ヒュンケルは殴り飛ばしたが、不死騎団そのものは健在である。
俺たちは、奴らの本拠地である――とハドラーがリークした地底魔城へと、ハドラーのルーラで向かった。
実にハドラーさまさまだな。逆にポップって何か役に立ったっけ……?
「ここが地底魔城か」
「その闘技場だ。変わらんな……」
地底魔城の地上に露出した部分、原作ではヒュンケルとの決戦が行われた闘技場に下り立った。ハドラーとしては、通常の出入口より印象深いのだろう。
普段は用のない場所なのか、不死騎団の姿はない。
だが内部に意識を向ければ、無数の邪気を感じる。
「どうする? 突入するのか?」
ポップが怖気づきながら言った。
俺はとりあえずコツコツと地面を叩き、反響を確かめる。
「何してるんだ?」
「ああ、ちょっとな。メラゾーマ!!!!!!!!!」
「げえーっ!!! その技は!!!」
愕然とするポップを後目に、俺は大地に拳圧を打ち込み――地下のマグマ溜まりを刺激して、死火山に活を入れた。
途端に大地が鳴動する。
「バカヤローッ!! その技でブラスじいさんの心臓が止まったんだぞ!! 今度は俺の心臓が止まるわ!!」
「オレは心臓がふたつあるから問題ないな」
ふたつ纏めて止まることってないの?
ともあれ、そこかしこで地が爆ぜてマグマが噴き出し始めた。
すぐにこの辺はマグマの大洪水となり、地底魔城をその灼熱の下に埋めるだろう。
「ヒュンケルは倒したけど、不死騎団は別にちゃんと滅ぼさないといけないからな……。これが手っ取り早いと思ってさ」
「先に説明をしろっつってんだよ、説明を!! ゴリラか、おまえは!!!」
闘技場の上に3人で避難しながら詰られる。
「なあハドラー。コイツ俺のことゴリラとか言うんだけど、酷くない?」
「貴様ゴリラじゃなかったのか……?」
「お前、黒の
マジで汚いありさまだったよ、あれは。
「つーかダイ、おれ今気付いたんだけどさ、地底魔城に誰か捕まってる可能性とか考えなかったワケ?」
「人間の気は感じられなかったから大丈夫だよ」
「お前って筋力以外も人間離れしてて、マジでキモいよな」
その後も俺たちは罵り合いながら、地底魔城が沈む様子を眺めていた。逃げ出すアンデッドがいるかも知れないからね。しっかり確認しないと。
と、そんな時だ。
「な、何じゃあ~~!? ここは死火山のハズじゃなかったのか!」
謎の老兵士が現れた!
「ああ!? 何で地底魔城がマグマに沈んでやがるんだ! つーかヒュンケルの野郎はどうした!?」
謎の半分こ怪人が現れた!
「それがかくかくしかじかで」
俺たちは懇切丁寧に説明した。
「なんだと、ヒュンケルの野郎やられてやがったとは好都合だぜ! 前からあいつは気に喰わなかったんだ! 人間の癖によォー!!」
「マジでね。人間なんだから普通に人間の味方しとけば良かったのに……」
「だろ!? そう思うだろ!?」
俺とフレイザードは意気投合した。
「じゃあ魔族のオレも魔王軍に戻った方がいいのか? ダイよ」
「いや、お前は俺の傍にいろや」
「ダイ……」
「ハドラー……」
「見詰め合うのやめろ」
ポップに止められてしまった。
いつでも殺せるようにな! ってガンを飛ばし合ってただけなのに……。
「そんなことより、君がダイくんじゃろう!? 姫が仰っていた、ゴリラの勇者の!」
「だから誰がゴリラだよ! 人間だっつーの!! あ、人間じゃねえや」
「やっぱりゴリラじゃないか!」
「やっぱりゴリラではないか」
「やっぱりゴリラじゃねえか」
「やっぱりゴリラじゃないんかの」
「ピピィー」
「捻り殺すぞ」
クソどもは黙った。
俺は咳払いをして気を取り直す。
「ともかくだ! ゴリラだろーがゴリラじゃなかろーが、俺は魔王軍を潰してデルムリン島でじいちゃんやゴメちゃんたちと平和に暮らしたいワケよ。で、たまにレオナが遊びに来たりさ。そういう生活をね。分かる?」
「たまにじゃと!?!?!」
バダックじいさんが激昂した。
あ、やっぱ姫をたまにでも呼び出すとか不敬的な?
「姫は君と会うのを本当に楽しみにしとったんじゃぞ! もっと頻繁にお招きせんかい!」
「あっはい」
外堀を埋められるって、こういう状況を言うのかな?
「しかしよ、パプニカの都はヒュンケルの野郎が滅ぼしたんだろ? 肝心のお姫さまも死んじまったんじゃねえのか」
フレイザードが胡坐を掻いてリラックスした姿勢で問う。
「そんなことはないぞ! 三賢者が護衛しとったんじゃから、必ずどこかで生きていらっしゃるハズ!」
そして神殿で火薬玉を探し、信号弾を上げ、逃げたレオナたちにこちらを発見してもらうことになった。
神殿地下室入口を埋めるような大量の瓦礫を正拳突きで吹き飛ばし、「我勝てり」の赤の信号弾を上げて待つことしばらく。
気球船に乗って、三賢者のエイミが現れた!
再びかくかくしかじか。
しかし原作と違って、俺はパプニカのナイフをレオナから貰っていない。
本当にダイなのか? と問われても……こう、証明するモノが……。
「ダイーッ!!」
と、そこに満身創痍のヒュンケルが現れた!
「あいつ生きてやがったのか!」
「まあ勘違いを魔王軍に利用されたってことで、可哀想だと思ったからな……」
手加減はしていたのだ。
いや、してたよ? ホントホント。
……何で生きてんだ? 不死身かよ。
「あの男がヒュンケル……!? 勘違いの末に不死騎団長として我が国を襲った!?」
「ですぜ。どうします、エイミさん」
エイミさんは清々しげに微笑んでいた。
「処刑で」
「了解。オラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「オレも魔王軍と戦なにはぐうううううううううううううううううううううううううううううう」
俺の正拳突きで、ヒュンケルは粉々に砕け散った。
国の偉い人に言われちゃったら仕方ないね。
俺としてもいろいろあり得んと思うし。
「このゴリラパワー……! 本当にゴリラの勇者ダイのようね。失礼したわ……。姫さまのもとに案内しましょう」
「釈然としねえ」
「お蔭でお姫さまに会えるんだ。ヒュンケルさまさまじゃねえか」
かくして俺、ゴメちゃん、ポップ、ハドラー、バダックじいさん、エイミさんと兵士、そしてフレイザードの一行は、バルジ島に向かうことになるのだった。
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