僕とキリトとSAO   作:MUUK

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テストが半分返ってきたのですが、今のところ、欠点科目がない!もしかしてこれ、追試も受けなくていいんじゃないですか?
とまあ、こんなことでテンションが上がってたのですが、更にテンションが上がる事態が!
なんと、念願の日間ランキングに乗りました!順位は三十一位です!
そして、平均評価が9.5となりました!ハーメルン内トップです!
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第二十二話「アクティベート」

「…………うわぁ……綺麗……」

 

ティアからあどけない声が口をついて出た。

しかし、それに対して何も反応出来ないほど、この光景は、むしろ清らかと想えるほどに明媚だった。

樹齢何百年とも知れないような木々の梢から落ちる木漏れ日は、水分を含んだ苔に反射し、キラキラと輝いている。

それ自体が、一つの木と思えるほどの、どっしりとした安心感のある枝には、クリッターオブジェクト……いや、こんな言い方は無粋だろう。小鳥達が止まり木にし、細く、可愛らしい鳴き声が、木立の間に谺している。

まどろっこしい表現を抜きにして、一言でこの光景を比喩するならば『妖精の森』が適当だろうか。

 

「うん……本当に綺麗……。此処まで登ってきた甲斐があったわ……」

 

いつもの、クールなアスナさんは何処へやら。今はアスナも、ただただ感嘆の声を洩らしている。

第二層のフィールドは、何処までも草原が広がり、碧い岩肌の見えた、アルプスの山の牧場、みたいな風情だったが、この層のテーマは、確実に森だろう。

すると、ホロウインドウに何かをタイピングし終わったキリトが、地に生えた若葉色の草を靴先で弄びながら言った。

 

「よし、アルゴに情報も送ったし、そろそろ主街区に行くか!」

「うん!」

「そういえば、ライト。お前、武器装備しなくていいのか?」

 

ああ、そうか。ユウ達との賭けの期間は、第二層いっぱいだったから、もう片手剣を装備してもいいのか。

 

「いやでも、やっぱりいいかな。もう結構、素手の奴っていうので名前通っちゃってるし」

「悪評しか通ってねえけどな」

「うるさいな!」

 

それが一番気にしてるとこなのに!

 

「……街で『素手で攻略に挑むなど、バカの極みでござるなあ、デュフッ、デュフフフッ』っていう声を聞いた」

 

何故だろう。そいつにバカにされても、全く気にならない。

 

「お喋りもいいけど、主街区に行くんじゃなかったの?」

 

優子の、締まりのある凛とした声が鼓膜に響いた。

 

「そうだね。転移門がアクティベートされるのを待ってる人もいることだし、そろそろ行こうか!」

 

その僕の声をきっかけに、僕らは歩を進め出した。

 

 

「こ、こいつ美味しいのかな……?」

 

そう言った僕の視線の先にいたのは、丸々と太った、淡いピンク色の、完璧としか言いようのないほどに完璧なブタだった。

 

「その子は、ホワイトピギーっていうんですよ」

 

テコテコと歩くブタを、欲望たっぷりの目線で凝視する僕にそう言ったのは、元ベータテスターのアレックスだった。

 

「で、美味しいの?」

「もっとこう……可愛いとか、そう言う感想ないんですか……?」

 

あれ?僕まさか、アレックス相手に呆れられてる!?くそぅ、僕より常識ないと思ってたのに……。

まあ、確かに言われてみるとちょっと可愛いかもしれない。

クリクリの黒目。デフォルメされた太った身体は、きっと触るとプニプニだろう。

クウクウと可愛らしい声で鳴いているのも、ポイントが高い。

うん。こう見ると、結構可愛い。

 

「多分味は、普通のブタさんと同じだったと思いますよ。異常に湧くので、ベータのときは、料理スキルのスキル上げのために虐殺されてましたね」

「返して!僕の可愛らしいと思った一瞬を返して!」

 

上げて落とすとは……なんて惨たらしいことをするんだ!

 

「でも、料理スキルか……。それはちょっと興味あるな」

「え?取るんですか?果てし無く面倒臭いですよ?」

「うん……。でも、料理ってそういうもんだしね」

 

むしろ、努力を省くと、料理をしてる感じがしない。

 

「スキルスロットは、一応四つのうち一つ余ってるから、取れないこともないんだけど……」

「いいんじゃないですか?取っちゃえ取っちゃえーっ!」

 

超他人事だな!びっくりだよ!

 

「ちなみに、三つは何を取ってるんですか?」

「えーっと、体術スキルと、片手直剣スキルと、聞き耳スキルだよ」

「えっ!?聞き耳スキル!?ライトさんって、変態さんだったんですねっ!」

「いや、違うよっ!?やましいことには使ってないからねっ!?」

「すいません。喋りかけないで下さい。変態がうつります」

「変態ってうつるもんだったっけ!?」

「あ!変態であることは否定しませんでしたね!」

「いや、違う!今のは言葉の綾で!」

 

どうしよう。なんか、涙出てきた。

 

「とまあ、冗談はさておき、本当に料理スキルを取るつもりですか?」

「ああ……冗談だったんだ……。良かった……」

「別に本気でも構わないですけど?」

「嫌あーっ!辞めて!冗談であって!」

「ふふっ!ライトさんを弄るのって面白いですねっ!」

 

そんな面白さ、発見しないで欲しい。

 

「えっと……料理スキルだよね。うん、取ろうかな」

「さいですか。じゃあ勝手に頑張って下さい」

「あれっ?思ってたより反応薄いな?」

 

というか、冷たい。

あれ?なんかゴソゴソしてるな。何やってんだろ?

 

「はい、これっ!ブタさん一匹、絞め殺しておきましたよっ!」

「嫌あーっ!」

 

 

「ふう……長い道のりだったね……」

「いや……お前らが勝手に騒いでただけだと思うんだが……」

 

うん。ユウの言うとおり、それで正解だと思う。

まさかアレックスが、自分から可愛いって言ってたブタを、あんなに大量に惨殺していくとは……。

恐怖を通り越して、平伏してしまった。

 

「じゃ、転移門をアクティベートしようぜ」

 

脇目も振らないキリトに、僕らもついていく。

そして、第三層転移門だ。

形状は、第二層と同じで、大理石っぽい素材で出来たアーチの中が、水面のようにたゆたい、歪んでいる。

 

「ここはひとつ、リーダーに有効化してもらおうか」

 

そう言ったキリトの視線の先には、無頓着に佇むユウの姿があった。

 

「え?お、俺か?」

「おう。何か変か?」

「いや、まあ別にいいんだが……」

 

そう言って、ユウは、歪む空間へと手を翳した。

虹彩に焼きつくような閃光がほとばしる。

そして、数秒後、透明だった水面は青い光を放ち、最初の転送者を迎え入れた。

 

「よっしゃーーっ!一番乗りだぁっ!」

 

そう言って飛び出してきたのは、小学校中学年くらいの、僕の胸ほどの背丈しかない小さな男の子だった。

しかしながら、装備品はなかなかのもので、最前線でも通用するのではないかと思えるほとだった。

 

「待ってよ、ファルコン!」

 

そう言ってこけそうになりながらも、飛び出してきたのは、これまた年端もいかない、小さな女の子だった。

光沢のある、夜空のような黒髪と、純白のワンピースが特徴的なその子は、ファルコンと呼んだ男の子に必死に追いすがろうとする。

そのとき、唐突にファルコンが僕らに向き直ったかと思うと、元気いっぱいの声で言った。

 

「ボス攻略お疲れ様です!俺もいつか、皆さんみたいな攻略組のプレイヤーになるのが夢なんです!」

「うん。頑張って。君ならきっと出来るよ」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

嬉しそうに応えると、ファルコンはぺこりと一礼し、それに合わせて女の子も頭を下げ、商店街へと消えていった。

僕はその背中を見つめながら思った。

あんな小さな子達でさえ、この世界に閉じ込められながらも、必死に戦っているんだ。必死に生きているんだ。

だからこそ、僕らも戦わなきゃいけない。このデスゲームを出来るだけ、出来るだけ早く終わらせるために。

気持ちを新たにしながら、僕らは、夕陽が差す石畳の街道を歩き出した。

ふと、空を見上げると、まだ見ぬ四層の底にオレンジ色が映っている。

そこに、ふわりと飛んでいたカラスが、僕にはどうにも不気味に見えた。




元々、今回の話のタイトルは、ギルド結成クエストにして居たのですが、ギルド結成クエストのギの字も見えなかったので、急遽、タイトルを変更しました……。
何故だっ!何故僕は、次から次へとプラスαで話をぶち込んでしまうんだ!

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