Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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ちょっとしたコミュ回。ライザー編は次回から。


第五話

ミッテルトが僕の眷属?になるってことになったんだけど、取り敢えずその旨をリアスに説明した。

姫島の言い分では勝手にしろって感じだったけど、経過を報告しないと後で面倒なことになりかねん。

取り敢えず、ミッテルトがまた変なことをしない限りは容認するという契約が成立した。そんなことしないと思うんだけど、疑り深いなぁ。

因みにその間、ミッテルトはアーシアさんと大事な話があるってことで別行動を取っていた。

アーシアさんも元堕天使側だったらしく、同じ組織から抜けた者同士何か大事な話があるのかもしれない。

アーシアさんも、第一印象を見た限りでは凄く優しそうだったし、ミッテルトと同じ境遇だった可能性も充分に有り得る。

 

そんな感じでその辺りの手続きは無事終わったんだけど、ミッテルトは僕の家に住むことになった。

まぁ、拠点がないんじゃ仕方ないよね。

僕に割り当てられた家は、実はかなり大きかったりする。

事実上、二世帯住宅を一人で利用している様なものだったりする。

だから部屋数もそれなりにあるし、利便性に優れていると言えなくはないんだけど、一人だったらその機能を最大限に利用できる訳もなく、今までは開かずの間になっていた部屋も多数あった。

その内のひとつに、ミッテルトが割り当てられる。

いたく気に入ってくれたらしく、こちらとしてもご満悦である。部屋のレイアウトはあまり僕のと変わらないんだけど、その辺りは彼女の魔改造に任せようと思う。

 

そうして僕達は、あの刺激的な日々から一時遠ざかることになる。

日常と非日常を切り離した世界観である以上、こういった緩急がつくのは仕方のないことだ。

一応、人間という立場にある以上、毎度毎度刺激ある展開に出くわすなんて事もないだろうし。

というわけで、コミュを手に入れよう(提案)。

誰がどれに該当しているなんてのは、決められた流れに沿う典型的RPGとは異なりまったく予測できないもんだから、取り敢えずまずは知り合いに接触することから始めようと思う。

とはいえ、僕には歴代主人公のような甲斐性はないからなぁ。難航しそうだ。

 

 

 

 

 

兵藤一誠にとって、有斗零は尊敬に値する人物であり、同じ視点で世界を見ている友人とも呼べる人物でもあった。

 

アーシア・アルジェントという堕天使側に属する、元天使側の少女がいた。

その有り余る優しさ故に、悪魔にさえも平等な愛を分け隔てなく与えた結果、《聖女》と謳われた彼女は一転して《魔女》と呼ばれるようになり、教会を追放される。

居場所を失ったにも関わらず、組織がもたらす悪意を一身に受けたにも関わらず、少女の優しさは決して萎えることはなかった。

一誠はそうして、堕天使側に身を寄せる形となったアーシアと出逢いを果たす。

一誠はアーシアが持つ純粋なまでの優しさに惹かれ、彼女の境遇を嘆き、友達となることを宣言する。

しかし――彼女は堕天使側の悪意により、一度その尊い命の灯火を消してしまう。

その時の怒り、悲しみといった感情が渦巻き、一誠は《赤龍帝の籠手》という《神滅具》の力に覚醒。少女を殺めたレイナーレという堕天使を打倒した。

そして、アーシアはリアスの計らいにより、彼女の眷属として復活を果たす。

アーシアが救われた事実を前に、一誠は涙を流し喜んだ。

 

アーシアの救出を決行するに到った日の夜。一誠は、ミッテルトという堕天使を助けるべく、有斗零が単身敵陣へと乗り込もうとしていることを伝えられた。

はぐれ悪魔バイサーの討伐に出た際に、廃屋でボロボロな姿で横たわっていた、駒王学園の三年生であり、最近転校してきたとされる青年。

一誠にとっても挨拶をした程度の間柄であり、姫島朱乃が彼のことを気にしている様子があるという程度の認識しか持っていなかった。

そんな彼が、堕天使ミッテルトを助けようとしていると聞いた時、複雑な心境だった。

堕天使はアーシアを苦しめた奴らであり、その事実は解決に到った今も尚、彼の心に怒りの炎として燻り続けている。

だが、有斗零にとってミッテルトは助けるべき対象であり、救いたいと心から願う存在でもあった。

ミッテルトのやってきたことは許せそうにない。だけど、零の行動を咎める気にはなれなかった。

理由は単純明快。彼が為そうとしていたことは、自分が為そうとしていることと何ら違いはないからだ。

 

助けたいから、助ける。どこまでも直情的で、一本筋の通った意思。

種族だとか、敵だからとか、そんな道理では縛ることが出来ない、絶対の意思。

立場こそ、相手こそ違えど、その想いを否定する権利は、兵藤一誠にありはしなかった。

しかし、それで納得できるほど、彼の精神は成熟してはいない。

結局、どっちつかずなもやもやを抱えたまま、二人は邂逅を果たす。

 

「兵藤一誠、だったか?」

 

駒王学園の二年の廊下で、一誠は有斗零と遭遇する。

会釈をし、零へと近付き、挨拶を交わす。

 

「はい。オカルト研究部で会った以来ですね、先輩」

 

「そうだな。あの時はまともな会話も出来なかったし、実質これが初と言ってもいいかもしれないな」

 

有斗零は三年の時期に転校してきたということもあり、ある程度の噂になっていた人物だ。

誠実さと紳士的な立ち振る舞いを常としており、どこか達観してミステリアスな雰囲気を持つ存在として、同じオカルト研究部の木場祐斗ほどではないにしても、それなりの人気を誇っていた。

事実、この会話の最中でも近くにいる女子が二人の会話をしている光景をネタにオカシな会話をこそこそと繰り広げていたりするが、それは余談である。

そんな声が聞こえているのかいないのか、意に介した様子もなく零は会話を続ける。

 

「朱乃から聞いた。昨日は頑張ったようだな」

 

「あ――はい。それを言うなら、先輩こそ」

 

一誠もリアスから、昨日の零の事情は聞き及んでいる。

人間の身でありながら堕天使であるミッテルトに勝利し、束縛された心を解放したということを。

《神器》を持っていることは、バイサーの件で知っていた。オカルト研究部の全員が力の余波だけで動けなくなるほどの力を有していることも。

しかし、それは《禁手》と呼ばれる《神器》の性能を底上げした状態だった可能性があることをリアスが説明しており、その裏付けとして、朱乃が零の応援に駆けつけた際に観測した力は、あの時に比べれば圧倒的に弱いものだったという証言があった。

ミッテルトの強さは分からないが、レイナーレより強いということは有り得ないだろうと踏んでいた。

 

人間と堕天使。実際に経験したことがないから彼には何とも言えないが、肉体的なスペックだけで言えば圧倒的に差があるのは想像に難くなかった。

《神器》という力を有していても、それだけで堕天使と互角の戦いを演じられるか、といえば、可でもあり否でもある。

《神器》が如何に強力でも、担い手が人間という脆弱な存在であれば、場合によっては行使する暇すら与えず倒される可能性もある。

人間が《神器》を使えるのであれば、堕天使は光の力を扱えたり、空を飛べたりする。

一見《神器》を得たことで並び立ったように感じる力の差は、実質無いと言っても良いのだ。

《神滅具》クラスの《神器》ならば或いは可能かもしれないが、そこまで行くとミッテルト相手に互角は逆に有り得なくなる。

結局の所、事の顛末を頭から確認していないこともあり、有斗零の強さの秘密、《神器》の謎に関しては分からず仕舞いだったということである。

朱乃の話では、騎士のようなものを召還していたとあるが、それだけでは断定出来る要素は何一つ無い。

故に、ミッテルトに勝ったのは偶然かもしれないし、実力かもしれないといった憶測ばかりが飛び交うことになる。

 

ここまでの説明をしておいてアレだが、一誠にとってはそんなことは重要ではなかった。

訪ねたいことは、ひとつ。

 

「先輩、少しいいですか?」

 

そう言って、人気の少ない場所に零を招く。

零は無言で頷き、一誠の後に続く。

 

「先輩。どうしてミッテルトを助けようなんて考えたんですか?」

 

問いを投げかけた瞬間、圧力のようなものが零から溢れ出す。

曲がりなりにも悪魔となった一誠が、人間に気圧されている事実。

それはより一層、有斗零という存在の謎を深める要因となった。

 

「い、いえ。俺達が悪魔だからそういった訳じゃなくてですね。一歩間違えたら死んでしまうかもしれないのに、どうしてそこまでしてミッテルトを助けたいと思ったのかってことです」

 

誰だって、死は怖い。

一誠とて元人間であり、死を経験して転生悪魔となった身。死への恐怖は人一倍実感しており、だからこそその疑問を持つに到った。

堕天使のような、人間からすれば規格外の存在を助けるために、命を張ってまでそれを為そうとした理由が聞きたかった。

 

「――彼女が、悲しそうにしていたからだよ」

 

零が静かに語り出す。

 

「悲しそうに……?」

 

「堕天使として、いや、レイナーレの傘下で行っていたあらゆる行為に対し、彼女は嫌忌感を持っていた。そうでなければ、当時《神器》を狩ることを命令されていた彼女が、私に手を出さない理由はないだろう?」

 

「…………」

 

一誠の中では、未だに納得が出来ずにいた。

納得への妨げとなっているのは、堕天使がアーシアに行った非道による先入観。言わば感情論だ。

リアス・グレモリーの眷属として、友達であるアーシアを酷い目に遭わせた相手として。そういった負のしがらみさえなければ、この時点で納得は出来ていただろう。

それを理解しているからか、零は静かに目を伏せ、言葉を続ける。

 

「……君は、アーシア・アルジェントという少女を救うために堕天使と戦ったのだったよな」

 

「は、はい」

 

「ならば、問おう。仮に君が私と同じ状況に陥ったとして、アーシアを救うことを諦めたか?敵だから、人間だから、死ぬかもしれないから。そんな()()()()()()理由で二の足を踏み、彼女のことを諦めたのか?」

 

零の言葉に、一誠の中に電撃が走る。

最初は、死さえもどうでもいいと言う彼に対して、異常だと思いもした。

しかし、そうではなかった。

死をどうでもいいと言ったのは、死という概念を他愛ないものと一蹴出来るほど、ミッテルトを救いたいという気持ちが圧倒的に勝っていたからに他ならない。

死ぬこと以上に、怖いことがある。それが、彼にとってはミッテルトを失うことだったのだ。

 

なら、自分はどうだ?

零に言われたとおり、自身を彼の立場に置き換えてみる。

アーシアを救いたくても、人間だから、勝てないかもしれないから、死ぬかもしれないからという理由で諦める自分を想像出来るか?

――否、欠片もそのような情景は浮かびはしなかった。

浮かび上がるは、骨砕け肉裂かれようと、アーシアを救うために立ち上がる己の姿のみ。

 

一誠は、この時初めて納得し、理解した。

有斗零と兵藤一誠は、同じなのだと。

どちらも下らない道理を蹴っ飛ばし、自らの想いに忠実に従い結果を示した、言わば同じ穴の狢。

正しいとか、正しくないとか。死ぬとか、死なないとか。そんなもので、二人の歩みを止めることは出来ない。

自分を捨てて生きるぐらいなら、死んだ方がマシだとさえ思っている馬鹿野郎なのだ。

それを理解した瞬間、有斗零に対して異常なまでの親近感が芽生えた。

 

「――――ハハッ。そんなの、絶対無理ですよ」

 

「だろう?つまりは、そういうことだ」

 

零は、そう言って薄く笑う。

表情変化に乏しい人だという印象は変わらないが、それでもその心の内まで凝り固まってはおらず、むしろ熱く滾っていることは今なら理解できる。

 

「すいません、変なこと聞いて。俺、馬鹿だからそんな簡単なことにも気付けなくて……」

 

「君は馬鹿ではないさ。問われ、その事実に直ぐに気付くことが出来たのだからな」

 

そんな心温まる男の会話をしている内に、授業の時間が迫っていることに気付く。

 

「あっ、マズイ!先輩、これで失礼します!」

 

「ああ」

 

慌ただしく別れる形となったが、それでも彼の心は晴々としていた。

教室に戻った際、アーシアに嬉しそうな表情をしていたことを指摘される。

それは、同じ志を持つ者同士が出逢いを果たした、その名残だった。

この時、兵藤一誠と有斗零の間に、確かな絆が芽生えたことを改めて実感した。

 

 

 

 

 

アーシア・アルジェントにとって、有斗零は自身を救ってくれた敬愛する人と酷似する人物であり、後の友達を救ってくれた救世主でもあった。

 

死後、悪魔として転生を果たしたアーシアは、その現実に多大なる感謝を送った。

友達であり、自身の為に泣き、笑ってくれる愛する人とこれから共に過ごせるという事実に。

平等に愛を振りまく少女は、自らの命を奪ったレイナーレにも哀悼の意を示した。

同時に、昨夜の一件で生き残った堕天使がいることを、リアスから聞かされる。

名前は、ミッテルト。

アーシアにとって、特別接点のある相手ではなかったが、一番気に掛けていた人物でもあった。

そんなミッテルトに、アーシアは呼び出された。

普通ならば断るような状況だが、アーシアはそれを快く了承したどころか、誰をお供につけることなく、一対一での対談を良しとした。

 

「…………」

 

ミッテルトと人気のない場所で向かい合う。

ミッテルトは何か言いたそうにしているが、口に出せず表情を歪ませるばかり。

しかし、そんな彼女をアーシアは笑顔で待ち続ける。

まるで、我が子が初めて自らの足で立とうとする様を見守る母親のように。

 

「あ、あの、ウチ……」

 

「はい、何ですか?」

 

「ごっ、ごめんなさい!」

 

ミッテルトは謝罪の言葉と共に、頭を力強く振り下ろす。

 

「許して欲しいなんて言わない。でも、これだけは言いたかったの!」

 

その様子を見届けたアーシアは、たった一言、告げる。

 

「いいえ、許します」

 

「――――え?」

 

その言葉に、ミッテルトは呆然とした様子で顔を上げる。

 

「いえ、許すというのは違いますね。私は最初から貴方を恨んでいませんから」

 

「で、でも!ウチはアンタのことを――」

 

自分自身で納得が出来ないミッテルトは、アーシアの言葉を否定しようとするも、それさえも遮られる。

 

「私とミッテルトさんはきちんとした面識はありませんでしたけど、私は一方的に知ってます。アイスを美味しそうに食べている姿や、明るい笑顔。――有斗先輩と一緒に歩いていた時の、とても微笑ましい姿を」

 

「――――ッ!?」

 

まさか一方的にそんな様子を見られていたとは思わず、戸惑いを隠しきれない。

 

「どれを取っても、私は貴方が悪い人に見える要素とはなりえませんでした。特に、先輩と一緒に歩いていた光景は、堕天使とか人間とか、そういう垣根を越えた素晴らしい友愛を感じました」

 

「ちっ、違う!あの時のウチは確かにレイの《神器》を奪おうと――」

 

「でも、結局しませんでしたよね?」

 

これ以上とない現実を、ミッテルトに突きつける。

それを期に、許されたくない、許されるべきではないと心の何処かで抵抗し続けていたミッテルトの心は、次第に本来の暖かさを取り戻していく。

 

「誰にだってやりたくないこと、したくないことのひとつふたつはあります。ですが、それを拒否できない状況というのも、確かに存在します。生まれた環境、与する組織……理由はそれぞれですが、そういった事情が人を悪の道に染めてしまうことは決して少なくありません。貴方は本当は優しい愛溢れる方だと、私は知っています。ただ、間が悪かっただけなんです」

 

だから貴方は悪くありません、と瞳を介して如実に語りかけてくる。

その純粋すぎる在り方は、堕天使として生きてきたミッテルトには眩しすぎた。

視線を逸らすミッテルトに、アーシアは優しく微笑みながらその手を取る。

 

「もし貴方が私に対して罪悪感を抱いているのでしたら、ひとつだけ約束してくれませんか?」

 

「……何?」

 

「――幸せになって下さい。貴方を救ってくれた、有斗先輩と一緒に。本当に私の為を思ってくれているのでしたら、この約束は聞けますよね?」

 

アーシアの望みは、ミッテルトにとってこれ以上となく残酷なものだった。

ミッテルトは、アーシアに一生恨まれる覚悟でこの場に臨んだ。一生贖罪の為に不幸を背負っていく覚悟さえあった。

不幸を背負うことでしか贖罪を果たせないと思っていた罪の痕は、幸福になることで初めて消すことが出来ると宣告されたのだ。

何という矛盾。何という不条理。

それが如何に残酷な宣言か、アーシアは理解しているのだろうか。

 

「はは――確かに、アンタは《聖女》じゃなくて《魔女》だよ」

 

「はい。私はもう、リアス先輩の眷属悪魔ですから」

 

笑顔でそう告げるアーシアを前に、ミッテルトは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

これではもう、彼女は幸福になるしかないじゃないかと。そう思わずにはいられなかった。

幸福という維持が困難な事象を贖罪の証とするならば、それはゴルゴダの丘を登るが如き苦行であろう。。

幸福を噛み締めることで、自分が過去に行った罪に苛まれ続けなければならないのであれば、それもまた釜茹で地獄の如き苦しみに苛まれることは確実。

そして、その苦しみから逃げることさえ許されない。まさに悪魔との契約だ。

 

「分かった、分かったよ。ウチの負けッス。その契約、受けるよ」

 

「それは良かったです」

 

アーシアとミッテルトの関係は、悪魔の契約という名の口約束により成立した。

一生破棄されることのない悪魔の契約は、一人の少女を笑顔に変えた。

無償の愛を体現する悪魔と、凡俗な人生を望む堕天使は、こうして絆を育み、友達となった。

 

 

 

 

 

笑顔でミッテルトの手を握り、帰路を進むアーシア。

ミッテルトは普段の快活な様子が嘘のように、恥ずかしそうに俯いている。

片方が駒王学園の制服を着て、片方は黒のゴスロリ服を着ているといった、アンバランスながらも互いに美少女と呼ぶに相応しい風貌をしていることもあり、その姿はとても絵になっていた。

 

「あ、あれは有斗先輩じゃないですか?」

 

「え?」

 

アーシアの問いかけに、ミッテルトは俯いていた顔を上げる。

暮れかけの太陽に向かうように歩くその後ろ姿は、平凡ながらも様になっていた。

アーシアが気付くのであれば、ミッテルトが気付かない道理はない。

あれは、確かに有斗零だった。

 

「こんにちは、有斗先輩」

 

アーシアがその後ろ姿に駆け寄り、挨拶を投げかける。

その声に振り返り、薄く笑みを浮かべる零。

 

「ああ、こんにちは。アーシアに、それとミッテルトも一緒だったのか」

 

アーシアより二歩遠くに下がるミッテルトに気付き、遅れて話しかける。

 

「そういえば、以前私の怪我を治してくれたと姫島から聞いた。改めて礼をさせていただこう」

 

「い、いえ!それぐらいしか私には出来ませんし、それに――お礼ならもう受け取っています」

 

アーシアは、そう言いミッテルトを一瞥する。

その視線の意味が分からず、首をかしげるミッテルト。

アーシアにとって、友達であるミッテルトが生きており、それを生かしてくれた事実こそ、最上の礼であり、寧ろ余りある恩を受けたに等しい出来事だった。

だから礼を言われても困るし、逆に新たに奉仕するぐらいの気概さえある。

 

「そうか……。これからも、ミッテルトと仲良くしてやってくれ」

 

アーシアの意図に気付いたのか、零はそう告げる。

 

「はい。私からお願いしたいくらいです」

 

「ならば、是非よろしく頼む。ミッテルト、あまり遅くならい内に戻ってくるんだぞ」

 

「分かってるッスよ。子供じゃないんスから」

 

まるで父親のような言い分に、ミッテルトは少しムッとしながらも答える。

そのやり取りを、アーシアは微笑ましげに見守る。

 

ミッテルトを介し、有斗零とアーシアの間には確かに絆が芽生えつつあった。

自身を救ってくれた初めての友達、兵藤一誠と同じ精神を持つ青年。

彼はミッテルトとの絆の架け橋となった存在であり、アーシアにとっての二人の友情の象徴でもあった。

 

 

 

 

 

帰宅し、今回の成果を振り返る。

今日一日で、アルカナは二つゲットした。

ひとつは、《魔術師》。兵藤一誠がこれに該当する。

もうひとつは、《恋愛》。アーシア・アルジェントが以下略。

 

イッセーは兎も角、アーシアはちょっと話しただけなのに、何故に?思ったが、もらえるものはもらっておくのがゲームでの僕のポリシーなので、気にしないでおいた。

取り敢えず、取得したアルカナは三つ。今度イゴールの所に行けるようになったら、ペルソナという名の戦力を強化してもらおう。

それにしても、ミッテルトは悪魔を毛嫌いしていたけど、悪魔になったアーシアとはそういう遺恨はなさそうだし、良かった良かった。

この調子でリアス陣営の人達とも仲良くなって欲しいけど、どうだろうなぁ。

その辺りのフォローは、リーダーである僕の勤めってことなのかな。

まぁ、その辺りはなるようになるか。




兵藤一誠

アルカナ:魔術師

人間から悪魔へと転生して初めての友達。その友達を不幸に陥れた堕天使を助けたのは、自らと同じ意思を宿した青年だった。
青年が如何なる理由で堕天使を救ったのか。その意味を知った時、彼の中で燻っていた堕天使に対する遺恨は失せ、青年に対しての親近感と憧れが新たに芽生える。
年齢・立場・種族を超えた絆が、確かにそこには存在していた。

アーシア・アルジェント

アルカナ:恋愛

無限の愛を秘めた少女は、己を救った青年と共に幸福に生きることを条件に、自らを殺める片棒を担いだ堕天使を赦す。
永遠に癒えることのない聖痕を刻み、ここに契約は成立する。
契約者は、この結果へと導いてくれた救世主に多大なる感謝の意を示す。
友達を救ってくれたことに、優しい悪魔は笑顔で感謝する。





まぁ、僕(の書く内容)なんてこんなものですよ。
多分、アルカナに関しましては予想通りの感じになったんじゃないでしょうか。
ただ、アーシアのコミュって、主人公というよりも主人公+ミッテルトって感じですが、まぁいいんじゃないですかね?(適当

一連の流れを理解していれば分かると思うけど、一誠との会話で死をどうでもいいと言ったのは、主人公にとってこの世界はゲームであり、死という概念は近くて遠いものだからです。
本人は本人なりに、この世界でのことを真剣に受け止めて行動をしてはいますが、そういった部分ではどうしても差が出ちゃいます。
ですが、それが上手い具合に勘違いに繋がったから、結果オーライなのです。

主人公の眷属への認識=ギルドメンバーみたいなもの。

後、主人公がミッテルトに抱いている感情は、手の掛かる妹へのそれです。

次回はなるべく早く投稿したいけど、少しだけ遅くなるかも。

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