僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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バカ共の騒動

数十分後、如月グランドパークの入り口

 

「ふむ……なかなか、大きい所だな」

 

到着するなり、明久はそう呟いた

 

「そ、そうだね」

 

明久の呟きを聞いて、桜は顔を赤くしながら頷いた

 

なぜ、桜が顔を赤くしているのか

 

それは、明久が桜と合流後に桜をお姫様抱っこしたまま、ずっと如月グランドパークまで屋根の上を跳んで移動したからである

 

しかも、人一人を抱えて数十分間跳び続けたというのに、明久は息を乱してすらいなかった

 

流石は、近衛部隊の隊長といったところだろう

 

「さて、中に入ろうか」

 

「う、うん!」

 

明久が手を差し伸べながら言うと、桜は満面の笑みを浮かべながら頷いた

 

そして、明久達が入った数分後に稟と楓がやってきて

 

「ここだな」

 

「はい」

 

二人は数秒間ゲートを見上げると、顔を見合わせてから

 

「入るか」

 

「はい!」

 

と言ってから、ゲートを潜った

 

その更に数分後、なぜか鎖で繋がれた雄二を引きずって翔子が現れて、そのまま入っていった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「さて、どこから行くか……」

 

「そうだね……」

 

明久と桜は入ると、手渡されたマップを見ていた

 

一部はまだ入れないのか、微調整中という文が記載されている

 

明久と桜はしばらく眺めていると、桜が

 

「じゃあ、ここから行こうよ」

 

とマップの一カ所を指差した

 

それを見た明久は、ふむと頷くと

 

「わかった。では、そこから行こうか」

 

と言うと、再び桜の手を握って歩き出した

 

そして数分後、明久達は目的の場所に到着した

 

「ふむ……惨劇の館か……本当にいいのか?」

 

アトラクションの看板を見てから、明久は桜に問い掛けた

 

明久の認識としては、一般的に女子というのは怖いのは苦手という物だからだ

 

だが、桜は微笑みながら

 

「大丈夫だよ。むしろ、少し気になってたんだ」

 

と答えた

 

どうやら、桜は怖いのは平気なようだ

 

「そうか。では、入ろうか」

 

「うん!」

 

桜を伴って、明久は入っていった

 

係員はそれを見送ると、ニヤリと笑みを浮かべ、懐から無線機を取り出すと

 

「ターゲットが入っていった。手筈通りにヤれ」

 

と言った

 

入ってから十数分後、明久達は並んで歩いていた

 

どうやら廃病院をモチーフにしているらしく、道筋の至る所に包帯やら薬剤の空瓶などが転がっていた

 

モチーフに因んで、お化け役も医者や患者のような姿をしていた

 

桜は時々驚いてはいるが、興味津々といった様子で周囲を見回していた

 

だが、明久は剣呑な表情を浮かべていて

 

(おかしい……建物の広さにしては、出口がなかなか見えないし、なにより……これは魔力か?)

 

と考えていた

 

その時、明久の視界の端で一瞬だけ光った

 

その瞬間には、明久は桜を背後に庇って

 

「桜ちゃん、動かないで!」

 

と言うと、裾の中から札を数枚と魔力刀の柄を取り出して構えた

 

そして、まずは札を空中に放った

 

すると、明久の前に魔力障壁が何重にも展開された

 

その魔力障壁に次々と魔力弾や、魔法攻撃が直撃した

 

即席だったためか、魔力障壁は次々と全て砕け散った

 

だが明久は、その両手に握った魔力刀で、第二波を全て弾いた

 

そして、攻撃が来ないのを確認すると、柄を仕舞ってから背後に顔を向けた

 

だが、桜の姿はなかった

 

「む……」

 

明久は素早く周囲に視線を向けて、状況を確認した

 

「ちっ……無駄に手の込んだことを」

 

明久がそう言った理由は、先ほどまで居た場所と景色が違っていたからだ

 

しかし明久は慌てず、数秒間黙考すると左手を懐に入れた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「アキくーん! 何処に行っちゃったの!?」

 

明久とはぐれた桜は、大声を上げて明久を呼んだが、返事はなかった

 

「うぅ……何が起きたんだろう……気が付いたら、別の場所に居たし……」

 

と桜が心細さそうにしていると、ザリッという足音が聞こえた

 

明久かと思い、桜は振り返ったが、すぐに身を引いて

 

「誰……ですか?」

 

と目の前に居た男子達に問い掛けた

 

桜が知らないのも、無理はない

 

そこに居たのは、Fクラスの男子達(バカ共)だったからだ

 

「よぉ! 八重桜さんよ!」

 

「ようやく、あのいけ好かない剣神って奴から離せたぜ!」

 

男子達はそう言うと、下卑た笑い声を上げた

 

その光景に、桜は僅かに後退した

 

だが、男子達は気にしていない様子で

 

「あいつのせいで、俺達のクラスから女子が一人減ったし、土見にも攻撃出来ない!」

 

「だったら、あいつを始末しようとも考えた! だけど、あいつはデタラメに強い!」

 

「だから、あいつの周りから切り崩すことにしたんだよ! なぁ、八重桜さんよぉ!?」

 

男子達の言葉を聞いて、桜は本能的に恐怖して後退りした

 

男子達の目に宿っているのは、完全に憎しみだけだった

 

男子達の憎しみは、完全に逆恨みである

 

Fクラスの所属だった姫路は、過去に許されないことをやって、学園から去った

 

男子達はそれを認めず、明久を恨んだのだ

 

そして、明久を打倒するために、桜を標的にしたようだ

 

「さてさて……どうしてやろうかなぁ!?」

 

と桜に男子達は近寄り始めた

 

桜も後退するが、恐怖で身が竦んで動きが止まった

 

そして、涙を滲ませながら

 

「助けて……助けてよ、アキくん!」

 

と助けを求めて叫んだ

 

その直後、ザギンっ! という金属を斬る音がした

 

「は?」

 

一人の男子が音のした方に視線を向けた直後、暗闇だったはずの場所の一角が多角形に崩れ落ちた

 

そして、そこに居たのは右手に魔力刀を持った明久だった

 

「アキくん!」

 

桜が嬉しそうに呼ぶと、明久は魔力刀を肩に担ぐようにして

 

「はてさて……こんなふざけたことを考えたバカ共は、貴様らか?」

 

と侮蔑的な視線を、男子達に向けた

 

それだけで、男子達はわかった

 

今の明久は、非常に激怒していると

 

だが、明久が次の行動を起こす前に桜に近かった一人の男子が、桜を羽交い締めにして

 

「その武器を離せよ! そうしないと、この子がどうなるかな!?」

 

と明久に告げた

 

それを聞いて、明久は溜め息を吐くと

 

「そうか、離せばいいんだな?」

 

と言って、魔力刀を離した

 

次の瞬間、明久の姿は二人の目前にあった

 

「は?」

 

男子が呆然としている間に、明久は桜を捕まえていた手を離すと、流れるような動作で桜を横にどかしてから、男子の顔面をアイアンクローの要領で掴み、足払いをしながら、男子の頭を床に叩き付けた

 

凄まじい音響と共に、男子の頭は地面にめり込んだ

 

だが痙攣していることから、辛うじて手加減はしたらしい

 

その直後に、周囲の風景が変わり、お化け屋敷の隣の工事中の区画へと変わった

 

「まったく……幻影系の魔道具を使って周囲の風景を変えて、俺達をここまで誘導したのか……」

 

明久はそう言うと、男子達を睨みつけた

 

「どうする? 今なら、警察に突き出すだけで勘弁してやるが? まあ、営業妨害に誘拐、婦女暴行といったところか」

 

明久はそう言うと、先ほど離したのとは別の魔力刀の柄を取り出して

 

「それとも……みじん切りにしてやろうか?」

 

冷たい殺気を放ちながら、魔力刀を突き付けた

 

その直後、男子達は揃ってその場に座り込んだ

 

 


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