僕とキリトとSAO   作:MUUK

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はい、今回からオリ話に入ります!
ちょっとネタバレすると、この小説には、原作には無い設定が含まれておりまして、それが、今回から本格的に出始めます。
ちなみに今回は、いうほどオリ展開でもありません。

では、僕自身初のオリ話始まります!


第二十一話「友達」

僕らは今、第二層迷宮区から第三層までの外階段を登っている。

石造りの階段は、一段一段中に浮いているくせに、踏み出すと妙な安心感を与えてくれる。

 

「何で、わたし達が使いっ走りみたいなことしなくちゃならないのかしら……」

 

アスナが、いかにも納得がいかないというふうに愚痴をこぼす。

キリト、アスナ、ユウ、秀吉、ムッツリーニ、ティア、リーベ、優子、アレックス、そして僕の十人は、三層転移門のアクティベートと、第二層ボス攻略成功の情報の拡散というお使いを、リンドから頼まれてしまっているのだ。

 

「しょうがないよ。僕らは山分けを辞退したんだから」

 

愚痴るアスナに、僕はそう言った。

山分けというのは、元アステリオス王の部屋で行われているもので、レジェンドブレイブスの装備品を、全パーティでオークションにかけるという話だ。

結局、レジェンドブレイブスのメンバーが、ネズハの仲間だということを名乗り出たので、装備を売ってコルに変換し、詐欺被害にあったプレイヤー達に、賠償金を支払うことが可能となった訳だ。

しかし、NPCの雑貨屋に売るという手段は却下された。何故なら、NPCの店の買い取り金額は総じて、相場より低い値で取り引きされてしまうのだ。

しかし、レジェンドブレイブスの高額装備を買い取れるほどの財力を持つプレイヤーなど殆どいない。つまり、今現在、ボス部屋にいるあの最前線プレイヤー達ぐらいしか、買い取れる者はいないのだ。

だからこそのオークションである。そして、そこで出たお金で、詐欺により騙し取られた武器の相場分だけ、詐欺被害にあったプレイヤー達に分配するらしい。

そして、強化詐欺にあったせいで死んだプレイヤーの話だが、オルランド達は、せめてその仲間に謝罪をしに行きたいから名前を教えてほしい、と言ったのだが、痩身のダガー使いは、訥々と「噂で聞いた話だから名前は知らない」とか言いやがった。一発、ぶん殴ってやりたかった。

そして、オークションに出品されたものを一巡見て回ったものの、スピード型の僕に合う装備が無かったので、買い取りを辞めた。

そして、他のみんなも、思い思いの理由でオークションの参加を辞めたのだ。

しかし今度は、リンドが僕達に「なら、三層の有効化をしておいてくれないか?それと、新聞屋に、第二層ボス攻略の情報を伝えておいてくれ」と言ってきたので、どっちにしろ面倒臭い事を押し付けられたなあ、と思い、階段をだべりながらゆったりと登っているという訳だ。

 

 

「あそこまで、完全に装備を剥ぎ取られて、あの人達、前線に戻ってこれるのかな?」

 

興味と心配が等量に入り混じった顔で、薄く緑掛かった髪色が特徴のボーイッシュな女の子、リーベがそう言った。

その疑問には、さして興味もなさそうにユウが答えた。

 

「まあ、やる気と根気がありゃいけるだろ。見た感じ、技術はなかなかのもんだったしな」

「別れ際にリンドにちょっと確認したけど、もしブレイブスにその気があるんなら、最小限必要な装備を整えられるだけのコルは戻すって言ってたよ」

 

そう付け足したのはキリトだった。その言葉に、僕は内心胸をほっと撫で下ろした。

帰ってきて……いや、帰って来い、ネズハ。だってそれが、それこそが君の望んだ剣士としての道なんだから。

迷宮区の外周に備えつけられた階段を半分ほど登ったところで、可愛らしい声で秀吉が言った。

 

「ところでキリトよ。転移門を有効化した後はどうするんじゃ?」

「うーん……そうだなあ。まず、出来ることは二つあるんだけど、この三層には九層まで続くっていう、めちゃくちゃ大規模なキャンペーンクエストがあるんだけど、それを受けるのが一つ。もう一つは……」

 

キリトの言葉は、そこで突然途切れた。よく見ると、キリトの面持ちには、少し影が差している。

 

「ギルド結成クエストが受けられるんですよ。これが言いたかったんですよね、キリトさん?」

 

そう言ったのは、意外なことにアレックスだった。

彼女は、毅然とした態度で、じっとキリトを見つめている。

キリトは、欺瞞を抱えた瞳で彼女を見つめ返し、言った。

 

「なんで、君はそんなこと知ってるんだ?」

「あれ?覚えてないんですか?私達、一緒にそのクエスト受けたじゃないですか」

 

アレックスの言ってる意味がわからない。今、三層が開通したのに、一緒にギルド結成クエストを受けた、なんて、何を言ってるんだ。

理解できないのは、キリトも同じだったようで、眉間にしわを寄せ、顎に手を当てて、考え込んでいた。

そしてキリトは、石段を十段ほど登ったところで、唐突に目を見開き、声を上げた。

 

「…………え?あ……あっ!も、もしかしてお前、あのアレックス……なのか?」

「多分、その想像で間違いないと思います」

 

二人は何を言ってるんだ?僕の脳の理解のキャパを、二人の会話は、八テラバイトほどオーバーしてしまっている。

ちなみに、僕のキャパは三キロバイトぐらいだ。

すると、そんな僕を見て、優子が叫ぶように言った。

 

「え!?ラ、ライト!?目玉が横回転してるわよ!?」

 

どういう状況だ、僕の顔。

 

「あー……えーっと、分かり難かったですかね?実は私、ベータテスターだったんです」

「ラ、ライト!?黒目が縦横無尽に駆け回ってるんだけど!?」

 

えーと、ベータアレックスがテストの目玉?

そして僕は、考えることを辞めた。

そんな僕を無視して、キリトは話を続けた。

 

「いや、でもあの時のお前のアバター、Mだったよな?」

「Mだから、こんな名前にしてたんですよっ!それなのに、現実の根暗な私になっちゃって……」

 

少なくとも根暗ではないと確信できる。

ちなみに、Mというのは、Maleの略、つまりアレックスは、ベータ版ではネナベだったわけだ。

 

「話を戻しましょうか。キリトさん。あなたが、ギルド結成クエストという言葉に言い淀んだのは、自分は、ライトさん達のギルドに入れない、もしくは、入らない方がいいと思ってるからですよね?」

 

珍しく真剣さを伴ったアレックスの言葉に、オーバーヒートしていた僕の頭が、クールダウンしていく。

アレックスの言葉に小さく首肯したキリトの面持ちには、深い暗さが露呈していた。

 

「私は、このギルドに参加させて頂こうと思っています。もし断られたとしても、何度でも頼み込んで」

 

アレックスの革靴と石段がコツンと音を立て、反響が虚空へと消える。

 

「あなたが、一層でしたことは、私も聞き及んでおります。確かにそれは、英雄的な行動だったことでしょう。ですがそれは、ギルドに入ってはいけない理由になりますか?それは、仲間を遠ざける理由になりますか?それは、貴方が勝手に壁を作って高を括っているだけに過ぎません。もっと仲間を信じてください。私が信じられないのなら、せめてライトさんだけでも信じてください。私達は、貴方が思うほど弱くない」

 

ああ、確かに君強く気高い。僕なんかとは、比べるべくもないほどに。僕に言えなかったことを、当然のように言ってのける。

僕は思い出していた。自らの力の無さに慟哭し、彼を救えないことに憤った、あの後悔の涙を。

そして僕は、無意識の内に、キリトに手を差し出していた。

 

「…………キリト」

「………………ゴメン……ライト……」

 

キリトの表情を見て、反射的に手を引いてしまいそうになる。しかし、すんでのところで踏みとどまる。

キリトは、鎮痛な面持ちを崩さない。

そのとき、僕の背中に手が当てられた。振り向くと、そこには、アバターの顔に穏やかな笑みを浮かべたアレックスが立っていた。

 

「頑張れっ!」

 

それだけ言うと、彼女は、僕の背をポンっと押した。

ありがとう、アレックス。そうだね。此処で誘うことを辞めたら、僕はまた絶対に後悔する。

僕は、第一層のボス部屋でキリトが、自分を犠牲にするのを止められなかった。

それ以来、僕は何度、自らを苛んだか知れない。あの時、キリトを止められていれば、あの時、僕を縛るムッツリーニを振りほどき、キリトの言葉を遮っていれば、と。

だからこそ、僕はもう、後悔だけはしたくない!

僕は、無気力に下げられていたキリトの手を強引に掴み、言った。

 

「キリト!僕らのギルドに入れ!」

 

強引でもなんでもいい。僕は、キリトと友達であり続けたいんだ!

キリトは伏せていた顔をはっと上げると、数回瞬きをしたあと、優しげな笑顔になり、言った。

 

「ああ……ありがとう」




計五人の方が投票してくださったおかげで、ついに、平均評価が表示されるようになったのですが、平均評価9.2とな!?
調べてみると、ハーメルンで二番目という快挙。本当にこんなに高評価をもらっていいのでしょうか。
兎にも角にも、嬉しさに打ち震えている筆者です。

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