Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

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後半ダイジェストっぽくなったけど、原作の流れをウダウダ流すよりはいいかなと思った。
もう少しテンポ良く、かつ状況説明が明確に出来る文才が欲しい。私が書くとどうしても地の文が長くなって冗長になるんだもの……。
これからもこうした方がいいって意見はバシバシ送ってくれれば、作者が喜びます(投稿速度が早まるとは言ってない)。


第三十七話

「うん、うん……それで?」

 

「エエッ、そんなことあるッスか?」

 

「いやいやいや、それはちょっと……え?ほうほう……マジっすか。ありえねー」

 

「キャハハハハ!チョーウケる!!」

 

透き通るほどに明るい声が通学路に響き渡る。

発信源はミッテルト。数日前とは打って変わって、その表情には生気が灯っている。

どこまでも元気で、いつも通りの彼女が戻ってきていた。――不気味な程に。

 

「……部長」

 

「何も言わないで。……分かってる、から」

 

対象的に陰鬱な表情でその近くでミッテルトの姿を見守るリアスと一誠。

悲痛、という表現が当て嵌まるぐらいに、その表情には影が射している。

その理由は、目の前で繰り広げられている光景にある。

 

「まったく……ホントおかしな事言うッスね、()()

 

ミッテルトは虚空を見上げ、あたかもそこに誰かがいるかのように独り言を発していた。

呼びかけた名の通り、相手は有斗零。

しかし、当人は数日前に失踪し、今もなお安否は不明。

ミッテルトは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

女子トイレで倒れている所を発見してからの事。

目が覚めた彼女は、何事も無かったかのように底抜けに明るい態度を取ってみせた。

安心したのも束の間。彼女は、あたかも隣に零が居るかのように虚空に向けて会話を初めた。

それを指摘しても、馬鹿にしているのかと一蹴される始末。

向かい合った時、その瞳の中が汚濁のように染まっていたのを見て、心底恐怖したのはリアス達の記憶に新しい。

 

加えて、彼女の言動や性格も変化していた。

反転した、と言えるほどの差異ではない。それこそ、気にしなくても、「今日は機嫌が良いのか」ぐらいの認識で留まるレベルのズレ。

だが、その姿は以前の理知的な姿とは程遠く、子供のように快活で無邪気になっている。

誰かが言った。今の彼女は、自分達と――零と出会う前の彼女なのではないか、と。

それを聞き、気付いた。自分達は、ミッテルトのことなど何一つ理解していないことに。

その推測が正しいのかそうでないのかの違いさえ、彼らには判断がつかない程度に、無知が過ぎた。

 

結局、ミッテルトの勘違い――否、現実逃避をどうにかすることは出来なかった。

やろうと思えば出来たのかもしれない、が――それが彼女の精神にどう作用するかまでは保証が利かないのだ。

零の幻覚を見て、存在を錯覚することでギリギリ理性を保っているようにしか見えない。そんな彼女を下手に刺激して現実に引き戻してしまえば、今度こそ間違いなく崩壊する。そんな確信があった。

だからこそ、遠巻きにその姿を見守ることしか出来ない。

 

しかし、現実問題としてそのような奇行に走っている者を周囲の人物が認識すれば、リアス達が何もせずとも加速度的に破綻してしまうのは自明の理。――本来ならば。

ここに、数々の思惑が交錯して、その破綻する摂理は綱渡りではあるが均衡を保っていた。

そのひとつとして、零の生死が不確定な状態が起因する。

こんなことになってしまったが、彼は駒王学園の生徒である以前に、一般住宅に住まう一人の人間である。

当然、多かれ少なかれ地域と密着しているが故に、人との交流もある訳で……そんな彼が前触れもなく失踪した、なんて情報が流布されるとどうなるか。

日常に影響をもたらすに留まらず、人伝で伝播した情報が、禍の団のような悪意ある連中に知れ渡ろうものならば、それを皮切りに一転攻勢を仕掛けてくる可能性がある。

零という最高戦力が欠けている今そうなろうものならば、大打撃は免れない。

そんな打算もあって、駒王町一帯に大規模な認識阻害を広げた。

そう、ミッテルトが見ているであろう認識と、限りなく同調出来るように、零があたかもそこに存在するかのように認識をズラしたのだ。

認識阻害の魔術は、あくまで意識をズラすだけのもの。

オカルト研究部の存在を知りながらも、一般人はその周辺には近付こうと思わない、かつそれに違和感を覚えないようにしているのも、同じ理屈によるものである。

こうすることで、ミッテルトに与える違和感を最小限に留め、かつ零が戻ってきた時に滑り込ませても問題がなくなる。零の日常は、護られる。

 

これが最善だと太鼓判を押せる成果ではある。

しかし、それでも。目の前で繰り広げられている茶番を見るたびに、胸に杭を打ち付けられたような痛みを覚える。

必要なこととは言え、ミッテルトにはありもしない幸福を強要しているのは、他ならぬ自分達なのだから。

振りまく笑顔が綺羅びやかである程、その仕草が無邪気である程、己の無力さを再認識させられる。

 

「……今日も特訓よ。昨日よりも厳しく行くわ」

 

「はい。いざって時に何も出来ないのは、二度と御免です」

 

胸の痛みは、リアス達の闘志に火をつける燃料ともなった。

目下アザゼルが捜索を続けてはいるが、成果は芳しくない。

ならば、その時間を利用して戦力の底上げをするのは、当然の帰結である。

先が見えないからと言って、手を拱いている理由にはならない。

変わりたい、と決意したではないか。ならば、今こそ変革の時。

依存していた相手が離れている今ならば、心に甘えが生まれることはない。

寧ろ、零を助けるための一助となれるよう奮起さえしている。

アーシアも、あの新しい力を使いこなすべく慣れない肉弾戦の練習を必死にしている。

ミッテルトの精神崩壊に最もダメージを受けていたのも、アーシアだった。

二人の仲の良さは周知の事実であったが、ミッテルトが苦しんでいる時に何も出来なかったこと、そしてミッテルトの第一発見者であったことが余計にアーシアを追い詰めていた。

自分がもっと早くに見つけていれば、ああはならなかったかもしれない。そんな根拠もない強迫観念に駆られているのだ。

アーシア程ではないにしても、他のメンバーも多少はそのケがある。

熱が入る程度なら良いスパイスではあるが、行き過ぎれば毒になる。その辺りの管理も、リアスには目下課題となる。

だが、そんなフォローを通して、自然とリアスのリーダーとしての資質が磨かれつつもあった。

以前と違って、対等な視点で言葉を交わすようになったお陰か、今まで以上に眷属との絆が深まりつつあり、見えていなかったことも少しづつではあるが見えるようになっていた。

不謹慎ではあるが、零の離脱がグレモリーチームにとって間違いなく大きな一歩の切っ掛けとなっていた。

この感謝は、零が帰ってきた時にでもタップリと味わってもらうつもりだ。色々な意味で。

 

ともあれ、波乱と不安に満ちた日常は過ぎていく。

日が経つに連れ、足取りの掴めない状況に次第に希望の色が褪せてきた頃。唐突に変化は訪れた。

 

 

 

 

 

 

「先輩が見つかったって!?」

 

「ウルセェ馬鹿野郎が。万が一ミッテルトに聞かれたらどうする」

 

昼休み。偶然アザゼルの眼に止まった一誠を連れて、人気のない場所でいきなりそんな事を言い出した。

アザゼルの報告に叫ぶ一誠。アザゼルはそれを予期して声を遮るように拳骨を落とす。

頭部を擦りながら、その言葉の意味を新たに問い詰める。

 

「……本当なんだな?」

 

「この状況で冗談言える程、性格歪んでるつもりはねぇよ。後、あくまで足取りを掴んだだけだ。姿形までは流石にな」

 

「なら、発見した場所はどこなんだ?」

 

「京都だ。……面倒なことこの上ない」

 

深々と溜息を吐くアザゼルに訝しむ。

何が面倒なのか分からない一誠に、アザゼルが説明する。

 

「ざっくり言うと、あそこは妖怪が跋扈する土地だ。三陣営とは異なる、独自のスタンスを貫いている為、事実上の中立地帯と言ってもいい。そして零が失踪した日を堺に、見知らぬ人間が出入りするようになったらしい。あくまで裏の調停役である妖怪とも、交流があるようだった。そして、身体的特徴もアイツに似通っていることから、暫定では有るがソイツが零だと判断したのさ」

 

情報としてはお粗末とも言える、粗の多く根拠も薄いそれは、今の彼らにとって天から吊るされた蜘蛛の糸と同じ価値を秘めていた。

 

「なら、今すぐにでも行かねぇと!」

 

「落ち着け。言っただろう、中立地帯だと。中立地帯といえど、今の俺らが我が物顔で入れるような土地ではない。禍の団なんて組織が活動している時点で、敵対している俺らが下手に介入すれば面倒事は避けられない。ましてや公式の会談ではなく、私用でともなれば尚更だ。予め言っておくが、零の所在を確かめるだけで三陣営のトップを動かすなんて無理だからな?」

 

思考を先読みされ、釘を刺される。

とは言え、ここまで愚直な反応をするということは、それ程までに零を心配しているということでもある。

それは、頭の回る姫島や木場が釘を刺された時点で露骨に反応しているのを見る限り、事実と見て良いだろう。

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

「そこはアレだ、職権乱用って奴だな。俺の、と言うよりグレモリーのだがな」

 

「部長の?」

 

「そう。そろそろ修学旅行の季節だろう?それを利用するのさ」

 

「それって……まさか行き先を京都に?」

 

「ご名答。一年も合同させて、可能な限りメンバーは揃えるつもりだが、流石に三年は無理だ。多少なら無茶は出来るが、強引が過ぎると認識に齟齬が生まれる。ただでさえ慎重に事を運ばないと行けない状況で、外的要因によって勘付かれるのが一番最悪なパターンだ」

 

当たり前だが、修学旅行なのだから当然、一般生徒とも行動を共にしなければならない。

言うなれば、ある程度の免罪符を得る代わりの代償行為。自由を多少犠牲にしなければ、そもそも門前払いされる可能性のほうが高いのだから、仕方ないことではあるが。

 

「でもそれって大丈夫なのか?なんていうか、俺でも分かるぐらい綱渡りなことしてる気がするんだが」

 

「その通りだが、これが時間効率を考慮した結果の、最大限の譲歩なんだよ。実際、確証のある情報じゃないのに、こっちだって無茶は出来ないんだから、これが一番理想なんだよ」

 

「だって、それって俺達以外の生徒が危険に晒される可能性が――」

 

「それはねぇよ。確率はゼロじゃないが、意図的に干渉してくるようなことはない。妖怪陣営とて、いらぬ波風を立てるのは避けるだろうし、あるとすれば回りが俺達だけになった時だろうよ。こうは言いたくはねぇが、一般生徒は隠れ蓑でもあり、盾だ」

 

「――そんな言い方ッ!!」

 

「こっちだって本意じゃねえよ。結果的にそうなってしまっただけで、俺達の都合でそこまで利用するつもりはねぇよ。虎穴に入るのは俺らの役目だ。俺達の我儘に巻き込むのは、お膳立ての段階まで。――だがお前は、どうしたい?どこまで無理を通せる?何を犠牲に出来る?零を助ける為に、何を捨てられる?」

 

零を探し出し、連れ戻す。これを望んだのは、他ならぬ自分達だ。

アザゼルは敢えて口にしたが、それは認識させる為だ。

自分達の都合で、我儘で、周囲の人間を、友人を危険にさらす覚悟はあるか?と。

これは決定事項ではない。それこそ多数決で反対意見が多く集まれば、アザゼルも敢行しようとはしないだろう。

個人と大衆、その2つに秤にかけろと言うだけの話。そして、その決定によって生まれるあらゆる結果を受け止める覚悟を、アザゼルは問いたいのだ。

場合によっては、無関係な人間さえも傷付けてしまうかもしれない。

その選択をせざるを得ない程に、零を取り巻く環境は厄介であり、押し通すならば相応の覚悟を持てと。

 

この問いかけに、一誠は答えられなかった。

どちらも捨てようと思えず、だからと言って蔑ろにしたいとも思えず。

その2つは決して交わらないものではないが、この場に於いては例外となる。

あまりにも不条理で、されど声を上げた所で何も変わりはしない。

 

「……ま、答えが出せりゃあ苦労はしないわな。勘違いするなよ?俺の問いかけには、答えなんざありゃしねぇ。それも、時と場合によって平然と形を変える不定形の怪物だ。いつだって、俺達はその問いかけに答えられる覚悟を持たなきゃいけねぇ。己の心に潜む怪物を最後に倒すのは、自分自身の決断に他ならないんだ」

 

「なら、答えが出なくてもいいってのか?」

 

「答えじゃない。敢えて言うなら、納得だ」

 

「納得?」

 

「辛い選択、悲しい選択。望むことならば選びたくない選択を選んだその後。如何に自分がその答えに対して納得を得ることが出来るかが大事なんだ。理や利だけで選んだ答えなんざ、例え正道だったとしても得られる納得なんざタカが知れている。それに、成功するかどうかなんて選択する時にはわかりゃしないんだ。だったら、如何に後悔しないか、自分でその選択に悔いが残らないようにするかを考えるのもまた、ひとつの納得のカタチだ」

 

「……よく分かんねぇッス」

 

「悩め悩め。悩んで我武者羅に突っ走るのは若さの特権だ。ちょっとぐらいヘマしたぐらいなら、俺がフォローしてやる。その為に、オカルト研究部の顧問なんてやってるようなもんだからな」

 

そう臆面もなく言い放つアザゼルは、教師として――大人として、とても輝いていた。

普段が普段だけにそのギャップ足るや、悪いものでも食べたのではないかと心配する程。当然、口にはしないが。

 

「それよりも、ミッテルトに修学旅行ってダイジョブなんすかね。ほら、禁断症状的な……」

 

「そこはまぁ、何とかなるだろう。アイツはああなってはいるが、それ以外の部分――倫理観や常識は据え置きだから、零と離れたくないと我儘を言うことは無いだろうし、幻覚が付いてくるなんて事態も無いだろう。そうじゃなきゃ、補助があったにしても今まで問題が起こっていない訳がない」

 

現実主義者であるミッテルトが見た、唯一の虚像。

その価値と重みが、彼女が常識的であればあるほど増していく。

本当に、彼女にとっての有斗零は特別なんだ。

いや、特別なんて陳腐に表現なんて出来ない。もっと、高次のナニか。

故に、彼女の痛みを、苦しみを理解できる人は居ない。

 

神、悪魔、天使――そのような超越者が現代では存在を認知されていない。

知る者は全体を通してみれば極僅かで、そんな極僅かな人間も非日常の境界線に足を踏み入れ、戻ることは無い。

故に、存在が周知のものとして広まることはなく、だからこそ人間はある程度の平和を享受出来ているし、それ故に信仰の価値も薄れていく。

如何に強大な存在と言えど、見えないものに対して強い感情を抱くなんてこと、あるとすればその者が余程追い詰められているか、狂っている以外に有り得ない。

その視点は、悪魔や天使であろうとも変わることはない。

見えないものは理解できない。常識の埒外に身を置こうとも、それは決して覆らない。

だから、彼らは腫れ物を扱うように繊細にミッテルトに接する。

例えそれを望んでいないとしても、彼女を想うのであればそうせざるを得ない。

そうして、認識の違いは埋まるどころか離れていき――ほんの些細な刺激で破裂する。

 

それだけはさせない。させたくない。

でも、強硬手段を取ろうと躍起になれば、ミッテルト以外にも被害者が出る可能性が出ると念を押された。

共存は夢幻。二者択一の分水嶺。

無論、選んでいない方が絶対に悲劇を迎えるなんてことはない。

彼らの努力次第で悲劇を回避することは、決して不可能ではない。

自然と、一誠の拳を握る力が強まる。

これから選ぶであろう選択、その重みに圧し潰されないように。

 

「まぁ、そういうこった。他の奴らにも伝えて、放課後改めて答えを聞くから、それまでに整理しとけ。後、アーシアにはお前からそれとなく伝えておけ。当然、ミッテルトには気取られないようにな。俺が行くと間違いなく警戒されるし、アーシアも今のミッテルトから離れることはそうそう無いだろうからな」

 

「……了解」

 

じゃあな、と背を向けて手を振るアザゼルを見送り、一誠もその場を立ち去る。

一誠の答えは出ている。ただ、それを口にする勇気がないだけで、揺さぶられようとも根幹が揺らぐことはなかった。それだけの話。

正義の味方でも何でもない、ただの転生悪魔でしかない彼の決断は――どこまでも甘く、理想論に塗れたもの。

"零も助けて、学友には一切被害を与えない"。

馬鹿馬鹿しい、と切って捨てるのは簡単だ。

だが、その馬鹿馬鹿しいを、彼以外の皆も抱いていたとすれば?

言葉も想いも、重なれば波紋となる。

ひとつではちっぽけでも、2つ、3つと重なれば――きっと不可能を可能に出来る。

アザゼルも、言葉にはしなかったが彼らの答えが一つになることは想像していた。

 

事実、その確信は現実となった。

一誠と同様に言葉を投げ掛け、考える時間を与え、そして出た答え。

想いを現実にする為に伴う、悪魔としての強さはまだまだ未熟。

それでも、結束した心がそれを補ってくれる。

だが、まだ足りない。足りないなら、更に補えばいい。

アザゼルは、柄にもなく彼らの強い想いに胸を打たれ、その想いを絶やしたくないと思った。

アザゼルは多少の無茶を承知で、各勢力のトップに掛け合い引き抜きを敢行した。

名目は、発展途上な赤龍帝を護衛ないしは戦闘指南役としての、駒王学園の赴任。

各勢力も、禍の団という目下の敵が居る以上、下手に戦力を削るような真似は難しい上に、求める水準もそれなりにあった故に、アザゼル自身にとってもこれは賭けに等しかった。

 

だが、吉報は思わぬ場所から入る。

オーディン。その身は隻眼の老人にして、アースガルズの主神にして、北欧神話の最高神にして、戦争の神。

そんな彼が、お付き役でもあったロスヴァイセというヴァルキリーを差し出したのだ。

理由を問いかけた所、ロスヴァイセは零のファンなのだと言う。

オーディンもロスヴァイセも、零との直接の面識はない。

ただ、ディオドラの一件で、彼らは禍の団の露払いとして戦っていたので、丸っきり無関係とは言い難い。

オーディンはペルソナなる力に以前から興味と関心を抱いていたらしく、実際に遠巻きから眺めて、いつか膝を交えて話を聞きたいと画策していたらしい。

ロスヴァイセも、人間の身でありながら高位の悪魔とも渡り合う零を、自身の好きな英雄譚――『ニーベルンゲンの歌』のジークフリートのような英雄と同等かそれに類する者と見ているらしく、それを理解していたオーディンが後押しするカタチで、今に至るという訳である。

渡りに船、とはこの事。

零に執着しているのであれば、捜索に関しても熱を入れてくれるだろうし、問題が片付いた後に護衛役として捻じ込むことも容易だろう。

ただ、彼女の興奮具合から見る限り、捜索に関してはある程度手綱を握らせないと暴走しそうではあったが、そこはアザゼルの役目。

彼女は教師役として駒王学園に赴任させる。

時期としては些か不自然だが、そうも言ってられないしリアス達とて戦力が増えるというのであれば助力は惜しまないだろう。

ミッテルトに多少は違和感を持たれたかもしれないが、この程度ならば誤差の範囲だろう。

ならば、後は計画通りに事を進めるだけ。

 

 

 

こうして、当初よりも好条件で京都への修学旅行は始まった。

ミッテルトと常に行動しなければならないアーシアの代わりに、ロスヴァイセが一般生徒の安全確保に全力を注いでくれたお陰で、彼らが被害を受けることはなかった。

このままいけば――そう淡い希望が芽生えた時、事態は思いもよらぬ方向へと向かう。

 

九重を名乗る九尾の狐の介入。母を返せと叫ぶ少女による誤解が、その始まりだった。

傍らに仕える、大正時代にでもありそうな漆黒の学帽と外套を纏い、腰に刀を差した青年。

その足元に控える、二又の尻尾を備えた黒猫。

 

「――どうして、どうしてですか!」

 

叫んだのは、小猫だった。

涙混じりに叫ぶ彼女の問いに答える者はいない。

申し訳なさそうに目を閉じる黒猫を前に、その悲壮感は増す。

 

「嘘だって言ってよ、ねぇ――()()!!」

 

ミッテルトもまた、小猫と同じく――否、それ以上の慟哭を以て疑問を口にする。

俯き、学帽に隠れていた青年の表情が顕になる。

見間違える筈もない。衣装こそ違えど、その顔は彼女にとって生涯忘れることの有り得ないもの。

だが、青年は。そんな彼女を前にして、無慈悲に言葉を紡いだ。

 

「――()は、()()()()葛葉ライドウ。有斗零など知らないし、彼女も黒歌などではなく、ゴウト。大切なパートナーだ。君達など、知らない」

 

刀を抜き、ライドウを名乗る青年は、眼前のミッテルトに対して突き付けた。

 

「我が主、九重の言葉を偽りとするならば、証明してみせろ」

 

ここに再会は果たされた。

しかし、この思いもよらぬ邂逅は、彼らに絶望を叩きつけるには充分な現実となり、これを波乱の幕開けとした。




取り敢えず、修学旅行の部分は次回説明入るので、現状の状況描写不足は勘弁してクレメンテ(ソーディアン並感)



Q:ミッテルト精神崩壊シリーズ
A:やめないか!!

Q:ロスヴァイセさん!残念美人のロスヴァイセさん!!
A:パーフェクトよりも親しみがあって、オイラのようなキモオタでもワンチャンあると思える女子(希望があるとは言ってない)。
 ついでに言えば零なら嫌な顔せず世話するので、相性はバッチリ。ラムレッダ可愛い(ぉ

Q:ライドウ……終わったな(白目)
A:ライドウに勝てるわけないだろ!!

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