それから暫しの時が経った。
魔王軍の侵攻はおよそ止まっていた。
事件と言えば――
バランさまの仇! とか言って突撃してきた竜騎衆なる3人組をぶっ飛ばしたのがひとつ。
そういえば原作通りならロモスで武術大会あるな、と思って行ってみたら、ハドラーが閃華裂光拳で超魔ザムザをぶっ飛ばしていたのがひとつ。いやお前それマァム……。つかホイミ契約できたの?
そしてもうひとつ、レオナが
どうも俺の手綱を握ったことで満足感を得ているらしく、わざわざ『自分にしか出来ないこと』を追加で探そうとはしなかったのだ。既にあるからね。
そんなワケで、魔王軍対策会議は、パプニカにおいて身内だけで行われた。
「裏切り者のフレイザードの調査によると、鬼岩城は歩いて死の大地に向かったようね」
あの、レオナさん、それだとまるでフレイザードが俺たちを裏切ったみたいなんですが。
いつまで根に持ってんだ。そんなに氷と炎の鎧着たかったの……?
「あの城が歩くとはな……。しかしつまり、死の大地が真の本拠地ということか?」
「ハドラーさまも知らなかったのかい。バーンってのはとんだ秘密主義の大魔王だな」
ハドラーとフレイザードがしみじみと言った。
レオナが続ける。
「そこに殴り込みをかけようと思うわ。敵の軍団が半壊した今、再建される前の今がチャンスのはずよ」
「遂に最終決戦か……」
俺もしみじみと言った。
短いようで短い戦いだったな……。
残る敵は――えー、バーン、ミストバーン、キルバーン。ザボエラ。マキシマムもか? 鬼岩城も来てないな。
「突入メンバーは、まずダイ君」
「おう」
俺はバナナを食べた。
「ハドラー」
「必ず野望を挫いてやる、バーン!」
ハドラーは怒りに燃えた。
「フレイザード」
「クカカッ、これで地上を救えば最高の栄光だな……!」
こいつ善悪どうでもいいんだな。
「そしてあたし。皆で力を合わせて頑張りましょう!」
「おれは!?」
ポップが不平を述べた。
「おれだってマトリフ師匠のもとで修行したんだぜ!?」
そういえばハドラーが見付け出して、ボコボコにされながら何とか弟子に取ってもらったんだよな、マトリフさん。
その後ハドラー本人は更にブロキーナ老師のところに行ったけど、マトリフさんは引き続きパプニカでフレイザードやポップの面倒を見てくれていたのだ。
「でもポップ君に出来て、フレイザードに出来ないことってないじゃない」
レオナの言葉のナイフが、ポップの胸に刺さった。
ポップは死んだ。
俺はフォローすることにした。
「ポップには、パプニカを守っていて欲しいんだ。お前だから信頼して任せられる……! そうじゃあないか?」
「ダイ……!! そうだな、一緒に冒険を潜り抜けてきた仲だもんな!」
「まあお前が役に立ったことは殆どなかった気がするけど。ロモスで雑魚掃除したくらい?」
俺の言葉のナイフが、ポップの胸に刺さった。
ポップは死んだ。
ともあれそういうワケで、俺たちは死の大地に向けて出発するのだった……!!
そして到着した!
鬼岩城(身長145m)が出迎えてくれた。
「オラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
紋章を出し、拳圧で消し飛ばした。
で、地面をこんこん叩いて、反響で地下の様子を探る。
「この辺だな。オラァ!!!!!!!!!!!!!!!」
拳で穴を開けた。大魔宮らしきモノが埋まっていた。
侵入していく。
「これ、オレたち要るのか……?」
「考えるな、ハドラーさま。栄光のためだ」
魔界の
奥にザボエラがいる……。奴が指揮しているようだ。
「出番だな!!!」
「ここはオレたちに任せて先に行け!!!!」
元魔王軍どもが急にイキイキし始めた。
俺は
「死ぬなよ、アホども」
「お前もな。アホゴリラ」
「バーンの首は、粉々にせずにもぎ取ってくるんだぜ! 栄光には首級が必要だ」
温かい声援を受け、俺はレオナを抱えて敵の群れを突っ切った。
そして進む先で――ミストバーンが現れた!
「バーンさまはお会いにならぬ。消えろ! ゴリラ!」
「それを真正面から挑んで言うお前もゴリラだべ。この脳筋が!」
俺たちは罵り合い、そして殴り合った。
これが凍れる時間の秘法か! 正拳突きが通じない奴には初めて出会った。まるでダメージの通った感触がない。
一方、俺の気合防御を前に、ミストバーンもどうしようもない。
「こうなったら空――あれ牙殺法の技名何だっけ……。まあいいや空裂斬!!!」
「グワーッ!!」
俺は空の技でミストの暗黒闘気に攻撃した。
だが咄嗟に内側に引っ込んだのか? トドメを刺せた手応えではない。
そして奴は――闇の衣を脱ぎ捨てた!!!
「イケメンじゃねえか死ね」
「この姿を見た者には、速やかな死が待つのみ……!」
俺たちは更なる殴り合いを演じた。
だが相変わらず、俺の拳は通じない。
一方で俺は、
「ぐえっ……!!」
殴られてダメージを受けるなど、修行時代以来では?
口の中切ったわ、いてえ。
「ダイ君!! 後ろ!!!」
あまつさえ、大鎌が突如空間を割って現れ、俺を後ろから……!!
キルバーン! 人形は吹っ飛ばしたが、ピロロは無事だった。そしてこれはジャッジの鎌!!
俺は咄嗟にミストバーンを掴み、立ち位置を入れ替えた。ダメージはなくても、こういうことは出来るのだ。俺の方が力や素早さは上だし。
大鎌はそのままミストバーンを捕まえ、そして異空間に消えていった。
「……」
「……」
少し待ったが、帰ってくる気配がない。
まさかとは思うが……ピロロはキルバーン2号機をジャッジ空間に送り込んで――首を刎ねられても死なないから敗者扱いにならず、ミストバーンは首を刎ねること自体が出来ず、そこから先に工程が進まない脱出不能バグに陥っている、のか?
そしてたぶん、キルバーン2号機を用意するのに忙しく、ジャッジの改造はしていなかった……。
……。
「行きましょう」
「ああ」
ミストとキル、永遠に仲良くね……。