ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode6

 

 

悪神ロキとフェンリルが去って翌日。リビングキッチンで集合している俺たちは

ロキ対策を企てていた。

 

「ロキとフェンリルが詳しい奴がいる?」

 

アザゼルが気になる発言をした。尋ねると首を縦に振ったアザゼル。

 

「そう、あいつらに詳しいのがいてな。そいつにご教授してもらうのさ」

 

「誰なんだ?」

 

訊くと、

 

「五大龍王の一角、『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』ミドガルズオルムだ」

 

ん?ミドガルズオルム・・・・・?しかも、五大龍王とくるか。

 

「なるほど、確かに順当ですが、ミドガルズオルムは北欧の深海で眠りについております。

どうやって訊くのですか?」

 

オー爺ちゃんの付き人の一人、セルベリア・ブレスが尋ねた。オー爺ちゃんとロスヴァイセは

別室で本国と連絡を取り合っている。

悪神ロキがこの国に来たことは北欧でも大問題になっているようだ。

でもって、アザゼルはセルベリア・ブレスの問いに答える。

 

「二天龍、龍王―――ファーブニルの力、ティアマットの力、匙元士郎の内にいるヴリトラの力、

そんで、邪龍―――クロウ・クルワッハの力、アジ・ダハーカの力、アポプスの力、

さらにゾラードとメリア、真龍―――グレートレッドに龍神―――オーフィスの力、

神城龍牙の内にいるファフニールの力で『龍門(ドラゴン・ゲート)』を開く。

そこからミドガルズオルムの意識だけを呼び寄せるんだよ。セルベリア・ブレスの言う通り、

本体は北欧の深海で眠りについているからな」

 

龍門(ドラゴン・ゲート)・・・。へえ、そんな方法があるのか。

伝説のドラゴンでそう言うのができるんだな。

 

「もしかして、お、俺もですか・・・・・?

正直、怪物だらけで気が引けるんですけど・・・・・」

 

匙元士郎が恐る恐る意見を言っていた。ヴリトラ、そう言えばいたな。匙元士郎の中に。

 

「まあ、要素の一つとして来てもらうだけだ。大方のことは俺たちや二天龍、邪龍、真龍や龍神に

任せろ。とりあえず、俺はシェムハザと対策について話してくる。お前らはそれまで待機。

バラキエル、付いてきてくれ」

 

「了解した」

 

アザゼルとバラキエルはそう言ってリビングキッチンから出て行く。

残された俺たちは、各々と立ち上がって自由に寛ぎ始めた。

 

「なーなー、兵藤一誠」

 

「なんだ?」

 

美猴が訊いてくる。悪戯っぽい笑顔で。

 

「この下にある屋内プールに入って良いかい?」

 

「ん?別に良いぞ」

 

あっさりと了承した。美猴は嬉々として地下のプールへとリビングキッチンからいなくなった。

 

「にゃん♪」

 

回転する椅子に座る俺の膝に銀色の猫が乗っかってきた。銀華である。

猫に成った彼女は膝の上で丸くなって、寛ぎ始める。

 

「我の特等席」

 

肩に重さが増した。俺の頬を温かく弾力がある柔らかい太股挟む少女ことオーフィス。

何かと高いところ、俺の肩に乗っかることが好きなようで、

気にしないでいると一日中ずっと居座り続けるんだよな。肩がかなり凝るけど。

 

「一誠、背中を借りるぞ」

 

「うん?」

 

今度は背中から温かさと重みが伝わった。尻目で見ればヴァーリが俺の背中と合わせて座り、

本を読んでいた。

 

「一誠くん、この本を読む?」

 

「おう、読む」

 

「じゃあ、隣に座らせてもらうね」

 

俺に本を渡してきて隣に椅子を置き、腰を下ろす清楚。肩を寄せ合って彼女も読書し始める。

 

「いっくんの隣は私の聖域」

 

どんな聖域なんだよ?と思わず突っ込みたいことをする悠璃は清楚のように椅子を隣に置いては

座って、俺と肩を寄せ合う。

 

「くっ・・・・・お前なんて爆発しやがれ・・・・・!」

 

「意味不明なことを言うな、血の涙を流すな成神」

 

呆れた態度で言う。

 

「ねねね、兵藤一誠。ひとつ良いかにゃ?」

 

とそこへ、塔城小猫の姉、銀華の妹、黒歌が話しかけてきた。

 

「なんだ?」

 

「―――私と子供作ってみない?」

 

「・・・・・はい?」

 

突然の言葉に俺は返答に困った。いま、こいつはなんて言った・・・・・?

困惑する俺に構わず黒歌は言い続ける。

 

「私ね、強い子供が欲しいの。特別強い子供。ヴァーリは天龍で白龍皇なんだけど女の子だから

性行為おろか、私が妊娠することもできないのよねー。それに、人間ベースのドラゴンって、

貴重にゃん。しかも人王となる人間、複数のドラゴンを宿す人間のあなたの遺伝子的に十分だし。

子供は残したいんだよねー。だから、遺伝子提供者が欲しいにゃん。

おまけに真龍と龍神にも認められているあなたなら尚更、にゃん♪」

 

さらに黒歌は言い続ける。

 

「にゃはは、いまならお買い得にゃん。妊娠するまでの関係でいいからどうかにゃ?」

 

「・・・・・赤龍帝がいるじゃん。伝説のドラゴンだぞ。性欲の塊だからお前の願いを―――」

 

「叶えてくれるだろ」。最後の足掻きとばかりそう言うと、黒歌は顔を近づけてきた。

 

「何でか知らないけど、何時の間にか私ははぐれ悪魔じゃなくなっているしね。

さて、誰がそんなことをしたのかにゃん?」

 

「・・・・・」

 

彼女の言葉に思わず視線を逸らした。―――はい、そんなことしたのは俺です。

 

「うふふ♪だからどこかの優しい誰かさんの子供なら何人でも何十人も産みたいと思っているのよ?

それとも―――私に魅力がないのかにゃん?」

 

「・・・・・っ」

 

不安そうな表情で潤った瞳を向けてくる。おおう・・・・・ざ、罪悪感が・・・・・!

なんでか知らないけど物凄く罪悪感を感じる・・・・・!同情でも不憫からくる感情じゃない。

純粋に罪悪感を感じるっ!

 

「・・・・・そういう風に訊くなよ。―――魅力を感じないなんて言えないだろう。卑怯じゃないか」

 

「―――にゃはは♪」

 

ポイ。

 

あっ、銀華が捨てられた。彼女が座っていた俺の膝は黒歌に跨れ、体ごと豊満な胸を押し付けて、

 

「うん、初めて会った時も思っていたけど、あなたはとても恰好良い男にゃん。

私も見る目があるみたい」

 

ニンマリと笑みを浮かべる黒歌は徐に舌を出しては、俺の首筋を舐める。

 

「ふふっ、あなたの味、覚えたわ♪」

 

・・・・・そうですか。だったら俺から離れた方がいいぞ。

お前の背後に怒りで体を震わせる銀猫がいるからさ。

 

 

―――○●○―――

 

 

アザゼルが帰って来た後、俺とヴァーリ、成神一成と匙元士郎、龍牙、ガイアとオーフィスは

転移魔方陣で兵藤家から飛んだ。例の龍王を呼び寄せるためだ。

特別に用意したところで意識を呼び寄せないとダメらしい。着いた場所は―――白い空間だった。

辺りを見渡しても特に目立ったところは―――なかった。

 

「本当なら、タンニーンもいて欲しかったんだがな・・・・・」

 

「ああ、堕天使の女の中に魂を封じられているのだったな?訊いているぞ」

 

「そうだ。それで、あいつらはどうしている?」

 

そう言いながらアザゼルは術式を展開して、専用の魔方陣を地面に描いていく。光が走っていき、

独自の紋様を形作っていた。

 

「『英雄派』も『真魔王派』も扱いには困っているそうだ。

いや、あの者たちが来てから『禍の団(カオス・ブリゲード)』は滅茶苦茶になりかけている」

 

「というと?」と、アザゼルが問うた。

 

「『英雄派』に入りこんでは好き勝手に研究を邪魔しては協力したり、構成員から神器(セイクリッド・ギア)

奪う始末だ。『真魔王派』に至っては、シャルバとクルゼレイ共々力でねじ伏せては自分たちの

下僕として使役している。事実上、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の『真魔王派』は

堕天使の女帝たちがトップとして君臨しているようなものだ」

 

「・・・・・マジかよ。あのバカ、余計なことをしやがって・・・・・」

 

俺としてはどうでもいい事だがな。俺は復讐を果たせればそれでいいんだ。

 

「さて、魔方陣の基礎はできた。後は各員、指定された場所に立ってくれ。

兵藤一誠、お前は内の中にいるドラゴンを指定した場所に出しといてくれ」

 

そう促され、内にいるドラゴンたちを展開した複数の魔方陣で現世に出現させた。

 

『堕天使が、俺を利用するとはいい度胸だな。後で喰い殺す』

 

「・・・・・イッセー、こいつらの手綱を頼むぞ」

 

自分で言って恐れ戦くなよ・・・・・・。溜息を吐きつつも、「その場にいろ」と指示して

魔方陣の外から待機した。各自指定ポイントに立ったことをアザゼルが確認すると、

手元の小型の魔方陣を操作して、最終調整をしているようだった。

 

カッ。

 

淡い光が下の魔方陣を走りだし、皆のところが様々な色へと光る。

魔方陣が発動したんだろう、と思ったがすぐには何の反応もしないようで、数分間が経過した。

・・・・・長い、ミドガルズオルムの意識が呼び寄せているのか?怪訝に思う俺だが、魔方陣から

何かが投影され始めた。立体映像が徐々に俺たちの頭上に作られていくが―――。

俺はどんどん広がっていく映像の規模に目を丸くした。

そして―――。俺たちの眼前に映しだされたのはこの空間を埋め尽くす勢いの巨大な蛇のような

生物だった。―――ああ、こいつか!

 

「思い出した。昔、デッカイ蛇と昼寝したことがあるな。

なるほど、こいつがミドガルズオルムだったのか」

 

『・・・・・・・・・・ぐごごごごごごごぉぉおおおおおおおおおおおおおん・・・・・・・・』

 

って、あの時のように寝ているのか。この蛇は。

 

「案の定、寝ているな。おい、起きろ、ミドガルズオルム」

 

ティアマットことティアが話しかけると、ミドガルズオルムはゆっくりと目を開けていく。

 

『・・・・・・懐かしい龍の波動だなぁ。ふあああああああああああああああああっ・・・・・』

 

大きな欠伸をひとつ。おおう、この場にいるドラゴンたちを丸のみできる大きさだな。

 

『おぉ、ティアマットじゃないかぁ。久し振りだねぇ』

 

ゆったりとした口調をするミドガルズオルムがガイアたちを見渡す。

 

『・・・・ドライグとアルビオンまでいる。・・・・・ファーブニルと・・・ヴリトラも・・・

邪龍がいるかと思えば、グレートレッドとオーフィスもいるじゃないかぁ・・・・・・。

それと知らないドラゴンが三匹、いや二匹か。

・・・・・名前が忘れちゃったけどねぇ・・・・・・でも、なんだろう、世界の終末かい?』

 

「いや、違う。今日はお前に訊きたいことがあってこの場に意識のみを呼び寄せたらしい」

 

ティアがそう言うが・・・・・、

 

『・・・・・・ぐ、ごごごごごごごごん・・・・・・・』

 

ミドガルズオルムは再びいびきを掻き始めた。

 

「おーい、ミドガルズオルム。寝ないで教えてほしいことがあるんだけど」

 

俺がそう言うと、ミドガルズオルムは大きな目を再び開けこっちを見た。

 

『・・・・・・んー?あぁ、キミはあの時の人間の子供だねぇ?

久し振りぃー元気にしていたぁ?』

 

「まあ、元気だよ」と苦笑を浮かべながら答えた。

アザゼルがロキとフェンリルを知っている者を呼び寄せると言った。

だとしたらこいつがその者なんだろう。

 

「悪神ロキとフェンリルについて訊きたいんだけど」

 

『ダディとワンワンのことかぁ。いいよぉ。

どうせ、ダディもワンワンも僕にとってはどうでもいい存在だし・・・・・。

あ、でも、その前にティアマット。一つだけ聞かせてよぉ』

 

ダディとワンワンって・・・・・ロキとフェンリルのことか?

何故にロキのことをダディと呼ぶのか理解できないが・・・・・話を進ませた方がいいな。

 

「なんだ?」

 

『ドライグとアルビオンの戦いはやらないのぉ?』

 

成神一成とヴァーリを交互に大きな目で見ていた。

 

「ああ、やらないそうだ。今回の現赤龍帝と白龍皇はそれぞれ違う目標があるようだしな」

 

ティアの言葉にミドガルズオルムは笑ったように見えた。

 

『へぇ、おもしろいねぇ。二人が戦いもせずに並んでいるから不思議だったよぉ』

 

そう言った後、改めて質問に答え出した。

 

『ワンワンはダディよりも厄介だよぉ。牙で噛まれたら死んじゃうことが多いからねぇ。

でも、弱点があるんだぁ。ドワーフが作った魔法の鎖、グレイプニルで捕えることができるよぉ。

それで足は止められるねぇ』

 

ミドガルズオルムの言葉にアザゼルが首を振った。

 

「それはすでに認識済みだ。だが、北からの報告ではグレイプニルが効かなかったようでな。

それでお前からさらなる秘策を得ようと思っていたのだ」

 

『・・・・・うーん、ダディったら、ワンワンを強化したのかなぁ。

それなら、北欧のとある地方に住むダークエルフに相談して皆よぉ。

確かあそこン長老がドワーフの花王貧に宿った魔法を強化する術を知っているはずぅ。

長老が住む場所はドライグかアルビオンの神器(セイクリッド・ギア)に転送するからねぇ』

 

アザゼルがヴァーリの方を指す。

 

「情報の方は白龍皇に送ってくれ。赤龍帝の方は頭が残念なんで辛い」

 

ダークエルフとドワーフ・・・・・また懐かしい存在の名前が出てきたな。

その時、ヴァーリが情報を捉え、口にする。

 

「―――把握した。アザゼル、立体映像で世界地図を展開してくれ」

 

アザゼルが携帯を開いて操作すると、画面から世界地図が宙へ立体的に映写される。

ヴァーリは一部分を指さしていた。アザゼルは素早くその情報を仲間に送りだしていた。

 

「―――で、ロキの対策の方はどうだ?」

 

俺はロキについて訊く。

 

『そうだねぇ。ダディにはミョルニルでも撃ち込めばなんとかなるんじゃないかなぁ』

 

基本的、普通に攻撃しろというわけか。お安い御用だよ。アザゼルは顎に手をやった。

 

「・・・・・オーディンのクソジジイが雷神トールに頼めばミョルニルを

貸してくれるだろうか・・・・・いや、待てよ?」

 

不意にアザゼルがこっちを見た。なんだよ?

 

「お前・・・・・もしかすると雷神トールと出会っているか?」

 

「・・・・・どんな容姿の人だ?」

 

「北欧の異世界に行っているなら分かるはずだ。

確か・・・・・訊いた話じゃ、燃えるような目と赤髪の大男だったはずだ。

トールは戦車に二頭のヤギを引っ張ってもらって貰いながら戦う北欧の最強の戦神だ」

 

アザゼルの説明に俺の脳裏はとある人物が思い浮かんだ。

うん、印象が残っている。あれは凄かったな。

 

「うん、会っている。巨人族と戦っている時に二頭のヤギを引っ張って移動している

戦車に乗せてもらったことがあるぞ」

 

「・・・・・お前、よく生きていられたな。まあ、それよりも話が早くなるか。

お前の名前を出せばもしかしたらミョルニルを貸してくれるかもしれん」

 

何故か納得された。でも、俺の名前を出して貸してくれるのか?

 

『仮に貸してもらえなかったら、さっき言ったドワーフとダークエルフに頼んでごらんよぉ。

ミョルニルのレプリカをオーディンから預かっているはずぅ』

 

「物知りで助かるよ、ミドガルズオルム」

 

アザゼルは苦笑しながら礼を口にした。

 

『いやいや。たまにはこういうおしゃべりも楽しいよ。さーて、そろそろいいかな。

僕はまた寝るよ。ふああああああっ』

 

大きな欠伸をするミドガルズオルム。少しずつ映像が途切れてきた。

 

「ミドガルズオルム。またな」

 

ティアが礼を言うと巨大な口が笑んだように見えた。

 

『いいさ。また何かあったら起こして。じゃあね、あの時の子供くん』

 

それだけ言い残すと、映像がぶれていき、ついには消えていった。

ミドガルズオルム。久々に再会したけど変わっていなかった。

 

「なあ、アザゼル。ドワーフとダークエルフがいる場所に行ってもいい?」

 

「急にどうしたんだ?」

 

「オー爺ちゃんが預けているレプリカのミョルニルを取りに行くんだよ。

ついでにグレイプニルも直接受け取りに行きたい」

 

そう願うとアザゼルは、

 

「まあ、問題ないだろう。

どうせ誠と一香はダークエルフとドワーフに会っているかもしれないからな」

 

と、もう驚きはしないぞとそんな風に告げたのだった。そんなアザゼルに同意と首を縦に振る。

 

「うん、俺も会っているし、大丈夫だと思うぞ。

かなり昔の事だから向こうが俺を覚えているかどうか分からないけど」

 

「覚えていると思うさ。んじゃ、ミョルニルと強化したグレイプニルのことを頼むぜ。

―――ヴァーリと黒歌。お前らも一緒について行ってやれ。次期人王の護衛も兼ねて一緒に行け」

 

―――結果、俺はヴァーリと黒歌、二人と同行することになった。

 

 

 

 


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