僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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強化合宿偏
男二人の決意


「ここ……だよな?」

 

「ああ……ここの筈だ」

 

目の前の建物を見ながらそう言ったのは、須川亮と横溝真一だった

 

二人が今居るのは、光陽町の外れに有る神界魔界合同大使館の一角の合同近衛部隊の詰め所だ

 

詰め所とは言っても、訓練所や宿舎も兼ねているのでかなり大きい

 

普通の体育館の二倍に匹敵するだろう

 

二人はその建物を見上げながら、揃って喉を鳴らした

 

しかし、なぜこの二人がこんな場所に居るのか

 

それは、明久に会いに来たのだ

 

そして、会いに来た理由は《強くなりたいから》である

 

この二人、明久の戦いを数回程間近で見たのだが、気付いたら、明久の強さに惚れていた

 

他を寄せ付けない、その圧倒的強さに

 

そして、なぜそこまで強くなったのか、二人は一緒に考えた

 

そして思い出した

 

『守るために、必死に努力して強くなった』

 

という事を

 

それを思い出し、二人は数日間悩んで、今朝早くに、明久の家へと向かった

 

だが、生憎と明久は留守だった

 

すると、たまたま家の前で掃除していた魔王が

 

『明久君なら、今日は詰め所で隊員達と訓練しているよ』

 

と教えてくれた

 

それを聞いた二人は、後日に改めて来ようと帰ろうとした

 

だが、魔王が

 

『しかし、明久君に何の用事だい?』

 

と二人に問い掛けた

 

その問い掛けに対して、二人は数秒してから

 

『強くなりたいから、明久に修行を付けてもらいたい』

 

と真剣な表情で答えた

 

それを聞いて、魔王は朗らかな笑みを浮かべると

 

『ふむ、本気のようだね。少し待っていたまえ』

 

と言うと、家の中へと入っていった

 

それから、数分後

 

『はい、これを持って、郊外にある大使館へ行きなさい』

 

と二人に紙を手渡した

 

その紙には《面会許可証》と書かれてあり、下には魔王の名前がサインしてあった

 

それを見て、二人は思わず魔王に視線を向けた

 

すると、魔王は笑いながら

 

『今の君達ならば、大丈夫そうだからね。行っておいで』

 

と、二人を見送ったのだ

 

その後、二人は大使館に到着すると、受け付けの人に許可証を見せてから、明久がどこに居るのか教えてもらい、詰め所まで来たのだ

 

そして、冒頭に至る

 

「よし、入るぞ!」

 

「おう! こうしてても、埒があかない!」

 

二人はそう気合いを入れると、一緒にドアを開けて中に入った

 

すると、入り口付近に立っていた二人の隊員が須川達の前に立ちはだかって

 

「ここから先は、一般人は立ち入り禁止だ」

 

「速やかにでなさい」

 

と二人に忠告した

 

すると、須川と横溝は魔王から渡された許可証を提示して

 

「俺達は、吉井明久隊長に会いに来ました」

 

「これ、魔王様から貰った許可証です」

 

と続けて言った

 

それを聞いて、隊員達は訝しむように二人を見て

 

「本当か?」

「それを見せろ。確認する」

 

と二人に言った

 

すると、二人は素直に持っていた許可証を隊員達に手渡した

 

隊員達は許可証を受け取ると、数秒間確認してから

 

「失礼した」

 

「確かに、魔王陛下の直筆だな」

 

と謝罪すると、許可証を二人に返却した

 

「それで、総隊長だったな」

 

「こっちだ。付いて来い」

 

隊員達はそう言うと、須川達に付いて来るように言ってから歩き出した

 

それに続いて、須川達も歩き出した

 

明久が居るという場所に向かっていた途中、須川達は時々見えた部屋の中で他の隊員達が書類仕事や雑談しているのを見た

 

しかも単一種族ではなく、神、魔、人族が入り乱れている

 

二人がそれを不思議そうに見ていると、先導していた隊員の一人が

 

「不思議か? 三種族がこうして、一緒に働いているのが」

 

と、二人に問い掛けた

 

「あ、いえ!?」

 

「そういうわけじゃあ!!」

 

隊員からの問い掛けに二人が動揺していると、隊員達は笑みを浮かべて

 

「焦らなくてもいい」

 

「同胞の中には、人族排斥主義者なんかも居るからな」

 

と言った

 

人族排斥主義者

 

その過激派集団のことは、二人も知っていた

 

人族は、魔族や神族に支配されるべき。という考えの集団だ

 

「恥ずかしながら、昔の俺達も似た思考を持っていたよ」

 

「だが、明久総隊長に出会って、その考えは捨てた」

 

そう言った隊員達の表情は、どこか晴れやかな表情だった

 

「最初、俺達は明久総隊長を見下してたんだ。だが全てにおいて、明久総隊長は俺達の上を行ったよ」

 

「そして、圧倒的強さで俺達を下した。そこからだな。俺達は明久総隊長を敬愛するようになったよ」

 

「そうなんですか……」

 

「凄い人なんだな……」

 

隊員達の話を聞いて、須川達は素直に感嘆した

 

そんな話をしている内に、大きなドアの前に到着した

 

そのドアの上には《鍛錬場》という、看板が着いていた

 

「総隊長はこの中だ」

 

「開けるぞ」

 

隊員達はそう言うと、ドアを押し開けて

 

「総隊長! 総隊長に面会を希望している者達を連れてきました!」

 

「お目通し願います!」

 

隊員達がそう言うと、それまで指導していた明久がゆっくりと振り向いた

 

ここから、須川達の再誕が始まる


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