ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

 

『いらっしゃいませー!』

 

学園祭当日。川神学園は大いに賑わっている。友達、両親、一般人、

学校外の生徒たちが川神学園にやって来て俺たち生徒の催しを楽しんでもらっている。

 

「一誠くん、焼きそば三つとたこ焼き三つお願い」

 

「了解」

 

「葛餅パフェの注文入りましたー!」

 

フロアから次々と注文が殺到する。

調理係の俺を含め、料理ができるクラスメートたちと料理を作り続けてメイドや執事役の

クラスメートたちに受け渡す。すでにこの作業は一時間も繰り返している。

 

「メイド萌えぇぇぇぇぇぇっ!」

 

「あの執事の人、カッコいいわね」

 

「確か・・・次期人王決定戦を優勝した子じゃなかったっけ?」

 

と、来客する人々はクラスメートの容姿に参っている。とにかく、繁盛しているのは間違いない。

全校クラスと対抗して一番儲かったクラスは、その利益を自分たちのものにしても

良いルールを川神鉄心が学園祭を開催する直前に伝えてきた。だから―――

 

「一誠くん、Sメニューが入ったよ」

 

Sメニュー。そのメニューを頼んだ客は執事の店員の一人と写真撮影ができる。

ちゃんと撮影する場所も設けており、そこに俺は厨房から離れて赴く―――。

 

「フハハハハ!久し振りであるな、一誠よ!」

 

「あ、揚羽・・・・・?」

 

随分と意外な人物であった。しかし、彼女だけじゃない。

両親と思しき中年の男女と執事服を纏った男性がいた。

そして、九鬼揚羽は俺の全身を見据えながら言う。

 

「ほう・・・・・随分と執事服が似合っているではないか。

・・・・・なんなら、このまま執事として我の専属の従者となってもよいぞ?」

 

「いやいや、俺は次期人王だからな?アルバイト程度なら・・・・・多分、いいかも」

 

「うむ、では採用だ!」

 

「はやっ!」

 

九鬼家の面接はあっさりしているな。それでいいのか、それで。

 

「こいつが揚羽のお気に入りの男か。中々良い面構えをしているじゃねぇか」

 

「次期人王殿。これからも我が娘と仲良くしてほしい」

 

唐突に九鬼揚羽の両親と思しき中年の男女からそう言われた。肯定と返事をすれば仕事に入る。

二つの席があって、客の要望に応えて撮影をする。

 

「どんな風に撮影を求めますか?」

 

「そうであるな・・・・・では、天使の姿になって我の背後から包むように抱きしめてくれ」

 

「分かりました」

 

青白い『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』と化となって九鬼揚羽の要望に応えた。

彼女の背後から両腕で腹を抱きかかえるように回し、翼も全身を包む感じで覆う。

 

「こんな感じで?」

 

「うむ、これでよい」

 

九鬼揚羽の身長より俺の方が背が高く、超ロングストレートの銀髪から発する香りが

俺の鼻の中に通る。

 

「・・・・・良い香りだな。揚羽の髪」

 

「そうか?特別なシャンプーを使っているわけではないがな」

 

「じゃあ、元々揚羽の髪は良かったんだな」

 

「ふっ、そう言うお前から感じる温もりはとても心地好いぞ」

 

小さく笑う九鬼揚羽。それから少しして、俺と彼女の撮影は無事に終わった。

 

「写真が出来上がり次第、家に直接送りますので郵便番号と住所、名前を記入してください」

 

「分かった。楽しみにしておるぞ」

 

そう言い残し、自分の家族がいる席へと戻った。さて・・・・・厨房に・・・・・。

 

「イッセー、私たちとも写真を取りましょう!」

 

何時の間にか、リアス・グレモリーたちがいた。

これは・・・・・しばらく厨房に戻れそうにもないな。

 

―――数時間後―――

 

昼間近となり同時に俺は、休息の時間なので約束通りに清楚と学園祭を見て回った。

桜が川神学園にやってくる時間はもう少し後だ。

なので、見て回るなら三人が良いと清楚の願いに応え、校門で待っていると―――。

 

「清楚ちゃん!一誠くん!」

 

しばらくして、俺と清楚が待ち望んでいた人物が駆け走りながら現れた。八重桜だ。

 

「「久し振り」」

 

「はい、お久しぶりです♪」

 

少しだけ息を乱しても笑顔で挨拶をしてくれた。

 

「元気そうでなによりだ。それに川神市まで結構遠かっただろう?」

 

「うん、そうだね。でも、清楚ちゃんや一誠くんと会いたかったから来ちゃいました」

 

「ありがとう、桜ちゃん。それじゃ、一緒に見て回ろう?」

 

「はい!」

 

桜と合流を果たし、校内へ案内する。その間、清楚と桜に手を掴まれたまま

一年生のプリムラたちの教室に入ったり、二年生の小雪たちやネリネたちの教室にも立ち寄り、

三年生の百代たちの教室にも顔を出した。そして生徒たち皆、楽しそうに学園祭を満喫していた。

 

「うわー、凄いね。他の学校の学園祭は」

 

「駒王と川神の合同の学園祭だから、いつもの学園祭の二倍だってさ」

 

「そうなんだ?」

 

不思議そうに首を傾げられても俺も初めてだからな?

実際、駒王の学園祭を知らないから判断がし辛い。

 

「―――あら、可愛い子を連れてデート?」

 

「・・・・・?」

 

話しかけられた?と、思って後に振り向く。―――へ?どうしているんだ?

 

「やっほー、イッセーくん。お久しぶり♪」

 

「変わりないようだな」

 

「ふふ、それでいいじゃない」

 

―――現五大魔王の内の四人。ルシファー、ベルゼブブ、アスモデウス、レヴィアタン!?

 

「・・・・・どうしてここに?」

 

「決まっているじゃない。私たちも学園祭を楽しみに来たのよ」

 

「同時に現生徒の悪魔たちの様子も見に来ている」

 

「毎年、私たちはこうやっているんだよ?知らなかったっけ?」

 

「レヴィアタン、イッセーくんは今年初めて駒王に編入したのよ?知らないわ」

 

うん、その通りだ。そして、驚いた。魔王が全員、学校に訪れるなんて思いもしなかった。

 

「―――ヴァーリから話を聞いたわ。イッセーくん、辛いだろうけど・・・・・」

 

「・・・・・ああ、分かっている。例え、本当に父さんと母さんだとしても俺は皆を守る」

 

ルシファーからそう言われ、俺がそう言うと、彼女に頭を撫でられた。

 

「いい子ね。偉いわ。そして、ごめんなさい」

 

それだけ言い、彼女と彼女たちは俺たちから遠ざかる。

 

「一誠くん・・・・・何の話?」

 

「ゴメン、桜。いつか必ず教える。だから今は言えない」

 

「・・・・・うん、分かった」

 

彼女は純粋だ。疑わず、俺のことを信用してくれる。

だから、そんな彼女のような家族を、仲間を守りたい。

 

「―――っと、もうこんな時間か・・・。悪い、桜。仕事に戻らないといけなくなった」

 

「じゃあ、私も一誠くんたちのクラスに寄るね?」

 

「私たちの調理係の一誠くんの料理は美味しいよ」

 

「そうなんだ。じゃあ、一誠くんの手作り料理を所望しちゃおっと」

 

どうやら彼女も俺たちのクラスに寄るらしい。まあ、大歓迎だけどな。

駒王学園、二年S組の教室に戻って休憩するクラスメートと交代し、

いざ料理を作り始めた俺だった。

 

―――???―――

 

「さぁーて、事を起こす前に俺も楽しんじゃいましょう!なぁー、坊ちゃん?」

 

―――○●○―――

 

学園祭が開催して半日。一日目の学園祭は小一時間で終了だ。

客も疎らとなり、空いているテーブルが多い。

 

「一誠、遊びに来たぞ」

 

狙ってきたのか、ヴァーリチームが現れた。彼女たちが席に座ってメニュー表を見るや否や、

 

「一誠、このSメニューを頼む」

 

「うん、お前なら絶対に選ぶと思った」

 

ヴァーリの要望に応えて、ツーショットで撮った。

それから彼女たちの注文通りに料理を作って清楚に渡して運んでもらう。

 

「ふぅー、やっと落ち着けれますね」

 

「ああ、一杯作ったよ」

 

「うん、私も一杯運んだぞ」

 

「ゼノヴィア、疲れを一切見せないわね・・・・・」

 

それは修行の賜物だと俺は思うぞイリナ。一般人の客もいなくなりクラスメートを除いて、

この場にいるのは『禍の団(カオス・ブリゲード)』と関わりがあるメンバーしかいない。

だから、少しの間のんびりと過ごせれる。そう思った矢先に新たな客が入ってきた。

 

「ん?おお、ここにいたんだ坊ちゃん」

 

「―――――っ!?」

 

「うひゃひゃひゃひゃっ!久し振りだねー坊ちゃん、実に十年振りじゃん?」

 

来客してきたのは銀髪の中年男性だ。見覚えがある。確か、このヒトは―――。

 

ガタンッ!

 

「・・・・・」

 

ヴァーリが勢い良く立ち上がった。

その表情は―――俺が初めて見る怒りと憎悪が籠っていた顔だった。

 

「・・・・・ん?―――なんだ、孫もいるじゃん。

久し振りだなぁー、元気にしているようでなによりだぜ?」

 

「貴様・・・・・っ!」

 

―――ヤバい、ヴァーリの奴・・・怒りで満ちている!瞬時でヴァーリの背後に回って

幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)』を装着して羽交い締めする。

 

「ヴァーリ!落ち着け!」

 

「放してくれ、一誠・・・・・っ!のうのうと私の目の前に現れた奴がいるんだ・・・・・!」

 

「お前の気持ちは分かる。だが・・・・・ここは学校だ。一般人だっている」

 

「そうそう、俺は学園祭を満喫しに来ているんだぜェー?こんな場所で魔力を使ったら、

あらなんと大惨事!孫のせいで坊ちゃんの学校生活が全て台無しになるけど、いいのかなぁー?」

 

「・・・・・っ」

 

羽交い締めしている体から力が抜けていくのが分かり、腕を解いた。

それでも、あのヒトに向ける敵意と殺意は未だに収まらない。

 

「い、一誠・・・・・ヴァーリとあのヒトの関係は・・・・・」

 

「俺も随分と久し振りだけど、あのヒトだけはよく覚えている」

 

「うん・・・・・久し振りだわ。あのヒト・・・・・」

 

イリナも険しい顔で席に座った銀髪の中年男性に向ける。

あのヒトのことは俺とイリナ、ヴァーリ。そしてリーラしか知らない。

 

「ねぇー坊ちゃん。ここのオススメはなんだ?

俺、色んなところに回って腹減っているんだよねー」

 

「アッサリ系とガッツリ系、どっちがいいですか?」

 

「もっちろん、ガッツリ系だ、ぜい!」

 

「分かりました。すぐに作りますから待っていてください」

 

「ついでに、酒、ある?」

 

そうお茶目に訊くあのヒトに苦笑を浮かべ、「無い」と返事をして料理を作る。

そんな俺に和樹が声を殺して話しかけてきた。

 

「・・・・・ヴァーリがあそこまで怒るのは初めて見たけど・・・・・どうしてなんだい?」

 

「・・・・・」

 

ヴァーリと銀髪の中年男性を見比べる。俺は皆に聞こえるように告げた。

 

「小さい頃、ヴァーリは親に虐待されていたんだ」

 

「え・・・?」

 

「しかも、その原因は目の前にいる男性なんだ。

―――リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。ヴァーリの祖父だ」

 

『なっ―――!?』

 

この場にいる全員が絶句して言葉を失っていた。

しかし、対してあのヒト、ヴァーリの祖父は口の端を吊り上げた。

 

「正確に言えば、俺は孫の才能に怯えまくっているバカ息子に『怖いならいじめろよ』って

的確なアドバイスをしてあげただけなんだぜ?ま、魔王の血筋で白龍皇なんてのが生まれたら、

あのビビりでバカ息子の豆腐メンタルじゃ耐えきれないだろうさ」

 

あのヒトはせせら笑う。

 

「ヴァーリきゅんはお父さんの仕打ちに耐えられずに家出しちゃったけどねん♪

そんなヴァーリきゅんはとある子供の家に訪れて助けてくれと懇願した」

 

「それが俺の家なんだ。その後、父さんと母さんがヴァーリを家に匿い、

保護して彼女の父親から親権剥奪をし、アザゼルに引き渡して今に至る―――わけだ」

 

「うひゃひゃひゃ、坊ちゃんの言う通りだ」

 

隠すまでもないとばかり肯定した。ヴァーリが問う。

 

「・・・・・あの男はどうした?」

 

「ん?あー、パパのその後が知りたい?うひゃひゃひゃひゃっ。俺が殺しちったよ!

だって、ビビりなんだもん。見てていらついちゃってさ。つい弾みで殺しちゃったんだ☆

あんれー、ショックだった?パパ殺されちゃって怒っちゃったー?」

 

ふざけた口調の祖父にヴァーリは簡素に言う。

 

「別に。私も消そうとしていただけだからな。―――ただ、私は嬉しいよ」

 

ヴァーリの全身のオーラが戦意をもって膨らんだ。

 

「私は貴様を一番殺したかったからな・・・・・ッ。

貴様は『明けの明星』と称されているルシファーを名乗っていい存在ではない・・・・・ッ!」

 

あっ、あのバカ・・・・・!魔力を出すなって!ヴァーリの祖父はそれを見てただただ嬉しそうに

笑うだけだった。

 

「・・・・・いいじゃん。チョーいい目つきだ。いい育て方してんよ、あのアザゼルちん。

なんということでしょう、あのメソメソ泣いていた孫がこんなにいい殺意を向ける

少女にビフォーアフターじゃんかよっ!」

 

「―――はい、お待ちどう」

 

急いで料理を作り終えて、目の前に湯気立つ数々の料理を置いた。

 

「んほほほっ!美味そうじゃん!坊ちゃんのママンの料理も美味しかったんだよねー?

しっかり料理の腕も受け継いでいるようでおじさん、感激!」

 

「・・・・・母さんと会ったことがあるのか?」

 

「まーねー?そんじゃ、いただきますっと♪」

 

意味深なことを言う。俺が小さい頃のことを言っているんだろうな。

このヒトは作った料理を堪能してしばらくした頃、本当に腹が減っていたようで完食した。

 

「ふぅー、食った食った。ごちそうさまでした!」

 

「全部食べてくれて作った甲斐があった」

 

「うひゃひゃひゃっ、坊ちゃんのママンと同じ味がしたぜい。

いやー、懐かしかった!所謂お袋の味って奴ぅ?まっ、美味しければ何だっていいけどね!」

 

小型の魔方陣を展開して札束を取り出した。それをそのままテーブルに置いて、

 

「お釣りはいらないぜ?―――また、明日も会おうぜ坊ちゃん。それとヴァーリきゅん♪」

 

足元に転移用魔方陣を展開して、光と共にあのヒトは姿を消した。

 

「・・・・・聞いていて、とんでもない悪魔だと分かりましたよ。僕、あのヒトのこと嫌いです」

 

「ああ・・・・・そうだろうさ。俺はあの人こそが本当の悪魔だと思っている」

 

龍牙の低い声音で吐く言葉は俺とヴァーリを除いて同じ気持ちだとばかり皆が頷いた。

 

―――devil―――

 

「お帰りなさい。どうでした?」

 

「美味しかったなー。坊ちゃんが作った料理」

 

「・・・・・あなたは何をしに行ったんですか?」

 

「うひゃひゃひゃ。なーに、決まっているじゃん?―――最期の挨拶と別れをさ」

 

「そうですか。では、明日・・・・・」

 

「おう!デッカイ花火でも打ち上げちゃおうぜ!ハーデスじじいから借りたアレも使ってさ!」

 

「その後はどうするのですか?アレは」

 

「んー、放っておくかな?これからすることに借りたままじゃ邪魔になりそうだしさ」

 

「では、使えるものは使い、利用するだけ利用してからそうしましょう」

 

「んほほほっ!そうそう!そうこなくっちゃ!」

 


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