魔法少女 リリカルなのはStS,EX   作:ラナ・テスタメント

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はい、テスタメントであります♪
第二十五話後編をお届けします♪
ちなみに、おっちゃんの魔力ランクは「ないわー」のレベルだったりしまする(笑)
それについては、また後々をお楽しみに♪


第二十五話「聖剣と魔剣」(後編)

 

    −撃!−

 

 次々と降り注ぐ大剣群、それをなのは達は回避していく。

 無尽刀。そう名乗った男、アルセイオ・ハーデンが放った剣群だ。それらは轟音と共に周囲に叩き込まれた。

 

「きゃっ!?」

「ティアナ!?」

 

 降り落ちた剣の一つがティアナの足元に突き立つ。それでバランスを崩したティアナに、容赦無く追撃の剣が放たれた。もはや回避も防御も不可能のタイミング。なのは、ヴィータは慌ててティアナの元に引き返そうとするが、降り落ちる剣がそれを許さない。

 

 間に合わない――ティアナは、迫る剣をその目に焼き付け。

 

「ティア――――っ!」

 

 しかし、叫ぶスバルがシールドを展開したままティアナの前に飛び込んだ。

 

    −軋!−

 

 間一髪。ティアナに迫る剣を、スバルのシールドが受け止める。だがホッする暇はどこにも無かった。

 

「あらよ!」

 

 動きの止まった二人を無尽刀が見逃す筈も無く、剣を放ってくる! それらはシールドに次々と突き立った。

 

「っ、う!?」

「スバル、もう大丈夫!」

 

 シールドを維持するスバルが苦悶の喘ぎを上げ、立ち上がったティアナが彼女に呼び掛ける。

 それにスバルは頷き、シールドを解除。ティアナと一緒に後ろへと下がる――直後、その場に突き立つ数十の剣群。それを持って、漸く剣群は停止した。

 

「……止まった?」

「……漸く、だな」

 

 なのは、ヴィータも来なくなった剣群に安堵する。

 しかし肝心の攻撃を成した人物、無尽刀はニヤニヤと笑っていた。未だ余力があるのは明白だ。それに、スターズ一同は顔を歪める。

 

「こいつ……っ!」

「へっ! ……?」

 

 ヴィータの悪態に、無尽刀は笑いを浮かべ。直後、スターズの面々を見て訝し気な顔となる。

 まずなのはを見て、次にヴィータを見る。続いてスバル、ティアナと続けて見て。リインを見た段階で首を横に振った。

 

【なんですか! その反応!?】

「いや……別に嬢ちゃんを見て首を振った訳と違うから安心しな」

 

 リインが無尽刀の態度に過敏に反応するが、彼はそれに笑いを浮かべて流す。そして、再びなのは達へと視線を巡らせた。

 

「あー、聞くがよ。この中で剣使う奴、いるか?」

「……居ませんけど?」

 

 無尽刀のあまりに親し気な態度に、思わずなのはが答える。つい先程、とんでも無い攻撃をしかけた男とはとても思え無い言動だった。そのなのはの解答に、無尽刀は露骨にため息を吐いた。

 

「おい、ソラ?」

「……おかしいですね」

 

 無尽刀が隣のフードを被る男性に声をかける。ソラと呼ばれた彼も、不思議そうな顔だ。それに、なのは達も訝し気な顔となる。それを見て再度ため息を吐くと、無尽刀は左手をスッと上げた。同時、崖に突き立っていた無数の剣達が、全て糸を解くようにして分解。消え去る。

 

 ……何? 今の?

 

 てっきり転送系の魔法だと思っていたなのはは、今の現象に呆然とする。あれは転送では無い、分解だ。

 つまり、あの大量の剣群はこの場で作り出した事になる――!

 

「……聖剣がいねぇんじゃあ、やる気も起きねぇな。ソラ、後任すぞー」

「ハァ……。隊長は相変わらずですね。了解です」

 

 無尽刀の態度に、ソラは呆れたような声を出し、だが頷く。

 

「副隊長〜〜。もうこれ、取っていい?」

「……布、邪魔」

「ああ、いいぞ」

 

 フードを被る二人から声が掛かり、ソラが頷く。それに、彼を含めた四人はフードを取っ払った。

 ソラと呼ばれた男性は青年だった。恐らくなのは達とさほど年齢は変わらない。黒髪黒瞳であり、白のバリアジャケットを着ている。そして、その手には鞘に収まった両刃の大剣を片手に持っていた。

 続いて次、未だ無言を貫く金髪の老人だ。彼もまた白のバリアジャケットを着ている。老人ではあるが、その身体は強靭そのもの。一切の老いを感じさせない。そして、手に握るのは両手用の大斧だった。

 次は最初にソラに声を掛けた少女だった。スバル達より幼く、キャロよりかは年上だろう。闊達そうな少女である。黒の髪を両側で結んおり、赤のバリアジャケットを着ていた。そして何より異様なのはその両手。肩から拳までにかけて広がる巨大な手だ。デバイスにしても異様なその巨大な手を、少女は事もなげに振り回している。

 次の少女は静かげなな娘であった。スバルやティアナと同じ歳くらいに見える。彼女は青のバリアジャケットを着ていて、手には二重螺旋を描く妙な杖を持っていた。

 

「悪いが、貴女達には聖剣をおびき出す餌になって貰う」

「君達は……っ!」

 

 ソラの言葉になのはが息を飲む。無尽刀に目を向けるが、肝心の彼はやる気がありませんとばかりに空に浮かび、寝転がっていた。

 

「待てよ……! 話しを――」

「する必要は無い」

「て事で、ゴメンね〜〜?」

「……攻撃開始」

 

 停戦を呼び掛けるヴィータに、四人は構わない。一斉にスターズ一同に向けて駆け出した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 なのは達へと疾駆する四人。それにヴィータがまず反応した。即座にリインとユニゾン。その姿が赤から白へと変わり、なのは達の前に出る。だが、その眼前に大斧を構えた老人が瞬時に現れた。

 

「な――っ!」

「ヌっン!」

 

    −撃!−

 

 横溜めに構えた大斧を、踏み込みと同時にヴィータに放つ。大斧は放たれると同時に、その背よりブースターが展開。激烈な加速を持って、ヴィータへと襲い掛かった。ヴィータは一瞬で現れた老人に驚いたものの、即座に我に返る。グラーフ アイゼンを縦に構え、大斧を受けた。……しかし。

 

「ヌゥアァァァァァッ!!」

「っ――!」

 

 咆哮一声! 大斧を叩き付けたまま老人は叫び、振り抜いた。その一撃にヴィータは堪える事が出来ず、盛大に空高くへと弾き飛ばされる。

 

「ヴィータちゃんっ!」

「バデスさん、あの赤い騎士は任せます」

「……委細承知」

 

 上空へと吹き飛んだヴィータになのはが声を上げ、同時にソラが老人――バデスへと声を掛る。バデスは即座に頷いた。

 直後にヴィータへと向かい、上空へと舞い上がる。それをさせまいとなのははレイジングハートをバデスに向け。

 

「残念だが」

「っ……!」

 

    −閃−

 

 いつの間に現れたのか、ソラがなのはの眼前に居た。同時に振るわれる大剣、それをなのははレイジングハートを突き出し、シールドを展開して防ぐ。

 

「リズ、リゼ」

「はぁ〜〜い」

「……了解」

 

 更にソラの後ろから現れる二つの陰。残りの少女達だ。既にデバイスであろう、その巨拳と杖をなのはへと向けている。

 

「最大戦力をここで潰させて貰う」

「ゴメンね〜〜」

「……謝罪」

 

 既にシールドを展開しているこの状況では、後ろの二人にまでは対処出来ない。なのははその状況に顔を歪め。

 

「クロスファイア――――! シュートっ!」

 

    −閃!−

 

    −弾!−

 

 なのはを掠めるように、二十の光弾が放たれた。それは迷い無く少女達に直撃し、二人を吹き飛ばす。

 同時にスバルがなのはの脇を抜けて、突っ切る。カートリッジロード。リボルバーナックルが激烈な回転を刻み、ソラへと叩き付けられた。

 

    −戟!−

 

 ソラはその一撃を斬撃で向かい討つ。シールドから反らすように大剣を滑らせ、直進して来たリボルバーナックルを横から殴り付ける。しかし、勢いがあるスバルの一撃には打ち勝てず、後退した。

 

「この人達……!」

「なのはさんっ! 大丈夫ですか?」

 

 完璧に捉えたと思った一撃をいなされて驚くスバル。そしてティアナがなのはの横に並び、無事を確かめる。なのはは声に出さずに首肯で答えた。油断なく再びレイジングハートを構える。

 

「ヴィータ副隊長……」

「スバル、集中して。ヴィータちゃんなら大丈夫だよ」

 

 空を見上げそうになるスバルをなのはが制止する。

 敵を前に視線を逸らすのはそれほどリスクがあるからだ。特にそれが実力者ならば尚の事。

 そんななのは達に、ソラはその場で剣を構える。横に、リズ、リゼと呼ばれた少女達も並んだ。

 

「む〜〜、痛ったかった〜〜」

「……油断大敵」

 

 それぞれティアナを睨む。そんな二人にソラは視線を動かさない。

 

「リズ、リゼ。連携組ませると厄介だ。分断するぞ。お前達はあの格闘士モドキと、ガンナーを頼む」

「はあ〜〜い」

「……了解」

 

 二人の返事にソラは頷く。そしてソラの足元に魔法陣が展開した。その魔法陣は――。

 

「嘘……!」

「カラバ式!?」

 

 なのは、ティアナが驚きの声を上げる。それはシオンと同様の魔法術式、カラバ式のセフィロトを象った魔法陣であったから。ソラはそんななのは達の反応を無視して、大剣を振り上げる。

 

「魔人撃っ」

 

    −轟−

 

    −爆!−

 

 振り下ろす一撃から広範囲に渡って広がる斬線が撃ち放たれた。雪を蹴散らし、向かい来る斬撃。

 それをなのは達は後退する事で回避する。しかし、その一撃は別の効果を齎した――雪煙だ。舞い上がるそれは、なのは達の視界が塞ぐ。

 

「っ――、レイジングハート!」

【オーライ!】

 

 なのはは塞がれた視界でソラ達を見失わないようにサーチャーをばらまく、その直後に驚愕した。

 

「スバルっ! ティアナっ!」

「え? っ!?」

「っ……!?」

 

 なのはの声に反応する二人。その眼前に、それぞれリズ、リゼが現れた。デバイスを振りかぶって!

 

「どっか〜〜んっ!」

「……攻撃開始」

 

    −撃!−

 

    −破!−

 

 スバルにはリズが、ティアナにはリゼが、それぞれ現れ、巨拳の一撃をと、至近からの射撃が叩き込まれる。

 

「っくぅ――!」

「きゃあ――!」

 

 二人はぎりぎりでプロテクションを発動して、その一撃を防御するも、その威力に堪える事が出来ず、二人揃って吹き飛ばされた。

 それをサーチャーで感じて、なのはが二人の元に向かおうとする。だが、瞬間で眼前に現れたソラが斬撃を放ち、なのはは防御する必要に迫られ、タイミングを逸っした。向かえない……!

 雪煙が晴れる頃には、一対一×4という図式になってしまっていた。ヴィータはバデスと上空に、吹き飛ばされたスバルはリズと対峙して、同じく吹き飛ばされたティアナはリゼと向かい合っていた。

 そして、なのははソラと空中でそれぞれデバイスを鍔ぜり合ったまま硬直する。

 

「さて、連携は封じた。一対一だ」

「くっ……!」

 

 分断された状況。そして、それぞれの戦いが開始された。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

【ヴィータちゃんっ!】

「っ――く! アイゼン!」

【エクスプロージョン! ギガント・フォルム!】

 

 上空へと弾き飛ばされていたヴィータだが、リインの声と、何より下方より迫り来る気配を察知し、グラーフアイゼンをギガント・フォルムに変化させる。

 そのまま弾き飛ばされた勢いを利用して一回転。下より迫り来る存在、バデスに一撃を叩き込む!

 

「轟天爆砕っ!」

 

    −轟!−

 

    −撃!−

 

 放たれるは天爆砕す轟撃! 回転運動を伴ったその一撃は、同時にバデスの振るう大斧と真っ向からぶつかり合う。それは、衝撃となって聖域の空に響いた。

 

「こいつ……っ」

「…………」

 

 鍔ぜり合い、真っ向からヴィータが睨む。直後に互いにアイゼンと大斧を離すと、同時にぶつけ合った。

 

    −戟!−

 

 その一撃に、両者共に弾き飛ばされ距離が開く。同時に魔法陣が展開。それは、二人共全く同じ形の魔法陣であった。

 

「やっぱりテメー、ベルカの騎士か!」

「答える義務を感じぬ」

 

 ヴィータの言葉を素っ気なく無視すると、バデスはその場で大斧を振るう。

 

「――っ! この!」

 

 対して、ヴィータは真っ正面からの激突を選択。横殴りにギガントを叩き込む。バデスは真上からの一撃だ。ブースターが再度火を吹く!

 

    −轟!−

 

 一撃がぶつかり合い。

 

    −撃!−

 

 さらに返す一撃が更なる衝撃を生む。その衝撃に二人は再度吹き飛ばされ、しかし、そのまま止まらない。

 

「ウォォォォォォォっ!」

 

    −撃!−

 

    −裂!−

 

    −破!−

 

 交差する――! ぶつかり合いと言う力を持って。上から突っ込み、下から跳ね上がり、弾き合って、吹き飛ばし合う!

 その衝撃は聖域の空に響き、轟音となって周囲に鳴り響いた。

 既に何合目か。ぶつかり合いからの鍔ぜり合いと成り、両者は互いの一撃を叩き込まんと、正面から睨み合う。

 

「くっ……!」

 

 ――このままでは埒があかない。それを理解して、ヴィータは顔を歪める。

 目の前のバデスとか言ったか。相当の騎士だ。実力が半端では無い。一刻も早く、下のなのは達の援護に向かいたいのに――。

 ヴィータは歯噛みし、これも何度目になるか、両者共に距離を開いた。同時にカートリッジロード。薬莢が互いのデバイスより排出される。

 

《リミット・ブレイク、使うか……!》

【でも……!】

 

 リミット・ブレイク。ツェアシュテールングスフォルム。ヴィータの切り札だ。今、互いに決め手を欠く現状を打破するには使う必要がある。――だが。

 

《バデスつったか。あいつが切り札を持ってないって保証が無ぇ……》

【……はいです】

 

 ツェアシュテールングス・ハンマーの一撃で決められるのなら問題無い。しかし、あの老騎士が他の切り札を持っていないとも限らないのだ。その場合、更なる事態の硬直か、もしくはこちらがやられかねない。

 

「……迷っているか」

「っ――」

 

 いきなり掛けられた声に、ヴィータが目を見開く。この老騎士から声が掛けられたのは初めてだからだ。しかし、バデスは構わない。大斧を縦に構える。

 

「切り札を切るかどうかを迷っているか」

「……テメー」

 

 図星。バデスの言葉に、ヴィータは思考を見透かされていたと怒りを覚える。だが、バデスは構わない。

 

「そちらが切り札を使わぬと言うならば、先に切らせて貰おう」

【エクスプロージョン!】

 

 ――吠える、大斧が。同時にその形状を変化していく、

 それは大斧(グレートアックス)から、槍斧(ハルヴァード)のようなあまりにも長い柄となって、その姿を形成。しかし、刃の部分。それがとんでもなかった。

 ――巨大。あまりにも巨大に過ぎる斧だ。その刃の部分だけで、バデスの姿が隠れる程だった。さらにその背には、これまた巨大なブースターが取り付けられている。あまりにも巨大な巨斧をバデスは一振りで肩に担いでのけた。

 

「銘、タイラント」

 

 巨人。そう名付けられた巨斧は、声に応えるように鈍く光る。

 そして、ヴィータは呻いた。やはり持っていた切り札の存在に。

 どちらにせよ、ギガント・フォルムのままでは戦えない。向こうが先に切り札を切ったと言う事は、その巨斧に相当の自信があると言う事だ。ヴィータはアイゼンを横溜めに構え、しかしこの状況で笑って見せた。

 

 

「上等だよ……!」

【エクスプロージョン! ツェアシュテールングス・フォルム!】

 

 カートリッジロード。そして、アイゼンの先端――ハンマーの部分が変化する。先端には巨大なドリルが。後端にはこれまた巨大なブースターが取り付けられる。これこそがツェアシュテールングス・フォルム。

 聖王のゆりかごの、駆動炉すらもぶち抜いた形態であった。

 頭上高くへと振り上げられるアイゼン。それにバデスも己の巨斧を左肩に担いだ状態で、両の手を持って構える。直後、互いの足元に魔法陣が展開。

 

「行っくぞっ!」

「参る」

 

 同時に、その背のブースターが火を吹き、一気に駆け出した。疾駆し、真っ正面からその一撃を叩き込む!

「ツェアシュテールングスっ! ハンマ――――――! ぶち抜け――――――――っ!」

「タイラント・オーバー・ブレイク!」

 

    −轟!−

 

    −破!−

 

    −裂!−

 

 空気を引き裂き、音すらもその衝撃でぶち破って、互いの一撃はその力を相手へと叩き込まんとその破壊力を発揮した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「レイジングハートっ!」

【アクセルシューター】

「……無駄だ」

 

 ヴィータとバデスの戦いより下方の空域。そこでは、なのはとソラが戦いを繰り広げていた。

 既になのははエクシードモードとなっている。何故か? 単純に強いのだ、ソラが。

彼は自らの術式、カラバ式での戦い方を熟知していた。ある意味において、シオンよりもだ。

 レイジングハートから放たれる光弾、総計四十。

 ソラはそれに対して、あえて前に出る。同時にバラバラの空間に足場を設置した。その数二十。それを見て、なのはは顔を歪める。

 

 また……っ!

 

 その思考にまるで合わせるかのように、ソラは瞬動を開始。それはまず近場の足場に、さらにそれを足掛かりに次の足場に瞬動をと。直角に瞬動をかけ、迫り来るシューターのことごとく回避した。

 それはなのはへの距離を潰し、眼前に迫る。なのはは即座に、迫り来るソラにレイジングハートを差し向けた。狙うはカウンターでの砲撃――しかし。

 

「エクセリオン……!」

【マスター!】

 

 直後、レイジングハートから警告が飛んだ。ソラが笑う――。

 

「遅い」

「っ!?」

 

 正しく砲撃が叩き込まれる瞬間、ソラはなのはの眼前に足場を設置。それを足掛かりに、なのはの頭上を飛び越えた。なのははレイジングハートにバスターのカットを任せ、左手でシールドを形成、勘の命ずるままに背後に突き出す。

 

「――魔人撃」

 

    −撃!−

 

「っくぅ!」

 

 次の瞬間、至近からの一撃が叩き込まれた。それはなのはの左手を痺れさせ、その身体を弾き飛ばす。

 ――先程から、これの繰り返しであった。シューターもバスターも、完全にタイミングが見切られている。

 距離を離そうにも瞬動と足場の設置を利用した移動により、すぐに距離が潰されてしまうのだ。

 

 ――戦い難い、とんでも無く。

 ある意味において完全になのはの天敵たる存在だった。なのはも接近戦用の戦い方が無い訳では無い。フェイトや、シグナム、ヴィータとの戦いでもあったように、接近戦に対する戦い方は心得ている。

 だが、それすらも出来ない程の技量を眼前の存在は誇っていた。

 

「ヒュッ!」

「くっ……!」

 

 吹き飛んだ勢いのまま距離を離さんとするなのはに、ソラはそれを許さない。瞬動で距離を潰して来る。

 同時に鋭い呼気と共に放たれる大剣。それを、なのははレイジングハートを盾にして防ぐ。

 だが、なのはもただ吹き飛ばされ続けた訳では無い。ソラに躱されたシューターに意識を集中。全弾を緻密にコントロールし、ソラへと向かわせる。

 

「む!?」

 

 曲がって頭上から迫る光弾を、ソラは如何様にしてかは定かでは無いが気付いたのだろう。はじめて、彼の方から距離を離した。一気に後退する。

 その眼前を回避された筈の四十の光弾が通り過ぎる――これを待っていた。

 

「エクセリオンっ!」

「な!?」

 

 ――抜き撃ち。なのはの挙動にソラが驚愕し、目を見開く。

 当然であろう。何せ、今しがたソラの眼前を操作された光弾が通り過ぎたばかりだ。直後に砲撃を放つ等、無茶が過ぎると言うものである。しかし、目の前のエース・オブ・エースはその無茶をあえて行う。勝つ為の最善として!

 

「バスタ――――――っ!」

 

    −煌!−

 

 なのはの叫びに呼応して、レイジングハートの先端から莫大量の光の奔流が放たれた。その一撃は十メートルと離れていないソラへ一瞬で迫り、破壊力を存分に叩き付けんとする。

 既に回避は不可能。そう悟ると、ソラは左手を突き出しシールドを形成。エクセリオン・バスターを受け止めた。

 

    −撃!−

 

「ぐっ……!」

 

 シールドを削りながら、光の奔流はソラを通り過ぎていく。削って、削って――だが、エクセリオン・バスターはシールドを破壊するまでには至らなかった。

 激流が弱くなっていく事にソラは笑いを浮かべる。そして、”信じられない”言葉を聞いた。

 

「ブラスター・システム、リミット1っ! リリースっ!」

【ブラスター・セット!】

「おい……?」

 

 その言葉と同時に、奔流の向こう側に居る、なのはの身体が光り輝く。それは一つの事実を意味していた。”魔力増加”と言う事実を!

 

「馬鹿な――」

「ブースト……! シュ――――トっ!」

 

    −轟!−

 

    −煌!−

 

 奔流は一瞬で勢いを取り戻し、さらに威力を倍加させてソラに襲い掛かる。驚愕すらも光は飲み込み、シールドを砕かれ、ソラは光の奔流に飲み込まれたのであった――。

 

 

 

 

「ハァっ……ハァっ……」

【マスター……】

「大丈夫……」

 

 バスターを放ち終えたなのはは、息を荒げながら眼前を睨む。

 彼女の切り札たるブラスター・システム。自身の限界を超えた威力を叩き出すこのスキルは、術者である彼女に酷く負担を掛ける。特にゆりかごでの戦いの傷は、未だなのはの身体を蝕み続けているのだ。そんな状態でのブラスター・モードの使用は、彼女にとっても禁じ手であった。

 しかし、あの瞬間を持ってしかなのははソラに勝てる機会を見出だせ無かった。それ程までの相手だったのだ。

 エクセリオン・バスターBSが直撃したソラが居た場所からは、未だ煙が立ち込めている。それを油断なくなのはは見て――声を聞いた。

 

「……凄まじいな」

「……っ」

 

 次の瞬間、煙が吹き飛ばされた。その中央に居る存在、ソラの魔力放出によって。

 その身体は所々ススだらけとなり、ダメージを受けてはいる。だが、未だKOとまではいかない様子だった。なのはは即座にレイジングハートを構える。ソラもまた、自身の大剣を構えた。

 

「オリジナルスペルに魔皇撃まで使わされるとは思わなかった」

「……」

 

 ――魔皇撃。それがソラの切り札なのか。なのははブラスターを使ってすら倒せなかったソラを睨む。

 ……あれで決めたかった。そう、思う。そんななのはの考えを知ってか知らずか、ソラはフッと呼気を整えた。

 

「続きだ」

「……」

 

 なのはは答えない。しかし、その身体から魔力が再び迸る。再びブラスター・モードを使ったのだ。

 そして二人は同時に空を駆け、ぶつかり合う。雪が降る空に魔力の光が煌めいた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

    −撃!−

 

    −裂!−

 

「どっか〜〜ん!」

「っ、この!」

 

 なのはとヴィータが空中戦を演じている頃、スバルはリズと拳を叩き付け合っていた。迫る巨拳に、リボルバーナックルを叩き込む。

 

    −砕!−

 

「わぁ〜〜」

「くっ!」

 

 間延びした声だが、それに反して巨拳の威力は絶大だった。打ち合った拳――右手に痺れを感じて、スバルが顔をしかめる。

 

「スバルっ!」

 

 そんなスバルの反応を感じて、ティアナが援護の射撃をリズに撃ち放つ。しかし。

 

「……駄目」

 

    −射−

 

    −閃−

 

 放たれ光弾、その全てがリゼの放つ光射により迎撃された。

 

「くっ、この娘……!」

「……姉さんの邪魔させない」

 

 その言葉と同時に広がる魔法陣、ミッド式だ。くるりとデバイスであろう、その杖を回す。

 

「……カドケィス」

【はい】

 

 同時、周囲に生まれるは光球、その総数二十五。それを見て、ティアナも両のクロスミラージュをカートリッジロード。その周りに生み出される光弾、その数同じく二十五。

 リゼはカドケィスを振るい。ティアナもクロスミラージュを左右に振るう。

 

「……ホーリーズ」

「クロスファイア――っ!」

 

 互いの光球と光弾が光り輝く。撃ち放たれる事を待ち受けるが如くにだ。そして、二人は撃発音声を同時に叫んだ。

 

「……レイ」

「シュ―――トっ!」

 

    −弾−

 

 光球が放たれ――。

 

    −弾!−

 

 ――光弾が放たれた。

 

    −裂!−

 

 縦横無尽! 互いの光球と光弾がぶつかり合い、絡み合うように疾って花となり、宙に咲く。

 空に咲く光の花。それを縫うように、痺れを無理矢理堪えたスバルが疾る。唸るマッハキャリバー。同時、カートリッジをロード。

 向かう先はリズだ。彼女もまたニッコニッコと笑いながら巨拳を構え、スバルへとひた走る。

 

「リボルバ――っ!」

「ゴルデアス〜〜」

 

 疾駆。

光球と光弾が二人の眼前で激しくぶつかり合い、弾け合う。

 それは互いの相棒の為の援護と、それを阻止する為に起きた光花。スバルもリズも止まらない。互いの相棒を信じているからだ。だからこそ止まらない。

 そして、総計二十五の花が咲き、散った瞬間。スバルとリズは拳を振るった。眼前の敵を打破する為に。踏み込み、拳を一気に撃ち放つ!

 

「キャノンっ!」

「インパクト〜〜」

 

    −撃!−

 

    −裂!−

 

 宙空でぶつかり合う拳は拮抗し、衝撃を叩き付け合う。逃げ場を失った衝撃は真下に落ちた。

 

    −裂!−

 

 真下の雪床に落ちた衝撃により、雪煙が盛大に巻き上がり、一気に視界が阻まれる。

 それに両者は後退。離れ、互いの相棒の元に下がった。

 

「スバル、大丈夫?」

「うん。でもあの娘、凄いパワーだよ」

 

 右手を振って痺れを治めようとするスバル。それを見て、ティアナは唇を噛む。

 スバルと互角、あるいは凌駕するパワーを持つ少女。さらに自分と同等レベルの射撃能力を持つ少女――リゼの言葉を信じるならばリズの方が、姉らしいが。ともあれ、彼女達の連携を崩さなければ勝ち目が無い。ならば。

 

「ティア?」

「スバル。クロス・シフト、行くわよ」

 

 ティアナの提案。それにスバル即座に頷く。

 ティアナの考えは、まずリゼを連携で打ち崩し、後にリズへと向かうと言うシンプルなものだった。

 幸い、リズは機動力は低めだ。スバルとの拳の打ち合いでもパワーでは押し勝っていたものの、スピードはスバルの方が勝っていた。ならば、まずリズをスピードで引っ掻き回し、二人を分断した上でリゼを連携で攻撃出来る。

 

「よし、じゃあ――」

 

 雪煙が晴れる。スバルがマッハキャリバーを唸らせ、疾駆しようとした、次の瞬間。

 

「えっ……?」

「なっ……!?」

 

 スバルとティアナは同時に目を見開き、声を上げた。驚愕にだ。

 

 そこには、リズとリゼの姿がある――”無数”に。

 それこそ十や二十や効くまい。あまりの数に、二人揃って絶句したのだ。

 

「これって!」

「幻、影……!」

 

 それは、ティアナのお株を奪う見事な幻影術であった。その数は二人揃って五十。ティアナはぐっと呻く。

 

 ――やられた……っ!

 

 自分と同等? 確かに射撃ではそうだったかも知れない。しかし、リゼはティアナ以上の幻術使いだったのだ。先程から術式を逆算して幻影と本物を探るが、全く分からない。これだけでも力量差が分かろうと言うものだった。

 

『『へへ〜〜。驚いた? 驚いた?』』

『『……切り札』』

 

 幻影全員から声が来る。それにスバル、ティアナは顔をしかめた。本物と幻影の区別がつかないこの状況、一斉に来られると対処がどうしても遅れる――確実に隙となるのは明白だった。そんな自分達を仕留める事なぞ簡単だろう。

 

『『じゃあ〜〜』』

『『……攻撃開――』』

 

 五十のリズとリゼが一斉に動き出そうとして。

 

「神覇、九ノ太刀……っ! 青龍ぅ――――!」

 

    −轟−

 

    −雷!−

 

 ――暴虐たる雷龍が、その五十のリズ、リゼの中央に突き立った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 雷龍はリズ、リゼの中央に突き立つと、その身をくねらせ、残った幻影達を喰らい尽くし始める。

 

    −轟!−

 

「これって――」

「青龍……!?」

 

 見覚えのある雷龍に、スバルとティアナは呆然となる。そして、二人の目の前に見覚えのある背中が現れた。

 バリアジャケットは金色、両手に携える短槍と長剣。

 二人は知っている。その後ろ姿を――少年を。

 

「「シオン……」」

 

 ティアナ、スバルは久しぶりのようで、たった一日しか離れていなかった少年の名を呼んだ。

 

 

 

 

 ――シオンの息は荒い。実はシオン、感染者とスターズの面々が戦っている真っ最中に、漸くこの世界に転移出来た。しかし何の因果か、シオンが現れたのはなのは達と真逆側――つまり聖域を挟んだ場所だったのである。

 聖域はこの惑星のおよそ三分の一を占める。その反対側だ。

 この時点でシオンはスターズとの合流を諦めた。

 だが、急に嫌な予感がシオンの背中に疾ったのである。彼はこの類の嫌な予感を、余程の事が無い限りは信じる事にしている。大体、嫌な予感がする時は、外れた試しが無いからだ。

 ……回避も出来た試しも無いが。大慌てで反対側まで来てみれば、凄まじい戦闘があちらこちらで行われていたのである。しかも、殆ど”感じ覚えのある魔力”が。そしてスバルとティアナの姿と、それに襲い掛かる集団を見た時、即座に精霊装填。青龍を叩き込んだ――と言う訳だった。

 

「いたた〜〜」

「……作戦失敗」

 

 雷龍が消えると、リズとリゼが二人揃って現れた。

 バリアジャケットは所々焦げ付いているが、ダメージはさほどでもなさそうである。幻影を囮に逃げまくったのだろう。しかし、その余波はしっかり二人のバリアジャケットを焦がしていた。

 そんな二人を見て、シオンは顔を歪める。それはまるで、信じたく無いものを見る顔だった。

 

「……シオン?」

「……どうしたの?」

 

 スバルとティアナは気まずさも忘れて、思わずシオンに問い掛ける。だが、シオンはそれを聞こえていないのか、無視した。そんなシオンの態度にムッとなって、思わず問い掛けようとするが、それより早くシオンが口を開いた。

 

「なんでだ」

「……え?」

「シオン……?」

 

 ムッとなった事も忘れて二人はシオンを見る。その顔は、怒りと悲しみと”懐かしさ”をない混ぜにした顔――まるで泣き出しそうな、そんな顔だった。

 

「なんで、お前等がここに居る……っ!」

「えっへへ〜〜」

「……回答不要」

 

 リズは笑い、リゼはそっけ無い。シオンは構わない。そのまま叫んだ。

 

「こんな所で何をしてるか聞いてんだっ! リズ! リゼ!」

「……それが任務だからだ」

 

 直後、シオンの頭上から大剣を持ってしての斬撃が降り落ちた。シオンはそれに対して、両のイクスを挟み込むように掲げ、斬撃を受け止める。

 

    −戟!−

 

 衝撃が走り、雪が二人を中心にして舞い上がった。

 

「「シオンっ!」」

「シオン君っ!」

 

 スバルとティアナが叫び、同時に相手を追っ掛けて来たなのはも叫ぶ。だがシオンは構わない。眼前の相手を――ソラを睨み付ける。

 

「ソラさん……!」

「久しぶりだな、神庭。随分強くなったな」

 

 シオンの視線に、しかし彼は笑う。まるで旧友に会うような表情で――その笑顔に、シオンはさらに苛立った。

 

「ふざけんなっ! アンタが居なくなったせいで、リクが、コルトさんが……! どれだけ二人が探し回ったと思ってる!」

 

 叫び、同時に魔力放出。ソラを弾き飛ばす。彼は空中に足場を設置して、そこに立った。

 

「……悪いが、真藤の姓は捨てたんでな。二人共、縁はとうの昔に切った」

「くっ……!」

 

 ソラの台詞にシオンは明確に苛立つ。そして剣先でリズ、リゼを指した。

 

「あの二人は!?」

「私達は副隊長に着いて行きたかっただけだよ〜〜」

「……姉さんと同く」

 

 二人の答えを聞いて、シオンは歯軋りを鳴らす。

 

 怒りで、苛立ちで……悲しみで。

 

 そんなシオンにソラは構わない。頭上を指差した。

 

「バデスさんもだ」

「あのじいさんまでもかよ……っ」

 

 感じ覚えのある魔力だったからそんな気はしていた――信じたくは無かったが。

 二人が問答を繰り広げている間に、なのははスバル達と合流。そのままシオンへと問い掛ける。

 

「シオン君、知り合い?」

「……はい」

 

 苦々し気にシオンは答える。改めて、ソラとリズ、リゼを睨み付けた。

 

「元、グノーシスのメンバーです。元第三位、真藤ソラ。元第六位、獅童リズ、獅童リゼ。元第四位、バデス・ヴォデフォール――」

 

 息を吸い、吐く――ゆっくりと、感情を吐き出すように。そして、続けた。

 

「――俺の仲間だった人達です」

 

 そう言い切り、しかし。

 

「それにもう一人加えなきゃあな?」

 

 声が響いた。あまりにも聞き覚えが。つい、数時間前に聞いた声が。それはソラ達の後ろからゆっくり歩いて現れる。背中に剣群を引き連れて。

 

「……なん、で?」

 

 その姿を見て、声を聞いて、シオンは怒りも忘れて呆然とする。それはシオンの悩みを晴らした人。酒を酌み交わし、笑いを共に上げ、雨に打たれた人――楽しかった、人。

 

「……おっちゃん?」

「偶然って奴なんだかな、坊主。お前が聖剣たぁな」

 

 そう言って、彼は――アルセイオ・ハーデンはシオンの前に姿を現した。

 『坊主、またな』そう書かれたメモの内容通りに、二人はまた出会った。

 

 敵として。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

    −轟!−

 

 剣群がいきなり襲い来る! 姿を現すなり、アルセイオが背に展開していた剣群を放ったのだ。シオンに対して!

 

「まっ……! おっちゃんっ!」

「起きろ」

 

 シオンがアルセイオに呼び掛けるが、アルセイオはそれに答えもしない。

 はじめて、その手にデバイスらしきものを握った。

 真紅の長剣だ。鍔は無い。両刃の、まるで血を流したような、柄も刃も赤い長剣。次の瞬間、アルセイオの足元に魔法陣が展開した。セフィロトを象った魔法陣が。

 

「カラバ式!?」

 

 シオンが驚きの声を上げるが、アルセイオはどこまでも構わない。

 

「ソラ、聖剣は俺が貰うぜ?」

「了解です」

 

 直後、アルセイオの姿が消えた。瞬動だ。シオンは直感に従い、右にノーマルに戻したイクスを叩き込む。

 

    −戟!−

 

 魔力が爆裂する。そこには紅い剣を振るう、アルセイオの姿があった。イクスと鍔ぜり合い、真っ正面から互いに睨み合う。

 

「おっちゃん……! 何で、何でアンタがっ!?」

「坊主。人間、譲れねぇものってのがあるもんなんだよ」

 

 叫ぶシオンに、アルセイオは淡々としていた。鍔ぜり合いのまま魔力放出。爆音と共に、両者吹き飛ぶ。

 

「っく……!」

「ふん」

 

 アルセイオが詰まらなさそうに鼻を鳴らす。

 同時、その身体の周囲に――。

 

 剣が……。

 

 大剣が――。

 

 巨剣が!

 

 一斉に生み出された。

 

「なん、だ? この能力――!?

「無尽刀、そう呼びな」

【無尽刀、だと……?】

 

 呆然とアルセイオの能力を垣間見てシオンが呟く。それにアルセイオが二つ名ともなる自身の能力の呼び名を教え、今まで黙っていたイクスが反応した。アルセイオはにやりと笑う。

 

「ようやく思い出したか、聖剣?」

【……馬鹿な】

「イクス? おっちゃんの事、知ってんのか?」

 

 尋ねるシオンに、イクスは一瞬だけ黙り、しかし喋り始めた。

 

【……元グノーシス第ニ位だ】

「第、ニ位……?」

「そう、お前達に負けるまではな――」

 

 一息。そこまで言って、アルセイオは一つの笑みを浮かべた。

 

「――お前の前マスター、”伊織タカト”に負けるまではな」

 

 アルセイオは笑いながら、言葉を放つ。直後、数百の剣群がシオンに襲い掛かったのだった。

 

 

(第二十六話に続く)

 




次回予告
「無尽刀アルセイオ・ハーデンとの戦いはシオンを追い詰める」
「さらに、シオンの体調が……?」
「圧倒的不利の中、シオン達は、アルセイオ達に勝てるのか」
「そして、シオンの前に真実が晒される――」
「次回、第二十六話『墜ちる想い』」
「少年は絶望の真実を知る」

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