僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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今回は、若干シリアスですよ


帰宅と話と……

FクラスがDクラスを下した日

 

稟達は揃って帰宅している途中だった

 

稟は、自分と楓が住んでる家の両側に建っている巨大な家を見て

 

「この魔法ハウス……誰が住んでるんだ?」

 

と首を傾げた

 

魔法ハウス

 

この呼び方は、近所の子供達が付けた呼び方である

 

理由としては、一週間程前である

 

1、ある日、両隣の計八軒に住む人達が突如、一斉に引っ越し

 

2、翌日の朝には、もはや更地

 

3、その日の夕方には、既に出来上がり

 

これは、魔法ハウスと呼ばれても仕方ない

 

すると、稟の呟きを聞いたのか、ネリネとシアが手を上げて

 

「こっちの家が私の家で……」

 

「こちらが、私の家です」

 

シアが純和風の家を指差し、ネリネが純洋風の家を指差しながら呟いた

 

その呟きを聞いた稟達が固まっていると、明久が顔を芙蓉家に向けて

 

「人の気配がする……」

 

と言った

 

それを聞いた稟達は驚愕した様子で

 

「なんだって!?」

 

「そんな、今日はお父さんも仕事の筈なのに……」

 

「一体、誰が……」

 

と口走った

 

すると明久は、物音を立てずに玄関まで駆け寄ると懐から刀の柄の部分を取り出して、構えた

 

すると、その柄から半透明の刃が出現した

 

「なんだ、アレ……」

 

明久が持っているのを見た稟が呟くと、シアとネリネが近寄って

 

「あれは、魔力刀っす」

 

「魔力刀?」

 

「はい、使い手が集中すると魔力による刃を形成する道具です」

 

と、稟に説明した

 

その説明を聞き終えて、稟が視線を向けると、明久はドアを開けて中を見ていた

 

稟達が近寄ると、明久は居間の方を見ていて

 

「居間に居るな……数は一人だな」

 

と呟くと、ゆっくりとドアノブに手を伸ばすと掴んだ

 

そして数秒後、一気に開けると居間に突入すると

 

「動くな! 何者だ!」

 

と大声を張り上げた

 

その声の直後、稟達も居間に入ると固まった

 

なにせ、居間に居たのは

 

「幹夫さん!」

 

「お父さん!?」

 

「幹夫おじさん!?」

 

楓の父親にして、稟と明久の本来の後見人

 

芙蓉幹夫(ふようみきお)だったからだ

 

幹夫は最初、明久に刃を向けられて呆然としていたが稟達に気づくと片手を上げて

 

「や、三人とも」

 

と微笑みながら、挨拶した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

十数分後、明久やネリネ、シアを含めて、稟達はソファーに座っていた

 

なお、明久は頑なに稟達の後ろで立つことを譲らなかった

 

「お父さん、まだ出張中のはずじゃあ?」

 

楓が問い掛けると、幹夫はフンスと鼻息荒く

 

「明久くんが生きてると聞いて、仕事なんかしてられるか」

 

と言うと、視線を明久に向けて手招きした

 

呼ばれた明久は、幹夫の近くに寄った

 

すると幹夫は、明久の顔をジッと見つめて

 

「生きてくれて、良かった……君に死なれたら、あいつらに申し訳が立たなかったよ……」

 

そう言うと、肩を震わせた

 

「あいつらとは、一体……」

 

明久が首を傾げながら問い掛けると、幹夫は目尻に浮かんだ涙を拭いながら

 

「ああ……そういえば、明久くんは記憶喪失だったね……待っていてくれ」

 

幹夫はそう言うと、ソファーから立ち上がり部屋を出ていった

 

数分後、幹夫は一冊の厚いアルバムを持ってきた

 

そして幹夫は、持ってきたアルバムを開くと机の上に置いて

 

「これを見てごらん」

 

と言いながら、写真を指差した

 

明久達は幹夫が指差した写真に視線を向けた

 

そこに写っていたのは、かなり幼く、幼稚園の制服を着ている明久と、今の明久に雰囲気が似ている優しそうな女性

 

そして、クールそうな雰囲気の男性と小学校高学年か、中学生くらいの少女だった

 

その写真を見たシアが、幹夫に視線を向けて

 

「もしかして、この写真に写ってるのが……」

 

と問い掛けると、幹夫は頷いて

 

「ああ……明久君とその家族だ」

 

悲しい笑みを浮かべながら、呟くように言った

 

すると、ネリネが戸惑いの表情を浮かべながら

 

「あの……明久さんのご家族は……」

 

と幹夫に問い掛けた

 

すると、幹夫は目を細めて

 

「今から八年前に……私の妻と稟くんの両親と一緒に……事故で死んだよ……」

 

と呟いた

 

「そんな……」

 

「ようやく、明久くんの居た町がわかったと思ったのに……」

 

幹夫の話を聞いて、ネリネとシアは俯いた

 

「今は、私が明久くんと稟くんの後見人ということになっているが……五年前に……明久くんが行方不明になってしまった時は、彼らに申し訳が立たないと思ったよ……」

 

幹夫はそう言いながら、写真を見つめた

 

そして数秒間写真を見つめると、視線を明久に向けて

 

「明久くんが生きてると聞いて、私は嬉しかったが同時に、謝りたいと思ったよ……私が弱かったから、明久くんに犠牲を強いてしまい、挙げ句の果てには明久くんから、大切なモノすら奪ってしまった……」

 

幹夫はそう言うと、膝の上で組んだ両手の上に、頭を乗せた

 

すると明久は、一旦目を閉じて

 

「今の俺には、記憶はありませんが……恐らく、こう言ったでしょう」

 

と言うと目を開き、幹夫を見つめて

 

「『これは、俺が選んだ道なんです。だから、後悔はしてません……』とな……」

 

と言い、それを聞いた稟達は息を呑んだ

 

ああ……それは確かに、明久が言いそうなことだと

 

明久は誰かの為に全力で行動できる人間で、それにより怪我しても、笑って相手を許した

 

そして五年前に起きたことも、明久の行動が理由で起きた悲劇だった

 

稟と幹夫は、その時の明久の言葉を思い出した

 

『稟と楓ちゃんには、笑顔で居てほしいから』

 

明久はそう言って、自身が傷つくのを躊躇わなかった

 

本当は稟が行おうとしたのに、それを明久が先に行った

 

それにより、楓は確かに、稟に対しては笑顔を見せていた

 

だが、その代わりに明久が傷ついて、稟は心が痛かった

 

そして、五年前に明久が行方不明になった時は泣いた

 

なぜ、こうなる前に止められなかったのかと

 

兆候は何回もあった

 

怪我なんて何時ものことで、中には明久を殺そうとしたとしか思えないこともあった

 

明久を思って、幹夫は何回も止めようとしたが、その全てを明久は拒否した

 

楓ちゃんと稟のためなら、僕は頑張れるから。と

 

それを聞いた幹夫は、自分の無力さに涙した

 

だからせめて、明久や稟が大人になるまでは責任を持って守ろうと思った

 

だが、その思いは守れなかった

 

明久はある日、散歩に行ってくると言って出ていったきり、帰ってこなかった

 

なお、その途中を興平が見ており、後に興平は一緒に着いて行けばよかったと後悔していた

 

ただ、その時の興平の証言により、明久の足取りが掴めて、明久は近場のハイキングなどに選ばれる小さい山に向かったことがわかった

 

その後、警察の捜索により、飛び散っている血痕と、その時履いていた靴が片方だけ見つかったが、明久は依然として見つからなかった

 

捜索状況を聞いた幹夫は、酷く落ち込みソファーに座り込んで一晩中涙を流した

 

その後もしばらくの間、捜索は続いたが半年を過ぎた辺りで、捜索は打ち切りになった

 

その後、吉井家の墓前にて、幹夫が泣きながら何度も頭を下げていたのを寺の住職が確認している

 

そして、楓はその二年後に真実を知り、泣きながら居ない明久に謝り続けた

 

稟と興平は自分の無力さに絶望し、もう失わないようにと、自身を鍛えた

 

桜は明久の自己犠牲を怒りながら、事態を見てることしか出来なかったことを泣いた

 

智代は病弱な体を恨めしく思い、出来るだけ、体を鍛え知識も蓄えた

 

そして明久に再会して、全員の気持ちは一つになった

 

《もう二度と、明久だけに背負わせない》

 

そう心に誓った

 

 


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