肝不全・腎不全・呼吸器不全といった多彩な症状が現れ、致死率も高い。また回復しても、小脳の萎縮・言語障害・運動障害、あるいは脱毛や皮膚の剥落などの後遺症が残ることがある。(Wikipediaより抜粋)

 

当然ながら僕がカエンタケなんてキノコを知る由もないので、このアレックスの発言のツッコミ所がわからなかった。

アレックスは、どうやら早速僕が突っ込むと思っていたらしく、何の反応も示さない僕に不服そうにしながらも説明を続けた。

 

「……まあ、そこで一人のおじさんと出会ったんですね。そしておじさんは言いました。『愛莉ちゃんだね?おじさんと一緒においで』。言いながら、おじさんは私の手を痛いぐらいに強く握りました」

 

おおっと、まさかの展開だ。

森の中で歩いているなんて、精々くまさんに出会うくらいだと思っていたが、まさか『変なおじさん』に出会うとは。志村けんもびっくりである。

ところで、アレックスのリアル名は愛莉というのか。意味があるかは分からないが、知っておいて損は無いだろう。

 

「私のお母さんは常々『変なおじさんには金的をかまして逃げなさい』という金言を私に授けていましたので、その通りにして逃げたんです」

「うん。とてもアグレッシブなお母さんだね」

 

大声を出せ、とかではなく金的というのがミソだ。

 

「そして、命からがら逃げていると、運良く皆の所に戻る事が出来ました。しかしその現場は、何故か騒然としていました」

「アレックスが迷子だったから?」

「いえ、違います。実はその公園で傷害事件が起こり、とある男性が救急車で搬送される、その真っ最中なのでした」

 

あれ?オチが見えたぞ?

 

「その男性とは、まさに私が金的を入れた男性なのでしたっ!」

「だろうね!薄々気づいてたよ!」

「しかもその男性が、学校の理事長さんだったのですっ!」

「何が『私はそんなに悪い事してないですよっ!』だよ!悪い事しまくりじゃないか!純度百パーセントで自業自得だよ!」

「担任の先生が救出に来てくれるなら解りますよ?でもね、名前も顔も知らない理事長が来られても、ねえ?」

「自分を助けに来た人の事、全否定しやがった!」

「結果、理事長の男の人としての機能が使い物にならなくなったとかいう訳の分からない難癖つけられて、私は退学させらましたとさ。酷い話ですよね?」

「うん。酷い話だね。本当に可哀想だと思うよ」

 

理事長が。

 

「それからは、私は学校へ行かずに家庭教師の先生とだけ勉強しましたとさ。ちゃんちゃん」

 

そんなに軽いノリで流せる話では無いだろう。主に理事長の夫婦生活的な意味で。

しかしそう考えると、理事長の顔は覚えておかないと、いつの間にか失礼な事をしちゃうかもしれないな。えーっと、文月学園の理事長って……ああ、あの妖怪性悪ババアか。じゃあ大丈夫だな。僕はいつでも礼儀正しく接してるし。

僕が自分の素行を再確認した、まさにその時だった。僕らから少し離れたところから野太い悲鳴が聞こえて来たのだ。

切迫した雰囲気がひしひしと感じられる悲鳴に、僕とアレックスは、ほぼ同時に反応した。

 

「行きましょう、ライトさんっ!」

 

そう言って、アレックスは悲鳴の上がった方角へと駆け出した。

それに続き、僕も走り出そうと……あれ?身体に力が入らない。

その理由は、直ぐに見つかった。僕のHPゲージの横に燦々と光り輝く雷マーク。即ち、麻痺のデバフアイコンである。

 

「ちょっと待って、アレックス!麻痺ってる僕を置いてかないで!助けて!ヘルプミーーーーィィイイィィイイッ!




今回は新たな試みをしてみました。ハーメルン広しと言えどWikipediaより抜粋とも載せた小説は無いのでは?
いやホント、明久がカエンタケの説明し出すのも何かおかしいし、でもカエンタケの説明は載っけた方が良いよなあ、という葛藤の末の苦渋の決断だったんです!五秒は悩みました!
というか、またもやアノ人が登場しないという結果になってしまいました……。というか、そろそろ登場させなきゃなー、という事で、最後の展開をぶち込んだ感じですね。
それでは、次回をお楽しみに!

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