僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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可能性と

エリカが戻ると、稟が

 

「明久とデイジーは、大丈夫でしたか!?」

 

と問い掛けた

その問い掛けの気持ちは同じらしく、芙蓉家に集合していた全員が同じようにエリカに視線を向けていた

すると、エリカは

 

「案ずるな。向こうの世界は、害を為す者は存在せん……」

 

と告げた

それを聞いた一同は、安堵の溜め息を漏らした

しかし、問題はある

 

「戻すには、その魔道具に魔力が必要……なんだね?」

 

というフォーベシィの言葉に、エリカは頷いて

 

「そうだな……具体的な量は、大体……9000兆というところだな」

 

と言った

その量を聞いて、誰もが絶句した

9000兆

それは、莫大な魔力を有しているネリネやプリムラですら遠く及ばない単位だった

なお、人間の平均値は凡そ10~20位であり、多いと言われてる桜ですら約1500前後だ

9000兆という魔力量は、一朝一夕には集められない

もし集めようとしたら、下手すれば年単位掛かる可能性が高い

だが

 

「だからって……諦めてたまるかよっ!」

 

と稟が言った

そんな稟に、全員の視線が集まった

すると、稟が

 

「俺達は一度、あいつに全部を背負わせちまったんだ! それであいつは、片眼と記憶を失った! これ以上、あいつだけに背負わせてたまるか!!」

 

と声を張り上げて言った

そして、稟が荒く呼吸を繰り返していると、楓が

 

「そうですね……私も、明久君に恩を返したいです!」

 

と同意を示した

そして桜は、無言で稟と楓の近くに歩み寄った

三人の目には、強い決意の光があった

決して、諦めないという決意の光が

それに同意するように、シアやキキョウ。ネリネ、プリムラ、瑠璃、フリージアが立ち上がった

決して諦めないと

それを見たからか、エリカが

 

「ならば、最も可能性が高い方法を教えよう」

 

と言った

それを聞いた全員の視線が、エリカに向いた

すると、エリカは

 

「しかしそれでも、可能性は一桁だ……それでも、やるか?」

 

と全員に問い掛けた

その問い掛けに、全員は無言で肯定した

それを見たエリカは、その方法を教えた

そして、明久とデイジーはエリカが見つけた少し開けた場所にずっと居た

 

「お腹も減らないのは便利だけど……変な感じだ」

 

「そうですね……」

 

明久の言葉を聞いて、デイジーは頷いた

するとデイジーが

 

「あの、明久さん……」

 

と明久に視線を向けた

すると、明久が

 

「どうしました?」

 

と首を傾げた

その表情は、以前に比べて遥かに柔らかい

それに一瞬ドキリとしてから、デイジーは

 

「どうして、記憶喪失になってたんですか?」

 

と明久に問い掛けた

それを聞いた明久が沈黙すると、デイジーは

 

「あ、喋り辛いなら無理に喋らなくていいですよ」

 

と言った

しかし明久は、首を振って

 

「大丈夫、話すさ」

 

と言って、語りだした

そしてデイジーは、明久の自己犠牲の話を聞いた

そして、明久が最後に

 

「まあ、偽善だよね……」

 

と呟いた

するとデイジーは

 

「偽善だろうが、それは明久さんの本性です……でも、自身を大事にしてくださいよ……そんなの、何時死んでてもおかしくないですよ……」

 

と涙を流した

その言葉を聞いて、明久は

 

「だけど……僕が引き受けるしかなかったと思うんだ……それが、一番犠牲が少ないと判断したんだ……」

 

と泣きそうな表情をしながら言った

恐らくだがその時、悲壮なまでの覚悟をしたのだろう

でなければ、小学生でするような行動ではない

それを聞いたデイジーは、明久の腕に抱き付いたのだった

 


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