とまあ、こんなことでテンションが上がってたのですが、更にテンションが上がる事態が!
なんと、念願の日間ランキングに乗りました!順位は三十一位です!
そして、平均評価が9.5となりました!ハーメルン内トップです!
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「…………うわぁ……綺麗……」
ティアからあどけない声が口をついて出た。
しかし、それに対して何も反応出来ないほど、この光景は、むしろ清らかと想えるほどに明媚だった。
樹齢何百年とも知れないような木々の梢から落ちる木漏れ日は、水分を含んだ苔に反射し、キラキラと輝いている。
それ自体が、一つの木と思えるほどの、どっしりとした安心感のある枝には、クリッターオブジェクト……いや、こんな言い方は無粋だろう。小鳥達が止まり木にし、細く、可愛らしい鳴き声が、木立の間に谺している。
まどろっこしい表現を抜きにして、一言でこの光景を比喩するならば『妖精の森』が適当だろうか。
「うん……本当に綺麗……。此処まで登ってきた甲斐があったわ……」
いつもの、クールなアスナさんは何処へやら。今はアスナも、ただただ感嘆の声を洩らしている。
第二層のフィールドは、何処までも草原が広がり、碧い岩肌の見えた、アルプスの山の牧場、みたいな風情だったが、この層のテーマは、確実に森だろう。
すると、ホロウインドウに何かをタイピングし終わったキリトが、地に生えた若葉色の草を靴先で弄びながら言った。
「よし、アルゴに情報も送ったし、そろそろ主街区に行くか!」
「うん!」
「そういえば、ライト。お前、武器装備しなくていいのか?」
ああ、そうか。ユウ達との賭けの期間は、第二層いっぱいだったから、もう片手剣を装備してもいいのか。
「いやでも、やっぱりいいかな。もう結構、素手の奴っていうので名前通っちゃってるし」
「悪評しか通ってねえけどな」
「うるさいな!」
それが一番気にしてるとこなのに!
「……街で『素手で攻略に挑むなど、バカの極みでござるなあ、デュフッ、デュフフフッ』っていう声を聞いた」
何故だろう。そいつにバカにされても、全く気にならない。
「お喋りもいいけど、主街区に行くんじゃなかったの?」
優子の、締まりのある凛とした声が鼓膜に響いた。
「そうだね。転移門がアクティベートされるのを待ってる人もいることだし、そろそろ行こうか!」
その僕の声をきっかけに、僕らは歩を進め出した。
☆
「こ、こいつ美味しいのかな……?」
そう言った僕の視線の先にいたのは、丸々と太った、淡いピンク色の、完璧としか言いようのないほどに完璧なブタだった。
「その子は、ホワイトピギーっていうんですよ」
テコテコと歩くブタを、欲望たっぷりの目線で凝視する僕にそう言ったのは、元ベータテスターのアレックスだった。
「で、美味しいの?」
「もっとこう……可愛いとか、そう言う感想ないんですか……?」
あれ?僕まさか、アレックス相手に呆れられてる!?くそぅ、僕より常識ないと思ってたのに……。
まあ、確かに言われてみるとちょっと可愛いかもしれない。
クリクリの黒目。デフォルメされた太った身体は、きっと触るとプニプニだろう。
クウクウと可愛らしい声で鳴いているのも、ポイントが高い。
うん。こう見ると、結構可愛い。
「多分味は、普通のブタさんと同じだったと思いますよ。異常に湧くので、ベータのときは、料理スキルのスキル上げのために虐殺されてましたね」
「返して!僕の可愛らしいと思った一瞬を返して!」
上げて落とすとは……なんて惨たらしいことをするんだ!
「でも、料理スキルか……。それはちょっと興味あるな」
「え?取るんですか?果てし無く面倒臭いですよ?」
「うん……。でも、料理ってそういうもんだしね」
むしろ、努力を省くと、料理をしてる感じがしない。
「スキルスロットは、一応四つのうち一つ余ってるから、取れないこともないんだけど……」
「いいんじゃないですか?取っちゃえ取っちゃえーっ!」
超他人事だな!びっくりだよ!
「ちなみに、三つは何を取ってるんですか?」
「えーっと、体術スキルと、片手直剣スキルと、聞き耳スキルだよ」
「えっ!?聞き耳スキル!?ライトさんって、変態さんだったんですねっ!」
「いや、違うよっ!?やましいことには使ってないからねっ!?」
「すいません。喋りかけないで下さい。変態がうつります」
「変態ってうつるもんだったっけ!?」
「あ!変態であることは否定しませんでしたね!」
「いや、違う!今のは言葉の綾で!」
どうしよう。なんか、涙出てきた。
「とまあ、冗談はさておき、本当に料理スキルを取るつもりですか?」
「ああ……冗談だったんだ……。良かった……」
「別に本気でも構わないですけど?」
「嫌あーっ!辞めて!冗談であって!」
「ふふっ!ライトさんを弄るのって面白いですねっ!」
そんな面白さ、発見しないで欲しい。
「えっと……料理スキルだよね。うん、取ろうかな」
「さいですか。じゃあ勝手に頑張って下さい」
「あれっ?思ってたより反応薄いな?」
というか、冷たい。
あれ?なんかゴソゴソしてるな。何やってんだろ?
「はい、これっ!ブタさん一匹、絞め殺しておきましたよっ!」
「嫌あーっ!」
☆
「ふう……長い道のりだったね……」
「いや……お前らが勝手に騒いでただけだと思うんだが……」
うん。ユウの言うとおり、それで正解だと思う。
まさかアレックスが、自分から可愛いって言ってたブタを、あんなに大量に惨殺していくとは……。
恐怖を通り越して、平伏してしまった。
「じゃ、転移門をアクティベートしようぜ」
脇目も振らないキリトに、僕らもついていく。
そして、第三層転移門だ。
形状は、第二層と同じで、大理石っぽい素材で出来たアーチの中が、水面のようにたゆたい、歪んでいる。
「ここはひとつ、リーダーに有効化してもらおうか」
そう言ったキリトの視線の先には、無頓着に佇むユウの姿があった。
「え?お、俺か?」
「おう。何か変か?」
「いや、まあ別にいいんだが……」
そう言って、ユウは、歪む空間へと手を翳した。
虹彩に焼きつくような閃光がほとばしる。
そして、数秒後、透明だった水面は青い光を放ち、最初の転送者を迎え入れた。
「よっしゃーーっ!一番乗りだぁっ!」
そう言って飛び出してきたのは、小学校中学年くらいの、僕の胸ほどの背丈しかない小さな男の子だった。
しかしながら、装備品はなかなかのもので、最前線でも通用するのではないかと思えるほとだった。
「待ってよ、ファルコン!」
そう言ってこけそうになりながらも、飛び出してきたのは、これまた年端もいかない、小さな女の子だった。
光沢のある、夜空のような黒髪と、純白のワンピースが特徴的なその子は、ファルコンと呼んだ男の子に必死に追いすがろうとする。
そのとき、唐突にファルコンが僕らに向き直ったかと思うと、元気いっぱいの声で言った。
「ボス攻略お疲れ様です!俺もいつか、皆さんみたいな攻略組のプレイヤーになるのが夢なんです!」
「うん。頑張って。君ならきっと出来るよ」
「は、はい!ありがとうございます!」
嬉しそうに応えると、ファルコンはぺこりと一礼し、それに合わせて女の子も頭を下げ、商店街へと消えていった。
僕はその背中を見つめながら思った。
あんな小さな子達でさえ、この世界に閉じ込められながらも、必死に戦っているんだ。必死に生きているんだ。
だからこそ、僕らも戦わなきゃいけない。このデスゲームを出来るだけ、出来るだけ早く終わらせるために。
気持ちを新たにしながら、僕らは、夕陽が差す石畳の街道を歩き出した。
ふと、空を見上げると、まだ見ぬ四層の底にオレンジ色が映っている。
そこに、ふわりと飛んでいたカラスが、僕にはどうにも不気味に見えた。
元々、今回の話のタイトルは、ギルド結成クエストにして居たのですが、ギルド結成クエストのギの字も見えなかったので、急遽、タイトルを変更しました……。
何故だっ!何故僕は、次から次へとプラスαで話をぶち込んでしまうんだ!