ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode7

 

 

その日、ミドガルズオルムから教えてくれたダークエルフとドワーフが住む秘境の地の場所へ

俺とヴァーリ、黒歌は何度か転移魔方陣で移動を繰り返し、

数時間も掛かってようやく秘境の地へ辿り着いた。

 

「つ、疲れたにゃん」

 

「アジ・ダハーカがいなかったらもっと掛かっていたかも」

「かもしれないな」

 

秘境の地は森林だらけ。この森林の向こうにダークエルフとドワーフたちがいる。

 

「ミドガルズオルムが世話になったとか言っていたけど、昔の話だよなやっぱり」

 

「その時の北欧人間たちはそこまで色々と発展していなかったから

気付きもしなかったハズにゃん。いまじゃ気付くだろうけどねぇー」

 

「そうかもしれない。さてと、俺の記憶じゃ、洞窟の中だったんだよな。

ダークエルフとドワーフが住んでいる場所って」

 

「十年以上の前の記憶を忘れずにいるなんて、よく覚えているな一誠」

 

「まあ、印象的だったし片手で数えるぐらい来たことあるんだ。

でも、その洞窟を探すのが大変だ」

 

ザッと一歩足を運んで、森林に入る。

 

「確か・・・・・白い肌のエルフが一緒だったんだよな」

 

「エルフも?」

 

「案内役としてな。それに昔の話だけど、邪な心がある者は森の妖精に追い出されるって

父さんから聞いた事がある。エルフの案内がないとダークエルフとドワーフが住んでいる洞窟まで

絶対に辿り着けないとか」

 

脳裏の中の思い出ボックスから聞かされた話を引っ張りながら口にしていたら、黒歌に笑われた。

 

「にゃはは、森の妖精ってそんなのいるわけないにゃん。

イッセーって可愛いことを真に受けているの?」

 

「うん、実際に森の妖精と会っているし」

 

ほら、と俺の目の前に飛ぶ羽が付いた小さな人間がいた。それも複数。

 

「・・・・・一誠、その森の妖精がいるんだが?」

 

「・・・・・」

 

ヴァーリに指摘され、マジマジと目の前に浮かぶ小さき存在を凝視する。

―――何時の間にか囲まれているし。尻目で二人を見たら黒歌に顔を向けていたヴァーリ。

 

「・・・・・黒歌、お前が邪な心の持ち主だから現れたのかもしれんな」

 

「にゃにゃっ!?戦闘狂のヴァーリだって邪な心の持ち主にゃん!」

 

「私は一誠を愛する白龍皇。心は真っ白に決まっている」

 

「にゃにを!私だって白音を愛しているから白音のように心が真っ白のハズにゃん!」

 

白いドラゴンと黒猫が言い合いを始めた。いやー、どっちもどっちだと思うけど?

 

『いえ、あなたのほうが邪で邪悪なオーラを感じます』

 

―――森の妖精に突っ込まれたァッ!?しかも俺が一番なのね!理由は分かるけどさ!

 

「えっと、喋れるんだっけ?」

 

『はい、あなたの脳に直接語りかけています。テレパシーだと思ってください』

 

「(なるほど、あの時もそうだったけど頭の中に話しかけていたのか)」

 

うん、納得と頷くが、妖精たちから警戒心が物凄く感じる。

 

『ここから立ち去ってください。森を穢すのであれば容赦しません』

 

「いや、ダークエルフの長老とドワーフの長老に会いに来たんだ」

 

『・・・・・長老方に何用ですか?』

 

「オー爺ちゃん、じゃなかった、オーディンさまのミョルニルのレプリカを受け取りにと

悪神ロキとフェンリルが現れてグレイプニルの製造、強化をお願いしに参ったんだ。

俺―――兵藤一誠って名前なんだけどこの中で誰か覚えていないか?

昔、兵藤誠と兵藤一香とその子供が何度もこの地に来ていた。

その時の子供が俺なんだが覚えていないか?」

 

妖精たちに尋ねた。対して妖精たちは顔を見合わせて訊き慣れない言葉を発し続けた。

しばらくすると、目の前の妖精が語りかけてきた。

 

『あの時の三人組の人間のことなら覚えています。ですが、その証拠を見せてください。

あなたがあの時の子供だと言うのならば証明してください』

 

「証拠と証明・・・・・・これでいいか?」

 

亜空間から一枚の写真を取り出す。俺と父さんと母さんが映っている写真だ。

この写真を見て妖精は―――。

 

『・・・・・分かりました。あなたがあの時の人間の子供だと認識しましょう。

お久しぶりです。見ない間に随分と純粋に禍々しくなっちゃっていますね』

 

それ、褒め言葉?返事がなんとも言い難いので、苦笑いを浮かべるしかできなかった。

 

『少し待っててください。あなた方のことをこの森の番人、エルフたちに伝えますので』

 

「よろしく頼む」

 

妖精は光の粒子となって姿を暗ました。全員で伝えに行かないようで、

俺たちを囲んで警戒している。

 

「ねーねー、イッセー。私とヴァーリ、どっちが邪だともうにゃん?」

 

「黒歌のはずだ。私は断定する」

 

「にゃっ!まだ言うかにゃん!」

 

「お前ら、言い合いは止めろって」

 

溜息を吐き二人の間に入る。

 

「つーか、森の妖精は俺の方が邪悪だと言われたぞ」

 

「「・・・・・納得・・・・・」」

 

おい、そこで納得するなよ。事実だけどさ!

 

―――ザッ!

 

不意に、俺たちの前に一団が現れた。人間より異様に長い耳の持ち主たち。―――エルフ。

その中で一番目立っているエルフがいる。手には棒の両方に槍状の突起があり、真紅の帽子と

マントと緑の水着らしきものを身に付け、四つ葉のクローバーを模したベルトで縛っている

白いミニスカート。上腕まで包む緑の手袋のようなものと膝まで包むブーツを見に付けた

青い瞳にクリーム色の少女のエルフだった。

 

「森の警備をしていた妖精から聞いた。お前か?兵藤誠と兵藤一香の子供というのは」

 

「ああ、そうだ」

 

一人のエルフに尋ねられ、肯定と首を縦に振った。俺の話を聞き、

エルフは目を細めて語りかけてきた。

 

「すまないが、改めて証拠を見せてほしい。何せ彼らがこの地にやってきたのは十年前だからな。

あの二人の子供だと偽っている疑惑がある」

 

どんだけ警戒されているんだろう。森の妖精に見せた写真を見せた。俺から写真を受け取り、

写真の子供と居間の俺と何度か見比べたところで―――写真を返された。

 

「分かりました。貴殿はあの二人の子供だと改めて認知させてもらいましょう」

 

「急に敬語になったな」

 

「貴殿のご両親はエルフ王と交流を持ち、友人同士なのですからね。粗相な扱いはできません」

 

「普通にプライベートの時のように接してもいいんだけどな。

悪意はともかく攻撃してこなければどんな態度でも構わないぞ」

 

そう言うとエルフは苦笑を浮かべた。「そうもいきません」とやんわり拒否されて。

 

「では、ダークエルフの長老とドワーフ王がいる場所までご案内します。

後の者たちもご一緒で?」

 

「ああ、一緒に頼む」

 

頼むと、エルフは「かしこまりました」と言って二人の動向を許してくれる。

その後、俺たちはエルフに囲まれながら森林の中を歩き続ける。

 

「エルフ王って元気なのか?」

 

「はい、元気でございますよ。しかし、あの時の子供が何時の間にか立派に

成長なされていたのですね」

 

「うん・・・・・色々と会ったんだよ。三途の川を何度も見るぐらいに」

 

「そ、そうなのですか・・・・・とても過激な生活を送られていたのですね」

 

過激だなんて生温い、地獄だったぞ。あれは・・・・・。

 

「それにしても、森の妖精から聞きましたが

悪神ロキとフェンリルが現れたとは本当なのですか?」

 

「オーディンさまの言動にどうやら許せないようで、日本の神々との会談を邪魔し、

殺害を目論んでいるんだ。俺たちはそれを阻止するために

ダークエルフの長老とドワーフ王に会いに行かないといけない」

 

「忌々しき事態ですね・・・・・」

 

「まったくだ」

 

それからしばらく、川を渡ったり、岩を登ったりと歩き続けていると十年前に来た時と

変わらない洞窟が俺の視界に飛び込んできた。

 

「この先を進めばダークエルフの一族、ドワーフ一族が住む場所まで行き着くはずです。

我々はこの先から行けれませんが大丈夫ですか?」

 

「ん、大丈夫だ。ありがとうな」

 

「いえ、では、道中お気をつけて。―――散!」

 

エルフの指示に他のエルフたちが一瞬で俺ったいの前から姿を暗ました。

でも、一人だけ俺を見て遅れたエルフがいた。そのエルフはジッと俺を見詰めた後、姿を暗ます。

 

「にゃあ、あのエルフはイッセーのことを見ていたようだけど、イッセーの知り合いかにゃ?」

 

「んー、俺が会っているのって大半、父さんと母さんと仲が良い神々とか偉い奴だったからな」

 

「知らないと?」

 

首を捻っているところヴァーリにそう言われ、肯定した。

 

「まあ、取り敢えず行こう」

 

踵を返して洞窟の中へと進む。二人も俺に続いてくる。

 

「久し振りだからワクワクする」

 

「キミの両親は世界を回っていたんだったね」

 

「ああ、そうなんだよ。きっと父さんと母さんはこんな感じで冒険していたんだと思う」

 

洞窟の中を歩き続けていると目の前に光が見えた。

その光に向かって足を運んでみれば―――。

 

「・・・・・この光景を見るのも十年振りだな」

 

眼下に広がる広大な大地と森林。北欧のどこかの場所だと何となくわかる。

 

「一誠。ダークエルフとドワーフがいる場所は覚えているか?」

 

「ああ、なんとなく。でもその前に手ぶらもなんだし、プレゼントでも用意しないとな」

 

「そんな物必要かにゃ?」

 

「父さんと母さんもしていたからさ。俺もしないといけないと思う」

 

人工的に作られた下り道がある。でも、俺は二人を抱えて飛び下りた。

 

「虚空瞬動」

 

空を蹴りゆっくりと地面に着地した。

 

「空を蹴ったのか?」

 

ヴァーリが尋ねてきた。俺の動作を見極めた上で。

 

「魔法無しでも空を飛べれたらなーって思って試してみたら案外できた。

コツを掴めたからようやくできたものだけどな」

 

「もう、イッセーは人間離れしちゃっているにゃん」

 

「知ってたか?歴代の人王って全員人間離れなことをしていたらしいぞ」

 

「・・・・・とんでもない一族だわね」

 

「そのとんでもない一族の人間に子作りしようと言ったのは黒歌だぞ?」

 

先に歩きながら言う。えーと・・・・・たしかアレは―――。

木の上を登ってプレゼントを探していると、

俺の視界の端に白いものが見えた。―――みっけ!

 

―――○●○―――

 

「大量大量♪」

 

背中に筒状の網の籠を二つ背負って森林の中を歩く。

籠の中には自然に育った植物と野生動物ばかり。

 

「凄い量ね。見たことのない植物ばかりよ」

 

「殆どダークエルフとドワーフが食す野生の植物だ。特にダークエルフはこれが大好物らしいよ」

 

一つのキノコを黒歌に見せる。傘は網状で全体が真っ白いキノコだ。

 

「なにそれ?」

 

「正式名称のないキノコ。だから名前が分からないキノコだ」

 

「美味しいの?」

 

「―――かなり」

 

松茸よりも高いんじゃないかな?養殖しようにもどんな環境の中で育つか分からないし。

 

「・・・どんな味だった?」

 

「えっと・・・・・俺が食べたのはこんがりと焼いたキノコだった。

そん時の味はジューシーだったぞ」

 

「・・・・・」

 

興味が湧いたのか、ゴクリと黒歌が食べたさそうな顔をした。

そんな黒歌を察して苦笑いを浮かべる。

 

「ダークエルフから調理法を教わっておく。作ってやるから一緒に食べような」

 

「にゃん!」

 

あっ、嬉しそうに尻尾が振っている。可愛いなぁ・・・・・。

 

「一誠」

 

「ん?」

 

「ダークエルフの住む場所はどの辺りなんだ?」

 

「うーんと・・・・・巨大な木の近くだったような。ああ、あれだ」

 

前方に聳え立つ巨大な木に指す。

 

「あそこか?」

 

「記憶が正しければな」

 

ガサッ

 

「「「・・・・・?」」」

 

不意に、茂みが勝手に揺らいだ。俺たちは足を停めてジッと見ていたら―――。

 

「キュイ?」

 

小動物が出てきた。目が丸くて体が手の平サイズ、二尾の尾が特徴の小動物。

 

「あっ、可愛いにゃん」

 

「そうだな」

 

黒歌とヴァーリが笑みを浮かべる。が、そいつだけじゃないんだよな・・・・・・。

辺りを見渡せば、目の前の小動物と同じ動物たちが至るところから俺たちを見ていた。

 

「・・・・・このパターンってもしかして危険にゃん?」

 

「いや、逆だ」

 

目の前の小動物に跪いて手を差し伸べる。そしたら小動物は俺の手に鼻先を付けて臭いを嗅ぐ

仕草をしたと思えば、軽やかに腕を伝って俺の頭に上った。

 

「キュイ」

 

と、鳴いた次の瞬間。数多の小動物が一斉に俺に接近して

全身の至るところにしがみついてきたのだった。

 

「うわ・・・・・イッセーが動物まみれに」

 

「何故だろう、とても羨ましいぞ」

 

いや、羨ましがるなって。

 

「ところで、その小動物は何て名前だか分かる?」

 

「コロだ。何故か俺に懐く」

 

スタスタと歩を進める。

 

「って、そのまま行くにゃん?」

 

「ダークエルフのところまでに行けば自然と離れてくれるかもしれない」

 

「まあ、ここで立ち往生してもしょうがないのは事実か」

 

そう言うことだ。心の中で肯定し、巨大な木に目指す。

 

―――数十分後。

 

「よし、辿り着いたぞ」

 

「本当にあの小動物は自然と離れたにゃん」

 

「そうだな」

 

懐かしきダークエルフの住み場所。家は全て木造。木の上にも家が建てられている物もあれば、

下にも当然家が建てられている。

 

「ここがそうなのか?」

 

「ああ、ちょっと変わっているけど間違いない」

 

「さっさとオーディンから預かっているミョルニルのレプリカを頂いて、

グレイプニルも作って帰るにゃん」

 

黒歌、そのもの言いは盗賊と変わらないぞ。

集落の中を歩くと二人組の男性ダークエルフと出くわした。丁度良い、尋ねよう。

 

「すいません、ちょっと尋ねたいことが」

 

「ん?・・・・・人間だと?」

 

あっ、警戒されている。―――ここであのキノコの出番!白いキノコを差し出すと、

ダークエルフは目を見開いた。

 

「「こ、これは・・・・・っ!」」

 

「決して怪しい者じゃないんだけど、長老の住んでいる場所を教えてくれないか?

お詫びにこれをあげるから」

 

「うっ・・・それは・・・・・」

 

キノコを動かすと二人の目はキノコに釘付けになって目から離そうとしない。

俺は一撃必殺の魔法の言葉を放った。

 

「もう三個追加。一人二つずつこのキノコを提供する」

 

片手に二つずつ白いキノコを見せびらかした次の瞬間。

 

「「―――こちらでございます!」」

 

シュバッ!と二人のダークエルフは笑みを浮かべ、とある方へ腕を差し伸べて

俺を案内してくれる。

 

「・・・・・なるほど、効果的だな」

 

「食べ物に釣られるほど、ダークエルフって本当にあのキノコが好きなのね」

 

後でヴァーリと黒歌が呟いていた。俺たちは好物を貰って嬉しそうにスキップで表現する

二人のダークエルフに続いて歩くと、別荘みたいに大きな木造の家の前に案内される。

ああ、ここだ。懐かしいな。

 

「ありがとう。はい」

 

「「ありがとうございます!」」

 

ひゃっほーいっ!と四つのキノコを受け取って歓喜の声を上げる二人のダークエルフ。

そのままどこかへと行ってしまった。

 

「・・・・・いいのかにゃん。見ず知らずのよそ者に食べ物で重要な人物のところに

案内するなんて、危機感がないんじゃない?」

 

「この場所は一握りの者しか知らないって父さんから聞いた。

一応、警戒はするけど心を許したらフレンドリーになるって。

特にあのキノコをプレゼントしたら次の日、友達になるとか」

 

「あの人たちはコミュニケーションを熟知しているね」

 

うん、俺もそう思うよヴァーリ。長老の住む家の扉にノックをする。

しばらくして、木造の扉が勝手に開いた。

 

「誰だ?」

 

現れたのは厳格な顔つきのダークエルフ。短い銀髪に口と顎に銀の髭が生えている。

身長は俺の頭一つ分高い。そのダークエルフは俺たちを見渡して厳しい目で口を開いた。

 

「・・・・・誰だお前たち。この場所を知っている者は私が知る限り、二人・・・いや、

三人しかおらん。どうやってこの地にやってきた・・・・・」

 

うん、警戒するよね。でも、その警戒を解く方法を俺はある。

 

「初めまして・・・・・かな?俺は兵藤一誠。兵藤誠と兵藤一香の息子です」

 

「―――兵藤だと?・・・・・もしや、あの二人と一緒にいた子供がお前なのか?」

 

「はい、そうです。その証拠に」

 

子供の時の俺と父さんと母さんの写真を見せた。

ダークエルフは写真を受け取って重々しく頷いた。

 

「中に入りなさい」

 

それだけ言ってダークエルフは家の中に俺たちを招き入れてくれた。

 

「―――はははっ!久し振りじゃないか!元気でなによりである!」

 

居間に連れられた途端にダークエルフが笑みを浮かべ、俺を抱きしめてくる。

 

「あなたは長老と認識しても?」

 

「ああ、俺がダークエルフの長老だ。名前はグローリィ。

ちゃんとした紹介をしていなかったな」

 

ダークエルフの長老は席に座るよう促す。席に座れば長老も座って尋ねてきた。

 

「それでどうしたのだ?ここまで来て俺に尋ねてきたということは、何か話でもあるのだろう?」

 

その言葉に俺たちはここに来た理由を告げた。

俺の話しを静かに訊いてくれていたダークエルフの長老、グローリィは無言で立ち上がって、

どこかへ行って姿を消した。でも、すぐに戻ってきた。

 

「これがオーディン殿から預かっているミョルニルのレプリカだ」

 

グローリィから受け渡された日曜大工に使うハンマー。

だけど豪華な装飾や紋様が刻まれているからただのハンマーではないと理解した。

 

「さて、残りはグレイプニルだな?キミたちがグレイプニルを持っているならば俺がすぐに

強化魔法をするのだが・・・・・手元には無いのだろう?」

 

その尋ねに頷いた。今日ここに来たばかりだからないものはない。

グローリィは顎に手をやって口を開く。

 

「一から作らねばなるまい。オーディン殿と日本の神々の会談までドワーフが何とか

間に合わせるように作ってもらわないのいけなくなるな」

 

「やっぱりそうか。そう言えば、ドワーフたちは?

確か、巨大な木の中で住んでいる記憶があるんだけど」

 

「今でも変わらずに木の中で生活している。なんなら、会いにに行くか?ドワーフ王に」

 

口の端を吊り上げるグローリィ。ヴァーリと黒歌に「いいか?」と視線で尋ねると

二人は頷いてくれた。暗に「構わない」と了承してくれたんだと思う。

 

「うん、行く。久々に会いたいし、こちらから願って来ているんだ。

頼むなら直接会って頼みたい」

 

「ふふふっ、良い子に育っているな。あの二人の教育が良かったのだろう」

 

・・・・・父さんと母さんは死んでいるんだけどね。

そっか、この人は父さんと母さんのことを知らないんだ。言うべき・・・・・なのか、迷うな。

 

「あっ、そうだった。グローリィ」

 

「ん?」

 

「はい、プレゼント」

 

「―――――」

 

 

―――○●○―――

 

 

俺たちは聳え立つ巨大な木の前にいる。グローリィの先導のもとで辿りついていた。そして、

ここまで金属同士がぶつかっているような音が聞こえてくる。どうやら加工の最中のようだ。

俺たちはその巨大な木に近づいて光が漏れている入口らしき空間を潜ると―――。

 

「・・・・・凄い」

 

俺とヴァーリ、黒歌より少し背丈が小さくヒゲを伸ばした存在たちが手にハンマーを持って

超高温で焼かれた鉄の塊を叩いて形にしていたり、

材料に必要なのだろう様々な素材をリアカーのような物で運んでいたりしていた。

武具や工芸品を作っているようで手を休めずに次々と加工をしていく光景が

俺たちの視界に飛び込んでくる。

 

「こっちだ」

 

と、グローリィは作業しているドワーフたちの邪魔にならないように

螺旋状に作られた木の階段を登り始めた。俺たちも登っていくとまた別の空間が存在していた。

ドワーフたちの食堂のようだ。賑やかで騒がしく、酒を美味そうに飲んでいた。

中には力自慢をするためなのか腕相撲をしているドワーフたちもいた。

さらに木の階段を登っていくとまた別の空間が―――。数えた限りじゃ十層以上はあった。

ドワーフの王がいる場所につくまで俺は何度もドワーフたちの生活の一端を眺めた。

 

「ふぅ、ようやく着いた」

 

「結構登ったな」

 

巨大な木の扉の前にグローリィと俺たちいた。ここが最上階らしく、

さらに上を行く階段が見当たらなかった。徐にグローリィが木の扉を叩いた。

 

『誰だ?』

 

扉の向こうから声が聞こえた。

 

「私だ、グローリィだ』

 

『・・・・・入るが良い』

 

中にいる者が了承した。グローリィが扉に手を触れて押し出しながら部屋の中に入ると

俺たちも続いて中に入る。

 

「・・・・・」

 

部屋の中は木の壁で囲まれた空間。この部屋を明るく照らしているのは立て並べられている

蝋燭のようだ。家具もあるからどうやらここで暮らしているようだ。

 

「グローリィ、何か用か?」

 

椅子に座っている一人のドワーフ。頭に小さな冠を乗せ、長いヒゲを伸ばし、

装飾の凝った服を身に包んでいる。こいつがドワーフ王・・・・・?

 

「むっ、そこにいるのは人間か?」

 

「ああ、実に十年振りだろう?しかも彼は兵藤誠と兵藤一香の息子だ」

 

俺に視線を向けてきながら笑みを浮かべたグローリィ。すると、ドワーフが目を丸くし、

 

「おおっ!あの時の子供か!?」

 

嬉しそうな声音で発し、席から立ち上がって俺に近づいてきた。

 

「ふははっ!おう、大きくなったもんだなぁ!よく見ればあいつ等の面影がある!

懐かしいじゃないか!」

 

「初めましてと久し振り、と言うべきかな。改めて自己紹介するよ。俺は兵藤一誠だ。よろしく」

 

「俺はドワーフたちを統べる王、ゲルダンだ。久し振りだなー。

お前のことを名前で呼んで接してもいいか?」

 

「勿論だよ。グローリィもそう呼んでくれ」

 

「そうか?なら、そう呼ばせてもらうよイッセーくん」

 

ダークエルフの長老、グローリィ。ドワーフ王のゲルダン。役者は揃ったな。

 

「ゲルダン、今日はお願いがあってきたんだ」

 

「なんだ?欲しいものがあるなら特別に作ってやるぞ」

 

「じゃあ、グレイプニル。フェンリルを捕まえる鎖を作ってほしいんだ」

 

頼んでみると、ゲルダンは首を捻った。

 

「グレイプニルだと?確かに作れるが、なんでまた最悪な魔物を捕まえようとするんだ?」

 

「悪神ロキがオーディンさまを殺そうと強化したフェンリルを引き連れて俺の国にいるんだ。

オーディンさまが日本の神々との会談をするのが許せないようで、命が狙われている。

俺たちは何とか会談を成功させるためにもまずはフェンリルを止めないといけない。

そのためにはグレイプニルを作ってもらってグローリィに強化してもらう必要があるんだ」

 

「・・・・・なるほど、そんな事情があったのか。おう、分かった。

今すぐ他の奴らに作ってもらう。―――ただしだ」

 

なんだ?条件でもあるのか?

 

「イッセー、お前もドワーフたちと混じって一緒にグレイプニルを作ってもらうぞ?

昔、目を輝かせて一緒に作りたがっていたしな」

 

「・・・・いいのか?」

 

「勿論だ。ああ、その際に俺の娘と従妹付き添ってになるがいいな?」

 

その問いに俺は頷いた。それからヴァーリに頼んで日本にいるアザゼルに

しばらく帰れそうにないと伝えてもらった後、

俺はドワーフたちと一緒にグレイプニルを作る準備をした。

 

 

 


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