IS〈イノウエ シンカイ〉   作:七思

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如月重工のとある一日



私の支援企業が初めてくれた装備、それは如月重工製で、私は高校生でした。
その性能は高くて偏っていて、こんなステキな装備を貰える私はきっと特別な変態なのだと感じました。
今では私が如月重工社員。お客様にあげるのはもちろん我が社の装備。
なぜなら、彼もまた、特別な変態だからです。



網「というCMはどうでしょう」
社「よし、早速午後から放送しよう」
網「分かりました、電波ジャックの準備をします」


第27話 福音(剣鬼編)

「聞いたか? 「鴉殺し」が負けたらしいぞ」

「ふん、剣なんぞにこだわるからだ。あんな時代遅れの武器で今まで生き残れたことが奇跡なんだ」

「まったくだ。AMS適性のおかげで戦えていただけだというのに、調子に乗りおって」

「剣で銃に勝てるわけがない。そんなことも分からんとは、馬鹿な女だ」

「まあ、自分で「戦うしか能がない」と言うくらいだからな。仕方ないだろう」

「なんにせよ、これであの女のためにパーツを作る必要はなくなったわけだ」

「たった一人しか使わないようなパーツのために、我々がどれだけ苦労させられてきたことか」

「だがまあその分は、これから役に立ってもらうさ」

「どういうことだ?」

「あの女の死体が回収された。損傷は激しいが、脳は無事らしい」

「ほう、それは……」

「あれほどのAMS適性、そうはない。その性能だけでも引き出させてもらうとしよう」

 

 

 

 ……「彼女」が、帰ってこない。

 

「…………」

 

 「彼女」が出撃したのは昨日のことだ。いい加減戻って来てもよさそうな頃だが。

 

「…………」

 

 レイレナードはいまだ劣勢だ。ナンバー1のベルリオーズを始めとする主力部隊がまだ残ってはいるものの、戦力は多いに越したことはない。

 生真面目な「彼女」ならば、すぐに次の出撃の準備をするだろうに。

 

「…………」

 

 そして己も、今ではレイレナードの正規リンクスだ、この戦争に参戦する可能性は高い。そのための実力を身に付けなければならないので、「彼女」の力を借りたいのだが。

 

「…………」

 

 ……否。本音を言えば、レイレナードもリンクス戦争も、己にはどうでもいい。

 だが、「彼女」との約束がある。いつか「彼女」の隣に並び立ち、共に戦うという、約束が。

 

「…………」

 

 そしてそれは、己自身の夢でもあった。「彼女」と同じ戦場に立ち、「彼女」の背中を守ることは。

 

「…………」

 

 そう、それが己の夢だった。

 「彼女」と出会い、その剣舞を目にした時から、それだけをずっと夢見ていた。

 

「…………」

 

 だから己はこの身を鍛え、技を磨き続けて来た。

 「彼女」に追い付くために。

 「彼女」に、認めてもらうために。

 

「…………」

 

 そのために「彼女」に教えを乞うと言うのも情けない話であるが、しかし弟子が師に出来る最大の恩返しは、師を超えることだと聞く。

 「彼女」の剣が学べ、「彼女」に恩返しも出来るのなら一石二鳥だ。

 ……遥かに先のことになるだろうが。

 

「…………」

 

 そう、「彼女」はいつも、己の目指す先にいる。

 

 「彼女」はずっと、己を支えてきてくれた。

 

 「彼女」はずっと、己を奮い立たせてきてくれた。

 

 「彼女」はずっと、己を教え導いてきてくれた。

 

 「彼女」はずっと、己の目標で在り続けてきてくれた。

 

 「彼女」はずっと、己の憧れで在り続けてきてくれた。

 

 「彼女」はずっと、己の夢そのものだった。

 

 「彼女」は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――もう、いない。

 

 

 

 

 

 

「ごっ……!? う、ぶ……お、えええぇぇ…………!!」

 

 吐いた。

 

 今朝食べたものを、全て吐いた。

 

 それでは止まらず、胃液を全て吐いた。

 

 それでも止まらず、ついには血の固まりを吐き出して、ようやく止まった。

 

「ぐ、がふっ……!」

 

 嘔吐は収まったが、今度は涙が溢れてきた。

 体中の水分を全て消費するような勢いで、滝のように流れ続ける。

 

「ぐ……」

 

 ……何故だ。

 

 何故、「彼女」が死んだ。

 

 何故、己が生き残っている。

 

 己が……己こそが、死ぬべきだったのに。

 

「ぐ、ううぅぅぅ……!!」

 

 何故、「彼女」を守れなかった。

 

 決まっている、己が弱いからだ。

 

 「彼女」と共に戦う資格がなく、ただ見上げ続けるしか出来ないほどに、弱いからだ。

 

「………………ッ!!」

 

 力が欲しい。

 

 強大な力が。

 

 圧倒的な力が。

 

 絶対的な力が。

 

 ……だが、そんなものを手に入れてどうする? 今更そんなものを手に入れてなんになる?

 

 「彼女」はもういない。

 

 「彼女」はもう、どこにも、いないのに。

 

 

 

「貴方が真改か」

「…………」

 

 唐突に、声を掛けられた。

 俯いていた顔を上げそちらを見れば、そこには若い、少年と呼べるほどに若い男がいた。

 

「貴方の力を、借りたいのだが」

「…………」

 

 その言葉になんの反応も示さずに黙り続ける己に、しかし男は構わずに話し続けた。

 

「レイレナードはもう終わりだ。主力部隊でも、アナトリアの傭兵を抑えることは出来まい」

「…………」

「だがレイレナードが滅びたとしても、クローズ・プランを潰すわけにはいかない」

「…………」

 

 ……クローズ・プラン? なんの話だ?

 

「この世界はいずれ死に絶える。人類の、身勝手な行いによって」

「…………」

「これを回避する手段はただ一つ。人類の罪を清算し、閉ざされた未来を――宇宙への道を開く」

「…………」

 

 感情の薄い、淡々と話す男の言葉に、己は一切の興味を持てなかった。

 ……どうでもいい。世界が死に絶えようが人類が絶滅しようが、己には関係ない。

 

「人類に、黄金の時代を。私達はそのための準備をしているが、戦力が不足している。故に、貴方の力を借りたい」

「……失せろ……」

 

 興味がない。

 関係がない。

 勝手にやっていろ、お前たちの目的など、己の知ったことではない。

 

 己はもう、何もかもが、どうでもいい。

 

 

 

 ――だが。

 

「……回収されたのは、「鴉殺し」の遺体だけではない」

「……!」

 

 その言葉は、そしてそれに続く話は、無視できないものだった。

 

「「鴉殺し」のネクスト、〔オルレア〕のパーツも一部が回収され、まだ使える物は他のリンクスに引き継がれることになった。そのパーツの中には、「鴉殺し」の愛剣、〔ムーンライト〕も含まれている」

「……な……に……?」

 

 「彼女」の剣が引き継がれるだと?

 一体、誰に……?

 

「……貴方だ、真改」

「………………!!」

「貴方が、「鴉殺し」の後継に選ばれた」

「……馬鹿な……」

 

 己が? 己如きが、「彼女」の剣を?

 

「オルレアの最後の記録に残っていた。貴方しかいない、と。……遺言、だったのだろうな」

「………………」

 

 己しかいない。

 「彼女」が……そう、言ったのか?

 

「もう一度言おう。力を借りたい。貴方の力を。

 ……人類の未来のため、人類の、黄金の時代のために」

「…………」

 

 「彼女」を失い、己にはもう、何も残っていないと思っていた。

 

 ……まだだ。己にはまだ、この命がある。「彼女」が遺してくれた剣がある。

 

 ならば、己は――

 

「……協力してもらえるか?」

「……応……」

 

 世界がどうなろうと、どうでもいい。だがここは、「彼女」が生きた世界だ。

 

 ……ならば、刻み込んでやる。

 

 「彼女」の生き様を、「彼女」が生きた証を。

 

 この己が、「彼女」の剣で。

 

 この穢れ切った、「彼女」が「彼女」らしく生きることを許さなかった世界に。

 

 そのためならば、己は――

 

「……真改……」

「メルツェルだ。歓迎しよう、真改。

 ――貴方が、五人目だ」

 

 いくらでも奪ってやる。

 いくらでも壊してやる。

 いくらでも殺してやる。

 

 その果てに何が残るのか、見せてもらおう。

 

「覚悟はいいか? 我々の敵は、世界そのものだぞ」

「……不足なし……」

「ふむ、頼もしい限りだな」

 

 興味がない。

 関係がない。

 どうでもいい。

 知ったことではない。

 

 たとえ相手が誰であろうと、それが世界そのものであろうと。

 

 己はただ、寄って、斬るのみ。

 

(……良く、見ておけ……)

 

 もう、失うものは何もない。

 

 己の命に大した価値などないのだ、寄越せと言うならくれてやる。

 

 だが、その前に。

 

(……己の、剣を……)

 

 足掻いてやる。

 己の命が尽きるその瞬間まで、足掻き抜いてやる。

 

 そして、思い知らせてやる。

 

 お前たちが馬鹿にした時代遅れの戦術で、たった一振りの剣で、一体何が出来るのかを。

 

 だから、見ていてくれ――

 

 

 

 

 

 

 ――アンジェ。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「…………」

 

 忘れていた。己が、何者なのか。

 

 この心地良い世界に、長く居すぎたせいだろうか。

 

「…………」

 

 誰かを守るなど、己には過ぎた望みだ。願うことさえ許されない。

 だというのに、身の程を弁えないから――この、様だ。

 

「…………」

 

 旅館の一室。

 ベッドに横たわる一夏を見る。体中に重度の火傷を負い、肉は所々が抉れ、骨が何ヶ所も砕けている。

 生きていることが奇跡と言えるほどの重傷。たとえ意識を取り戻したとしても――もう二度と、立ち上がることは、出来ないかもしれない。

 

「……ぅ……」

「…………」

 

 傷が痛むのか、ふと、一夏が呻き声を上げた。

 その苦しみを少しでも和らげてやりたくて、髪を撫でようと手を伸ばし――止めた。

 

 ……こんな血みどろの手で触れれば、汚れてしまう。

 

「…………」

 

 己が一夏にしてやれることなどない。

 己に出来るのは、戦うことだけだ。

 

「…………」

 

 ……否。「戦い」と呼べるほど、己のそれは上等なものではない。

 己が死ぬよりも先に、相手を殺す。骨を断たせて首を刈る。

 ただ、それだけだ。

 

「……寝ていろ……」

 

 ここに居ても、意味はない。

 ここに居ても、何も出来ない。

 

 なら、往くか。

 

「……目覚める頃には……」

 

 敵の下へ。

 敵と戦いに。

 敵を、殺しに。

 

 あの頃のように。

 

 あの頃と、同じように。

 

「……全て、終わらせておく……」

 

 ……そう、ここにいるのは、井上真改ではない。

 この美しく優しい世界に己を産んでくれた両親と同じ姓を名乗る資格など、己にはない。

 

 ここにいるのは――

 

 

 

 「……銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)……」

 

 

 

 レイレナードの亡霊、

 

 

 

 最悪の反動勢力、

 

 

 

 ORCAの、第五。

 

 

 

「……素っ首、貰い受ける……」

 

 

 

 ――ただの、真改。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

(まったく、自分が情けないですわ……)

 

 作戦から帰還した三人の姿に、セシリア・オルコットは無力感を覚えた。

 

 初めて、好きになった人。

 初めて、憧れた人。

 初めて、ライバルと認めた人。

 

 全員が、ボロボロだった。

 

(わたくしに、もっと力があれば……)

 

 未知の力を持つ敵に立ち向かう三人を、見送ることしか出来なかった。

 ただ成功を祈って待ち続け、しかしその祈りは届かなかった。

 

(本当に、情けない……)

 

 分かっていた筈だ。真改の様子が、普通ではなかったことは。

 

 分かっていた筈だ。専用機とは、訓練もせずにいきなり実戦で扱えるようなものではないことは。

 

 分かっていた筈だ。あの二人に何かがあれば、一夏がどういう行動に出るのかは。

 

(なのに、何も出来なかった……)

 

 無力。

 

 セシリア・オルコットには、何も出来ない。

 

(……本当に?)

 

 無力なのか。

 

 セシリア・オルコットには、何も出来ないのか。

 

(……本当に、そう?)

 

 否。

 

 断じて、否。

 

(わたくしにはまだ、出来ることがある――)

 

 敵はまだ残っている。一夏を傷つけた敵が。

 

 ならば真改は、立ち上がるだろう。

 

 ならば――セシリア・オルコットに、出来ることは。

 

『一夏さんも言っていましたが、わたくしも、真改さんを守ります。貴女が戦う時は、わたくしも貴女の隣で戦います』

 

(……あの時の誓い、今こそ果たさせていただきますわ)

 

 真改が戦うのなら、自分も戦う。

 今度こそ、自分が真改の背中を守る。

 

 それこそが――セシリア・オルコットの、為すべきことだ。

 

「さあ、行きましょう、ブルー・ティアーズ――わたくしと共に」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

(……そっか。そうだったんだ)

 

 瀕死の重傷を負った一夏、それを我が身のことのように見る真改、そして泣きじゃくる箒。

 

 その光景に、凰鈴音は既視感を覚えた。

 

(同じなんだ……あの時と)

 

 三年前、モンド・グロッソ観戦から帰って来た二人。

 一夏と真改の立場は逆だが、あの時とまったく同じ。

 

 そして、箒は――

 

(……あたしだ)

 

 鈴も箒と同じように、泣きじゃくっていた。

 体に深い傷を負った真改と、心に深い傷を負った一夏。

 それを前に、何も出来ずにただ泣いていた自分。

 

 同じだ。あの時と。

 

(いや……同じじゃない)

 

 あの時は、何も出来なかった。

 今回も、何も出来なかった。

 

 けれど――

 

(今のあたしには、力がある)

 

 終わったことはもう、変えられない。

 けれどこれは、まだ、終わっていない。

 

 ――否。

 

(こんなんで、終わらせるもんか)

 

 この楽しい毎日を、ずっと続けていく。

 そのためには、こんなことで終わらせるなんて出来ない。

 

 だから。

 

(あたしは、あたしにやれることをやる)

 

 親友が傷つくのを、黙って見ていられない。

 

 なら、戦う。

 

 自分の力は、そのために手に入れたものなのだから。

 

「それじゃ、行きますか。もちろん、アンタも付き合ってくれるわよね――甲龍」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

(一夏……シン……箒……)

 

 一夏、真改、箒の変わり果てた姿を見て、シャルロット・デュノアは強い痛みを覚えた。

 

 母親を失った時と、とても良く似た痛みだった。

 

(なんで……こんなことに、なったのかな……)

 

 痛みも、苦しみも、悲しみも、もうたくさんだった。

 

 一夏の無自覚な言動にドキドキして、真改の強さに憧れ追いかけて、箒と一夏を取り合って……。

 

 そんな騒がしくて楽しい毎日を、ずっと、続けていたかったのに。

 

(そんなことも、許されないだなんて……)

 

 ようやく取り戻した、幸せな日々。

 

 それが、また奪われようとしている。

 

(……そんなこと、させない)

 

 なら、自分が守る。

 誰かが奪おうとしているのなら、絶対に守ってみせる。

 

 みんなで笑い続けていられる、素晴らしい毎日を。

 

(許してくれなくてもいい。僕は、戦って勝ち取る)

 

 戦え。

 そう言って、背中を押してくれた。

 

 抗え。

 そう言って、心を支えてくれた。

 

 一人で出来ないのなら、誰かに助けを求めればいい。

 そう、教えてくれた。

 

(……ううん。みんなで、戦って、勝ち取るんだ)

 

 今の自分には、大勢の友達がいる。

 一人でうずくまり、震えて、ただ黙って耐えていた、あの頃とは違う。

 

(みんなで力を合わせて、この毎日を、守る)

 

 今こそ、立ち上がる時。

 

 今こそ、戦う時だ。

 

 一夏と真改に、恩を返すために。

 

 箒と一緒に、また、笑い合うために。

 

「行くよ、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ――今度は、僕たちが助ける番だ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

(強さとは、戦闘力のことではない、か。……まったく、その通りだな)

 

 初めて出来た、心から信頼できる仲間たちの敗北を知り、ラウラ・ボーデヴィッヒは怒りを覚えた。

 

 軍人たる自分が何もせず、ただの学生に過ぎない者たちを戦わせたことに。

 

(この痛みから、一夏は立ち直ったのか。……道理で、あれほど強いわけだ)

 

 かつてのラウラであれば、何も感じることはなかっただろう。

 

 だが今は、こんなにも心が揺れている。

 

(……以前の私ならば、弱くなったと思うのだろうな)

 

 だが、今は違う。この想いが大きな力になることを、ラウラは知っている。

 

(状況に変化あるまで現状待機、か)

 

 それが、千冬からの命令だった。

 軍人であるラウラにとって、命令は絶対だ。命令の前には自分の感情など、邪魔なだけでしかない。

 

 ――だが。

 

(私は、ラウラ・ボーデヴィッヒ。……それ以外の、何者でもない)

 

 何者でもないのなら、ラウラ・ボーデヴィッヒになれ。

 

 千冬の言葉。ラウラにとって、それはどんな命令よりも優先すべき言葉だった。

 

(教官……いや、織斑先生。私はあなたの命令ではなく、あなたの教えに従う)

 

 軍人ではなく、魂を持った、一人の人間として。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒとして、自らの心に従う。

 

(……よくも、私の仲間たちを)

 

 罪を償うと誓った。

 ならば今立たずして、いつ立ち上がるというのか。

 

 ここで立たねば、ラウラ・ボーデヴィッヒではない。

 

(命令に背くこと、申し訳ありません、織斑先生。……ですが、やらぬわけにはいかないのです)

 

 この怒りを。

 

 この痛みを。

 

 この、想いを。

 

 呑み込むわけには、いかないのだ。

 

(軍人としてではなく、私は私として戦う。私らしく、在るために)

 

 だから、この心の赴くままに。

 

 ――いざ、戦場へ。

 

「行くぞ、シュヴァルツェア・レーゲン――私の、もう一人の相棒よ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 それは、私が小学校二年生の時のことだ。放課後、夕暮れ時の教室で、私は帰り仕度をしていた。

 すると、そこへ。

 

「おい、男女ー。今日は木刀持ってねーのかよー」

 

 いつも私をからかってくる三人組が、いつものように絡んできたのだ。

 

「……竹刀だ」

「おんなじだろ、そんなの。へっへっ、お前みたいな男女にはさー、武器がお似合いだよな〜」

「…………」

「しゃべり方も変だしよ〜」

 

 女一人を男三人で囲むなど、臆病者以前の下種どもだ。

 相手にする必要すらないのだが、その頃から負けん気の強かった私は無視して帰るのを良しとせず、相手を睨み付けた。

 

「やーいやーい、男女〜」

「男女~」

「…………」

 

 しかし子供の眼力などたかが知れている。大した効果もなく、からかいは続いた。

 

 そんな中、他のクラスメイトがサボって帰ってしまったのに一人真面目に掃除をしていた少年が、私を囲む連中に言い放った。

 

「うっせーなぁ。てめーら暇なら帰れよ、邪魔だから。それか手伝えよ。ああ?」

 

 その少年は、名を、織斑一夏といった。

 

「なんだよ織斑、お前こいつの味方かよ」

「へへ、お前この男女が好きなのか?」

 

 そんな子供らしい、無邪気な悪意に満ちた言葉に、一夏は心底不快そうに顔をしかめる。

 

「てめーら邪魔なんだよ、掃除の邪魔。どっか行けよ、うぜえ」

「へっ、真面目に掃除なんかしてよー、バッカじゃねーの――おわっ!?」

 

 ……馬鹿? 今馬鹿と言ったか?

 どちらが馬鹿か。真面目に役目を果たす者と、役目を放棄し遊び呆ける者。

 一夏が掃除をしなければ誰も掃除をしない、そうなればこいつらも先生に怒られるというのに、そんなことも分からんのか。

 

 ……だからその言葉は、黙って聞き流すことは出来なかった。

 

「真面目にすることの何がバカだ? お前らのような輩よりははるかにマシだろう」

「な、なんだよ……なにムキになってんだよ。離せっ、離せよっ」

 

 胸倉を掴み、締め上げる。

 しかし仲間がやられているというのに、残りの二人はそれを笑って見ているだけ。

 

 ……つくづく、気に入らない連中だ。

 

「あー、やっぱりそうなんだぜー。こいつら夫婦なんだよ。知ってるんだぜ、俺。お前ら朝からイチャイチャしてるんだろ」

「織斑ー、お前井上と夫婦なんじゃねえのかよー。そういうの、浮気って言うんだぜー」

 

 一夏が私の家の道場に通い始めてからというもの、こういうからかい方をされたのは一度や二度ではない。

 いい加減、私も飽き飽きしていた。

 

「そっか、それでこの間リボンなんかしてたのかよー。織斑を井上に取られちゃ大変だもんなー。男女のくせによー、笑っちま――うわっ!?」

 

 女の子らしく、という望みは私にもあった。だからリボンをしていたのに、それを馬鹿にされればさすがに……少し、傷つく。

 

 だがその痛みに耐える私に代わってか、今度は一夏が怒りをあらわにした。

 幼いながらも鍛えられた腕で相手を締め上げ、睨み付ける。

 

「なんか笑うようなとこあったかよ。ああん? 篠ノ之がリボンしてたらなんかおかしいのかよ。すげえ似合ってたろうがよ」

「な、お、おいっ、離せよっ」

「その前に謝れよ。ごめんなさいって。それくらい言えるだろ、いくらバカでも」

「こ、このっ!」

「っ!」

 

 そこで、一人が一夏に殴りかかった。

 両手で胸倉を掴み上げている一夏はそれをかわせず、拳が一夏に迫り――その前に、少女が一人、割り込んだ。

 

「…………」

「な、シンっ!」

 

 ガツンと、拳が少女の――井上真改の頬を打つ。

 真改はそれがまるで効いていない様子だったが、友人、しかも女の子の顔を殴られた一夏は激怒した。

 掴み上げていた少年を放り投げ、真改を殴った少年を睨み付ける。

 

「てめえっ!!」

「うわっ!? ちょ、わざとじゃ――」

「うるせえ!!」

 

 言い訳を聞こうともせずに一夏は拳を握り締めて殴りかかったが、真改に手を掴まれて止められた。

 

「おい、シンっ!」

「…………」

 

 怒りと悲しみと困惑が入り混じった顔で真改に向き直る一夏に、真改は静かに首を振るだけで応える。

 

「……ああ、もう! わかったよっ!」

「…………」

「へ……へっへっ、やっぱお前ら夫婦なんだ!」

「三角関係ってやつか? どっちがアイジンなんだ? 織斑〜」

 

 それを見て、再び調子に乗り始めた三人。だが今度は、真改がそれに反応した。

 ただでさえ鋭い目をさらに鋭くし、三人を射抜くように睨み付ける。

 

「……帰れ……」

「う……」

「…………」

 

 真改は顔を横に向け、殴られた頬を見せ付ける。

 女の子の顔を、拳で殴ったのだ。その事実を持ち出されて、さすがに三人がたじろいだ。

 

「……帰れ……」

「……い、行こうぜ」

「じゃ、じゃあなっ」

 

 もう一度言われ、逃げるように去っていく。一夏はそれを睨み付けて見送ってから、真改に向き直った。

 

「大丈夫か?」

「……平気……」

「……井上、診せろ」

「…………」

 

 殴られた頬を確認すると、大したことはなさそうだった。これなら跡が残ることもないだろう。

 

「……バカ者、顔に傷でも残ったらどうする」

「……勲章……」

「……はあ〜……」

 

 一夏と一緒に道場に通い始めた真改がこういうヤツだと知ってはいたが、やはり呆れてしまう。傷が勲章だなどと、小学生の女の子の考え方ではない。

 

「……すまない」

「……?」

「なんで不思議そうな顔をするんだ。……お前が殴られたのは、私のせいだろう」

「篠ノ之のせいじゃないだろ。悪いのはあいつらだ、一人を複数で囲んでよ、やり方は陰険だしよ、男のクズだ」

「…………」

「あんなやつらの言うことなんか気にすんなよな。前にしてたリボン、似合ってたぜ。またしろよ」

「ふ、ふん。私は誰の指図も受けない」

 

 照れ隠しにそう言ってそっぽを向く私に、一夏は呆れたように溜め息をつく。

 

「じゃ、お前ももう帰りなよ。俺はまだ、掃除残ってるから」

 

 そして一夏は、教室の机を運ぶ。前の掃除が終わったので、次は後ろを掃除するんだろう。

 真改もそれに続き、机を運び始めた。

 

「……私も手伝う」

「あん? なんだよ、お前掃除当番じゃないだろ」

「……さっきの礼だ」

「そんなの気にすんなよ。俺があいつら気にくわなくてやったことだし」

「お、お前にじゃない。井上への礼だ」

「あっそ。……じゃあ、手伝ってくれてありがとな、篠ノ之」

「……だ」

「うん?」

「私の名前は箒だ。いい加減覚えろ。大体うちの道場は父も母も姉も篠ノ之なのだから、紛らわしいだろう。次からは名前で呼べ。いいな」

「わかった。俺は割と、身近なやつの指図は受ける。……じゃあ、一夏な」

「な、なに?」

「だから、名前だよ。織斑は二人いるから、俺のことも一夏って呼べよな」

「う……む」

「わかったか、箒」

「わ、わかっている! い、い、一夏! これでいいのだろう!?」

「おう、それでいいぜ。……指図じゃなくて頼みなら、ちゃんと聞いてくれるんだな」

「ふ、ふん!」

 

 照れくさくなって、強がりで鼻を鳴らして机を運ぶ。

 そうして一つ運び、二つ目に取り掛かろとしたら、そこに真改が立っていた。

 

「な、なんだ」

「……真改……」

「は?」

「……己の名……」

「そ……そうか」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……し、真改」

「……応……」

 

 それだけ言って、真改は道を空けた。その遣り取りを、一夏は面白そうに眺めていた。

 

 その時私は、変なやつだ、とか、自分のことを「おれ」と言うのか、などと考えていたが。

 ――今、思えば。

 

 あれは真改なりの、精一杯の言葉だったのだろう。

 

 私に、友達になろうと言ってくれたのだろう。

 

 とても、分かりづらかったけれど。

 

 これ以上ないくらい、真摯に。

 

 真改は、私のことを、友達だと、言ってくれたのだった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「…………」

 

 昔のことを、思い出した。

 一夏と真改、二人の幼なじみと仲良くなる、きっかけとなった出来事。

 

「……一夏……」

 

 あの頃から、一夏は変わらず真っ直ぐだった。私をからかう者たちから、私を庇ってくれた。

 

 そして、今回も――

 

「…………!」

 

 ……一夏は、重傷だ。かなり高い確率で、後遺症が残るほどの。

 もう剣を振るどころか、立つことさえ出来ないかもしれない。

 

「私の……私の、せいだ……」

 

 私が、弱いから。

 

 私の、心が弱いから。

 

 手に入れた力に容易く酔い、溺れ……その結果が、これだ。

 

「一夏……いちかぁ……」

 

 待機を命じられた部屋の隅、膝を抱えて、一夏の名を呼ぶ。

 

 ――目を覚まさない、想い人の名を。

 

「すまない……一夏……」

 

 こうならないように、剣術を学んでいたのに。

 わき上がる暴力への衝動を、抑えられるように。

 自分の心を、制御できるように。

 

 なのにどうだ。力を与えられた途端、自分自身が強くなったのだと思い上がり、根拠もないのに勝利を疑いもせず、無謀な戦い方をして。

 

 全て、無駄だったのだ。私が今まで、やってきたことは。

 

「……もう……力なんて、いらない……」

 

 私が力を求めたから、こんなことになった。

 なら、力なんていらない。

 私が無力でも、一夏は困らない。一夏には、支え助けてくれる人が、大勢いるのだから。

 

 だから、もう――

 

「あーあー、わかりやすいわねぇ」

 

 突然部屋の扉が開き、鈴の声がした。

 しかし私には、顔を上げる気力すらない。

 

「あのさあ。一夏がああなったのって、アンタのせいなんでしょ?」

「…………」

 

 今一夏は、ISの保護機能を受けている。

 絶対防御の致命領域対応、全てのエネルギーを防御に回すことで操縦者の命を守るこの機能。

 これは操縦者がISの補助を深く受けた状態になり、ISのエネルギーが回復するまで、操縦者は昏睡状態になってしまうのだ。

 

「それで、アンタなにしてんの? そうやってうずくまって泣きべそかいてれば、どうにかなると思ってんの?」

「…………」

 

 しかし、私はなんの反応も出来なかった。

 

 だって私には、何も、出来ないのだから。

 

「……立て」

「…………」

「立てって言ってんのよ」

 

 鈴が私の胸倉を掴み、強引に立ち上がらせる。

 その小さい体のどこにそんな力があるのか、私の足が床から離れるほどの高さまで持ち上げられる。

 

 ――俯いている私と、目が合うように。

 

「……いつまでそうしてるつもり? そうやってうじうじしてれば、一夏が目を覚ますの?」

「……い……ち、か……」

「黙れ。今のアンタの口からは、あいつの名前を聴きたくないわ」

「…………」

 

 ……鈴の言うとおりだ。私には一夏の名を呼ぶ資格も、隣に立つ資格もない。

 

「もう一度訊くわ。いつまでそうしてるつもり? 一夏を傷つけたヤツを放って」

「……福……音……」

「そう、そいつよ。……ぶちのめしに行くわよ」

「……そんな……」

「あ?」

「……そんなことをして……なんになる……」

「…………」

 

 一夏は、重傷だ。

 もう、治らないかもしれないほどの。

 

「……一夏は……」

「…………」

「一夏は、もう……立てないかも、しれないんだぞ……」

「…………」

 

 一夏が、立てない。

 もう、一夏は剣を振れない。

 あんなに頑張っていたのに、あんなに、強かったのに――

 

「……だから?」

「……な……に……?」

「立つわよ、一夏は。立たないわけがないでしょうが」

「…………」

「立てないかもしれない? バッカじゃないの。たとえ1パーセントしか可能性がなくても、あいつならやるわよ。

 ……絶対に、やり遂げる」

「……一夏……」

 

 鈴の言葉には、強い力と、一夏を信じる心が込められていた。

 なのに、私は……。

 

「あたしたちが信じなくてどうすんの。アンタが信じなくてどうすんのよ。一夏は立つ。必ず元通りになる。

 ……あいつはそういうヤツだって、アンタも知ってるでしょうが」

「……いち……か……」

 

 ……一夏。

 

 一夏、一夏、一夏……!

 

「だから、あたしたちで福音をぶちのめす。目を覚ました一夏が、また無茶をしないように」

「…………」

「さあ、行くわよ――敵が、待ってる」

「……だが、私には……その、資格が……」

「いい加減にしろっ!!」

 

 激昂した鈴が、私の頬を殴りつける。

 手加減抜きの、本気の拳。その威力に吹き飛ばされ、受け身も取れずに倒れる。

 

「資格!? 資格ってなに!? そんなものが必要なの!?」

「な……」

「一夏はなに!? 神様かなんかなの!? そんなんじゃないでしょうが、あいつはただの男の子でしょうが!!」

「……!」

「資格なんか必要ない! 必要なのは想いよ! あいつのことが本気で好きなら、それだけで十分でしょうがっ!!」

 

 ……ガツンと、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

 

 ……資格なんか、必要ない。一夏が好きなら、その感情に何も恥じるところがないのなら。

 

 ――それだけで、十分だ。

 

「戦わないって言うなら、それでもいいわ。その代わり、二度と一夏に近づかないで」

「……ふざけるな……」

 

 私は、一夏が好きだ。

 剣を続けていたのも、自分を律するためだけでなく、一夏への想いがあったからだ。

 

「誰が、戦わないと言った」

 

 私の剣は、なんのために。

 

「私は、一夏が好きだ」

 

 私の想いは、なんのために。

 

「誰にも、否定させない」

 

 そんなもの、決まっている。

 

「一夏は、私が守る。私が一夏を支える」

 

 私の剣は。

 

 私の想いは。

 

「そのためなら、戦う」

 

 ただ、一夏の隣に立つために。

 

「いくらでも戦ってやる! 何度でも立ち上がってやる! 今度こそ――」

 

 これからも、一夏と一緒にいるために。

 

「――私が、一夏を守るっ!!」

 

 もはや先ほどまでの絶望や無力感など、欠片も残っていない。

 

 あるのはただ、溢れんばかりの闘志だけ。

 

 もう、迷わない。

 

「……なに言ってんの? それはあたしの役目よ」

「ふん。くれてなどやるものか。欲しければ、力ずくで奪ってみせろ」

「……上等」

 

 お互い、ニヤリと笑う。

 

 ……鈴には、感謝しなくては。この頬のことは、それでチャラにしてやる。

 

「じゃあ、行くわよ」

「だが、どこへ? 福音の居場所は――」

「特定した」

 

 突然割り込んできた声。

 そちらに目を向けると、ラウラ、シャルロット、セシリアの姿があった。

 

「……みんな」

「ここから三十キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩は持っていないようだ。衛星による目視で発見した」

「さすがドイツ軍特殊部隊。やるわね」

「ふん……お前の方はどうなんだ。準備できているのか」

「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済みよ。シャルロットとセシリアの方こそどうなのよ」

「とっくに終わっていますわ」

「僕も、いつでも行けるよ」

 

 全員が、その眼に闘志を滾らせている。

 ……いじけていたのは、私だけか。

 

「なら、残りの問題は……」

「ああ。……マスターだけだ」

「……真改? 真改がどうかしたのか?」

「……来ればわかると思うよ」

「……?」

 

 そうしてみんなに連れられ、砂浜に出た。

 そこには――

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 ――――オオオオオオ――――

 

 

 

 ……世界が、悲鳴を上げていた。

 

 そこに立つ人物から逃げるように、空気がこちらに押し寄せてくる。

 

 ……当然、そんなものは錯覚だ。だがそれを、ここに居る全員に感じさせるほどに、圧倒的な気配を放っている。

 

「……誰だ、あれは」

「見りゃわかるでしょ。……シンよ」

 

 そう、そこにいるのは間違いなく真改だ。その姿を見間違える筈はない。

 

 筈は、ないのに。

 

「あれが……真改、だと……?」

「帰って来てからというもの、あの様子です」

「一夏のこと……相当、気に病んでるみたい」

「マスターにとって、それだけ大事な存在なのだろう。……左腕を、捨てるほどにはな」

 

 私たちの会話が聞こえたのか、真改がゆっくりとこちらを向く。そして目が合い――

 

 

 

 ――ずるり、と。私の首が、滑り落ちた。

 

 

 

「……っっっ!!?!?」

「落ち着いてっ。……錯覚だよ」

「く……!? ……はあっ」

 

 シャルロットに支えられて、どうにか倒れ込むことは防いだ。そのまま慌てて首に触る。

 

 ……大丈夫、首はちゃんと繋がっている。しかし、なんという殺気か。目が合っただけで、本当に自分が「死んだ」と錯覚した。

 

 だがそれ以上に驚いたのは、あの真改が、誰彼構わずに殺気を撒き散らしている――

 

「……何処……」

 

 地獄の底から溢れ出てきたような声。

 それを受け、ラウラが手にしたブック端末を見せる。

 

「……ここから三十キロ離れた沖合上空だ。今から作戦会議を――」

「…………」

 

 そこまで聞くと、真改は突然ISを展開、月船を呼び装着し、そのまま一気に飛んで行ってしまった。

 

「ば、ちょ、待ちなさいっ!!」

「しまった、場所を知ればこうなることは目に見えていただろうに……!」

「シン、一体どうしちゃったのさ……!」

「そんなことより、追いますわよっ!」

「待って、作戦は――」

「そんなことを言っている場合かっ!! どちらにせよ、マスターがあの調子では作戦など無意味だっ!!」

「真改っ……!!」

 

 全員がISを展開し、急いで真改を追う。しかし月船の出力は凄まじく、見る見るうちに離されていく。

 あっと言う間に水平線の彼方へと消えて行った背中を必死に追いながら、私は両の拳を固く握り締めた。

 

 ――今度こそ。

 

(真改っ! お前を一人で戦わせはしない! 必ず……必ずみんなで、一夏の下へ無事に帰るっ!!)

 

 そうだ、一夏だけではない。

 真改もまた、私の大事な幼なじみであり、私の憧れなのだ。

 

(頼ってくれと言っただろう! そんなに……そんなに、私たちは頼りないか!? お前の力にはなれないのか!?)

 

 守る。

 

 必ず、守る。

 

 これ以上、お前を傷つけさせはしない――!

 

(頼む……不出来な主で申し訳ないが、私にはお前が必要なんだ……! だから頼む、私の友達を、守るために――)

 

「一緒に行こう! 私に、力を貸してくれ――紅椿っ!!」

 

 

 

 




うちの真改は、

① 憧れだったアンジェ戦死
② レイレナード壊滅、リンクスも真改を残し全員戦死
③ ORCA皆殺し
④ 転生後、幼くして両親死亡

と、なんかもう呪われてんじゃないかってくらい悲惨な過去があるので、親しい人物が傷つくことには大きなトラウマがあります。
なので、一夏の怪我にも過剰に反応します。

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