僕とSHUFFLEと召喚獣   作:京勇樹

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驚愕の事実

左目に眼帯を装着した少年、吉井明久が名乗り、明久を見た稟達が驚愕して立ち上がると、教室内は時間が止まったように静かになった

 

すると、ネリネとシアの二人が前に出て

 

「稟様……」

 

「明久君のことなんだけど……」

 

と、辛そうに口を開いた

 

が、そのタイミングでドアが開いて

 

「すいません……遅れました」

 

「遅れました!!」

 

二人の男女が入ってきた

 

女性のほうは、長い白髪に整った容姿。だが、その両目は閉じられており車椅子に座っている

 

その車椅子を押しているのは、金髪リーゼントにサングラス、更には制服越しだというのにわかるほどの鍛え上げられた大柄な体躯が特徴だった

 

すると、それまで呆然としていた紅女史がハッと我に帰って

 

「ああ……お前たちか。連絡は受けている。名札の置いてある机に付け」

 

と、二人に説明した

 

すると、二人は頷いて

 

「わかりました!」

 

「承りました」

 

と、机に向かおうとした

 

が、車椅子に座っている女性がハッとした様子で顔を上げた

 

「どうした、智代?」

 

金髪リーゼントの男子、皇興平(すめらぎこうへい)が問い掛けるが、白髪の女性

 

皇智代(すめらぎともよ)は答えずに、顔を明久のほうに向けて

 

「この感じは……明久?」

 

呆然とした様子で呟いた

 

「なに!?」

 

智代の呟きを聞いた興平は、視線を明久に向けて

 

「あ、明久!?」

 

明久に気づくと、目を険しくして明久に掴みかかった

 

「明久! テメエ、今までどこに居た!」

 

興平が凄い剣幕で怒鳴るが、明久は首を傾げて

 

「俺を知ってるのか……?」

 

と、問い掛けた

 

明久の言葉を聞いた稟は、驚いた様子で目を見開いて

 

「なに言ってるんだよ! 興兄と智代姉さんじゃないか!」

 

と言うが、明久は尚も首を傾げていた

 

すると、ネリネとシアが悲しそうに

 

「稟様……」

 

「言いたかったのは、そのことだったの……」

 

と呟いた

 

「どういう……ことだ?」

 

稟が問い掛けると、ネリネとシアは数瞬口をつぐんだが

 

「私達が明久君を保護したのは五年前なんだけど……」

 

「保護した時から、明久さんは名前以外、何も覚えてなかったんです……」

 

シアに続いてネリネが告げた言葉を聞いて、稟達は固まった

 

「な、なんだと……?」

 

興平が唸るように呟くと、手を叩く音がして

 

「歓談中すまないが、私と高橋先生はFクラスがDクラスに対して宣戦布告したために、試験召喚戦争に備えて待機する。その前に、クラス代表だけでも紹介しておく。霧島、前に出ろ」

 

紅女史がそう言うと、黒髪ロングの女子が立ち上がり前に出た

 

「……霧島翔子(きりしましょうこ)です。よろしく」

 

と、簡潔に自己紹介して頭を下げた

 

それを確認した高橋女史は頷いて

 

「皆さん、霧島さんに従って試験召喚戦争に負けないようにしてください。それでは……」

 

と言って、紅女史と共に教室から退出した

 

その後、Aクラスの生徒達は紅女史の指示に従って軽く自己紹介しあっていた

 

そんな教室内の一角では

 

「あの……剣神の吉井明久様ですよね?」

 

神族と魔族の少女達が、座っていた明久に声を掛けていた

 

「まあ、確かにそう呼ばれているな」

 

明久が肯定すると、少女達は嬉しそうに

 

「あ、あの! 私達、あなたのファンなんです! 握手してもいいですか!?」

 

と問い掛けると、明久は少し不思議そうに

 

「別に構わないが……」

 

と頷いてから、二人の少女と交互に握手した

 

握手した少女達は、嬉しそうにはしゃぐと明久に頭を下げて離れた

 

その光景を見ていた稟達は、悲しそうに

 

「本当に、変わっちまったな……」

 

「はい……」

 

「うん……」

 

「明久……」

 

そう呟いていた

 

場所は変わり、旧校舎屋上

 

そこには、数人の男女が座って話し合っていた

 

話し合っているのは、Dクラスに対して宣戦布告したFクラスの生徒である

 

すると、逆立った赤髪の男子、Fクラス代表の坂本雄二が思い出したように

 

「そういやぁ、ムッツリーニに麻弓。確か、Aクラスに転校生が入ったよな? 情報はあるか?」

 

と小柄で三白眼が特徴の男子と、右目が赤で左目が青の少女に問い掛けた

 

三白眼の男子、ムッツリーニこと土屋康太は

 

「……俺が調べた限り、転校生は三人。美少女二人と男が一人だ」

 

と呟くように言って、それに続くようにオッドアイが特徴の少女、麻弓=タイムは何処からかデジタルカメラを取り出して

 

「写真を撮ってあるのですよ!」

 

と操作してから、全員に画面を見せた

 

その画面に写っているのは、ネリネとシア。そして、明久だった

 

「まず、一番左側の子は魔界の王女のネリネ様。真ん中の子がリシアンサス様。最後に、左側の男子が神界魔界合同近衛部隊部隊長にして、剣神の称号を持つ吉井明久なのですよ」

 

と麻弓が言うと、雄二は腕組みして

 

「魔界と神界の王女に近衛部隊の部隊長が、なんでこんな所に来たんだ?」

 

と首を傾げた

 

「どうやら、誰かに会いに来たらしいのですよ」

 

「なるほどのう……む? 姫路よ、どうしたのじゃ?」

 

「まるで幽霊を見たような顔をして」

 

雄二の疑問に麻弓が答え、そのことに女子に見える男子

 

木下秀吉が頷いていると、自分の隣に居た女子、姫路瑞希が目を見開いていることに気づいた

 

そして、同じように気づいたポニーテールの女子、島田美波が問い掛けると、姫路瑞希は両手をパタパタと振って

 

「あ、いえ……大丈夫ですよ?」

 

と言ったが、内心では

 

(なんで……なんで、この人殺しが生きてるんですか!?)

 

と驚愕していた

 

(生きてるわけが無いんです! だって……この人殺しは、五年前のあの日に……)

 

姫路の脳裏によぎったのは、幼い明久が流血している左目を手で覆いながら落ちていった光景だった

 

(私が突き落とした筈なのに!)

 

だが、明久はこうして生きている

 

それを確認した姫路は

 

(このままじゃ、また楓ちゃんから笑顔が無くなります……だったら、私が勝ってあの人でなしを学校から追い出します!)

 

と拳を握り締めながら、意気込んでいた


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