ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

62 / 157
Episode3

 

 

「にゃんにゃん♪」

 

「・・・・・にゃん」

 

私は塔城小猫。元は猫魈という猫又の妖怪の上位種だった妖怪です。

悪魔に転生した理由は、とても複雑な状況下でなりました。私の姉が原因で転生したのですが、

姉も私の為にしてくれたことだと今まで知らなかったもう一人の姉から伝えられた姉の事情を

聞いてとても驚きました。

 

「小猫お姉ちゃん、猫みたいに可愛いにゃん♪」

 

「・・・・・」

 

今現在、私は子供に戻ったイッセー先輩、兵藤一誠の面倒を見ています。

イッセー先輩と名前と同じ呼び名の赤龍帝がいますが、

変態な赤龍帝より変態じゃないイッセー先輩はとても現在進行可愛いと思います。

大きなイッセー先輩は色々と凄いですが、子供のイッセー先輩はとても可愛いです。

私も弟がいたらこんな子だったら良いとつくづく思う時があります。

 

「あら、面白そうなことをしているじゃない」

 

「銀華お姉ちゃん!」

 

もう一人の姉、銀華姉さんが現れました。彼女の容姿は黒歌姉さん、私のもう一人の姉と容姿が

全く同じです。髪と瞳の色が違うだけなので、そこに黒歌姉さんがいると錯覚する事も

しばしばあります。

 

「ところで、一誠。その猫耳はどうしたの?」

 

「リーラさんに頼んだの」

 

そう、先輩の頭には猫耳だけじゃなく、しっぽまでもついている。・・・・・可愛いです。

 

「ふふっ、そう。可愛いわね。銀華お姉ちゃんも一緒に遊んでいいかにゃん?」

 

「うん!一緒に猫のように遊ぼうにゃん!」

 

先輩は猫のように手を丸めたポーズをした。

そんなイッセー先輩に銀華姉さんは愛しみが籠った瞳をして、

 

「・・・・・本当、可愛いにゃん」

 

と、呟いた。はい、私もそう思います銀華姉さん。

 

―――千夏side

 

みなさん、初めまして私は兵藤家の者、兵藤千夏でございます。以御お見知りおきを。

さて、私は同族である兵藤照の気になる事を聞きましたので、

私とお姉さま兵藤麗蘭と一緒に一誠さまのご自宅の前にいます。

 

「一誠さまの気を感じるけれど、小さい子供だった・・・あの人の話は本当なのでしょうか?」

 

「あんな人でも、腐っても嘘は言いませんよ。正直ものですからね一応は」

 

兵藤家の若手の中で一番の実力者で、四天王と称される一人である彼、

兵藤照の話しは本当かどうか私たちが確かめに来たわけなのです・・・・・。

 

「では、押しましょうか」

 

お姉さまはインターホンを躊躇もなく押すことしばらくして、玄関の扉が開いた。

扉から出てきたのは―――。

 

「兵藤麗蘭さまと兵藤千夏さまですね?お久しぶりでございます」

 

小さい頃、何度か会い、お話したことがある一誠さまのメイドだった。

 

「お久しぶりでございます。リーラさん」

 

十年振りだというのに昔のままの容姿。すでに三十代の年齢だと思うのですが、

まだ二十代前半、十代後半だと思うほど美しいです。一体どんな方法でその美貌を保てているのか

気になるところです。

 

「本日はどのように?一誠さまにお会いしたいのであれば、色々と事情がありまして

お会いできかねますが・・・・・」

 

「あの、何時だったか兵藤照が一誠さまに勝負を吹っかけに参ったのですが、

帰って来たかと思えばボロボロになっていました。そしたら、一誠さまが小さくなっていると

気になることを仰っていたので、真実を確かめにやってきたのです」

 

「勿論、この事は兵藤家メンバーのみしかお伝えしません。

なによりも次期人王の身に何か遭ったのであれば

私たちは知る必要があるのです」

 

「・・・・・」

 

リーラさんは一瞬困った顔をした。本当にどうしたのだろうか・・・・・と思っていると

玄関の扉からヒョコっと小さな頭を出した子供―――え―――?

 

「リーラさん、どうしたのー?」

 

その子供はリーラさんに尋ねた。―――照の言う通り、一誠さまの気がこの子から感じる。

 

「・・・リーラさん、事情を説明してくださいますよね?」

 

「・・・・・分かりました。中にお入りください」

 

私たちを家の中へ招き入れる彼女。その際、小さな男の子を一瞥した。

 

「お姉さま・・・・・この子が一誠さまなのでしょうか?」

 

「もしかしたらそうかもしれません。ですが、一体どうして・・・・・」

 

リーラさんについていくと、男の子もついてくる。まるで親子のカルガモのような感じで。

 

「・・・・・ですけど、お姉さま」

 

「ええ・・・・・」

 

「「可愛いですね」」

 

それが一番の思いだった。ええ、もう。母性本能をくすぐられっぱなしです!

抱きしめたいですよもう!

 

―――リーラside

 

「原因は、堕天使総督のアザゼルの発明した機械のミスによる結果によって、

一誠さまの心と体が子供に戻ってしまったことなんです」

 

「「・・・・・」」

 

一誠さまの様子を見に来たと言う兵藤麗蘭さまと兵藤千夏さま。

隠し事はしない方がいいと全てを告げて心の中で溜息を吐く。

二人の様子は困惑した面持ちのようで一度、顔を見合わせてから口を開きだしました。

 

「では、本当にあの子供が一誠さまの幼少の頃だと?」

 

「ええ、戦闘能力は引き継がれているようですが、逆に神器(セイクリッド・ギア)の使い方を

知らないのです。何故か魔力を使えるという事実がありますが・・・・・」

 

「魔力を使える・・・・・?一誠さまは魔法使いなのではありませんよね?」

 

「はい、ですが・・・・・魔法使いの血を受け継いでいるのではないかと思っております」

 

そう、一誠さまですら知らない事実の一つ。

一香さまは式森家の一員、つまりは魔法使いだったのです。

 

「それで、戻る可能性はあるのですか?このままでは色々と支障が出かねないのですが・・・」

 

「アザゼルさまにお願いしているので一応、大丈夫かと。

私たちも密かに戻す方法を探しております」

 

「そうですか・・・・・」

 

さて、当の一誠さまはというと・・・・・。

 

「フワフワのモコモコ~♪」

 

「ふふふっ、妾の尾は柔らかいかのぉ?」

 

「うん、柔らかいよお姉ちゃん」

 

「そうかそうか。ほれ、妾の胸の中においで。妾のやや子よ」

 

何故か、羽衣狐さまが現世にいて一誠さまと接していました。

 

「・・・・・リーラさま、一誠さまは可愛いですね」

 

「そうですね。懐かしさも感じます。お二人もどうぞ接してやってください」

 

「いいのですか?」

 

先ほどからチラチラと見ていますし・・・・・何をどうしたいかなどと愚問というものです。

 

「はい、ですが、一誠さまの記憶は十年前・・・・・十年後の今の状況と状態、

世間の話しを一切触れさせないでください。知りたくても教えようとも知らせないように

お願いします。解決策を見つかるまでの焼け石に水程度の時間稼ぎをしなくてはなりませんから」

 

「分かりましたわ。私たち兵藤家も一誠さまの心と体を十年後に戻す方法を探します」

 

「いまは―――一誠さまと戯れさせてもらいますわ」

 

空気に振動が生じたかと思えば、

 

「こんにちは、兵藤一誠くん。私は兵藤麗蘭ですわ」

 

「兵藤千夏です。一誠くん、お姉ちゃんたちも一緒に遊ぼう?」

 

何時の間にかお二人は一誠さまと挨拶をしていた。

 

「(いずれにせよ、一誠さまの中で疑問が募っているはずです。

それがピークに達する前になんとかせねばなりません)」

 

それにしてもあの人は遅いです。まだなのでしょうか・・・・・。

 

―――朱乃side

 

あらあらうふふ♪こんにちは私は姫島朱乃と申します。

いま私は可愛らしい子供と一緒に水族館にやってきていますわ。その理由は、

 

『ずっと家の中じゃつまらないよ・・・・・リーラさん、水族館に行きたい』

 

物欲しそうな顔をした子供が我がままを言ったのですから。

子供、兵藤一誠くんの言葉を聞き、リーラさんを筆頭に私たちは相談をしました。

確かに、これ以上は家にいさせるとストレスが溜まるのは必然的。

なので、私たちは兵藤くんの水族館に行きたいという願いを叶えることにしました。

 

「わぁー!お魚がいっぱい!」

 

水を得た魚のように兵藤くんは目をキラキラと輝かせて、思い切り楽しんでいます。

 

「か、可愛い・・・・・」

 

「あんな笑顔は元に戻ってしまったら、もう二度と見れませんね」

 

「元に戻って欲しい自分とこのままのイッセーくんを見てみたい自分がいて葛藤するっす・・・・・!」

 

「清楚ちゃん・・・・・私、もう一誠くんの笑顔を見る度に参っちゃうよ・・・・・」

 

「写真を撮ろう。うん、そうしよう」

 

皆さんは水槽の中にいる魚たちよりも兵藤くんに夢中ですわね。うふふ♪

 

「朱乃お姉ちゃん!変な形のお魚がいるよ?あれ、何て魚なの?」

 

可愛いく首を傾げながらとある魚に指す兵藤くん。うふふ。

本当、子供に成って子供のように振る舞う姿は愛くるしいですわね。

だから他の皆も彼に夢中なのよね・・・・・。それから終始、私たちは兵藤くんと共に

水族館を満喫した。今まで家に籠っていた不満さとつまらなさを解消するかのように兵藤くんは

大はしゃぎをしていた。その笑顔を見る度にリアスたちは顔を蕩けさせ、幸せそうに笑顔を浮かべ

続けました。彼の魅力が皆を笑顔にするのですね。水族館から出てきたところで、

 

「リーラさん、楽しかった!」

 

満面の笑みを浮かべる兵藤くん。

 

「そうですね。また水族館へ来ましょう」

 

「うん!」

 

兵藤くんは笑顔を浮かべたまま頷く。

うふふ、子供って純粋ですわね。・・・・・私も昔はあんな時があったのですがね。

 

カッ!

 

足元に魔方陣が出現した。家に帰るため、式森くんが魔方陣を展開したのでしょう。

一瞬の光が私たちを包みこみ、私たちは水族館から一瞬で兵藤くんの家の門に辿り着きました。

 

「・・・・・あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「家の中に人がいるよ?」

 

「なんですって・・・・・?」

 

兵藤くんの言葉に怪訝な面持でリアスが言う。

 

「神王と魔王・・・・・それにこの感じは・・・・・堕天使?でも、アザゼルじゃないわね」

 

「―――っ!?」

 

小猫ちゃんの姉、銀華も兵藤くんの言葉を肯定とさらに補足説明してくれた。

堕天使・・・・・それも堕天使総督のアザゼルとは別の存在の堕天使。

どうしてこの子の家にいるのか不自然ですわね・・・・・。

 

「あの人たちは・・・・・後で注意せねばなりませんね」

 

兵藤くんのメイドさんが嘆息して門を潜り、玄関の扉を開け放った。私たちも続き、中に入る。

彼女は真っ先にリビングキッチンへと向かって行った。扉を開け放ち、中へ侵入すると

何やら賑やかな声が聞こえてくる。兵藤くんと一緒に彼女が開け放った扉の向こうに

侵入を果たせば―――。

 

「おお、お前ら!戻ってきたな!」

 

「やぁ、水族館はどうだったかね?」

 

神王ユーストマさまと魔王フォーベシイさまが出迎えてくれた。

テーブルには大量のお酒とつまみ。二人と対面するように座る人物たちもいた。

 

「―――――」

 

その中に、信じられないヒトがいた。なぜ、あなたがここにいる―――っ!

 

―――リアスside

 

「神王さまと魔王さま。仮にも他人の家に、それも留守中に無断で上がるとは

神王として魔王として自覚があるのでしょうか?

ルシファーさまたちとヤハウェさまたちにご報告をさせてもらいます」

 

「「申し訳ございません!それだけはどうかご勘弁を!」」

 

水族館から帰って来た私たちを出迎えてくれたのはリーラさんに説教されて

土下座中の神王と魔王、そして・・・・・。

 

「・・・・・お主、孫かのぉ?」

 

「うん、そうだよー?」

 

イッセーが抱きついている老人。―――この国にいるはずもない北欧の主神オーディンさまと

背後に佇む二人の銀髪の女性。さらには―――。

 

「・・・・・」

 

堕天使の幹部の一人・・・・・バラキエル。

朱乃を見詰めているけど、朱乃はバラキエルの視線から逃れるようにして顔を逸らし続けていた。

だけど、どうしてオーディンさまがここにいらっしゃるのかしら・・・。

 

「オー爺ちゃん。どうしたの?遊びに来てくれたの?」

 

「ほっほっほっ、それもあるのじゃが、わしはこの国で大事な仕事があるから来たんじゃよ」

 

「そうなんだ。オー爺ちゃん、お仕事頑張っていて大変だねー」

 

「うむうむ。しかし、なぜ孫が子供に成ったのかは気になるが・・・・・結果オーライじゃのー」

 

オーディンさまが嬉しそうに笑みを浮かべられる。・・・・・あの光景を見て、

イッセーが他の神話体系の神々とどんな風に知り合えたのかようやく理解できたかもしれない。

 

「・・・・・あのオーディンさまが笑っていらっしゃるなんて珍しいですね・・・・・」

 

「ああ、そうだな。オーディンさまにとっては良い意味で誤算だったろう」

 

付き人の二人は珍しいものを見る目でオーディンさまを見る。

 

カッ!

 

その時、この場に一つの魔方陣が出現した。光と共に姿を現したのは堕天使の総督アザゼル。

 

「あっ、怪しいおじさん」

 

「・・・・・俺の印象は怪しいおじさんなのかよ。まあ、合っているがよ。だからそう警戒しないでくれ」

 

アザゼル、それは無理というものがあるわよ。ほら、猫のように警戒して

オーディンさまの付き人の二人の背後に隠れちゃっているし・・・・・。

 

「ほっほっほっ、アザゼル坊よ。孫に嫌われているのぉ」

 

「・・・・・赤ん坊の頃は懐いてくれたんだがな・・・・・虚しさが込み上がってくるぜ」

 

そ、そうなの・・・・・それは知らなかったわ。

そして、アザゼルは私たちを見渡して口を開いた。

 

「お前らに説明せねばなるまいな。爺さんは日本の神々と話をするために来日してきたわけだ。

所謂、違う国と国のトップ会談ということになる」

 

「うむ。実はそうじゃよ。この国の神々はユグドラシルのことを興味を持ってな。

それに、この町は悪魔と天使、堕天使、そして人間が交流をしておる。

それなりの問題を抱えていそうじゃが、それでも大したことじゃよ。

じゃから、わしも他の国の神々と話をして交流を深めようと思っておるのじゃよ」

 

なるほど・・・・・四種交流を見習っての行動ということですか・・・・・。

 

「それにしても爺さん、来日するにはちょっと早過ぎるんじゃないか?

俺が聞いていた日程はもう少し先だったハズだが。

神王ユーストマと魔王フォーベシイが仲介で、俺が会談に同席―――と」

 

アザゼルが訊いた。

 

「まぁの。それと我が国の内情で少々厄介事・・・・・というよりも厄介なもんにわしのやり方を

非難されておってな。事を起こされる前に早めに行動しておこうと思ってのぉ。

さっきも言ったが、日本の神々といくつか話をしておきたいんじゃよ。

いままで閉鎖的にやっとって交流すらなかったからのぉ」

 

「本音的に兵藤一誠に会いたかったんだろ?」

 

「勿論じゃ!」

 

・・・・・親バカならぬ爺バカと言うべきなのかしら・・・・・。

親指を立てながらオーディンさまは笑みを浮かべてハッキリと告げた。アザゼルは顎に手をやり、

 

「それにしても厄介事って、ヴァン神族にでも狙われたクチか?

お願いだから『神々の黄昏(ラグナロク)』を勝手に起こさないでくれよ、爺さん」

 

皮肉げに笑っていた。対してオーディンさまは

「孫が生きておるのにするわけがなかろう」と言いつつ、

 

「ヴァン神族はどうでもいいんじゃが・・・・・。ま、この話をしていても仕方ないの。

それよりもアザゼル坊。どうも『禍の団(カオス・ブリゲード)』は禁手化(バランス・ブレイク)できる

使い手を増やしているようじゃな。怖いのこ。あれは稀有な現象と聞いたんじゃが?」

 

―――っ!

 

私たちは皆驚いて顔を見合わせていた。突然、その話をするなんて・・・・・。

 

「ああ、レアだぜ。だが、どっかのバカが手っ取り早く、それでいて怖ろしく分かりやすい

強引な方法でレアな現象を乱発させようとしているのさ。

それは神器(セイクリッド・ギア)に詳しい者なら一度は思いつくが、実行するとなると各方面から

批判されるためにやれなかったことだ。成功しても失敗しても大非難は確定だからな」

 

「なんですか、その方法って」

 

式森くんの問いかけにアザゼルは答えてくれる。

 

「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦だよ。

まず、世界中から神器(セイクリッド・ギア)を持つ人間を無理やりかき集める。殆ど拉致だ。

そして、洗脳。

次に強者が集う場所―――頂上の存在が住まう重要拠点に神器(セイクリッド・ギア)を持つ者を送る。

それを禁手(バランス・ブレイカー)に至るものが出るまで続けることさ。至ったら、強制的に魔方陣で帰還させる」

 

アザゼルは続ける。

 

「これらのことはどの勢力も、思いついたとしても実戦にやれはしない。

仮に協定を結ぶ前の俺が悪魔と天使の拠点に向かって同じことすれば非難を受けると共に

戦争開始の秒読み段階に発展する。自分たちはそれを望んでいなかった。

だが、奴らはテロリストだからこそそれをやりやがったのさ」

 

・・・・・人道的な方法とは思えないやり方で禁手(バランス・ブレイカー)を至らせる。

 

『・・・・・』

 

皆の視線が真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッドことガイアに集中したのが気付く。

色んなところから向けられる視線に不機嫌な顔で

 

「なんだその目は」

 

と、低い声音で「文句でもあるのか?」と言いたげに呟いた彼女であった。

・・・・・イッセーも、彼女の人道的とは思えない方法で至ったのよね・・・・・。

いま思えば、「よく生きていた」と感嘆するわよ。

 

「アザゼル先生。良かったですね」

 

「なんだ、何が良かったんだ?」

 

神城くんが笑みを浮かべながら意味深なことを言いだした。

 

「もしも、コカビエルがその方法で仕掛けたら戦争開始の秒読み段階になっていたことに

なるじゃないですか。だから、コカビエルがアザゼル先生のような

神器(セイクリッド・ギア)マニアじゃなかったら、その方法を思いつかなかった。

思い付いたのは聖剣を奪って利用し、戦争を起こそうとしていたことですから」

 

『・・・・・・』

 

彼の話を聞いて私は、あの時のコカビエルがその方法を思い付かなかったことに心から感謝した。

 

「・・・・・そうだな。マジでそうなっていたら俺たちがどう弁解しても

『堕天使側から宣戦布告をされた』と悪魔と天使側に認識されていたに違いない。

お前の話を聞いてゾッとしたぞおい」

 

神城くんの話しを聞いていて冷や汗を流していたアザゼル。ええ、確かにそう思うわ。

 

「・・・どちらにしろ、人間をそんな方法で拉致、洗脳して禁手(バランス・ブレイカー)にさせるってのは

テロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』ならではの行動ってわけだ」

 

「それをやっている連中はどの派閥なんですか?」

 

式森くんの問いにアザゼルが続ける。

 

「『英雄派』だ」

 

・・・・・曹操・・・・・っ!

 

「あの夏休みで曹操、ゲオルグ、レオナルド、ジークは確証したんだろう。

自分たちより強敵の存在と戦えば更なる力が目覚めると。実際にあいつ等は力を増した。

事が事だからしょうがないとはいえ、皮肉なことになっちまったな」

 

「・・・・・私たちももっと強くならないといけないわね」

 

「その辺はガイアたちに鍛えてもらえ。相手は不動の存在だけじゃなく、最強の存在もいるんだ。

お前らの相手をしてくれる奴は豊富で幸いだな」

 

ええ、そうね。これも彼のおかげと魅力が生んだ結果でしょうね・・・・・。

 

禁手(バランス・ブレイカー)使いを増やして何を仕出かすか、それが問題じゃの」

 

オーディンさまはイッセーの頭を撫でながら言った。イッセーも嬉しそうに目を細める。

 

「まあ、調査中の事柄だ、ここでどうこう言っても始まらん。爺さん、

どこか行きたいとこはあるか?」

 

アザゼルがオーディンさまに訊くと、

オーディンさまはいやらしい顔つきで両手の五指を動かした。

 

「おっぱいバブに行きたい―――」

 

「おっぱい?」

 

『・・・・・』

 

よりにもよってイッセーが復唱してしまった。

その結果、なんとも居た堪れない空気に成ってしまったわ。

 

「オー爺ちゃん。おっぱいがどうかしたのー?」

 

「う、む・・・・・・」

 

「オー爺ちゃんっておっぱいが好きなの?」

 

純粋無垢にイッセーは瞳をオーディンさまに向ける。対するオーディンさまは

 

「そ、それはのぉ・・・・・」

 

言葉を濁し、自分の発言の失態にイッセーを直視することが叶わなくなり、

彼から視線を逸らした。

 

「ねぇ、オー爺ちゃん。どうして僕から目を逸らしちゃうの?おっぱいがどうしたの?」

 

「ぅ・・・・・」

 

「オー爺ちゃん?」

 

「・・・・・」

 

ああ・・・・・イッセー。大人には言い辛い事があるのよ・・・・・。

純粋な目は穢れているものにとって眩しすぎて堪え難いのよ・・・・・・。

それはオーディンさまも例外じゃないわ。

 

「変なおじさん。オー爺ちゃんが答えてくれないよ。ねぇ、おっぱいがどうしたのー?」

 

「そ、それはだな・・・・・」

 

ほら、アザゼルも流石に言い辛そうだわ。そんなアザゼルの様子にイッセーは矛先を変えた。

 

「おじさんたち、オー爺ちゃんたちが答えてくれないよ。叔父さんたちなら知ってるの?」

 

「「うっ・・・・・!」」

 

純粋な眼差しで向けられる神王さまと魔王さま。

 

「(リアス!これ以上は彼にあんなこと言わせない方がいいかと思います!)」

 

「(ソ、ソーナ?)」

 

「(お忘れですか。今の彼は子供なのですよ?もしも、彼があのまま女の乳のことばかり

聞いて興味津々なまま十年後のイッセーくんに戻ったら―――!)」

 

―――っ!?

 

私の脳裏で危険な想像が過った。

そう、赤龍帝のイッセーのように女の乳ばかり求めてしまう男の子の光景を・・・・・!

 

―――ドサッ!

 

「・・・え?」

 

いきなりイッセーが床に倒れた。私は彼が倒れた原因を見たら・・・・・。

 

「オーディンさま」

 

「う、うむ!?」

 

「―――一誠さまの前で卑猥なことを仰らないでください」

 

ギンッ!と今まで見たことがないぐらい鋭く絶対零度の如くの眼差しを、

オーディンさまに向けるリーラさん。

その睨みは、この場にいる全員の体を震わすのに十分過ぎるほどだった。

というか、あなたがイッセーを気絶させたの・・・・・?

訊きたいけど今の彼女は怖すぎて訊けれないわ・・・・・。

 

「オーディンさまは存じないかと思いますが、私たちは一誠さまを真っ直ぐ純粋な子に

育てておりました。それも『おっぱい』と連呼することを許したことがないぐらいに」

 

「そ、そうか。それを聞いてわしは安心するのぉ・・・・・」

 

「ですが・・・・・よりにもよって一誠さまがオーディンさまの発言により

興味を持たれてしまいました。―――どうしてくれるのですか?

純粋な一誠さまがどこぞの女の乳ばかり求めている腐れドラゴンのような悪魔に

成ってしまわれたら、私は一香さまと誠さまに顔向けすることはできなくなります」

 

リ、リーラさん・・・・・何気に彼に対して非難の言葉を放っているわよ。

彼女も彼に対して思うところがあったのかしら・・・・・。

 

「―――滞在中、一誠さまに近づかないでくださいオーディンさま」

 

「なぬっ!?」

 

「孫と接せれず生殺しじゃ!」とオーディンさまは食って掛かった。しかし―――。

 

「一誠さまに『オーディンさまは変態な人です』と教えてあげましょうか?

そうしたら、一誠さまはさぞかしあなたを幻滅するでしょうね。

大好きなオーディンさまが最低な変態だと知ったら・・・・・ね?」

 

「――――――っ!?」

 

彼女の言葉にガクリとその場で跪いたたオーディンさま。

その姿は北欧の主神の貫禄は影も形もなかった。あるのは大切な物を奪われた時の

ショックを受けたその人のようだった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。