初日が終わり、ほとんどの生徒達が帰宅した後、明久はフリージアと瑠璃=マツリを連れて学園長室へと向かっていた
「隊長、どこに行くんですか?」
どこに行くのか分からない瑠璃が、明久に問い掛けた
「学園長室だ」
「学園長室?」
明久の告げた場所を聞いて、フリージアが首を傾げた
「ああ……今回の件、学園長と教頭が関与している」
と明久が答えたタイミングで、学園長室に到着した
明久は到着すると、ドアをノックした
『誰だい?』
「二年Aクラス所属の吉井明久と三年Aクラス所属のフリージア及び、瑠璃=マツリです」
明久が名乗ると、数瞬してから
『入りな……』
と入室を促された
「失礼します」
促されて、明久達は入室した
そして、一瞬止まると植木鉢に近寄って
「疾!」
という掛け声と共に、魔力刀を振った
「いきなり、何やってんだい!?」
明久の行動に、学園長が声を荒げた
だが、明久は無視して植木鉢の残骸に手を伸ばして何かを摘まんだ
「気づいてなかったんですね……」
明久はそう言うと、それを机の上に置いた
「なんだい、これは?」
「盗聴器です」
学園長の言葉に明久は端的に返答しながら、魔力刀で切り裂いた
「瑠璃、フリージア」
「魔術的、機械的のは他にはありません」
「人の気配もありません」
明久が問い掛けると、瑠璃=マツリとフリージアは周囲を警戒しながらそう言った
その報告を聞いてから、明久は学園長に切り出した
「学園長、今回の文化祭……いや、試験召喚獣大会。裏がありますよね?」
「……流石は、合同近衛部隊の隊長だね……」
明久の言葉を聞いて、学園長は深々とため息を吐いて、机の引き出しから一つの腕輪を取り出した
「それは?」
「今度の大会の優勝者に送られる景品さね……名前は黒金の腕輪」
明久が問い掛けると、学園長は神妙な面持ちで説明した
「その腕輪がどうしたんですか?」
「この腕輪にはね……致命的な欠陥があるのさね」
瑠璃からの質問に学園長が答えた瞬間、明久は目を細めた
「欠陥があるのに、景品として出品したのか?」
「アタシとしちゃあ、出す気は更々無かったのさ……だが、竹原の奴が勝手に発表したのさ」
明久の言葉を聞いて、学園長は溜め息混じりにそう言った
すると、明久は顎に手を当てて
「なるほどね……竹原の奴の企みがわかったぞ」
と言った
「隊長、どういうことですか?」
瑠璃が問い掛けると、明久は腕輪を指差して
「学園長、この腕輪の欠陥というのは取得点数ですね?」
と言った
すると、学園長は軽く驚いた様子で
「よくわかったね?」
と言った
すると明久は、軽く肩をすくめて
「学園長が大会に出場するように言った坂本と土屋はFクラス所属。もし、点数が低いのが理由で何か起こるのだったら、坂本ではなく、一緒に居た霧島に依頼する筈だ……だが、坂本達に依頼した。つまりは、取得点数が高いと暴走する……違うか?」
明久の説明を聞いて、学園長は降参といった様子で両手を上げて
「正解さね……そいつは、取得点数が総合Bクラスに達すると暴走するのさ」
と告げた
「なるほどね……恐らく、竹原の企みはその腕輪を意図的に暴走させ、学園長を失脚させて学園を乗っ取ろうと言った所か」
明久がそう言うと、学園長は深々とため息を吐いて
「本当にズバズバと当てるね……」
と言ってから
「竹原の奴が近くの私立の高校と接触しているから、恐らくは試験召喚獣システムが目的さね」
と言った
それを聞いて、明久は目を細めて
「それで誘拐すら起こさせるか……ふざけやがって……」
と悪態を突いた
「どういうことだい?」
学園長が問い掛けると、明久は懐からスマホを取り出して
「これを見てください」
と言って、操作してから机の上に置いた
そこに映っているのは、明久達のクラスに乱入してきた男達の一人だった
男は虚ろな表情をしながら、竹原に依頼されて生徒の誘拐を企てた
と語った
それを聞いて、学園長は額に手を当てて
「竹原はそこまでやったのかい……すまないね、怪我人は居なかったかい?」
と明久に問い掛けた
すると、明久は頷いて
「俺が直ぐに制圧したからな……だがこうなったら、竹原は我々が潰すぞ」
明久はその瞳に、冷たい光を宿しながらそう宣言した
明久の宣言を聞いて、学園長は察した
竹原は、明久の逆鱗に触れたのだと
すると、明久が背を向けて
「近い内に代わりの人材はこちらで用意する……ではな」
と言うと、学園長室から退室した
学園長はそれを見送ると、椅子ごと回って窓の外を見ながら
「竹原……短い付き合いだったね……」
と呟いたのだった
余談ではあるが、放課後に校舎の裏にて常夏コンビがズタボロで埋まっているのを、偶然通りかかった生徒が見つけたのだった