ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode5

「へぇ・・・・・ここがイッセーの家なのね」

 

「私の家より広いっす」

 

「そうですね・・・・・」

 

「わあ、家の中に噴水があるんだ!」

 

「あの頃のように戻ったような感じで懐かしいですね・・・・・」

 

はい、兵藤一誠です。上級生の悪魔との一件以来、俺は謹慎処分を言い渡されて三日間、

この家の中に閉じ籠ることになった。その初日、なぜか・・・・・。

 

「―――どうしてお前らがこの家にいるんだよ!?」

 

リアス・グレモリー、ソーナ・シトリー、リシアンサス、

ネリネ、リコリスの五人が家の中にいた!

 

「リーラ!これはどういうことだ!?」

 

彼女に問い詰めれば、「申し訳ございません」と言って説明してくれた。

 

「・・・・・サーゼクスさまからの依頼です」

 

「・・・サーゼクス・グレモリーから?」

 

オウム返しで問えばリーラは頷き説明してくれた。

聞けば、俺が謹慎処分を下ったことで五人が教師や理事長である

サーゼクス・グレモリーに抗議したようだ。

 

「さらには一誠さまの処分を知った神王さまや魔王さまも、学園に現れて・・・・・一悶着を」

 

「・・・・・それで、どうして五人がここにいるんだ?」

 

俺の家をどうやって知ったのかこのさい置いて置く。でも、どうしてこの家にいるのか知りたい。

 

「・・・・・ケアをするために訪問してきました」

 

「ケア・・・・・?」

 

俺は別に病気を患っているわけでもないし、心の病を抱えているわけでもない。

至って健康だが・・・?

 

「ええ・・・・・リアスさまたちのケアです」

 

「俺じゃないのかよ!?」

 

五人のケアの方かよ!?どうして、俺がしなくちゃいけないんだ!意味が分からないぞおい!?

 

「だって、イッセーくんは何も悪くないのに謹慎処分なんて酷過ぎるっす!」

 

「そうです!イッセーさまは何も悪くないですのにあまりにも酷いです!」

 

「私もネリネやシアちゃんと同じ気持ちだよ」

 

「以下同文です」

 

「私もよ」

 

・・・・・ケアしなくても元気そうなんだけど?

と、リーラに視線を向けたら珍しく彼女が溜息を吐いた。

 

「・・・・・リアスさまたちが怒り狂って学園の一部を消滅させてしまったので、

このままでは危険だと理事長から五人のケアをして欲しいと依頼が・・・・・」

 

学園の一部を消滅って・・・・・お前ら、なにしてんの!?

 

「それじゃ、イッセーくん♪三日間よろしくお願いします!」

 

「三日!?えっ、お前らここに泊るのか!?」

 

「「「「「うん」」」」」

 

な、なんてこった・・・・・こいつらがここに泊るだなんて・・・・・!

そういえば、足元にある荷物はそのためだったのか!

 

「では、皆さんが就寝するお部屋にご案内します」

 

「リーラ、何気に場の流れに乗ろうとしているな」

 

「メイドですので」

 

・・・・・それで済んじゃうから便利だよな。メイドって。

 

「んじゃ、俺は時間だから」

 

「はい、御用がありましたらお迎えしますので」

 

俺は頷いて、この場から離れる。さて、修行の始まりだ。

 

―――○●○―――

 

―――リアスside

 

彼がどこかへと行ってしまった。一体どこへ行ったのだろう?

 

「ねぇ、彼はどこに行ったの?」

 

「一誠さまは修行をするため、トレーニングルームへ赴きました」

 

「トレーニングルーム?この家にそんな部屋があるの?」

 

「はい、暇さえあれば一誠さまは修行をなさいます」

 

その理由はきっと復讐のためね・・・・・。

私、リアス・グレモリーは心の中で悲し気にそう漏らした。

 

「では、ご案内しますのでついて来てください」

 

私たちは頷き、手荷物を持って彼女の後を追う。レッドカーペットに敷かれた

二階へあがる階段を上っていきながら、目の前に歩く彼女の髪をふと視界に入れた。

 

「(・・・・・綺麗な髪ね)」

 

サラサラと流れる銀色の髪。私が知る銀髪のメイドとは明るさが違う。

私でも思わず身惚れてしまうほど幻想的な色の髪。

 

「リーラさん、イッセーくんのメイドなんですよね?」

 

「はい、幼い頃からメイドとして仕えさせてもらっています」

 

「そうなんですか。あの、ちっちゃい頃のイッセーくんってどんな子でしたか?」

 

「そうですね・・・とても可愛らしくて、負けず嫌いで、一生懸命頑張っておりました」

 

リーラさんがクスリと笑みを浮かべた。私たちは一度しか見たことがない。

あの頃、私たちがまだ幼かった頃、あの公園で彼と出会い、そして別れた。

 

「そういえば・・・あの頃から一誠さまはモテていましたね」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「しかもお二人です。今頃お美しく成長したと思いますが・・・・・」

 

ふ、二人・・・・・イッセーに好意を抱いていた子がいたのね・・・・・。

 

「皆さんが就寝するお部屋でございます」

 

と、彼女が不意に歩みを停めて案内してくれる。何の変哲のない扉。

彼女は扉を開け放ち私たちを中に入るように促す。私たちは中に入った。

部屋の中はシングルベッドがあり、大きな鏡が壁に飾れられ、机や椅子、

私生活に必要な家具が揃っていた。

 

「一人一室ずつご使用ください。何か御用でしたら、こちらの赤いボタンを押してください」

 

壁にある赤いボタンにリーラさんは説明する。わかったわ。

 

「リーラさん、この家の構造はどんな感じに?」

 

「地下5階までございます。さらにここは、三階建の家です」

 

「外から見ても大きいとは思っていたけど・・・・・どうしてそこまで広く大きくしたの?」

 

私は疑問をぶつけてみた。彼女はこう言った。

 

「いつか、あなたたちのような方がこの家に住み着くと考えた結果です」

 

私たちのような・・・・・?

 

「―――少なからず、あなたたちは一誠さまに好意を抱いておるのですよね?」

 

「――――――」

 

真っ直ぐそう言われ、私は絶句した。

そ、それは・・・と、ストレートな発言に思わず私は照れてしまった。

 

「でなければ、あなたたちがこの家に来るようなことはございません。

自分たちのケアをして欲しいなどと、ふざけた建前を述べるほどですから」

 

「・・・・・っ!?」

 

初めて、彼女が私たちに向けた嫌悪を感じた。メイドあるまじき発言だった。

 

「先に仰りましょう。私は一誠さまを身も心も捧げる所存です。

髪の毛一本から足の爪も、私の全ては一誠さまのものです。私の愛しいご主人さまは、

誠さまと一香さまを殺害した悪魔と堕天使に復讐するまで体が傷付いても

決して戦いを止めないでしょう」

 

『・・・・・』

 

「半端な気持ちで一誠さまにお近づきにならないでください。

例え、冥界と天界の姫だろうが私は許しません」

 

失礼します、と彼女はこの部屋から出て行った。

後に残された私たちはなんとも言えない空気に包まれる。

 

「・・・・・あの人、本当に心からイッセーくんのことを好きなんだね」

 

「命を代えても守りきる。と、そんな感じだったね」

 

「彼女はイッセーのことを知っている。そう、昔から・・・・・」

 

「ご両親を殺された時からも・・・ずっと・・・・・ですね」

 

「・・・・・」

 

少し、浮かれていたかもしれない。彼のことを私たちはまだ何一つ理解していないのに、

少し分かりきっていた態度をしていたのかもしれない。気を付けよう・・・・・。

 

―――ソーナside

 

私たちが寝る場所に荷物を置き、部屋から出ますとリーラさんが、家の中を案内してくれました。

殆ど未使用の部屋ばかりで、これから何に使うかイッセーくんと決めるそうです。

そんな時、私は問いました。

 

「・・・そう言えばリーラさん」

 

「なんでしょうか?」

 

「イッセーくんはグレートレッドと住んでいると知りましたが、グレートレッドは次元の狭間に?」

 

真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッド。彼が共にいるという。

不動の存在と。リーラさんは私の問いに応えようと口を開いた。

 

「いえ、一緒に住んでいますよ。今頃、一誠さまの相手をしておりますでしょう」

 

イッセーくんの相手・・・・・?それってつまり・・・・・修行の相手?

 

「ご覧になってみますか?一誠さまの強さの根源を」

 

彼女がそう言う。私たちは彼のことを知ろうと改めて決心をし、頷いた。

 

「では、行きましょう。こちらです」

 

一階へ降りていくリーラさんに後を追う。

すると、階段の裏に回ったかと思えば、筒状のエレベーターらしきものが。

それにかなり広く、軽く20人は乗れそうだった。そのエレベーターに載るリーラさんに続いて

私たちも乗る。シャッターが閉まり、一瞬の浮遊感を感じた瞬間に下に降りて行くのが分かった。

 

しばらくすると、エレベーターが急停止し、シャッターが左右に開いた。

私たちは降りると、とんでもない光景が目に飛び込んできた。

赤いドレスを身に包んだリアスのような紅髪と違う真紅の長髪。

その双眸は垂直のスリット状の金色の瞳の女の人と、

黒いコートに身を包んだ金色と黒色が入り乱れた髪。その双眸は右が金で、

左は黒という特徴的なオッドアイの長身の男の人とイッセーくんと二対一で戦っていました。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

イッセーくんが地面に叩きつけられました。さらに男の人が真上に飛んで黒い魔力を放った。

すると、彼から金色の閃光が上に向かって伸び、黒い魔力とぶつかりました。

その際、激しい轟音が響き渡り―――。

 

ジリジリジリジリジリジリッ!

 

この空間に鐘が鳴りだしました。三人はその鐘に反応し、戦闘態勢を解除しました。

 

「ん?なんだ、来ていたのか」

 

イッセーくんが私たちに気付きました。体のあちこちに血が流れ出て、頭からも血が流れていた。

 

「イ、イッセーくん・・・・・血が・・・・・」

 

「ああ、何時もの事だ」

 

何時ものことって・・・・・これが当たり前のことなんでしょうか?と、思っていると、

彼の背中から六対十二枚の翼が広がるように現れて、イッセーくんを包んだ。

少しして、翼が開いて彼の姿を覗かせる。そこにいた彼は完全に傷が治っていました。

 

「凄い・・・・・傷が直ぐに治ったっす」

 

「これ、禁手(バランス・ブレイカー)の状態なんだ。だから直ぐに傷が治る」

 

禁手(バランス・ブレイカー)っ!?」

 

私は驚きました。天使のような翼が禁手(バランス・ブレイカー)だなんて。力を解放した瞬間が見えませんでした。

 

「・・・・・あの、この方たちは?」

 

ネリネが恐縮するようにイッセーくんの傍にいる二人に視線を向け、彼に訊ねました。

一人はもしかしたら、と思いますが・・・・・もう一人は一体・・・・・。

 

「ああ、真紅の髪の女性は『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドだ」

 

―――やっぱり!?イッセーくんが紹介した女性は、腕を組んで不機嫌そうに鼻を鳴らしただけで、

何も言いませんでした。

 

「それで・・・このお方は?」

 

今度は私が男の人に尋ねました。さっきから感じる凄まじいプレッシャー。

イッセーくんより強い実力者と伺える。果たして一体誰なんでしょうか・・・・・。

 

「『三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)』クロウ・クルワッハだ」

 

「・・・・・なっ・・・・・!?」

 

三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)』―――クロウ・クルワッハ!?

 

「邪龍の中で最強の邪龍と称され、邪龍の筆頭格のドラゴン!?」

 

リアスが激しく驚きました。私もそうですか・・・・・。

 

「イッセーくん・・・・・あなたは、どこで邪龍と出会って味方にしたんですか?」

 

私の問いに彼は、クロウ・クルワッハと顔を見合わせて口を開いた。

 

「幼い頃、俺が一人冥界で修行していたらクロウ・クルワッハが現れた」

 

「兵藤一誠を気に入った俺はグレートレッドと賭けをした。だが、俺は賭けに破れた。

しかし、兵藤一誠が『一緒に暮らそう』と誘われてな。俺はその誘いを受けたに過ぎない」

 

そ、そんな出会いがあったのですか・・・・・あまりにも有り得ないですよ。

 

「あのー、賭けというのは?」

 

「クロウ・クルワッハの体に傷を付ける事だ」

 

「・・・・・普通、できないと思うのですが、ここにいるという事は傷を付けたということなのね?」

 

「ああ、首の下から体を消失させられた。見事な一撃だった」

 

「でも、こうやって体術だけでやるとまだまだ勝てないんだよ。まあ、当然だけどな」

 

苦笑する彼。だけど、彼の凄さはあまりにも異常です。

真龍と最強の邪龍を共にいさせるなんて前代未聞です。

 

「イッセー、クロウ・クルワッハのことをお兄さまたちは・・・・・」

 

「知らないだろう。俺からも言っていないし、言ったら絶対に面倒なことになりそうだ」

 

溜息を吐く彼は、グレートレッドに顔を向ける。

 

「彼女の存在だって本当は知らせるつもりはなかったんだけど、

杉並ってやつがバラしてくれやがったからな。だから俺の力を、

グレートレッドさんの力を欲してあの上級生の悪魔が来たんだろう」

 

『・・・・・』

 

だから彼は、眷属の誘いを断り、そのせいで自宅待機の謹慎処分が下された。

 

「さて、地上に戻ろうか」

 

そう言う彼。私たちはただ頷くことしかできなく。再びエレベーターに乗り込んだ。

 

 

―――ネリネside

 

こんにちは、私はネリネといいます。

今日はイッセーさまのお家で三日間お泊まりするため、あの人の家に来ております。

 

「・・・・・で、お前らをケアするってサーゼクス・グレモリーからの依頼そうだが、

実際に何をすればいい?」

 

リビングキッチンにあるソファーをお座りになりながら問うてきました。

 

「えっと・・・・・私たちと三日間一緒に過ごすだけでいいの」

 

「それだけでいいのか?」

 

怪訝な顔でリアスさんに言うイッセーさま。

ううう・・・・・絶対に面倒くさいと思っておりますでしょう。

私たちはあなたの傍にいたいと言うだけでここにいるのですから。

 

「・・・・・まあいいか」

 

リーラさんからコーヒーを受け取って一口。

受け皿にカチャリと置くと、彼は私たちを見渡します。

 

「改めて、久し振り。だな」

 

「ええ、久し振り」

 

リアスさんは笑みを浮かべる。私たちも久し振りです、と同意の意志表現をします。

 

「まったく、あの時は驚いたぞ。人が寝ているところを突き飛ばして水の中に落としたんだから」

 

「あっ、あれはあなたが悪いのよ!誘っているのに寝ようとするから!

しかも仕返しと水を掛けたじゃない!」

 

「水に滴る男はいい男もとい、水に滴る女はいい女ってな。

お互いずぶ濡れだったからあれでお相子だろ」

 

「・・・・・あなた、本当に昔の頃と変わっていないわね」

 

「それはこっちのセリフだリアス・グレモリー」

 

売り言葉買い言葉・・・・・。ですけど、本気で喧嘩しているようには見えません。

昔のことを思い出しながら言っているようにも思えます。

 

「・・・・・ところで、何時まで私のことをリアス・グレモリーと呼ぶのかしら?」

 

「俺の勝手だろ?不名誉な名を言っているわけじゃないし」

 

「私のことをリアスと呼びなさいよ。・・・・・あの時のように」

 

「気が向いたらな」

 

そう言ってコーヒーを飲む。すると、彼の隣に自然とグレートレッドが座りました。

そのまま彼女はイッセーさまの太腿に頭を乗せて、のんびりと・・・・・羨ましいです。

 

「・・・・・グレートレッドって、初めて見るけど綺麗なんだね」

 

「そうっすね」

 

リコリスとシアちゃんがグレートレッドを見て感嘆します。

そうですね、私から見てもとても綺麗な人です。

 

「そういえば、シアたちはどこのクラスだ?」

 

「Cクラスっす!」

 

「中間あたりのクラスか。俺たちからそっちのクラスには行けれないから、

用があるならそっちから来てくれよ」

 

「うん、分かった。謹慎処分が終わったら遊びに行くね」

 

それまで私たちはイッセーさまと屋根の下で・・・・・・。不謹慎ですが、とても嬉しいです。

 

「(時間は三日間。この三日間を大切に使い、イッセーさまともっと親密な関係に・・・・・)」

 

うん、と首を縦に振って密かな気合を籠め、決意するのです。

 

―――リコリスside

 

はい、リコリスです。いまの時間は夜の六時です。

イッセーくんの家に来てだいぶ時間が経ちました。

 

「そろそろ夕食の時間か」

 

イッセーくんがそう言い、顔をリーラさんの方へ向けた。

それだけで彼女は「わかりました」と頷いてキッチンの方へ向かって行った。

 

「イッセーくんって料理作れるの?」

 

「できるけどそれが?」

 

わあ、イッセーくんが料理できるんだ。まるでお父さまみたいだね。

 

「得意な料理って何かな?」

 

「得意な料理・・・・・別にこれといったものはないな。

様々な料理を作れるようにしているだけだし」

 

そうなんだ。でも、色んな料理を作れるって凄いね。

 

「ううう・・・・・羨ましいです」

 

あっ、ネリネが羨望の眼差しを向け始めた。

イッセーくんは「ん?」って、首を傾げる。ネリネのことを私は説明した。

 

「ネリネって料理が下手なの」

 

「はうっ!」

 

ストレートに言ったらネリネが胸に手を押さえた。その様子に納得したようで頷くイッセーくん。

 

「ああ、そういうことか。母親に習わないのか?」

 

「しているんだけど、キッチンが爆発しちゃうんだよねー」

 

「・・・・・どう調理をしたら爆発するんだよ」

 

怪訝な顔になった。その気持ちは、分からなくないよ。うん。

 

「リアス・グレモリーたちは料理作れるのか?」

 

「ええ、人間界に住んでいるもの。料理ができないと色々と不便だし」

 

「私はお菓子も作れます」

 

――――――っ

 

ソ、ソーナのお菓子・・・・・。その言葉を聞いて私は久し振りに畏怖の念を抱いた。

ソーナのお菓子は見た目がよくても何故か、味が―――!

 

「へぇ、女の子らしいじゃないか」

 

「そ、そうでしょうか・・・・・?・・・・・では・・・・・・」

 

ソーナが魔方陣を展開した。そしたら、魔方陣から箱が出てきた。ま、まさか・・・・・っ!?

 

「あなたに食べてもらおうと、お菓子を作ってきたのです」

 

「おっ、そうなのか?」

 

「ええ、どうぞ。食べください」

 

イ、イッセーくぅぅぅぅんっ!?ダメ、絶対に食べちゃダメだよぉぉぉぉっ!

絶対にイッセーくんでも無事じゃないよ!

だけど、そんな私の思いは、イッセーくんに通じず、ソーナから箱を受け取って蓋を開けた。

 

「ん、美味しそうだな。形も綺麗に整っている」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

私たちは緊張してイッセーくんを見ている。その理由はソーナのお菓子を食べたことあるからだ。

でも、ソーナは私たちとは別の意味で緊張してイッセーくんを見詰めている。

美味しいと言ってくれるのだろうか?と、

 

「んじゃ、いただきます」

 

箱の中に入っていたお菓子を一つ摘まんで、口の中に放り込んだ。

咀嚼する音がハッキリと聞こえる。イッセーくん・・・・・どうか、死なないで・・・・・!

 

「ソーナ」

 

「はい・・・・・」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

イッセーくんの反応は・・・・・。

 

「甘くて美味しいな」

 

「「「「―――――えっ!?」」」」

 

「そうですか・・・・・良かったです」

 

そ、そんな・・・・・!?私は信じられないものを見る目でイッセーくんの見ていると、

本当に美味しそうにパクパクとお菓子を食べ続けていく。

 

「イ、イッセーくん・・・・・美味しい・・・・・?」

 

「ん、甘くて美味いぞ?店に出せれるんじゃないか?」

 

―――――っ!?み、店に出せれるって・・・・・ほ、本気で言っているの・・・・・?

 

「ね、ねぇ・・・イッセー?私もお菓子をくれるかしら・・・・・」

 

リ、リアス!?

 

「いいぞ。他の奴らも食ってみろ」

 

「・・・・・で、では・・・・・」

 

「た、食べてみるっす」

 

あわわ・・・・・イッセーくん。知らないとはいえ・・・・・私たちを・・・・・。

受け取ったソーナのお菓子を受け取って、ゴクリと唾を飲み込む。

 

「(本当に私たちがケアをしてもらうのかもしれない)」

 

嬉しさ半分、これからお菓子を食べる恐怖。い、いざ―――。

 

サクッ・・・・・。

 

―――リシアンサスside

 

・・・・・うっ・・・・ここ・・・・・は・・・・・?

私、リシアンサスことシアは、目を開けた。体の調子は・・・・・あれ、悪くないっす。

 

「気がついたか?」

 

直ぐ傍に男の人の声が聞こえた。

そっちの方へ見ると、背中に六対十二枚の金色の翼を生やしていたイッセーくんがいたっす。

 

「イッセーくん・・・・・」

 

「ソーナのお菓子を食べて気絶するなんて驚いたぞ」

 

そう言って苦笑するイッセーくん。その顔を見て、私は周りを見渡した。

リンちゃんやリコリスちゃん、リアスちゃんが金色の翼に包まれていたっす。勿論、私もそうだった。

 

「ああ、この翼は癒しの効果がある。だから、こうして包まれていると、

どんな病や怪我を治すことができるんだ」

 

そうなんだ・・・・・だけど、この翼から感じる温かさは安心感が感じる・・・・・・。

 

「イッセーくん、ソーナは?」

 

「ん」

 

親指を横に突き刺した。その先の方へ視線を向けたら・・・・・。

 

「・・・・・」

 

首に『私はヒトを気絶させるほど不味いお菓子を食べさせてしまった事に深く反省しています』と

書かれた木の板をぶら下げて正座をしていたっす。

しかも、薄っすらと涙を浮かべていた・・・・・。

 

「俺は冥界に一人で何ヶ月間も修行していた時に、何度か毒物と間違って食べたことがあるからさ、何時の間にか毒に対する耐性が付いていたようだ。さっき知ったばかりだけどな」

 

ワ、ワイルドっす。イッセーくん。だから、平気だったのね・・・・・。

 

「まあ、美味しかったのは本当だけど今度、ソーナのお菓子作りを間近で見てみるとするか。

どこか、間違った調理方法をしているのかもしれないしな」

 

それでも、ソーナのお菓子は正直言って不味いっす。そう思ったらイッセーくんは溜息を吐いた。

 

「本当にお前たちをケアすることになるとはな」

 

うっ・・・・・ごめんなさいっす。

 

「一誠さま、ご夕食の準備が整いました」

 

「ん、分かった。それじゃ、起こすか」

 

リーラさんがイッセーくんにそう告げた。

対してイッセーくんはまだ眠っているリンちゃんたちを見て言ったと思えば・・・・・。

 

バチンッ!

 

リンちゃんたちを包んでいる翼から電気が迸ったっす!

 

「うっ・・・・・」

 

すると、リンちゃんが、皆が呻き声を上げたっす。

そしたらゆっくりと、目を開ける三人。

 

「・・・・・イッセー?」

 

「おはよう、夕食の時間だ」

 

私たちを包んでいた翼を解いて言うイッセーくん。テーブルの方へ視線を送れば、

美味しそうな料理の数々が置いてあったっす。

 

「(私も、イッセーくんに料理を作って食べさせたいっす)」

 

この願いは絶対に叶えてみせるっす!そう意気込む私でした。

それから私たちはご飯を食べ、かなり広いお風呂に入って、自室で寝たっす。

 

―――一誠side

 

謹慎処分から二日目となった。朝早く起きた俺は朝のトレーニングを終え、

咽喉か渇いたのでリビングキッチンへと赴いていた。窓から見える朝日は快晴だと、分かる。

こんな日はのんびりと散歩したいなと、つい、思ってしまう。

 

「(今日ものんびりとした日常を送れるといいな)」

 

と、そんな事を考えていたその時だった。この家のインターホンが鳴った。誰だ?と、思いつつ

玄関に赴いて、来訪者を出迎えるために扉を開け放った。

 

「はい、どちら―――」

 

「ぼぉーうぅーずぅー!」

 

ガシッ!

 

「―――――」

 

突然、浴衣を身に包んだ筋肉質で中年の男性に出会い頭抱擁された。

そんで、聞き覚えのある声だった。剛腕な腕に抱えられる俺は、

抱擁してくる男性にどうしてここにいる!?と驚きながら、思いながら名を言った。

 

「し、神王・・・・・!?」

 

「おいおい坊主、水臭ぇことを言うなって!俺のことを父さんかパパと呼べや!」

 

はっ!?どうしたらそうなるんだ!訳が分からない!と、神王の言葉に耳を疑う。

 

「やぁ、一誠ちゃん。ネリネちゃんとリコリスちゃんと仲良くしてもらっているかな?」

 

「やっほー!兵藤くんお久しぶり☆あの時以来だねー?でも、ソーナちゃんは渡さないよ!」

 

なんか、面倒くさいヒトたちが勢揃いしている!?というか、

ソーナ・シトリ―を渡さないってどういう事だ!?

 

「おはよう、兵藤くん。元気にしているかな?」

 

今度はサーゼクス・グレモリーが話しかけてきた。

リアス・グレモリーたちと関係しているヒトが集合しちゃっているよ。

 

「・・・・・何の用なんだ?」

 

「なに、妹たちの様子を見に来たのだよ」

 

「それだけのために魔王と神王も来たってことなのか?仕事の方は大丈夫なのか?

冥界と天界にいなくちゃならないほど重要な人物だっていうのに」

 

「一誠ちゃん。私と神ちゃんは人間界に住んでいるんだ。この世界でちゃーんと、

魔王としての仕事を、神王としての仕事をしてるよ?だから安心するといいさ」

 

・・・・・ここに来ている時点で本当にちゃんと仕事しているのか疑わしいんだけど。

 

「―――お父さま!?」

 

驚愕の声音が聞こえた。後ろに振り向くと、ネリネが立っていた。

逆に魔王フォーベシイはにこやかに笑って手をあげて、挨拶をする。

 

「やあ、ネリネちゃん。二日ぶりだね。一誠ちゃんと一緒にいて元気になったかね?」

 

「ど、どうしてこちらに・・・・・・」

 

フォーベシイの言葉よりも、どうしてここにいるのか疑問が強いらしく、唖然としていた。

 

「愛しい娘たちの様子を見に来たのだよ。もしかしたら、一線を越えたかな?と思ってね」

 

「で、坊主。うちのシアとどこまで進んだんだ?」

 

魔王フォーベシイの言葉に同じ気持ちだと、神王ユーストマは口の端を、

ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「お、お父さま・・・・・!」

 

ネリネが顔を真っ赤に染める。俺は呆れ顔で言った。

 

「二人が思っているようなことはなっていないし、進展していない」

 

「「なっ・・・・・!?」」

 

魔王と神王が絶句した。そしてすぐに俺の肩を掴み始めた。

 

「坊主!シアには魅力がないっていうのかぁっ!?」

 

「ネリネちゃんとリコリスちゃんは、

一誠ちゃんにとって魅力的な女の子じゃないのかいっ!?」

 

憤怒の形相、涙を浮かべながら迫る神王と魔王。―――刹那。

 

「―――お父さん!」

 

家の中から椅子が飛んで来て、神王の顔面にクリーンヒットした。神王はそのまま倒れ、

 

「シ、シア・・・・・椅子はやり過ぎだと・・・・・いつも、言っているだろう・・・・・」

 

「というか、この椅子は家のだよな・・・・・?」

 

沈黙する神王。飛んできた椅子を見て俺は確かめるように呟く。

 

「お、お兄さま!?」

 

今度はリアス・グレモリーが現れた。さらに他の皆も登場だ。

 

「リアス、元気そうだね。やはり、彼の傍にいると活き活きするのだね」

 

「そ、それは・・・・・!」

 

「ソーたん♪」

 

「お、お姉様・・・・・!?」

 

兄と姉と再会する二人の妹たち。

 

「・・・・・取り敢えず、家の中に入れ」

 

俺は嘆息しながらそう促した。ここじゃ、近所迷惑になりかねん。

 

―――○●○―――

 

「わざわざ、自分の娘と妹の様子を見るために来たというのか。はた迷惑の奴らであるな」

 

リビングキッチンに設けているソファーに座っている俺の隣に座るグレートレッドさん。

彼女が目の前に座る四人に不機嫌そうに言った。

対するサーゼクス・グレモリーは真っ直ぐ面と向かって彼女に言った

 

「あなたが真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッドだとはね」

 

「この姿に疑問か?人間化になっても力が変わらんからな。小回りも利く」

 

「しかし、これは驚いたね。本当に彼と一緒に暮らしているとは」

 

フォーベシイが俺とグレートレッドさんを交互に見て、口からそう漏らした。

 

「我も最初は、一誠と暮らすつもりはなかった。が、一誠が我に鍛えて欲しいと、頼まれてな。

我はそれを承諾し、鍛え上げている」

 

「なーるほどな。だから坊主は強いってわけだ。

人族で俺の拳を受けて尚も平気でいられる奴ぁ、坊主が初めてだったからよ。これで納得したぜ」

 

腕を組み、首を頷くユーストマにサーゼクスも頷いた。

 

「あなたが彼の支えとしているおかげで、彼はここまで強くなったのですね」

 

「―――我の自慢の弟子であり、可愛い弟でもあり、愛しい男よ」

 

と、彼女は俺の肩に腕を回し、引き寄せたかと思えば、自慢気にそう言った。

 

「だから、我はこの男を気に入っている。手放す気はない」

 

「グレートレッドさん・・・・・」

 

「・・・・・一誠、何時まで我をそう呼ぶのだ?」

 

へ・・・・・?ど、どういう事だ・・・・・・?突然そう言われて俺は戸惑う。

 

「我のことを『グレートレッドさん』などと、他人のようには呼ぶではない。

我らは家族であろう?」

 

「そうだけど・・・・・」

 

「ふむ・・・・・この際だ。『グレートレッド』など、堅苦しい名前の他に我は

別の名前で呼ばれよう。

『グレートレッド』とは、他の奴らが勝手に名付けたようなものであるからな」

 

えっ?そうなの・・・・・?と、そんな感じで視線をサーゼクス・ルシファーに向ければ、

肯定した。

 

「私たちが名付けたわけではないが、何時の間にかそう呼ばれるようになっていた。

私たちもそう呼んでいるけどね」

 

「一誠、我の名を考えてほしい」

 

キラキラとグレートレッドさんが期待の眼差しを向けてくる。ん・・・・・急に言われてもな。

 

「・・・・・ん、じゃあ・・・・・」

 

「うむ」

 

「ガイア・・・・・ってのはどうだ?確か、神話に出てくる女神の一人だった。

グレートレッドさんも美人で綺麗だから、この名前を出したんだけどどう?」

 

「ガイア・・・・・」

 

新たな名の候補を彼女はポツリと復唱した。それから何度も呟くと、首を縦に振って頷き始めた。

 

「悪くないな。それに、言いやすい。我にピッタリの新たな名だ」

 

満面の笑みを浮かべ、気に入ってくれた様子を伺わせる。

 

「決まりのようだな」

 

「そうだね。これからはグレートレッドとじゃなく、『ガイア』と呼ぼう」

 

「できたら、ネリネちゃんやリコリスちゃんの間に生まれた時にも、

一誠ちゃんが名付けて欲しいね」

 

「「「なっ・・・・・!?」」」

 

フォーベシイの言葉に俺と離れたところで座っているネリネとリコリスが絶句した。

 

「お、お父さま・・・・・!な、なんてことを・・・・・!」

 

「そ、そうだよ!イ、イッセーくんと子供なんて・・・・・まだ・・・・・」

 

「でも、産みたいだろう?」

 

笑みを浮かべる魔王だった。そして、とんでもないことを口にする。

 

「一誠ちゃん。私の娘、ネリネちゃんかリコリスちゃん。

はたまた両方と結婚したらキミを私の後継者に、どうだい?」

 

「・・・・・はっ?」

 

「おいおい、まー坊。坊主はシアと結婚して俺の後を継いでもらう予定なんだ。

勝手に決めないでくれよ」

 

「・・・・・はっ!?」

 

な、なに言っているんだこの王たちは!?俺が冥界と天界の王!?

 

「―――いえ、御二方」

 

リーラが突然話に加わった。

 

「一誠さまは人間界の王としていてもらわないと困ります。

すでに一誠さまは人間界の王の王女から好意を寄せられておりますので、

まずはそちらからなってもらわないと」

 

「・・・・・」

 

リーラ。キミまで何とんでもないことを言っているんだ?

俺が人間界の王って・・・なに、どういうこと?

 

「ふむ・・・そうだったのかい。では、この際だ。

三世界の王女と結婚してもらうのはどうだろうか?お互いフェアといこうじゃないか」

 

「んー、平等ってことか?俺としちゃあシアと結婚してくれれば文句はねぇんだがな」

 

「私はそれでいいと思います。ですが、最後に決めるのは当事者たちになりますが」

 

リーラ、ユーストマ、フォーベシイが一斉に俺を見詰めてくる。

 

「・・・・・」

 

冥界と天界の王女たちに視線を向ける。すると、どうだろうか・・・・・。

 

「イッセーくんと結婚・・・・・」

 

「私が妻でイッセーくんが夫で・・・・・」

 

「はふぅ・・・・・」

 

満更じゃなさそうな三人が熱い溜息を吐いていた!

 

「ふふっ、彼女たちもどうやら賛成のようですよ?」

 

「うん、そうみたいだね☆いっそのこと、婚約者と公表しちゃったらどうかな?」

 

―――次の瞬間。

 

「「―――それだっ!」」

 

「おおおおおおおおおおおいっ!?」

 

セラフォルーの提案に二世界の王が賛同しちゃったよ!待ってくれ、

もし全世界にそれを公表したら―――!

 

「(平穏な学校生活が送れなくなる!)」

 

火を見るより明らかだった。そして、俺が三人の婚約者相手だと、

嫉妬や不満を抱く輩が続出するはずだ。

 

「神にも魔王にも人王にも凡人にもなれる男・・・・・。

兵藤くん、キミの人生は波乱万丈になりそうだね」

 

「・・・・・勘弁してくれ・・・・・」

 

というか、人間界の王の王女から好意を寄せられているって・・・・・俺はいつどこで出会い、

好かれるようになったんだ?

 

「こうしちゃいられねぇ、さっそくヤハウェさまに伝えて全世界に知らせよう!」

 

「私もルシファーさまたちに頼んで、冥界や人間界にも知らせないといけないね!」

 

バッ!と勢いよく立ちあがり、足元に魔方陣を展開した二人。―――そうはさせるかぁっ!

 

「俺の平穏をぶち壊しにさせない!」

 

魔王と神王に飛び掛かる。だが―――!

 

「おっと、魔王さまの邪魔をさせないよ?」

 

サーゼクス・ルシファーが魔方陣を展開して邪魔をする!

瞬時で幻想殺し(イマジンブレイカー)を装着して魔方陣を無効化、粉砕する。

 

「邪魔だ!」

 

腕を伸ばして二人に触れようとした。が、一歩遅く、二人の姿は光と共に消えてしまった。

 

「お・・・・・終わった・・・・・」

 

ガクリと、四つ這いになって絶望を感じる。さらば・・・・・俺の平穏・・・・・。

 

 


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