ダイに大転生   作:液体クラゲ

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16 さらば! 魔影参謀ミストバーン

 それから暫しの時が経った。

 魔王軍の侵攻はおよそ止まっていた。

 

 事件と言えば――

 バランさまの仇! とか言って突撃してきた竜騎衆なる3人組をぶっ飛ばしたのがひとつ。

 そういえば原作通りならロモスで武術大会あるな、と思って行ってみたら、ハドラーが閃華裂光拳で超魔ザムザをぶっ飛ばしていたのがひとつ。いやお前それマァム……。つかホイミ契約できたの?

 

 そしてもうひとつ、レオナが世界会議(サミット)を発案――しなかったこと。

 どうも俺の手綱を握ったことで満足感を得ているらしく、わざわざ『自分にしか出来ないこと』を追加で探そうとはしなかったのだ。既にあるからね。

 

 そんなワケで、魔王軍対策会議は、パプニカにおいて身内だけで行われた。

 

「裏切り者のフレイザードの調査によると、鬼岩城は歩いて死の大地に向かったようね」

 

 あの、レオナさん、それだとまるでフレイザードが俺たちを裏切ったみたいなんですが。

 いつまで根に持ってんだ。そんなに氷と炎の鎧着たかったの……?

 

「あの城が歩くとはな……。しかしつまり、死の大地が真の本拠地ということか?」

「ハドラーさまも知らなかったのかい。バーンってのはとんだ秘密主義の大魔王だな」

 

 ハドラーとフレイザードがしみじみと言った。

 レオナが続ける。

 

「そこに殴り込みをかけようと思うわ。敵の軍団が半壊した今、再建される前の今がチャンスのはずよ」

「遂に最終決戦か……」

 

 俺もしみじみと言った。

 短いようで短い戦いだったな……。

 

 残る敵は――えー、バーン、ミストバーン、キルバーン。ザボエラ。マキシマムもか? 鬼岩城も来てないな。

 

「突入メンバーは、まずダイ君」

「おう」

 

 俺はバナナを食べた。

 

「ハドラー」

「必ず野望を挫いてやる、バーン!」

 

 ハドラーは怒りに燃えた。

 

「フレイザード」

「クカカッ、これで地上を救えば最高の栄光だな……!」

 

 こいつ善悪どうでもいいんだな。

 

「そしてあたし。皆で力を合わせて頑張りましょう!」

「おれは!?」

 

 ポップが不平を述べた。

 

「おれだってマトリフ師匠のもとで修行したんだぜ!?」

 

 そういえばハドラーが見付け出して、ボコボコにされながら何とか弟子に取ってもらったんだよな、マトリフさん。

 その後ハドラー本人は更にブロキーナ老師のところに行ったけど、マトリフさんは引き続きパプニカでフレイザードやポップの面倒を見てくれていたのだ。

 

「でもポップ君に出来て、フレイザードに出来ないことってないじゃない」

 

 レオナの言葉のナイフが、ポップの胸に刺さった。

 ポップは死んだ。

 

 俺はフォローすることにした。

 

「ポップには、パプニカを守っていて欲しいんだ。お前だから信頼して任せられる……! そうじゃあないか?」

「ダイ……!! そうだな、一緒に冒険を潜り抜けてきた仲だもんな!」

「まあお前が役に立ったことは殆どなかった気がするけど。ロモスで雑魚掃除したくらい?」

 

 俺の言葉のナイフが、ポップの胸に刺さった。

 ポップは死んだ。

 

 ともあれそういうワケで、俺たちは死の大地に向けて出発するのだった……!!

 

 そして到着した!

 鬼岩城(身長145m)が出迎えてくれた。

 

「オラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 紋章を出し、拳圧で消し飛ばした。

 で、地面をこんこん叩いて、反響で地下の様子を探る。

 

「この辺だな。オラァ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 拳で穴を開けた。大魔宮らしきモノが埋まっていた。

 侵入していく。

 

「これ、オレたち要るのか……?」

「考えるな、ハドラーさま。栄光のためだ」

 

 魔界の怪物(モンスター)がいっぱい襲ってきた。

 奥にザボエラがいる……。奴が指揮しているようだ。

 

「出番だな!!!」

「ここはオレたちに任せて先に行け!!!!」

 

 元魔王軍どもが急にイキイキし始めた。

 俺は怪物(モンスター)を纏めて吹き飛ばす寸前だった拳を、そっと引っ込めた……。

 

「死ぬなよ、アホども」

「お前もな。アホゴリラ」

「バーンの首は、粉々にせずにもぎ取ってくるんだぜ! 栄光には首級が必要だ」

 

 温かい声援を受け、俺はレオナを抱えて敵の群れを突っ切った。

 そして進む先で――ミストバーンが現れた!

 

「バーンさまはお会いにならぬ。消えろ! ゴリラ!」

「それを真正面から挑んで言うお前もゴリラだべ。この脳筋が!」

 

 俺たちは罵り合い、そして殴り合った。

 これが凍れる時間の秘法か! 正拳突きが通じない奴には初めて出会った。まるでダメージの通った感触がない。

 一方、俺の気合防御を前に、ミストバーンもどうしようもない。

 

「こうなったら空――あれ牙殺法の技名何だっけ……。まあいいや空裂斬!!!」

「グワーッ!!」

 

 俺は空の技でミストの暗黒闘気に攻撃した。

 だが咄嗟に内側に引っ込んだのか? トドメを刺せた手応えではない。

 そして奴は――闇の衣を脱ぎ捨てた!!!

 

「イケメンじゃねえか死ね」

「この姿を見た者には、速やかな死が待つのみ……!」

 

 俺たちは更なる殴り合いを演じた。

 だが相変わらず、俺の拳は通じない。

 一方で俺は、

 

「ぐえっ……!!」

 

 殴られてダメージを受けるなど、修行時代以来では?

 口の中切ったわ、いてえ。

 

「ダイ君!! 後ろ!!!」

 

 あまつさえ、大鎌が突如空間を割って現れ、俺を後ろから……!!

 キルバーン! 人形は吹っ飛ばしたが、ピロロは無事だった。そしてこれはジャッジの鎌!!

 俺は咄嗟にミストバーンを掴み、立ち位置を入れ替えた。ダメージはなくても、こういうことは出来るのだ。俺の方が力や素早さは上だし。

 大鎌はそのままミストバーンを捕まえ、そして異空間に消えていった。

 

「……」

「……」

 

 少し待ったが、帰ってくる気配がない。

 まさかとは思うが……ピロロはキルバーン2号機をジャッジ空間に送り込んで――首を刎ねられても死なないから敗者扱いにならず、ミストバーンは首を刎ねること自体が出来ず、そこから先に工程が進まない脱出不能バグに陥っている、のか?

 そしてたぶん、キルバーン2号機を用意するのに忙しく、ジャッジの改造はしていなかった……。

 

 ……。

 

「行きましょう」

「ああ」

 

 ミストとキル、永遠に仲良くね……。

 


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