魔法少女 リリカルなのはStS,EX   作:ラナ・テスタメント

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「最初に剣を持ったのは、六歳くらいの時だった。ただ奮いただ振るい、でも、いつも何か掴めない気がしてた。けど、今なら何か掴める気がする。舞台に上がる為に必要な事。あの背中を追う為に必要な事。今、それらは俺の中では存在しない。ただ俺は語り合いに夢中になっていく。魔法少女リリカルなのはStS,EX、始まります」


第六話「その名は」

 剣音が響き渡る。それは、まるで一つの音楽を彷彿とさせた。

 時空管理局嘱託魔導師試験。実技模擬戦。

 神庭シオンはヴォルケン・リッターのシグナムと剣劇を演じていた。

 

「おぉ!」

 

 吠える。届けと。そして大上段に構えた自らの大剣型のデバイス、イクスを振り下ろす――しかし。

 

「ふっ!」

 

 その斬撃は、あっさりと斬り流されてしまった。

 一撃の重みはシオンが上だが、シグナムの技量は半端ではない。

 この技量の差は簡単には埋められない。一撃を斬り流したレヴァンティンがそのままシオンの首を狙う。シオンは後退し、ぎりぎりで躱した。そのまま、数メートルも下がる。だが、シグナムは待たない。

 

「レヴァンティン!」

【エクスプロージョン!!】

 

 ロードカートリッジ。片刃の剣型アームドデバイス、レヴァンティンの柄がまるで引き金を弾くように上下から重なり合う。そして、レヴァンティンはその姿を変えた。

 連結刃。その名の通り、連なり結ばれた刃が伸長し、蛇の如く身をくねらせてシオンへと襲い掛かる!

 

    −閃!−

 

「ぐっ……!」

 

 正面から飛来したレヴァンティンを、首を反らせてなんとか躱す。しかし、レヴァンティンはそのままシオンを包囲し、さらにその首を擡げて全方位から殺到した。このままでは、やられる!

 

「っの! 四ノ太刀、裂波!」

 

    −波−

 

 叫びと共に振るわれたイクス――片刃の大剣型デバイスから空間に波紋が広がり、襲い掛かるレヴァンティンを一斉に叩いた。一瞬だけ包囲が緩み――同時に、開いた隙間からシオンは全力で飛び出す。

 瞬動だ。そして、行き先はシグナムの眼前。

 連結刃の状態のレヴァンティンは直ぐに戻す事は出来ない。その隙を突き、疾走する。そして、勢いのままに斬撃を放つ!

 

    −戟!−

 

 渾身の一撃、しかし放たれたイクスは、シグナムの左手に握られた鞘によって受け止められていた。

 

「ぐっ!?」

「はぁぁっ!」

 

    −撃!−

 

 直後、怯んだ隙に、蹴りを顔に叩き付けられた。

 体勢を崩すシオンへと、更に連結刃を解除したレヴァンティンを叩きつける。

 だが、その刃をシオンはがむしゃらに、しゃがむ事でやり過ごした。同時にイクスを翻し、真下からの斬撃を放つ――が、シグナムはその場で後ろに倒れ込むように宙返りを敢行し、斬撃を躱した。

 そして、シグナムは体勢を整える為に、シオンはイクスを引き戻す為。互いに、間が開いた――。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「やるものだな」

 

 管理局本局第六訓練室。今、神庭シオンの嘱託魔導師試験の模擬戦が行われている部屋の前で、高町なのは、クロノ・ハラオウン、フェイト・T・ハラオウン、八神はやてが観戦していた。

 いや、クロノは試験官なのだが――完全にギャラリーとなっていた。

 

「うん、ちゃんと教えた通り出来てる」

 

 なのはが嬉しそうな声をあげる。今のシオンとシグナムの立ち会いは、彼女にとって満足のいくものであったか。

 

「シオンって前、なのはとの模擬戦じゃ結構アクロバティックな事してたよね? 試験じゃ、あまり派手な動きしてないけど――あれは、なのはが?」

 

 そんななのはに、フェイトが尋ねる。

 いつかの模擬戦で、シオンは、カラバ式の特徴である空間に足場を形成してのアクロバティックな動きを使っていた。だが今回はその使用頻度が少なかったからだろう。なのはは、フェイトに頷く。

 

「うん。あの動きはかなり隙が大きいから、滅多な事じゃ使わないように教えたんだよ」

 

 実際、なのはとの模擬戦では攻撃を躱した直後に生じた隙を突かれての撃破が多かったのだ。その為、試験までの期間、なのははシオンに一切の足場形成を禁じた。

 その甲斐があったのか、シオンは足を地につけての安定した戦い方を覚えていった訳だ。

 

「流石やね、結構シグナムが戦い辛そうにしてるし」

「何事も安定した戦い方というのは相手にとってはやりづらいからな」

 

 はやてとクロノが感心したように頷いた。しかし、とクロノは続ける。

 

「神庭シオンはシグナム相手に接近戦のみで戦うつもりか? 技量の差は身を持って解っただろうに」

「ううん、あれでいいんだよ」

 

 そんなクロノの疑問になのは首を振った。そのままきっぱりと言う。

 

「技量の差があるからこそ、前に出て戦わなきゃ。後ろに下がると後は一方的にやられちゃうだけだから」

 

 成る程と、一同は納得したように頷いた。

 高町なのは。自分より上の存在との戦闘を数多く行い、その全てを制した言葉はとても説得力があった。

 

「なのはさーん!」

「あ、スバル、それにティアナも!」

 

 唐突に呼ばれ、そちらに振り向くと見慣れたコンビがこちらに駆けて来るのを一同は見た。スバル・ナカジマと、ティアナ・ランスターである。近くまで来た二人に、なのはは笑顔になりながらも、疑問を放った。

 

「どうしたの? 引き継ぎとかいろいろ忙しいんじゃない?」

「いえ、たまたま時間が空いちゃいまして。ね、ティア?」

「ん……そうね」

 

 にこやかに答えるスバルに、ティアナが投げやりな返事を返す。

 確かに、奇跡的にこの忙しい中、たまたま時間が出来た。

 だが、いつの間にやら元相棒が本局に来ていて。

 まぁ時間あるからと、話しをしていたら、いつの間にかここまで来ていたのである。スバル、なかなかの確信犯っぷりであった。

 

《この借り、楽しみにしてなさいよ?》

「あは、あははー」

 

 ティアナのかなりドスの効いた念話に、冷や汗をかきながら渇いた笑いを返すスバル。その様子を、なのは達が疑問符を浮かべながら見ていると、またまた聞き慣れた声が来た。

 

「お、なんだオメー達も来てたのか?」

 

 今度はヴィータとシャマル、リインフォースⅡこと、リインとアギトである。模擬戦の相手がシグナムだから観戦に来たのか。

 

【なのはさん達も応援に来たですかー?】

 

 リインの問いに、なのはも微笑みながら頷く。そして、こちらも同じ質問を返した。

 

「うん。リインもかな?」

【はいです♪】

 

 こちらの問いにリインも元気よく答えてくれた。そんな彼女に微笑しながら、ヴィータが続く。

 

「ちなみにあたしはちび二人の引率な?」

 

 笑いながら言うと、横からアギトが嫌そうな顔をヴィータに向けた。

 

【ちびってのは、あたしの事か!】

 

 聞くまでも無い問いであるが、一同笑顔で誤魔化す事にした。……つまらない事で、誰も燃やされたくは無い。

 

【ちなみに、あたしはシグナムを応援すっからな!】

「わーった。わーった」

 

 ヴィータの気のない返事に、さらにヒートアップするアギト。ちなみにシャマルは完全な冷やかしらしい――しかし。

 

「……すごい人数になってきたな」

 

 クロノの呟きに、なのはもあははと苦笑いする。

 その直後に、さらにエリオとキャロが合流するに至って、クロノは声を上げた。

 

「待った待った! 流石に人数が多過ぎる。確か、ミーティングルームの空きがあったはずだからそこに移動しよう!」

 

 どう考えても通路にこれだけ集まるのは異様である。この提案は至極真っ当なものであった。当然皆に異論がある筈も無く、一同『は〜〜〜〜〜〜い』と、頷いたのであった。

 

 クロノ・ハラオウン。二児の父である働き盛りの青年は、ますます保護者気質になっていたのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ふむ……」

 

 シオンと対峙し、シグナムは息を一つ吐く。今の剣撃で、シグナムの中でのシオンの評価は、筋はいい――で、あった。だがそれ故に。

 

 ……これ以上は酷か?

 

 そう思う。シオンがなかなかの使い手だった為に、シグナムもつい楽しくなってしまって、決着を長引かせてしまった。

 だが、自分とシオンの間には、技量にかなりの差がある。

 これ以上は、はっきり言って勝負にならないだろう。

 

 さて、どうやって……ん?

 

 ふと、違和感を覚えてシオンを見遣る。シオンの顔に浮かぶもの。そこにあるのは――笑みだった。

 獰猛な、獣のような笑み。だが、その笑いを。その目を。シグナムは純粋な子供のようだと思った。

 

「楽しいな!」

 

 笑いながら話しかけてくる。それは、シグナムが思い描いていたシオンの感想ではなかった。

 シグナムの予想では、技量の差にかなり追い詰められていると思っていたのだ。だが――。

 

「アンタと戦ってると――」

 

 シオンがイクスを振りかぶる。大上段だ。シグナムはすぐに反応するのを忘れ、だが瞬時にレヴァンティンを受けに構えた。

 

「――自分が強くなっていってるって――」

 

    −轟−

 

 魔力が吹き上がる。シオンの足元から膨大な勢いでだ。それは、一気にその身を加速させた。

 

 だが……!

 

 今までも、シオンは斬撃に魔力放出を乗せて威力強化を計っていた。

 その一撃もシグナムは受け流していたのである。もはや通用する筈も無い――その筈だった。

 だが、シオンの放出していた魔力は、今までのようにただ放出されるのではなく、一つの流れのように束ねられていた。

 

 そして、激流のようにイクスと共にシグナムに叩きつけられる!

 

「――実感できるっ!」

 

    −撃!−

 

「がっあ……!」

 

 撃音。凄まじいまでの撃音と共に叩き付けられた一撃を、シグナムは受け流せず数メートルも吹き飛ばされた。

 

「なん、だ……今のは?」

 

 なんとか着地して、シグナムは呆然とシオンを見た。その顔に浮かぶのは相変わらずの笑み。

 だが自分と先程、剣撃を繰り広げていた時とは明らかに違う。それは、魔力だ。

 魔力放出。シオンのアビリティースキルだが、シオンは今までとまるで違う方法でその魔力を用いていたのである。

 

「まだだっ!」

 

 呆然とする彼女に構わず、シオンは瞬動でシグナムに接近する。疾い。

 次は右からの斬撃だ。レヴァンティンを防御に向けながら、シグナムは見た。

 シオンから吹き出ている魔力、それが足元から螺旋を描き、そして、刀身に巻き付いているのを!

 

    −戟!−

 

「ぐっ――っぅ!」

 

 シグナムは受け止めこそしたが、その衝撃に顔をしかめる。重い、先程より、遥かに。

 先程の一撃は、技量も何もかも無視せんとするばかりの一撃であった――そして。

 

「お……っ! おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 連撃。遥かに重い斬撃が連続して、シグナムに襲いかかる!

 

「くぅぅぅぅっっっ!」

 

 だが、ヴォルケンリッターの将も伊達では無かった。明らかに重くなったその連撃にレヴァンティンを叩き付け、凌ぐ。凌ぐ凌ぐ凌ぐ凌ぐ凌ぐ凌ぐ……!

 だが耐えきれなかった。ついに、シオンの斬撃はシグナムの防御を抜けて、右の脇腹に叩きこまれたのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「何だあれ!?」

 

 ミーティングルームでそれぞれ観戦していた面々だが。いきなりのシオンの攻勢に一同ア然としていた。

 戦技教導をしていた、なのはがぐっと息を飲む。

 

「最初に教導する前に――」

「なのは?」

 

 フェイトがなのはを見る。彼女はそれに構わず、手元のコンソールを操作し、あるデーターを出した。

 

「これ、シオンの……?」

「うん」

 

 問いになのはが頷く。最初に戦技教導をする前に、彼女はシオンからの情報。そして、技等を確認した後、データーを作っていたのだ。それを呼び出したのである。

 

「彼にはアビリティースキルって言うのがあってね? さっきのはコレ」

 

 データーの表示を下に持って行き、その場所を皆に見せる。

 そこには『魔力放出A+』との表示と、それに対するなのはの個人的解釈が載せられていた。

 

「まさか、こういう風に使うなんて」

「どう言う事だよ。全然訳わかんねぇ」

 

 データ自体は見たが、まだよく分からないのだろう。実際、なのはもシオンの戦技教導をやっていなければ分からなかったに違い無い。ヴィータの疑問になのはは頷いた。

 

「シオン君はね、最初はただ吹き出した魔力を……そうだな――まるでロケットの推進器みたいに使ってたの」

 

 なのはがロケットの絵――まぁ、かなりデフォルトされてはいる。を、描き、その下に火が吹き出している絵を描く。

 そして一同に見せ、それぞれ頷いたのを確認した。

 

「でも、今シオン君が使ったのはちょっと違うんだ。今はまるで一つに束ねるようにして使ってる」

「えっと……それ、何か変わりあるんですか?」

 

 まだ微妙に分かりづらかったのか、スバルが質問する。が、今度はヴィータがなのはの説明で理解したのだろう。代わりに答えた。

 

「例えばだな? 水道をただ出すのと、指で押さえるの。どっちがより多く飛ぶか、考えてみろ」

 

 あ、と一同が目を見開く。そう、当然ながら指で押さえられたホースの水は圧力で遠くに飛ぶ事になる――。

 

「そう、おおざっぱに言って、そんな感じだよ。ただ、他には螺旋のように渦を巻く事によって回転エネルギーとかも纏めてるって所かな?」

 

 成る程と一同、納得し頷いた。しかし、ただ……と、なのはは呟く。

 

「これを、もし模擬戦で考えついたとしたら……」

 

 それは異常な事だ。危地に陥った時。今まで出来なかった事が急に出来た――と言う事は、まぁある。

 だが、これは今まで出来なかった事では無い。今考えついた事だ。はっきり言おう。これは異常な成長速度であった。

 

 シオン君……君は。

 

 なのははモニターに目を戻す。そこには、立ち上がろうするシグナムが居た。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 私……は?

 

 朦朧とする意識で、だがシグナムは立ち上がろうとする。

 自分が何故、ここに倒れていたのか、全くわからなかった。

 

「っ……!」

 

 軽く頭を振り、朦朧とする頭を起こす。顔を上げると、目の前にはシオンが居た。

 

 そうか……私は……。

 

 シオンの斬撃をまともに喰らい、地に伏していた。

 思い出して、シグナムは顔をしかめて、打たれた箇所を手でなぞる。非殺傷設定にされているデバイスは、刃引きがされておりかつ、肉体的なダメージとしてはあまり残らない。痛みはあるが、それくらいだ。

 だが、これは模擬戦である。これが実戦だったらと考えると、震えが出て来た。

 

「な? おもしれぇだろ?」

 

 シオンが問うてくる。その問いに、何を言っているのだろうとシグナムは思っていると、シオンは笑いを苦笑いえと変えた。

 

「気付いてねぇのか? 自分が笑ってる事に」

 

 言われ、シグナムは呆然となった。私が笑っている? しかし、レヴァンティンの刀身を鏡にして見ると、それが真実だと気付いた。確かに、自分は微笑している。

 

「もう一度言うぜ? おもしれぇだろ?」

 

 再びの問いに、彼女は噛み締めるように言葉を反芻した。

 そう、自分もまた楽しんでいる。何より、目の前のシオンの成長に、そしてそれに立ち向かう事に。

 

「ああ、楽しいな」

 

 微笑はついにはっきりとした笑みに変わった。

 その笑みは、あまりに穏やかで。そして、互いに近接の距離まで移動する。

 もはや二人に模擬戦だの試験だのといった”諸事情”は頭から綺麗さっぱり無くなってしまった。

 今は、ただ剣を合わせる事のみ。そして――再び、剣がぶつかりあう!

 

    −戟!−

 

「っ……!」

 

 叩き付け合った二つの剣は、しかしシオンに軍配が上がる。その一撃にシグナムは押された。

 彼の一撃は、もはや受け流す事も容易ではない。

 しかし、シオンの中で何かが変わったように、シグナムの中でもまた何かが変わりつつあった。

 自身の魔力を意識する。シオンのような真似はシグナムには出来ない――だが、似たような事は出来る!

 カートリッジロード。それを自身の基礎魔力の瞬間的向上に使用し、そして体内を流れる魔力をある一つの流れとして使う。

 流れに乗るようにして、逆袈裟からの斬撃を放つ。同時に下から斜めへ重心を移動させ、そして魔力を重心と共に流れるように剣に乗せた――。

 

    −撃!−

 

 轟撃! ついにシグナムの斬撃はシオンの一撃と同等の威力で放たれた。

 だがそこで終わりでは無い。剣が触れた合った所でさらに重心を移動。

 シグナムはシオンには未だ出来ぬ技法で斬撃を放つ!

 

    −裂!−

 

「っ……くっ!」

 

 そして、シオンの一撃が後ろに弾かれた。そのまま後退する。

 そんなシオンを見て――自身が為した、新たなる技術の獲得にシグナムは笑みを強くした。

 

「どうだ? 私もまだまだ強くなるぞ」

 

 その言葉にシオンは一瞬ポカンとし、直後に彼もまた笑いを強める。

 

「本当にスゲェな、アンタ!」

 

 その笑顔のなんて邪気のない事か。シグナムもまた似たような笑みで頷いた。

 

「そういや名前、聞いてなかったな」

 

 ぽつりと言う、確かに自分も名乗っていない事にシグナムも気付いた。

 

「済まない。今からでも名乗らせて貰おう。ヴォルケン・リッター炎の将、シグナムだ」

「うん……ありがとう。そして、シグナム」

 

 そこで一息区切る。ゆっくりと息を吸い、そして吐いた。ぐっと息を飲みイクスを構える。

 

「貴女に心からの尊敬を」

 

 その言葉に二人共、笑い――。

 

    −戟!−

 

 ――再度、剣を叩きつけあったのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「何をやってるんだ、あの二人は?」

 

 クロノが呟く。モニターに映る二人は一切離れず、他の魔法を使用する気配すらない。

 それは模擬戦ではなく、まるで騎士の決闘を思わせた。

 

「ありゃあもう二人共試験って事は頭にねーな」

 

 ヴィータが呆れたように言う。それに、はやても笑いながら同意した。

 

「そやね……に、してもシグナム、何か斬り方とか変わった?」

 

 モニターに映る二人の剣戟に、はやては疑問符を浮かべる。それに、なのはもまた頷いた。

 

「多分、魔力を身体の中で束ねて流してるんだと思う。これで威力の差は無くなったね」

 

 つまりはシオンに有利だった点が無くなったと言う事だ。

 案の定、次第にシオンの斬撃が弾かれ、二、三歩離される。

 シグナムはさらに踏み込み、シオンに追撃をかけた。

 

「――これは、もう決まったかな?」

 

 シオンの手数に対して明らかにシグナムの手数が増える。技量の差が出てきたのだ。

 

「……善戦したがな」

 

 クロノが惜しむように呟いた。実際、あれだけ開いていた技量をこの一戦だけで縮めたシオンを見れば、惜しむのもむべなるかなと言ったところか。

 

「えっと、ハラオウン提督」

 

 呼ばれ、クロノがそちらに振り向く。そこには立ち上がりながらも、顔を俯かせるスバルがいた。

 

「スバル?」

 

 その様子になのはがスバルを呼ぶ。だが、スバルはそれには返事をせず、クロノへと話しを続けた。

 

「シオン、負けたら試験失格でしょうか?」

 

 それが問いたかったらしい。スバルの意図に気付き、クロノは苦笑を浮かべた。

 

「それは――」

「おいおい」

 

 答えを告げようとしたクロノの台詞を遮るようにヴィータから声が上がる。そこには驚愕が微かに入っていた。

 

「どうしたの……っ?」

 

 何事があったのか、なのはが尋ね。だが、モニターを見た瞬間、絶句する事になった。

 

「あいつ、この一戦でどこまで強くなるつもりだよ……?」

 

 ヴィータと、なのはが見るモニターの先には、シグナムと”互角に切り結ぶ”シオンがいた――。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「違う――こうじゃない」

 

 シオンは、シグナムと剣をぶつけながら、一人ぶつぶつと呟く。

 シグナムとの間に、もはや一撃の重さの差はなく。そして、その技量にシオンは押されつつあった。だが――。

 

「違う。ここで、こうやって――」

 

 さらに切り合いながら、自身の斬り方、角度や体重の乗せ方を変えていく。それは、シオンの斬撃に変化をあたえつつあった。

 

 ――先程より、後退しない。剣も弾きにくくなっている。

 

 シグナムも、また一人ごちる。感じているのだ。目の前のシオンの成長を。今、シオンはシグナムの太刀筋を真似たりしながら、重心の変化等の技量も取り込みつつある。

 それはつまり、二人の隔絶した差があった技量が埋まっていっている事を意味していた。

 

「こう、だ!」

「く……っ!」

 

    −戟!−

 

 放たれる一撃に、シグナムは一撃を返す――と、まるで鋼が絡み合うような音が響いた。

 そして甲高い音を立てて、二人が弾き飛ばされる。

 

「つっ――!」

「うぉっ!」

 

 互いに、二歩、三歩と下がり、しかしシオンもシグナムも止まらない。前に出て更に斬撃を叩き付け合った。音が絡み合う――シオンも、シグナムも一歩も下がらない!

 ここに至り、二人は完全に互角と相成った――だが。

 

「まだだ」

 

 シオンが呟く。それは自らの技量の改善。

 為していく。成していく。

 それは相手を、シグナムを通じて行われる自らとの対話。身体をどのように捻ればよいのか?

 力をどのタイミングで入れればよいのか?

 刃の角度は?

 対話する。対話する。

 そして、その対話はシオンに確かな成長を促した。

 

「ふっ、う!」

 

    −閃!−

 

 シオンが左から腰だめに斬撃を放つ。対するシグナムは上段からの一撃。

 剣が重なり、だが、今度は音は鳴らず――そして、その一瞬は起こった。

 シグナムは目の前の光景をみる。自分の一撃が為した結果を。

 シオンとの一撃が重なり合ったその瞬間。

 シオンはシグナムのレヴァンティンを中心として、イクスを当てながら横向きに”回転”していた。

 

「……」

 

 絶句する。重みを感じない――いや、そもそも剣が触れ合っているという感覚がない。

 合気。シオンは剣でそれを行っていたのだ。シグナムの一撃が触れた瞬間、完全な形で斬り流し、更にシグナムの一撃の力をそのまま回転ベクトルへと変換したのである。

 例え話しをしよう。バケツに水をくんで縦に回転してみると、段々重さが無くなる。

 理屈としてはそれと同じ。だが、果たしてそれを剣で行えるのか――?

 

 そして、シオンが地面に降り立った、その瞬間。

 

    −撃!−

 

 訓練室に豪音が鳴り響く! シグナムは十メートル以上も吹っ飛ばされてしまった。

 シグナムの斬撃の威力。そして、シオン自身の斬撃。それらが全て重なり合った結果だった。

 シグナムはポカン、としている。シオン自身もだ――今、自分は一体何をした?

 集中しすぎて自分が何をしたのか、出来たのかを理解できない。

 だが、その顔は会心の笑みを浮かべた。

 

「へへっ。どうよ?」

 

 シグナムに尋ねる。彼女もまた、こちらを見遣っていた。それを確認しながらイクスを構える。

 

「俺もまだまだ強くなるぜ?」

 

 その言葉に、シグナムもまた微笑みを返す。今の一撃は何だ? それは今思いついたのか?

 聞きたい事は山とある。しかし、それは言葉を介して聞くものではなく、刃を重ねて聞くものだから。

 だからシグナムは言葉の代わりに、レヴァンティンを構えた。

 

 二人の戦いは最終局面を迎える――。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「えっと……ちなみに今の、誰か解る人居ますか?」

 

 スバルが尋ねる。だが、誰も答えない。

 シオンが今シグナムに対して使った合気の事である。果たしてあれは何なのか。

 

「後で聞いて見なくちゃ、ね」

 

 なのはもまた顔を強張らせながら頷く。そうしながら思うのは神庭シオンと言う少年に対しての疑念であった。本当に一体、何者なのだろう。

 試験前と試験後では明らかに別人なのは間違いない。

 更に、その成長に引っ張られるようにシグナムもまた強くなっていた。

 

 二人の戦いは、今や互いの斬撃のみの戦いから通常の魔法戦へと移行している。

 まるで、今までの斬り合いを実戦として使えるかどうかを試すようにだ。

 

「……」

 

 その戦いを黙って見ながら、なのはは思わず自分の手をギュっと握りしめていた。

 戦いたい。そう思ってしまう。

 かつて大怪我をおった事もあり、全力での模擬戦等は控えている。

 だが今、なのははモニターに映る少年と戦ってみたくなっていた。

 あのような戦いを自分もしてみたい。命を賭けるでもなく、信念をぶつけ合う訳でもなく。純粋な戦士として、あのような戦いが出来たならば果たして、どのようなものが見えるのか? それを知りたくなっていた。

 横を見る。ヴィータもモニターをずっと見ていた。その表情を見て、やはり自分と同じ事を考えていると悟る。

 モニターに目を戻す。中の二人の戦いは舞踏のようなものへ変化していた。

 手と手を取り合う代わりに、剣を重ね。そして斬り”結ぶ”。

 踊る。踊る。ステップは歩法。そして、踏み込みはターンだ。

 シオンはまるで背に手をやるように優しく。だがそれとは似ても似つかない。斬撃を放つ。

 シグナムはそれに応えるかのように、もう片方の手を握るように儚なげに。だが、それと似ても似つかない斬り流しを行う。

 二人の表情は絶えず微笑み。それは凄絶とも言えるはずの戦いなのに、何故か華麗な踊りを反芻させた。

 

「これ、が?」

 

 そして――ティアナはその戦いを見て、誰にも聞かれないように一人ごちた。

 これがあの少年か? ――と。

 表情を見る。戦ってるはずなのに、その表情は優しい微笑み。

 最初に見た少年の表情は不敵。次に見た表情は落胆と失望。その次は意地とムキになった顔。そして、今は微笑み。

 何故か胸の奥でキュンッとしたものを感じた。

 

「……?」

 

 それが何なのか、ティアナには解らない。

 

「神庭シオン……」

 

 ただ自分でも知らず。名前を呟いた――。

 

 そして、その横で、スバルもまたモニターに釘付けとなっていた。

 だがその表情は何故かちょっと曇りがちであった。

 シオンが怪我をするのが心配なのか? 当たり前だ。でも今の思いとは違う。

 もしくは試験に落ちる事が心配なのか? それもそうだ。でも今の感情とは違う。

 

「何だろ……?」

 

 スバルもまた一人ごちる。シオンの表情を見て、優しい微笑みを見て、自分は何を考えた?

 

 ……羨ましい?

 

 近い感覚ではそれである。だが、決して違う心の動きであった。

 

「……?」

 

 それが何なのかスバルには解らない。二人の少女がその感情の名を知るのは、もう少し先の事であった。

 

「もう決着か?」

 

 ヴィータが呟く。モニターの中の二人は共に肩で息をしている。

 魔力も殆ど残っていまい。

 

「そやね……それにシグナムの持ってたカートリッジも残り少ないやろ」

 

 はやてもまた頷き、モニターに注視した。

 決着が着く。この、戦いに。ある意味に於いて勿体ないとも言える時間が終わりを迎える――。

 それぞれ思う事がありながら。一同はモニターに集中した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 互いに十歩の距離を挟んで離れる。二人共息は上がっており、魔力もほぼ枯渇した。

 だが、その表情は微笑みのまま。続けたかった。ずっとずっとこの”語らい”を続けたかった。

 だが、どんな時間でも必ず終わりは来る。シグナムが空薬莢を排出し、残りの残弾三発を装填していく。シオンはそれを見つめて、イクスを持ち上げた。

 

「それで、ラストか?」

「ああ……カートリッジはこれで終わりだ」

 

 装填が終わる。そして、シグナムもまたレヴァンティンを持ち上げた。

 

「次の一撃で、終わりだ」

「……」

 

 その言葉に、シオンは堪らなくなってしまう。表情に出たか、シグナムは苦笑した。

 

「そんな顔をするな。私まで寂しくなる」

「でも」

 

 まるで子供のように、シオンは呟く。シグナムは、まるであやすように言葉を重ねた。それは自分にも言い聞かせている事だったか。

 

「だから、次の一撃は今までで最高の一撃としよう」

 

 その言葉に、どれだけの意味が込められていたか、シオンは悟り、ゆっくりとだが頷く。

 そして、二人共黙った。もはや言葉はない。要らない。だって刃が語ってくれるから。

 二人は最後の”語らい”を交わす為に、己の武装を構える。

 

 最後の一撃は、互いのもっとも信頼する技で。

 

 二人共、声を介さずに、しかし頷き合う。どちらとも無く、そうしようと理解し合っていた。

 ゆっくりと、ゆっくりと近付く。

 

「レヴァンティン」

【エクスプロージョン!】

 

    −轟−

 

 三連カートリッジロード。同時に、シグナムの身体から魔力が炎となって吹き出した。

 シオンはまるでそれに応えるかのように、イクスの名を呼ぶ。

 

「イクス」

【フルドライブ!】

 

    −破−

 

 シオンの身体からもまた、魔力が一気に放出。二人の魔力は、正眼に構えられた剣に注ぎ込まれる。そして、一瞬の微笑みを交換し――二人は同時に駆け出した。

 互いに放つは、己が最も信頼する一撃!

 

「紫電――」

「――壱ノ太刀」

 

 全く同時に剣を振りかぶる。今、互いに放つ技は――掛値なしに最高の一撃!

 

「一、閃っ!」

「絶、影っ!」

 

    −轟!−

 

    −裂!−

 

    −破!−

 

 互いが互いに放った一撃は、その余波を周りにぶち撒け、訓練室どころか、本局そのものを揺るがしたと思わせる程の衝撃となる。

 

 そして、刃は一瞬の交差を交わし――。

 

 二人は背中を合わせて五歩の距離を挟んだ。

 

 やがて、片方は倒れ。片方は立ったまま――そう、立ったまま。

 そして、それがそのまま決着となったのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 シオンは朦朧としながら目を覚ます。目に映るは真っ白な天井であった。どっかで見た天井だな、とか愚につかない感想を抱く。

 

「あ、起きたわね」

 

 声がかかる。そちらに振り向くと、見覚えのある女性がそこに居た。確か、彼女は……?

 

「シャマル、さん?」

「うん、そうよ。良かったわ、すぐに気がついて」

 

 そう言われながら、水を出される。有り難く戴く事にし、一気に飲み干した。

 なんか、前にも同じ事があったな――と、そんな事を思う。

 そして、あの時と同じようにコンソールを操作し通信する。

 その間、シオンが思い出すのは模擬戦。決着はついた。シオンは気絶して、医務室行き。それが意味するものはただ一つだ。

 

 ……負けた、か。

 

 嘆息し、ただ、認める。しかし、シオンの表情は晴々としていた。

 あの一戦。あの語らいだけでも、試験を受けた甲斐はあったと。

 そして、戻って来たシャマルと話す。その会話も前と似た感じではあった。

 ここまで同じような感じと言うのも面白いなと、シオンは一人ごちる。

 そうこうしてると、扉が開いた。違うのは、ここからだ。

 

「おいおい……」

 

 ぞろぞろと入って来る一同に、シオンは驚くよりも呆れたような声を漏らした。

 模擬戦を見物に来ていたメンバーが勢揃いで来たのだ。呆れもしよう。

 

「何です? この、大人数は」

「皆、心配したんだよ? シオン君、いきなり気絶しちゃったから」

 

 シオンの問いに、なのはが答えてくれた。まぁあれだけ盛大にぶっ倒れたのだから分からない訳では無いが、それでも良く知らない野郎相手に、そんな心配をするとはお人よしにも程があろう。それに。

 

「いろいろ忙しいんじゃなかったんですか? 部隊申請とか引き継ぎとか?」

「ま、そこは蛇の道は蛇言うてな♪」

 

 はやてがにこやかに答えてくれた。……どんな手段を使って時間を作ったのか。ものすごい興味はあるが、聞けない。と言うか聞いてはいけない気がした。何となくだが。

 他に身体の具合とか、いろいろ話す――と。

 

「……?」

 

 ふとおかしな感じを覚えて、シオンは部屋を見回す。さっきから、何か違和感を感じていたのだが、よく見るとスバルが後ろの壁に引っ付いていた。

 短い付き合いだが、こう言った時には真っ先に間近に来そうなものだが――。そして、ティアナ。

 皮肉の一つも言ってこないとは、どう言う事なのか。

 

 ……まぁ、いいか。

 

 妙に気になったが、今は置いておく事にした。それより先にやらねばならない事がある。

 シオンは、なのは、フェイト、はやてに向き直ると頭を下げた。

 

「……すみません」

「え? え? シオン君、どうしたの?」

 

 三人共目を丸くする。何故謝られたのか解らないかった。だが、シオンは頭を上げずに続ける。

 

「いえ……試験、落ちちゃって」

「え?」

 

 シオンの言葉に、皆一様に疑問符を浮かべ、そしてその”誤解”に気付いた。

 

「えと、シオン君?」

「いやもう本当、あんだけいろいろ教えてくれたのに」

「あの」

「最後の最後でポカやらかして」

「いや、だから」

「本当、情けないと言うか」

「ちょっと」

「いや、でも模擬戦自体は面白かったと言うか、すっごい、いろいろ掴めたし」

「だから」

「えっと、だから、ありがとうございます。あぁ、でも。学課の追試だけは勘忍を……勘忍を!」

「はぁ」

 

 結局、皆はただ溜息をつき――やはりと言うか、クロノに後を任せる事にした。

 彼は苦笑いを浮かべながらシオンに近付く。

 

「神庭シオン」

「えと、あ、はい!」

 

 クロノに呼ばれた事でシオンは我を取り戻した。返事を聞いて、そのまま続ける。

 

「試験の結果だが」

「……はい」

 

 シオンもまた居住まいを正す。クロノは試験官であったのだ。きっちりその口から結果を聞く必要がある。息を吸い、そして吐く。覚悟を決めて、言葉を聞いた。

 

「合格おめでとう。これから、頑張ってくれ」

「………………はい?」

 

 今、何と言ったのでせう?

 

 言われた内容がよく解らず、シオンは小首を傾げた。確か、自分は負けて――。

 

「――ちなみに、模擬戦の合格は勝敗で決める訳じゃない」

「……」

 

 ようやくシオンは、自分の勘違いに気付いた。唖然とした表情から、首から耳まで真っ赤になる。そして。

 

「っ……! だぁ――――――っ!」

 

 そう、自分の馬鹿さ加減に全力で吠えたのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 数日後、時空管理局本局。そして、新たな次元航行艦に、はやて達を始めとした元六課メンバー。そして、新たな少隊メンバー達――。

 ――何故か、スバル達と親し気なのか、仇敵なのかよく解らない会話をしてた少女達。そして、神庭シオンが乗り込んでいた。

 一同が集まれる場所は食堂しかなかったのか、そこに集合する。

 新部隊設立の挨拶が、部隊長であり艦長の八神はやてからあるのだ。皆が集まる中で、はやては堂々と向き合う。

 

「皆さん、お久しぶりです。今回の独立次元航行部隊の指揮を任せられた、八神はやてです。皆さん、この部隊の設立目的は聞いたやろうけど。私達はこれからアポカリプス因子の感染阻止。そして、この因子の調査が任務となります。……大変な任務です。でも、あの事件を乗り越えたメンバー達。そして、才能溢れる新たな前線メンバー。この、皆ならどんな任務でもやり遂げられる。そう、信じてます」

 

 そこで区切り、食堂に集まったメンバー達一人一人を見るようにゆっくりと視線を巡らせた。そして。

 

「皆さん、必ずこの任務。やり遂げましょう!」

『『はい!』』

 

 はやての挨拶の締めに、皆元気良く返事を返した。それを聞いて、はやては満面の笑みを浮かべる。

 

「そんでな。この艦の名前なんやけど、実はまだ決まってないんや。そこで。皆に決めて欲しいって思うんやけど……?」

 

 どうやろ?

 

 そう聞く。すると、皆申し合わせたように顔を見合わせ、そして、笑った。そう言われたなら、答えは一決まっている――。

 

「もう、決まったみたいやね♪ それじゃあ。この艦の名前は〜〜〜?」

『『アースラ!』』

 

 事情を知らないメンバー以外が、綺麗に声を合わせる。はやてもそれに頷いた。

 

「それじゃあ皆、頑張って行こうか♪ 各員持ち場に着いて――そして、新生アースラ出航や!」

『『了解!!』』

 

 そしてその日、思い出の艦の名を継ぐ新たなる艦が本局より初出航を果たしたのであった。

 

 

(第七話に続く)

 




次回予告
「ついに出港した新生アースラ!」
「その中で、案の定と言うべきか、なのはが提案したのは例によって例のもの」
「果たして、その結果は――?」
「次回、第七話『二回目の始まり』」
「互いの実力を知る為には、模擬戦が一番です」
「やっぱりか!」

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