Infinite possibility world ~ ver Highschool D×D   作:花極四季

20 / 46
本日の十割:サーゼクス・ルシファー


第十九話

有斗零。

リーアと同じ学年で同じクラスに所属しており、勉学、運動能力共に従来の人間の基準を大きく上回っている。

家族構成は、父と母がおり兄妹はいない。その親も単身赴任と言う理由で同居してはいない。現状、父母両者とも一切の足がかりを掴めていない。

代わりに同居人として、《神の子を見張る者》から独立したとされる堕天使ミッテルトと、教会から自己意思で抜けた、天然の聖剣使いであり、現はぐれエクソシストのゼノヴィアがいる。

どちらも彼に大きく影響されているらしく、行動の節々からも信頼の様子が見て取れるとのこと。

オカルト研究部に所属する面々も、彼に絶対の信頼を置いており、その行動原理から見ても仲間を見捨てたり騙しているということは無いと考えられる。

 

ペルソナと呼ばれる《神器》を所有しているが、それが正式な名称かは不明。

性能に関しては、一種の召喚魔法のようだが、それが力の本質であると安易に結論付けは控えるべきだろうと個人的に判断する。

彼が召喚する生命体の名称は、等しく実在する悪魔、天使、堕天使の名を冠しており、妖精といった派生分類に関しても、恐らく同様と言える。

私が直接力を垣間見たのは一度だけだが、その時に彼がベルフェゴールと呼んだ悪魔の実力は、実在する同名の悪魔、ロイガン・ベルフェゴールほどではないにしても、決して遠いものではなかった。

ある程度傷つけていたとはいえ、不死の名を冠するフェニックスを、あそこまで肉体・精神共に傷を負わせた存在は、彼が初めてではないだろうか。

やりすぎだとは思ったが、ライザーが負った傷こそ、彼がリーアをどれだけ想っているかという何よりの証だと考えると、彼には申し訳ないが悪い気はしない。

 

閑話休題

 

改めて、彼の《神器》・ペルソナについて考察を入れようと思う。

その前にまず、リーアから伝えられた私が知る以降の彼の情報を整理する。

ライザー・フェニックスとの戦闘以降、彼はオカルト研究部に幽霊部員という形で所属することになった。

それ自体は別段特別なことではないが、リーア達との接点がより濃くなったと考えると、私個人としては嬉しい限りである。

リーアの《騎士》である木場祐斗が、聖剣の破壊という目的に執着し半ば暴走を起こしかけていた時期、彼のことを身を挺して護った事実が本人から語られている。

ここからは憶測になるが、彼は無意識的にそのような行動に出たと考えられる。

理由としては、木場祐斗を護るという目的を達成するならば、《神器》を使えば事足りる話で、それをしなかったのは《神器》の発動を待つ余裕がなかったからであると考えたからである。

同時に、それ程までに逼迫した状況下ならば、判断を思考に委ねる余裕さえもなかった筈。

しかも彼は人間だ。身体能力的に見ても、悪魔とは比べるべくもない。余裕のなさはより一層高まることだろう。

故に、彼が身を挺して庇ったという事実は、紛れもない彼の人間性を現しているものと解釈できる。

 

彼の善性については先程までの例で充分語ったので、次は性格についての記述を行う。

言ってしまえば、彼は仲間との絆をとても大事にし、他者に救いの手を差し伸べることを躊躇わない、しかし敵に対して甘さを見せることはない。そんな人間らしい性格の持ち主である。

とはいえ、単純に人間の縮図に収まる訳ではないようで、中途半端な聖人という評価の方が近いかもしれない。

仲間を護る為ならば、自らの命を危機に晒すことを厭わない。

普通の人間ならば、我が身可愛さに我先にと逃げ出すだろう。どのような友情も、自らの命と比べれば安いものなのだから。それは善として扱われている天使とて例外ではない。

しかし、彼は違う。そんな人間の在り方とは一線を画していると言っても過言ではない。

その姿はとても清廉であり、同時に歪でもある。

有り体に言えば、人間でありながらどこまでも人間らしくないのだ。

まるで、人間の善性のみを抽出して創り上げた、全く異なる生物なのではないかと思えてしまう程に。

 

そのような考えに至るのも、その揺るがない平等を尊ぶ精神にも理由がある。

彼はどうやら、人間であることに固執しているらしい。

悪魔、天使、堕天使が存在すると知って尚、どの勢力にも靡かない――オカルト研究部に所属しているという意味では悪魔寄りかもしれないが、立ち位置としては曖昧なので決めつけてはいけない――のは、言っては何だがまともじゃないとも言える。

人間は脆弱な生き物だ。同時に平凡で刺激が少ない一生を送る者も少なくはないだろう。

死に対しての恐怖が誰よりも近い上に、個人で生きられるほどの強さも持ち合わせていない人間が、もし目の前に今までの自分から逸脱し、人生を自らの意思でやり直せる可能性があったら、大抵の人間が食いつくだろう。

その辺りの機微は、欲望に聡い悪魔だからこそよく分かる。

しかし、そんな可能性を彼は拒否したとか。

一度知れば手に取りたくなるような甘美な果実を、彼は簡単に一蹴したのだ。

何故そこまで人間として生きようとするのか、それは分からない。

だが、私個人から言わせてもらえばその在り方は、とても好ましく映る。

一貫性のある強い精神は今ではとても希有なもので、それ故に美しい。

そんな彼だからこそ、悪魔に堕として仲間として迎え入れたい、と思うのはやはり悪魔ならではの発想なのだろうか。

 

平等といえば、彼は三勢力のどの種族に対しても、既存の概念に囚われることなく接している。

身辺に抱える者の素性だけ見れば、堕天使と関係を持ち、教会に与し、悪魔と交流を持つ人物と取ることも出来るだろう。

しかし実際の所、堕天使の少女は《神の子を見張る者》から抜け、聖剣使いははぐれエクソシストとなり、リーア達に関しては学友としての関わりの方が強いと言える。

つかず離れずと言った、非常に中途半端な立ち位置。

浅いが決して上辺だけに非ず、深くもないがただの利害の一致による関係にも非ず。組織が関わっていることを前提とした考え方ならば、非常におかしな立場にあると言っても良い。

だが、彼に関わりのある者を等しく組織という枠に囚われず、ただの個人として接していたと考えてみたらどうだろう。

救いの手を求めていた少女に手を差し伸べ、無知で狭窄した視野を持つ少女の世界を拡げ、友人とはごく一般的な人間らしい考え方で共に在ろうとしている。

そこには打算もなにもない、ただただ自らのやりたいことをしているだけという青年の生き方の体現しか存在しない。

事実、堕天使と関わりを持ちたいならば下級レベルの件の少女と関係を持つのは完全なミステイクだし、教会に関してもはぐれとなったエクソシストでは逆に敵対関係を誘発しかねない。

結論として、彼は自分の欲求に従って行動しており、そこに打算や壮大な計画があるということはまず間違いなくないだろうと考えられる。

 

ここで、本格的に彼の《神器》の考察に入ろうと思う。

彼の《神器》が発現したのは、はぐれ悪魔バイサーの討伐の際らしい。

これは彼自身の弁ではあるが、果たしてそれが真実かまでは判断しかねる部分ではある。

だが、以前より《神器》の存在を認知していたのであれば、堕天使に目をつけられるのがあまりにも遅い。

そう考えると、彼の言葉は些かの信憑性があるのではないかと現状判断する。

リーアの話では、その際に発現したとされる暴力的な力の波動は、彼が現時点で召喚していた生命体のそれとは比較にならないものだったと言う。

フェニックスを一方的に下し、堕天使の幹部であるコカビエルさえも圧倒するそれらさえも話にならない強さを持つ何かが、彼の隠し球として秘められている。

人間が持つにはあまりにも不釣り合いな力である。

 

そもそも彼の《神器》は何なのか?

いや、そもそもあれは《神器》と呼んで良いものなのか。それさえも判断しかねる。

私の知る限り《神器》は特定の物質として具現し、そこから力を発現するものが殆どだ。

肉体に装備するタイプの《赤龍帝の籠手》や武器を創造する《魔剣創造》と言った明確な《神器》の核が武器にあるのかそれ以外にあるのか不明瞭なものまで、様々なものがある。

だが、破壊を条件に《神器》が発動するなんてタイプのものは、一度も聞いたことがない。恐らく、神器コレクターのアザゼルも同様なのではないだろうか。

しかも破壊した筈の《神器》は次に使う時には元に戻っているとなれば、その破壊に何の意味があるのか、そもそも破壊することで発動するという解釈自体が正しいものなのか。

召喚と銘記してはいるが、彼のそれは分類としては、創造系の《神器》に当たるものだろう。

しかし、リーアの話では、彼は召喚したそれをもう一人の自分、可能性のひとつだと言っていた。更には、召喚したそれらは彼の分身であり、自分自身であるとさえ言い切ったらしい。

ならば、あれは彼がイメージによって創造しているのではなく、彼の内に秘められたナニかを表層上に引き摺り出しているだけなのではないだろうか。

事実、彼曰くあの《神器》はそんな内に秘めたる自分を引き摺り出す為の《鍵》でしかないと言う。

逆に言えば、《神器》そのものにあのような膨大な力は存在せず、力の軸となっているのはあくまで彼自身に依るものが大きい、いや、ほぼ全てそうだと言っても過言ではないのだ。

 

ここで、一度は疑問に思うことだろう。

――果たして、彼は本当に人間なのだろうか、と。

上記で説明した通り、彼の言葉を素直に受け止めるのであれば、彼の召喚した悪魔とも天使とも取れる存在は、全部引っくるめて彼自身だということになる。

又聞きなので一部は具体的なイメージは沸かないが、人馬一体の姿をした者もいれば、女形の妖精や天使に、歪な造形を模した獣と、その形には一切の一貫性がない。

そのどれもが有名な悪魔や天使の名を冠しており、それに相応しい能力を保有しているとのこと。

どこまで正しいかは不明だが、少なくともガブリエルと呼ばれた女形の天使は、地獄の番犬ケルベロスを一瞬にして凍り付けにし、マスターテリオンと呼ばれた獣はコカビエルを容易く下している。それ故に、あながち間違いではないのかもしれない。

具体的な説明がない以上憶測の域は出ないが、あの力をもうひとつの自分と答えたのは、力そのものに対してなのか、或いはあの姿も含めてのことなのかのどちらかではないかと思っている。

前者ならばそれである程度完結する問題だが、もし後者だとしたら?

もしそうだとすれば、もしかすると今の人間の姿さえ仮初めなものでしかないと思えてくる。

何せあれも彼自身なのだ。そう捉えてしまっても別段おかしな話ではない。

だが、もしそうだと仮定するのであれば、より一層謎が深まるばかりである。

これが悪魔の姿のみを具現していたのであれば、ここまで悩むことはなかったかもしれない。

だが、彼は天使さえも具現して見せた。それは、あの力が彼自身であるというにはあまりにもちぐはぐ過ぎる結果ではないだろうか。

もしあれを素直な解釈で測るのであれば、彼は悪魔でもあり、天使でもあるということになる。

しかも、オロバスやガブリエルといった現時点で存命な悪魔や天使の名前を冠していることから、彼はもしかすると、オロバスでもありガブリエルでもある、なんて馬鹿げた発想にさえ至ってしまえる。

そんな生命体が存在すること自体、有り得ない。有り得てはいけない。

悪魔と天使は水と油。少しぐらい学があれば誰だって知り得る情報であり、その相反する二者の在り方を鑑みてもそれを否定する者はいない。

だが、もしそれがひとつになったとしたら?そのどちらとも共存し、反発することなく混じり合っていたとしたら?

矛盾も二律背反の概念さえも超越した、悪魔や天使さえも上回る全く新しい存在が誕生したことになる。

更には、未だ顔を出していない堕天使の姿さえも内包しているのではと考えると、その異常性に拍車が掛かる。

 

 

堕天使と元教会の関係者を身内としながら、どの勢力にも明確に荷担することを証言しておらず、今後の経過次第ではどの勢力にも傾き得る不安定な立場にある。

人間でありながら未知数な部分が圧倒的に多いが、他者との絆を強く尊重する傾向にある為、離反を起こす可能性は限りなく低く、それ故に制御も容易と考えられる。

 

持つ力こそ圧倒的ではあるが、人間であるという絶対的弱点を持つが故、暴走の際は如何様にも対処が可能と判断する。

 

これらの情報を総合的に踏まえて、危険度はBとする。

 

 

 

 

 

「――ふぅ」

 

何重にも魔力による施錠を行い、調書を仕舞い込む。

三大勢力のトップ会談の為に学園を訪れ、リーアの《兵士》である兵藤一誠君の自宅に寝泊まりをする許可を頂いた夜。彼が就寝したのを見計らい、リーアとの直接の会話で得た有斗零君の情報を纏める作業に入った。

無理矢理な形で纏めざるを得ないほど、現時点における彼の情報は少ない。

彼自身、結構寡黙な性格らしく、言葉よりも行動で結果を示すタイプということもあり、それ故にそこから推測をするぐらいしか出来ない。

本人に聞けば済む話だろうが、どこまで真実を口にしてくれるかも分からない以上、鵜呑みにするのもマズい。

リーア達をダシに使えば、少なくとも私が直接聞くよりは信憑性の高い話題を提供してもらえるだろうが、それでも確信に触れるには至らない可能性は大。

調べた限りでは、彼が一番信頼を置いているのは、堕天使の少女ミッテルトであると見て間違いないだろう。

そう言った意味では、彼の真実に最も近しいのは堕天使側であり、《神器》に並々ならぬ執着を見せるアザゼルからすれば、その状況は利用して然るべきものだ。

 

コカビエルを打倒した一件、白龍皇との接触。そのどちらも他の勢力に伝わっていることだろう。

特に白龍皇はアザゼルの差し金らしく、この時点で彼が零君の存在を知らないということはまず有り得なくなった。

ミカエルにしても、あの聖剣の事件そのものが彼らの汚点でもある為、その一件の情報の子細を知らないなんてことはまず有り得ない。

恐らく彼らも同様に、私と同じような疑問を抱いていることだろう。そして、あわよくば自分達の勢力に組み込みたいとも。

現時点で最も繋がりが強いのは悪魔側だが、決して天使や堕天使共々に接点が無い訳ではない。つまり、引き抜ける可能性はまだあるということ。

だが、事を荒立てることはあちらとしても本意ではないだろう。下手を打てば、各勢力のバランスが崩壊する可能性を秘めている爆弾を抱えようと言うのだから。

少なくとも、今の段階ではそんな危ない橋を渡ってまで得たいと思うほど、結果を残していない以上、この話題で大きな問題が起こることはしばらくはないだろう。

 

――だが、リーアから聞いたバイサー討伐の際に感じた力。それに関してはまだ何も解明されていないと同時に、恐らく悪魔勢力の極僅かな存在しか知らない特別な彼の情報。それだけが唯一気がかりである。

現時点では、と前置きを置いたはいいが、それがリーアの誇張でも何でもないありのままの真実だとすれば、最低限そのぐらいの力を有していることは確定していることになる。

しかも力を垣間見たのはただの一度だけで、それが全力なのか余興程度のものなのかさえ判断しかねるともなれば、立場ある者として警戒しない訳にはいかない。

だが、公的な場面を除くのであれば、私は彼に対して無類の信頼を置いている。

リーアの反応からして、彼に好意を抱いているのは間違いない。

ライザーからリーアを救い出したアレが転機となったのは疑うべくもない。

あの時は魔王としての立場があったため、私情を挟むことは出来なかったが、私個人としてはリーアには幸せになって欲しいと思っている。

それがどのような形であれ、あの子が心から幸福だと思うのならば、祝福することに躊躇いはない。

故に、その助けとなってくれるのであれば、彼が何者であっても、リーアを裏切ることがない限り私は彼を信じたいと思う。

彼は行動を持って信頼に足ることを証明してきた。ならば、今度は私がそれに報いる番だ。

 

……ともあれ、私は彼と接触しなければならない。

最早彼は、ただの人間の協力者として放置出来るような、舞台裏の役者ではない。

それどころか、世界を揺るがしかねない可能性さえ孕んでいるともなれば、接触しない訳にはいかない。

とはいえ、過度の接触は厳禁。繋がりを保つのであれば、リーア達で十分。

私はあくまで、魔王としての立場で彼に接触すればいい。

……必要だったとはいえ、リーアにあのような仕打ちをした時点で、彼は私に対して良い評価を抱いてはいないだろう。

下手をすれば彼はこちらの真意を理解していても不思議ではないが、それを望みに厚顔無恥でいられるほど愚かではない。

それに、理解と納得は別物だ。感情論で言えば、私がやったことは間違いなく悪と取れる。

自ら最愛の妹と豪語している癖、政治的取引に利用している時点でどこまで本心か疑われて当然。

必要悪を演じるのは私だけでいい。グレイフィアには苦労を掛けてしまうが、彼女なら分かってくれるだろう。彼女は聡明だからな。

 

ともあれ、明日はリーアの授業参観日だとグレイフィアから聞かされている。

あの子はどうにも恥ずかしがり屋だから、それを告げるようなことはしてくれなかったが、こちらを甘く見てもらっては困る。

愛しの妹の兄として、恥ずかしい姿を晒す訳にはいかない。寝不足なんて以ての外だ。

 





Q:長い、要約しろ
A:零は人間じゃない可能性が微レ存疑惑→それどころかアイツ、オロバスとかガブリエル本人疑惑さえ浮上→でもそれって意味ワカンネ、何者なのアイツ→まぁ、ラブリーマイエンジェルリアスたんの味方ならなんでもいいや←今ココ

Q:正直分かりにくいんだよ
A:申し訳ございません、このような文才で(^U^)



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。