ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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学園祭のドラゴンハートブレイク
Episode1


 

「新たなメダルと全身鎧の姿のイラストだ」

 

「おう、ありがとうよ」

 

研究室に訪れ、アザゼルに俺が考案したモノを手渡す。

 

「これがまた実現したら兵藤家の財政が潤うな」

 

「俺だけじゃなく、『おっぱいドラゴン』もそうだろうし、

グレモリー家にも膨れ上がるだろうな」

 

「しっかし、よくとまぁこんなものを考えたもんだな。

ドラゴンの力をメダルに籠めてベルトに装着して鎧を装着するなんてよ」

 

「なんでだろうな。こう、ピーンときたんだよ」

 

「これ、一歩間違えれば兵器にも繋がる。まあ、そんなことさせないがな。はい、採用だ」

 

軽くハンコを押した数枚の紙を返してくれた。これで販売ができる。

 

「ところでアザゼルは長い間生きているんだよな?」

 

「どうした、藪から棒に。俺のバラ色の人生でも聞きたくなったか?」

 

「茨の人生じゃないか?まあ、それよりなんとなく訊きたいことがあるんだ」

 

「俺に訊きたいことって何だよ」

 

アザゼルが俺に振り返る。まあ、ドラゴンに関する事だけどな。

 

「不動のガイアと最強のオーフィス、最強の邪龍クロウ・クルワッハ、

それと二天龍と龍王と代表的なドラゴンがいるよな」

 

「ああ、それに関わっているお前が俺から何を聞きたい?」

 

「うーん・・・・・何て言えば良いだろうか。ドラゴンってどんな風に誕生するんだ?」

 

「・・・・・」

 

唐突に無言になった。顎に手をやってアザゼルは言った。

 

「さぁな。無の空間の次元の狭間で生まれたガイアとオーフィスですらどうやって

自分が生まれたのか知らないだろうし、俺だって調べたことがあるが如何せん

卵から生まれたわけじゃないからな。未だに不明なんだ」

 

「ヤハウェがドラゴンを生みだしているのか?神だし」

 

「いんや、あいつはそんなことできるとは思えない。

―――なにか、別の力で生まれているのかもしれないな」

 

別の力・・・・・か。

 

「案外、ドラゴンの始祖・・・・・原始龍ってみたいなやつがいたりしてな」

 

「全てのドラゴンの親・・・・・ってか?」

 

「そんなもんだ。俺も聞いた事もないし見たこともないけどな。

いや、存在しているのかすらも怪しい」

 

まっ、そりゃそうだろう。アザゼルの言う通り見聞したことがない存在に考えても無駄だ。

 

「いたとしても、俺たちに干渉しないだろう」

 

「いたら会ってみたいな」

 

「会ったら教えてくれよ?貴重な情報だからな」

 

会ったら、の話しだがな。というか、俺が会う前提な話になっているし・・・・・。

アザゼルの研究室から出て教室に赴いた。

 

ガヤガヤ・・・・・。

 

歩いていると、廊下に立って立ち話をする生徒たちを大勢目撃する。

駒王と川神の生徒たちが雑談している。

あの一件以来、両学校の生徒たちはウナギ登りのように仲良くなった。

俺と杉並、サーゼクス・グレモリーたちの頑張りが実ったわけだな。教室に入れば、

廊下と同じような光景だった。何時も俺と雑談している清楚たちも見知らぬ生徒たちと

話し合っている。リーラに至っては女子生徒たちに囲まれていて何やら熱心に話をしていた。

 

「(そうだ。俺はこの光景を望んでいた)」

 

内心、嬉しく思った。この光景が何時までも続いて欲しいもんだよ。

 

『―――そいつは難しいと思うがな』

 

アジ・ダハーカ・・・・・。

 

『まあ、群れを作って共に生きるのは悪くない。が、いずれ命が尽きる。

お前とお前みたいな存在を残してな』

 

何が言いたいんだ?

 

『あまり甘いことを考えるなと言いたいだけだ』

 

なんだよ、酒を飲まされて酔っ払って倒されたお前が変なことを言うな。

 

『・・・・・』

 

あっ、黙った。

 

『次があったら喰い殺す・・・・・』

 

悪いな、その次は絶対に来ない。と、言ってみたらアジ・ダハーカが歯を強く

噛みしめたような音を出し始める。

 

―――○●○―――

 

 

明くる日のこと。俺とリアス・グレモリー、ソーナ・シトリーは三人のみで

冥界のシトリー領に来ていた。

自然豊かな林道を豪華なリムジンが走っていく。俺たち三人はリムジンの後部座席に座っていた。

リアスの手には花束。彼女が持っていくものだとそう言って持ってきたんだ。

 

「で?何の理由で俺を冥界に連れてきたんだ?」

 

家に帰るなり、リアス・グレモリーに「お願いがある」と言われ今日、冥界に訪れているわけだ。

理由はまだ聞かされていない。というか、話そうとしてくれなかった。

いい加減に話せやコラ、と俺の気持ちに察したのか、ようやく彼女は―――。

 

「今回のこの件はお母さま経由なのよ」

 

と、車中でリアス・グレモリーは理由を言った。

さらに聞くとなんでもサイラオーグのところの執事が

折り入って話があると、グレモリー家に伝えてきたそうで、それをヴェネラナが了承したという。

直接、俺を指名して呼び出すんだから何か事情でもあるかも知れないな。

 

「何の用で呼び出されたのかはともかく、シトリー領に初めて入ったけど、自然豊かなんだな」

 

「ええ、私の領土は数ある上級悪魔の領土の中でも自然保護区が多いところなんです。

美しい景観の場所も多く保護しているので今度、皆で来ましょう」

 

ソーナ・シトリーが少し自慢げに言う。そうか、へぇ、大自然に恵まれた領土なんだな。

確かに行く先に広がる山々は様々な色の木々に囲まれて見事の一言だった。

車窓から外を眺める俺にリアスは言う。

 

「そして、医療機関が充実している領土の一つでもあるわ」

 

「医療ねぇ」

 

「ええ、これから向かう先も冥界でも名だたる病院の一つです」

 

「となると、俺たちはその病院に向かっているのか?俺の力で誰かの病状を

治してほしいと?」

 

「・・・・・やっぱりあなたは鋭いわね。そうよ、その通り。あなたの力を借りたいの」

 

医療機関が充実していても、冥界でも名だたる病院でも治せない病気を患えている悪魔がいる

ということか。・・・・・リムジンは拓けた場所に出ていく。人の手が入った広大な敷地。

ポツポツと建物が建っていて、視界の向こう側に大きな建造物を捉えた。どうやら俺たちが

向かっている病院はあれのようだ。リムジンで進むこと、十数分。巨大な建物の送迎用の

入り口にリムジンが止まり、俺たちは車から降りた。

 

「お待ちしておりました」

 

俺たちを迎え入れてくれたのはし辻の恰好をした一人の中年男性。ピッチリとした会釈だ。

 

「ええ、案内してちょうだい」

 

リアス・グレモリーがそれだけ言うと中年男性は「どうぞ、こちらに」と歩きだしていく。

そのあとについていく俺たち三人。広い院内を進んでいき、エレベータに乗り込むことに。

そこでリアス・グレモリーが静かに口を開いた。

 

「イッセー、私の母がバアル家であることは知っているわよね?」

 

「ああ、知っている。ついでにサイラオーグとリアスはいとこなんだろう?」

 

「ええ、そうよ。うちの母はサイラオーグのお父さま―――バアル家現当主の姉だから、

腹違いなのだけれどね。サイラオーグのお父さまが本妻の息子、私の母が第二夫人の娘」

 

腹違いの姉か。バアル家現当主とヴェネラナは姉弟。

しかし、母親が本妻、第二夫人とは複雑だな。

 

「そして、おばさま―――サイラオーグのお母さまは元七十二柱であり、上級悪魔の一族、

ウァプラ家の出なの。獅子を司る、偉大な名家よ」

 

「ウァプラ・・・・・獅子・・・・・」

 

獅子。サイラオーグらしい血筋だ。そんな会話をしているうちにエレベータが上階に止まる。

扉を抜けるとそこは病室のフロアだった。さらに進むこと数分。執事に連れられ、

俺たちはとある一室の前に辿り着く。

 

「ここでございます、リアスさま」

 

入っていくリアス・グレモリーと執事。

俺とソーナもあとからついていくと―――個室のベッドに綺麗な女性が眠りについていた。

 

「・・・・・ごきげんよう、おばさま」

 

リアス・グレモリーは寝る女性に悲哀に満ちた眼差しを向けていた。

ソーナ・シトリーもリアス・グレモリーと同じ眼差しで向けていた。

・・・・・おばさま、話の流れからすると、この人は―――。リアス・グレモリーから花束を

受け取りながら執事が言う。

 

「・・・・・この方はミスラ・バアルさま。サイラオーグさまの母君でございます」

 

―――っ!やっぱり、サイラオーグの母親か。呼吸器をつけたまま寝ている・・・・・。

ベッド横の機器は初めて見る物だが、生命維持装置なものか?あいつらに調べさせたら

分かるだろうな。執事は―――花束を持ったまま、こみ上げてきたものを目から流していた。

 

「・・・・・今日、ここへお呼びしたのは他でもありません。リアスさま、兵藤一誠殿、

どうか、この方を・・・・・ミスラさまを目覚めさせるために

ご助力願えないでしょうか・・・・・?」

 

突然、執事に泣かれ、少し当惑する俺。そんな俺にリアスは語り始める。

 

「少しだけ話すわ」

 

それは一組の母子が辿った、激動の運命だった。サイラオーグは、バアル当主の父親と獅子を

司る名家ウァプラの母親の間に生まれた。次期当主が生まれたと、周囲は大変喜んだそうだ。

しかし、生まれてすぐにサイラオーグに辛いものが突きつけられる。―――魔力が無いに等しく、

バアルの特色である『消滅』の力を持つ事が当然とされていた。だが、サイラオーグはそれを

持たず生まれて来てしまった。失意にくれるサイラオーグの父親は、怒りを妻に向けた。

 

『我が一族が滅びの力をどこにおいて、こんな欠陥品を産んだのだ!?』

 

―――欠陥品。魔力と滅びを持たずに生まれただけで、サイラオーグは父親に見捨てられた。

同様にその子を産んだ母親であるミスラも蔑まれるようになる。

―――欠陥品を産んだバアル家の面汚し、と。

 

「・・・・・あまりに酷いものでした。当時のバアル家の者は、私を含めた。ウァプラ家から

従者たちを除き、ほとんどの者がサイラオーグさまとミスラさまを侮蔑し、差別したのです」

 

うっすらと目に涙を浮かべながらリアスも言う。

 

「当時のグレモリー家もその噂を聞いて、母がおばさまとサイラオーグをグレモリーの領土に

保護しようそしたのだけれど、あちらに強く拒否されてしまったらしいわ」

 

―――本筋の者でもなく、嫁にいった者がバアル本家のことを口を出すな、と。グレモリーには

滅びの力を色濃く受け継ぎ、冥界で活躍されていたサーゼクスがいたのが、バアル家的に

面白くなかったそうだ。それはそうか。本家の子が特色を受け継がないで、

嫁に行った者の子の方に遺伝しちまったわけだからな。バアル家にとってはこれほど皮肉は無い。

 

「大王であるバアル家は、世襲でない現魔王を除けば、家柄的にはトップに君臨する

上級悪魔。なかなか、他のお家でも口出しが難しいのです。そして、プライドが何よりも

高く、周囲の目を気にする。ミスラさまとサイラオーグは厄介者でしかなかったのです」

 

その後、ウァプラ家がミスラとサイラオーグの帰還を求めたが、バアル家からの

返事は残酷なものだった。

 

「サイラオーグさまだけは渡すわけにはいかないと、ご当主さまはおっしゃったのです。

家の恥を外に出すわけにはいかないと。そのような提案をミスラさまが飲めるわけが

ございません。ミスラさまの保護がなければ幼いサイラオーグさまは幽閉され、

ひとり蔑まれて生きて行かねばならなかったからです」

 

執事は続ける。

 

「ミスラさまは故郷の助力を断わり、サイラオーグさまと私たち一部の従者のみを連れて

バアル領の辺境へと移り住むことになったのです」

 

バアル領の辺境ならば、バアル家にとても目の届く位置にあり、何よりも外部に

サイラオーグを晒すこともない。バアル家はバアル領の奥地に母子が移り住むことを認めた。

家の援助がほぼない中で、サイラオーグは片田舎で母親と暮らし始めた。

 

「上層階級育ちのミスラさまにとって、助力なしでの田舎暮らしはお辛いものだった

でしょう。それでも立派にサイラオーグさまを育て上げました。それはとても厳しく、

ときに優しく、サイラオーグさまを教育なされたのです」

 

魔力がないに等しい悪魔は、どこに行っても良い待遇は受けない。田舎に移り住んでも

サイラオーグは差別の対象になった。同世代の下級悪魔、中級悪魔の子供たちよりも魔力が

劣っていたため、その者たちにいじめられていたという。

 

「それでもミスラさまは泣いて帰ってくるサイラオーグさまに強く

言い聞かせておいででした」

 

『―――魔力がなくとも、あなたには立派な体があります。足りないと思うのなら、

その足りないものを何かで補いなさい!腕力でもいい、知力でもいい、速力でもいい、

補ってみなさい!あなたは誰がなんと言うとバアル家の子。たとえ、魔力がなかろうと、

滅びの力がなかろうと―――』

 

「―――諦めなければいつか必ず勝てるから。以前、サイラオーグから聞いた言葉よ。

母から教わった大事な言葉だって、言ってたわ」

 

リアス・グレモリーはそう言う。・・・・・諦めなければいつか必ず勝てる、か。

そうだよな、俺だって人間の体でここまで強くなったんだ。諦めないで、頑張っていけば誰だって

強くはなれるんだ。執事が言う。

 

「裏では、何度も謝り続けていたのです。『滅びの力を持たさずに産んでごめんなさい』と。

ミスラさまは眠りつくサイラオーグさまの横で何度も何度も泣き続けて

 

おられました・・・・・。サイラオーグさまはそれを察しておられてもいたのでしょう。

ある日突然、泣くのをお止めになられたのです。そして、

何事にも真正面から立ち向かっていったのです」

 

自分を馬鹿にした者、に自分が足りないものに、サイラオーグは正面から立ち向かい、

何度も倒れ続けながらも立ち上がり続けた。そしてサイラオーグはそこで夢を掲げた。

―――実力があればどんな身の上の悪魔でも夢を叶えることのできる冥界を作りたい、と。

実力社会の悪魔業界だけど、その実は上流階級とそれ以外の世界がまるで違う。たとえ力を

持っていても出自が下級ならば望める生き方をできる者は少ない。その辺りのことはソーナも

同じ野望を掲げていたな。そして―――、サイラオーグが中級悪魔とまともに勝負が

できるようになってきた頃、ミスラの身体に異変が起こる。

 

「・・・・・悪魔がかかる病の一つよ。症例は少ないけれど、その病気にかかると深い眠りに

陥り目を覚まさなくなってしまうの。そして、徐々に体が衰弱していき、死に至る。

だから、こうやって医療機関で人工的に生命を維持しなければならないの」

 

と、リアス・グレモリーが寂しげに目元を細めながら言った。

・・・・・・サイラオーグの母親じゃ難病にかかったっていうのか。

あらゆる方法を模索したが、治療法は見つからず。

それでもサイラオーグは突き進んだ。

 

「その後、身体を鍛え上げたサイラオーグさまは満を持つしてバアル家に帰還し、

旦那さまと後妻さまの間に生まれた弟君を実力でくだして、次期当主の座を得られたのです」

 

おー、凄いじゃないか。その弟は滅びの力を持っていたんだろうにな。弟を倒して、

今の地位を得た。となるとそこで疑問が浮かぶ。

 

「サイラオーグは弟を倒してバアル家に帰還したんなら母親はどうしてここにいるんだ?

ここのほうがバアル領の病院よりも医療環境が良いってことなのか?」

 

「それもありますが・・・・・バアル領だとミスラさまを狙うものがいるでしょうから」

 

わー、狙うだなんて物騒な事だなー。

 

「次期当主の座を奪われたサイラオーグの弟をはじめ、滅びの力を持たずに次期当主になった

サイラオーグを疎む輩はバアル家周辺に多いわ。病気のおばさまはいい的になってしまう。

だからソーナのつてを頼ってサイラオーグはシトリー領におばさまを移したの」

 

なるほど・・・・・。次期当主の権力争いは未だに継続中ってことか。悪魔社会も

面倒くさいな。悪魔に生まれなくて安心するぜ。執事が涙をハンカチで拭いながら言う。

 

「お二人をお呼びしたのは他でもありません。

ミスラさまのご病気の治療にご助力願えないでしょうか?

なんでも兵藤一誠さまは異能の力であれば何でも無力化にし、

不治の病を治すことができると聞きましたもので。ぜひ、深い眠りにつくミスラさまをその力で

治療して欲しいのです。担当医の了解は取っております。有害ではない

魔力なら大丈夫だと・・・・・」

 

・・・・・はぁ、今までの話を聞いて断われるわけがないだろうが・・・・・。

 

「―――禁手(バランス・ブレイカー)

 

瞬時で青白い大天使になって翼を大きく広げ、サイラオーグの母親を翼で包んだ。すると、

翼が神々しい輝きを放ち始めた。

 

「なあ、一つ訊くが・・・・・兵藤誠と兵藤一香と交流を持っていたか?」

 

「はい、私ども従者たちも含めてあなたさまのご両親と仲良くさせてもらいました。

とても素晴らしい人たちでした」

 

 

「そうか・・・・・だったら、なおさら治さないといけないな」

 

カッ!

 

この部屋が眩い光に包まれて―――視界が白く塗りつぶされた。

 

・・・・・。

 

「・・・・・ふぅ、終わったぞ」

 

大天使化を解いた。部屋を包んだ光も消えてサイラオーグの母親の姿を

捉え部屋は何事もなかった。

 

「・・・・・イッセー、どう・・・・・?」

 

と、恐る恐ると不安そうに問いかけてくるリアス・グレモリー。俺は―――、

 

「これで二度目の経験だからな。・・・・・大丈夫だと思うぞ」

 

「・・・・・」

 

「「「―――っ!?」」」

 

俺がそう言った瞬間にベッドに寝ていたサイラオーグの母親が・・・・・ゆっくりと目を開けた。

 

「・・・・・ここ・・・・・は?」

 

「目を覚ましたようだな?」

 

「・・・・・どちらさまでしょうか・・・・・?」

 

「初めまして、俺は兵藤一誠。兵藤誠と兵藤一香の間に生まれた子供だ」

 

自己紹介をすると、一瞬だけ目を大きく見開いたがすぐに目を細めて懐かしそうに俺を

見据え、腕を伸ばして俺の頬を撫でてきた。リアス・グレモリーとソーナ・シトリー、執事も

サイラオーグの母親の周りに寄って来て涙を流す。

 

「・・・・・そう、あの赤子が見ない間に成長したのね・・・・・」

 

「感動の再会は俺じゃなくてこいつにしてくれ」

 

俺は苦笑を浮かべ、彼女から離れる。と、俺の横に一人の男が現れ、ゆっくりと通ってきた。

その男に彼女も気付いた。

 

「・・・・・母上、サイラオーグです。おわかりになりますか?」

 

「・・・・・ええ、わかりますよ・・・・・」

 

その男、サイラオーグ・バアルであった。我が子の頬を撫でようとする母の手。

震えるその手をサイラオーグの大きな手が取った。

 

「・・・・・私の愛しいサイラオーグ」

 

「・・・・・母上」

 

「・・・・・立派になりましたね・・・・・」

 

「・・・・・っ」

 

母親のその一言を聞いたサイラオーグの目から―――一筋の涙が流れた。

 

「・・・・・まだまだです、母上。元気になったら、家に帰りましょう。あの家に・・・・・」

 

―――これ以上俺がここにいるのも野暮だと感じ、

リアス・グレモリーとソーナ・シトリーを手招き、

一緒に病室を出ていく。

 

 

 


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