ゼロの少女と食べる男   作:零牙

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初めまして、零牙という者です。
SS初心者で、初投稿です。
文才と時間の不足で、投稿は2、3週間……下手をすると1ヵ月に1回になりそうです。
暇な時にでも読んで頂けば幸いです。


PROLOG-THE FIRST PART 『始まり』の始まり

 透き通るような青空、ゆっくりと流れ行く白い雲。

 

 日差しは暖かく、足もとに広がる草原を渡る風が心地良い。

 

 ただ散策するだけでも誰もが心穏やかな時が過ごせるだろう。

 

 

 

 

 

 ――ぽっかりと開いた、春の爽やかな景観ブチ壊しな大穴なんぞ無ければ。

 

 

 

 

 

 

 ここはハルケギニア大陸、トリステイン王国にある『トリステイン魔法学院』。

 

 

 

 

 

 ――物語はここから始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   PROLOG-THE FIRST PART 『始まり』の始まり 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『使い魔召喚の儀式』。

 

 トリステイン魔法学院の生徒は2年生に進級する春、この儀式で『使い魔』を召喚する。

 神聖な儀式である為、一度呼び出した『使い魔』は変更する事はできない。

 また、『使い魔』の能力は呼び出した『主』の能力にある程度左右される為、生徒にとっては一大イベントである。

 召喚された己の使い魔にそれぞれが一喜一憂し、他の生徒が召喚した使い魔に感心・嫉妬・苦笑する。

 

 

 

 そうして残るはただ一人。

 

『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。

 

 ここトリステイン魔法学院において、彼女の存在は有名である。

 

・家柄……トリステインでも有数の名門貴族『ラ・ヴァリエール家』の三女。

     系譜をたどれば祖先は王家に連なる。

・容姿……桃色がかったブロンドの髪、鳶色の目に透き通るような白い肌。

     控え目に表現しても『美少女』と言えるだろう。

・体格……同年代の少女の平均と比べると、身長は低め・体重は軽め・体型は幼め。

     ――数年後に期待。

 

 しかし彼女が有名なのはそんな理由ではなく……

 

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!

 

 何処かにいる我にふさわしき使い魔よ! 

 

 始祖ブリミルの導きに従い、我が声に応えよ!」

 

 

 

 緊張した表情で

 

 誰よりも気合を込めて『サモン・サーヴァント』の呪文を唱え

 

 渾身の力で杖を振るった結果は

 

 ――突然の爆発と先の大穴であった。

 

 

 

(なんで爆発するのよっ……!)

 

 

 

 爆発で生じた砂煙にむせながら、今まで何千回繰り返したかもわからない言葉を心の中で呟く。

 

 ――そう、彼女の唱える魔法の結果は常に『爆発』。

『魔法が使えない魔法使い(メイジ)

 これこそ彼女が学院において、その名が知られている理由である。

 

「ゲホッ、やっぱりこうなったかっ……!」

「ゴホッゴホ……まぁゼロのルイズだしな……」

「『ゼロにふさわしい使い魔なんていません』ってブリミルの答えなんじゃない?」

「いや待て待て、実はあの穴の底に何かいるんじゃないのか?」

「いたとしてもあの爆発だ、召喚された瞬間に死んでるって!」

「おい、さすがに『1回目で成功』に賭けた奴はいないだろ!?」

 

 周りの生徒達が一斉に囃したて、笑い合う。

 

「うるさいわよあんた達ぃっ! そして人をダシに賭けなんてするなぁっ!」

 

 怒りと悔しさで顔を真っ赤にして怒鳴るルイズ。

 しかし笑い声が止む気配は無い。

 握り締めた拳を震わせ、笑っている生徒の方へ思わず飛びかかろうとしたその時、ポンと肩に手が置かれた。

 

 

 

「落ちつきなさい、ミス・ヴァリエール。 魔法とは、心を静めてこそ初めて成功する物ですよ」

 

 

 

 頭髪が少々寂しい感じのする眼鏡の中年の男がルイズをなだめる。

 

「皆も笑うのを止めなさい! 他人の失敗を揶揄し笑うなど貴族のする事ではありません!」

 

 シンと静まり返る生徒達。

 それでもまだクスクスと笑う生徒がいたが、男からの視線を受けて真顔になる。

 

「さぁミス・ヴァリエール、もう一度です。 今度は少し肩の力を抜いてみましょう」

「はい! ありがとうございます、ミスタ・コルベール」

 

 コルベールと呼ばれた男は微笑みながらうなずくと、再びルイズを見守る。

 

 

 

 彼はここトリステイン魔法学院の教師である。

 故にいつも魔法に失敗するルイズの存在は気に掛かっていた。

 

 授業中は決して不真面目などではなく、むしろ熱心に受けている。

 魔法について調べているであろう彼女を図書館で何度も見た事もある。

 『爆発』の1点さえ無ければ優秀な生徒なのだ。

 

 だからこそ、この召喚の儀式には成功してほしいと願っているのである。

 

 

 

 誰一人として言葉を発しなくなった草原で、先程よりも肩の力を抜き静かに集中するルイズ。

 そして再び使い魔召喚の呪文、『サモン・サーヴァント』を唱えようとして

 

 

 

 ――不意に後ろを振り返る。

 

 

 

 その視線の先にはコルベールと生徒達しかおらず、何人かの生徒が彼女の視線を追い振り向くが先程となんら変わりのない風景しかない。

 

 小首をかしげつつ、向き直るルイズ。

 改めて気を落ち着け、大きく息を吸い込み

 

 

 

 今度は弾かれた様に辺りを見回す。

 

 

 

「どうかしましたか? ミス・ヴァリエール」

 

 さすがに不審に思い、コルベールが声をかける。

 

「……すみません、何か聞こえたような気がしたので……」

 

 杖を持たない左手で耳を押さえながら答えるルイズ。

 しかしコルベール自身は何も聞こえなかった。

 他の生徒もまた同様らしく、互いに顔を見合わせ首をかしげている。

 

「そうですか……私には何も聞こえなかったのですが……」

 

 だがルイズに嘘を言っている様子は無い。

 

「ミス・ヴァリエール、もしかして先程の爆発が原因では? 一番近くにいて何も影響が無かったとは思えません」

 

 

 

 確かに先程の耳をつんざく大音響、至近距離に居たルイズの耳が正常に機能していない可能性もある。

 

 

 

「気になるのでしたらしばらく静かな所で休んでみては。 儀式も明日改めて行っても構いませんよ?」 

 

 

 

 コルベールがそう言った直後、周囲の生徒がざわめきだした。

 

 

 

 (おぃっ! まさか『1回目でコルベール・ストップ』か!?)

 (しかも『退学』でなくて『延期』!? 少し甘過ぎじゃないのか?)

 (『10回』くらいは待つと思ったんだが……)

 (ちょっと! これって『ストップ』じゃなくて『休憩』でしょ?)

 (まさか! 『コルベール・ストップ』で『延期』、これで決まりだ)

 (ちぇっ、みみっちい賭け方しやがって……)

 (でもその倍率はそんなに高くなかったろ? じゃあ胴元の手元にほとんど残るんじゃないか?)

 (親の丸儲けかよ……)

 

 

 

 どうやら生徒達はルイズの召喚が成功か失敗かを賭けていたようだ。

 ……ほぼ全員が失敗に賭けていたのは当然と言えば当然の結果なのか。

 しかも配当を増やす為に、『挑戦回数』や『延期や留年などの結果』等の条件を付けた者がほとんどである。

 

 

 

「はぁ……」

 

 大きく溜息をつくルイズ。

 『使い魔召喚』は進級時には必須――というよりは成功して当然の事。

 このままでは留年……いや、今までの自分の魔法の実技の成績を考えると下手をすると退学も有り得るのでは。

 

 これまでそんな生徒が存在したという話は聞いた事が無い。

 

 ――となると『学院史上初』という不名誉極まりない結果になる。

 

(冗談じゃないわ!)

 

 もし仮にそうなってしまったら……

 ……あの厳しい父、母、そして長姉にどんな目に遭わされるか想像するだに恐ろしい。

 

 

 

 

 

 ――そしてあの優しい次姉はどんなに悲しむだろうか……。

 

 

 

 

 

 例え失敗しても何度でも挑戦させてもらうつもりだったのだが。

 

 

 

 (何なのよ、あの『声』は……)

 

 

 

 二回目の『使い魔召喚』の寸前、ルイズは『声』を聞いた。

 

 一度目は言葉ですらない声の欠片。

 だが二度目は途切れながらだが確かに言葉が聞こえた。

 

 

 

 

 

   ≪……イライ……カ≫

 

 

 

 

 

 今まで何千回と魔法に失敗してきたが、こんな事は初めてだった。

 

(なんだってこんな時に……)

 

 もう一度溜息をつき、ぼんやりと空を見上げる。

 ――続きは明日にしてもらって、今日は部屋でゆっくり休もう。

 そう考えたルイズはコルベールに伝えようとして

 

 

 

 

 

 (『こんな時』?) 

 

 

 

 

 

 

 ――何かが心に引っ掛かった。

 

 

 

 

 

 

     『我にふさわしき使い魔よ!』

 

 

 

 声が聞こえたのは呪文を唱えた後。

 

 

 

     『我が声に応えよ!』

 

 

 

 声を聞けるのは呪文を唱えた自分だけ。

 

 

 

 

 

 ――ならば

 

 

 

 

 

 ――あの声は自分に『応えた』声なのではないか。

 

 

 

 

 

「我が声に応えし者よ!」

 

 

 

 突如ルイズの声が響き渡る。

 ざわついていた生徒達は何事かとルイズを見る。

 

 

 

「我と契約し、我が使い魔となれ!」

 

 

 

 

 

 誰一人ルイズの行動が理解できず、先程とは違う静寂が漂う……

 

 がしかし、それもつかの間

 

 

 

「――ぷっ」

 

 

 

 誰かが小さく噴き出したのを合図に、再び生徒達が一斉に笑い出す。

 

「ヴァリエール、何を言ってんだぁ~?」

「がんばれルイズ! あと9回!」

「さっきのは空耳だって!」

「ミスタ・コルベール! ゼロのルイズが幻聴に話し掛けてまーす」

「おい、ゼロのルイズ! 今更祈ってどうするんだよ!」

 

 

 

 ――やや俯いて目を閉じ、胸元の杖を両手で握り締める。

 

 

 

 祈るような姿でルイズはじっと『声』を待っていた。

 

 

 

 

 

(へぇ…)

 

 

 

 その様子を皆とは違う視線で見ていた一人の女生徒がいた。

 

 

 

 ――名を『キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー』。

 

 燃えるような赤い髪と褐色の肌を持つ、隣国ゲルマニアからの留学生である。

 同年代の少女達の平均よりも若干重めの体重は、平均より高めの身長とその豊満なプロポーション故だろう。

 

 

 

 トリステインの人間に在りがちな気位の高さと、公爵家の娘という貴族としての誇り。

 それらを持っているからこそ『ゼロ』と呼ばれる事を嫌い、言われれば激しい感情でぶつかっていく。

 無視しようとしても知らず眉間にシワが寄り、険悪な表情となる。

 

 それがキュルケのルイズに対する認識である。

 

 国境を挟み領地が隣接している事もありラ・ヴァリエール家とフォン・ツェルプストー家は浅からぬ因縁が有る。

 事有るごとに口論をし、またある時は自分と彼女の大人と子供程違う体型を比べてからかったりもした。

 

 そんな「犬猿の仲」とでも言うキュルケだからこそ分かる。

 

 ――今のルイズには周囲の言葉は聞こえていない。

 表情もやや緊張気味だが穏やかで、そんな事に気付かない程集中しているのだろう。

 

 先程の行動もルイズには何か確信有っての事か。

 『何かが聞こえた』というのも関係あるのかもしれない。

 

 

 

(後でこれを使ってルイズをからかおうと思ってたんだけど……)

 

 ふとキュルケは自分のポケットの中の1枚の紙片の存在を思い出す。

 

(……ひょっとしたら化けるかも)

 

 擦り寄る己の使い魔である火蜥蜴の頭を撫でながら微笑む。

 

 

 

 

 

 静観している者、我関せずと本を読む者もいたがそれは極少数。

 笑い騒ぐ生徒達や、鳴き暴れるその使い魔達でその場は騒然としていた。

 

 そんな混乱を治めるべきコルベールもルイズの奇行に一瞬呆気に取られてしまい、生徒達を静めるのが遅れてしまった。

 この現状では、先程の様に自分の一喝で収拾するのは困難だろう。

 

(ならば、まずは彼女をこの場から遠ざけなければ!)

 

 いくら気丈に振舞うあの少女でも、今のこの場の空気には耐えられぬだろう。

 このままでは彼女の心に大きな傷が残る。

 そう思い、この場で罵声と嘲笑の矛先となっている少女に声をかける。

 

「ミス・ヴァリエール!」

 

 

 

 

 

 周囲の喧騒は聞こえない。

 聞こえるのはいつもより大きく、そして短い間隔で刻まれる自分の鼓動だけ。

 

 ルイズは静かに目を閉じたまま待つ。

 

 …

 

 ……

 

 ……… 

 

 そうして数秒か数分か十数分か。

 どのくらい経ったかはわからない。

 

「ミス・ヴァリエール!」

 

 ふと耳にコルベールが自分を呼ぶ声が届く。

 恐らくは儀式を中断させる為だろう。

 

 ――もしくは終了か。

 

 いずれにせよ、立会いの教師の呼び掛けを無視して儀式を続ける事は、生徒である自分には不可能だ。

 

 

 

 ――あの声は単なる自分の勘違いか。

 

 

 

 そんな思いが脳裏をよぎり、溜息をついた――

 

 

 

 

 

 

 

 ――その直後。

 

 

 

 

 

   ≪……イライ……カ≫

 

 

 

 

 

 待っていた『声』が聞こえ、今度は息を呑む。

 

(勘違いでも、幻聴でもなかった!)

 

 歓喜で胸が一杯になり、笑みが零れた。

 興奮で叫びだしたい衝動を必死に抑え、早鐘の様な動悸を落ち着ける。

 

 僅かながら平静を取り戻し、そして聞こえた言葉の意味を考える。

 

(……『イライ』……『依頼』って事?)

 

 その正体は不明だが、ルイズに応えた『ナニカ』はルイズの言葉を自分への依頼と受け取った様だ。

 

 

 

 ――ならば彼女に選択の余地は無く、その答えは既に決まっている。

 

 

 

 一度大きく、ゆっくりと深呼吸をする。

 

「ミス・ヴァリエール!」

 

 再びコルベールの声が耳に届く。

 

 だがここで止める訳にはいかない。

 自分の呼び掛けに応えてくれた『ナニカ』が存在する。

 今のこの機を逃して、次もその『ナニカ』が応えてくれるという保証は無い。

 

 

 

 ――そもそも自分には『次』が有るとは限らないのだ。

 

 

 

 だからこそ今――この場、この時、この瞬間に。

 

 彼女は精一杯の大声で『ナニカ』に『依頼』する。

 

 

 

「そうよ! 私の使い魔になりなさい!」

 

 

 

   ≪………………ツカイマ?……≫

 

 

 

 やや戸惑いを含みながら繰り返される『依頼』。

 少なくとも即断で拒絶される事は無かったようだ。

 

 ……しばしの沈黙。

 

 

 

   ≪…………イイダロウ≫

 

 

 

(やったっ!)

 

 承諾の意を示す返答に、心の中で歓声を上げて両の拳を握り締める。

 

 ――これなら『サモン・サーヴァント』は成功するはず!

 

 張り切るルイズだったが、続く『ナニカ』からの言葉は――

 

 

 

「……『ホーシュー』……? ……って『報酬』!?」

 

 

 

 ――完全に予想外だった。

 

(何よ、どういう事!? 報酬を要求する使い魔なんて聞いた事無いわよっ!)

 

 厳密に言えばまだ使い魔ではないのだが。

 そして厄介なのがその『報酬』。

 

 

 

(……『ロッパ・コーク・リード』って何よ……!)

 

 

 

 見た事も聞いた事も無い未知の物だった。

 

 

 

(秘宝? 秘薬? マジックアイテムとか美術品とか……食べ物、土地の可能性だってあるわよね……)

 

 色々考えるが、見当もつかない。

 

(もしかしたら東方の『ロバ・アル・カリイエ』の物? 語感も何となく似てるし……)

 

 しかし結局の所、ルイズの『依頼』に対する代価がその『報酬』ならば是非も無い。

 

 

 

「わかったわ! それで良いわよ!」

 

 

 

 自分でも手を尽くすつもりだが、いざとなれば実家に援助を申し出る考えだった。

 幸いにもヴァリエール家は『公爵』の爵位を持つトリステインでも有数の名門貴族。

 大抵の事は何とかなるだろう。

  

 ……『ナニカ』の気が変わらない内に…… 

 

 ……これ以上の『報酬』を要求されない内に……

 

 そう思って慌てて『サモン・サーヴァント』を唱えようと集中するルイズ。

 

 

 

 ――故に彼女は聞き漏らした。

 

 ――『ナニカ』が呟いた最後の一言を。

 

 

 

 

 

 

「ミス・ヴァリエール!」

 

 ルイズの肩が、不意に叩かれる。

 

「ミ、ミスタ・コルベール! なな、何でしょう?」

「先程から呼んでいるのに気付いていない様子だったので」

「っ!? ……えっと、す、すみません!」

 

 慌てて頭を下げ謝るルイズ。

 『聞こえていたけど無視しました』とはさすがに言えない。

 

「それに何か独り言も聞こえたのですが……本当に休まなくても大丈夫ですか?」

 

 心配そうなコルベールの言葉に、勢いよく顔を上げる。

 

「大丈夫です! だからもう一度やらせてください!」

 

 必死に訴えるルイズの目には、他の生徒達に対する負の感情は見られない。

 この様子なら大丈夫だろうとコルベールはそっと安堵の息を吐く。

 

「……わかりました、許可します」

 

 喜んですぐにでも呪文を唱えようとするルイズに釘を刺す。

 

「ただし! 身体の不調を感じたら必ず休憩する事。召喚の後は『コントラクト・サーヴァント』を行わなければいけませんから」

 

 

 

 

 

 『コントラクト・サーヴァント』――『サモン・サーヴァント』で召喚した生物を使い魔とする儀式である。

 

 

 

 

 

 『サモン・サーヴァント』を詠唱すると、使い魔となる生物の前に光のゲートが現れる。

 生物がそのゲートを通れば召喚は成功となる。

 その後、『コントラクト・サーヴァント』によってその生物は正式に術者の使い魔となるのである。

 

(『声』が聞こえたんだし、完全な失敗じゃない! 成功すればきっとゲートを通ってくれるはず!)

 

 ――ただ一つ心配が。

 

(『コントラクト・サーヴァント』を失敗したらどうしよう……)

 

 

 

 もし仮に召喚された生物が小動物等のか弱い物だった場合、ルイズの失敗魔法の爆発で死んでしまう可能性がある。

 

 『召喚直後に使い魔を爆殺』。

 

 ……間違い無く前代未聞の事件となるだろう。

 

 

 

(ちょっとの爆発でも死なないくらい頑丈な奴なら良いんだけど……)

 

 ゆっくりと深呼吸しながら『ナニカ』の事を考え、先程の遣り取りを頭に浮かべる。

 そして呪文を唱えようとして――

 

 

 

 ――『コントラクト・サーヴァント』――

 

 ――『使い魔』――

 

 ――『声』――

 

 ――『報酬』――

 

 

 

(……っ!?)

 

 

 

 いくつかの事象が突如繋がりある一つの予想を導き出し、そしてその予想は自信と期待を彼女にもたらした……

 

 

 

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!

 

 我が依頼を聞き届けし者よ! 

 

 始祖ブリミルの導きに従い、我が前に姿を現せ!」

 

 

 

 

 

 興奮を抑えられない表情で

 

 一度目よりも気合を込めて『サモン・サーヴァント』の呪文を唱え

 

 勢いよく杖を振るったその先に……

 

 

 

 ……光る鏡のような物が現れた。

 

 

 

「やったぁ!」と歓声を上げようとした――その瞬間。

 鏡のような物からおびただしい量の光が噴きだし――

 

 

 

 

 

     「なんでよぉーーーっ!!!」 

 

 

 

 

 次にルイズが感じたのは

 

 己自身が後方に吹き飛ばされるほどの衝撃を伴った

 

 一度目を上回る程の爆発だった。




次話もプロローグですが、早ければ今日中に投稿します。
タイトルで『ナニカ』はあっさりバレるとおもいますが一応伏せてます。
ストックはほとんど無く、あと2回分。
とりあえず、1巻分が終れるようにちまちまと続けていこうと思います。
気が向いたらで構いませんので、ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

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