ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode番外編

※読者様の感想の中にバレンタインデーのことが書かれていたので、

今小説はバレンタインデーの話を投稿させてもらいます。

作者も投稿してみようと思った所存でございます。では、お読みになってください。

 

 

―――兵藤家―――

 

―――リアスside

 

私、リアス・グレモリーは部屋であることをしている。

それは―――二日後に迫ったバレンタインデー。

 

「イッセーには訝しまれたけど、自室にキッチンを創ってもらったお礼に彼が

『美味しい』と称賛してくれるチョコを作らないとね♪」

 

他にもイッセーに冷蔵庫や調理器具、全て必要な物を創ってもらった。

 

「他の皆も私と同じ考えをしているだろうし・・・・・負けていられないわ」

 

イッセーを想う女は他にもいる。なのに、イッセーの妻の存在ができてしまった。くっ・・・!

何て羨ましいの!学生夫婦なんて本来は世間にも認められないのに・・・・・!

人王はそこまで凄いのね!

 

「兵藤悠璃と兵藤楼羅・・・・・彼女たちが一番の強敵ね」

 

負けられないと、愛情を籠めて私はチョコレート作りに集中するのであった。

 

―――ソーナside

 

負けられません。イッセーくんが私のお菓子を美味しそうに食べてくれたのです。

きっとこのチョコレートも。

 

ギェアアアアアアアア・・・・・。

 

禍々しく鍋の中で煮立つチョコレートの液体。さらに甘さを引き出すために

このシトリーの領地で採った斑模様の薬草を鍋の中に・・・・・。

 

「ふふふふふ・・・・・・イッセーくん、美味しいって言ってくれますよね?」

 

脳裏に浮かぶイッセーくんが私のチョコレートを食べてくれる想像、ビジョンが・・・・・!

これが現実になってくれると思うと笑みが絶えません・・・・・。

 

「・・・・・彼だけじゃなく匙の分も作りましょうか」

 

日頃頑張ってくれている私の『兵士(ポーン)』に感謝の一つはしないとダメですからね。

 

―――イリナside

 

「うーん、チョコレートなんて作るのは初めてだから少し緊張しちゃうわね」

 

プロテスタント教会から派遣された聖剣使いこと紫藤イリナです。いま私は好きな幼馴染のために

白い布を頭に巻いて、体に白いエプロンを身に付けてのチョコレート作りをしています!

 

「子供のころはお母さんと一緒に作ったからできたけど一度きりだったし・・・・・」

 

イッセーくんが行方不明になっちゃって二度目のチョコレートを作ることはできなかった。

それが苦い思い出もあった。でも、今回は違うわ!

 

「・・・・・そう言えば、ホワイトチョコレートなんてあったわね?」

 

神に仕え、教会に属している私が茶色のチョコレートより

白いチョコレートを作った方が私らしいよね?

 

「うん、そうしましょう。あー、でも、買い直さないといけないわぁー!」

 

出費が凄まじいわね!ああ、主よ!これも私に対する試練なのですか!?

 

―――清楚side

 

「うん・・・・・こんな感じかな?」

 

自室で私、葉桜清楚は一誠くんに頼んで調理器具と冷蔵庫を創造してもらって

チョコレート作りをしています。

 

『なんでまた部屋に調理器具と冷蔵庫を創造して欲しいと言うんだお前らは?』

 

創造してもらった際に気になることを言った一誠くん。

きっと、私以外の女の子たちもバレンタインデーに向けて

一誠くんに渡すチョコレートを作っているんだと思う。

 

『面倒なことをする。市販に売っている物でもいいんじゃないか?』

 

・・・・・それじゃダメなんだよ。それじゃ、愛情が籠っていないじゃない。

 

『愛情・・・・・か・・・・・』

 

項羽だって、昔は好きな人がいたでしょ?その人の為に何かしてやりたいって

気持ちが分かるはずだよ?

 

『そりゃ・・・・・そうだが・・・・・むぅ・・・・・』

 

私が作り終えたら今度はあなたも作るんだからね?

 

『お、俺もか!?』

 

うん、当然だよ。だから、私の作り方を見ていてね。

 

『・・・・・分かった・・・・・』

 

ふふっ、頑張ろうねお互い♪

 

―――リーラside

 

「それで、私に頼みたいこととはなんでしょうか?」

 

兵藤一誠さまの忠実なるメイド、リーラ・シャルンホルストはいま、

私の目の前に立つ四人の少女と女性に話しかけられています。

 

「うむ・・・・・実はな、好きな男に渡すバレンタインデーというものが二日後に

あるそうじゃないか」

 

「ええ、確かにそうですが・・・それがどうかしましたか?」

 

「我も一誠に渡したいのだ。だが・・・・・作り方は知らぬ。

そこで、お前にチョコレートとやらの作り方を教わりたいのだ。料理を作るのに長けたお前に」

 

なるほど・・・・・このヒトたちはそのためにいるということですか。

 

「―――ガイアさまの気持ちは分かりました。他の皆さまもそうなのですか?」

 

「我も、イッセーに渡したい」

 

「私もだ。他にもあるならその知識も学びたい」

 

「可愛い弟子にプレゼントしたいにゃん」

 

オーフィス、クロウ・クルワッハ、銀華、そしてグレートレッドことガイア。

以上この四人が私にチョコレート作りを教わりたいと懇願する。

私もこれから一誠さまのために作ろうと思っていたところなのですが・・・・・敵に塩を

送るような真似は極力したくないです。ですが・・・・・。

 

「分かりました。では、ご一緒に作りましょう」

 

一誠さまの為に尽くしてくれる者たちの願いを蔑ろにできるわけ無いです。

彼女たちの存在がいるからこそ今の一誠さまなのですから。四人を引き連れ、

リビングキッチンに赴いた私の目に飛び込んできたのは―――、

 

「うん?」

 

私たちより先にキッチンを占領していた黒髪の女性こと羽衣狐の存在―――。

私たちを視界に入れるや否や、

 

「・・・・・ふふっ、一足遅かったのぉ?まあ、スペースはある。妾の邪魔をしないならば、

勝手にあの子の為に作るがいいさ」

 

不敵の笑みを浮かべる羽衣狐。リビングキッチンに甘い臭いが漂っている。

私たちがいない間に短時間で作っていたということですか・・・・・。

 

「「「「負けない」」」」

 

ええ、私も同じ気持ちですよ。ですが、最初に一誠さまのお褒めの言葉を貰うのはこの私です!

 

―――悠璃side

 

「こんな感じかな」

 

自室で私、兵藤悠璃は私の姉である兵藤楼羅といっくんのためにチョコレート作りをしています。

私のチョコレートはハート形で綺麗に作れたと自慢できる。

 

「こっちはできたけどそっちはどう?」

 

「こちらもできました。後は冷蔵庫に入れて冷やすだけです」

 

そう言って冷蔵庫の中に入れる楼羅。私も自信作を入れて扉をバタリと閉めた。

 

「明日になれば固まっていることかと思います。その間に包装でも用意しましょう」

 

「うん」

 

この日の為に買ってきた可愛い箱と紐。楼羅と一緒に箱作りする。

 

「・・・・・幸せだね」

 

「ええ、そうですね。私たちは一誠さまの為に生まれてきたのだと過言じゃないかもしれません」

 

コクリと私は彼女の言葉に同意だと肯定する。

 

「初めていっくんと会った時は周りから弱いからと虐められて、

可哀想な子だからと思って接していたんだけど」

 

「何時の間にか彼と一緒にいるようになっていましたね」

 

「居心地が良かった。いっくんといると安心する自分がいたからもっといたいと思った」

 

だから家に来る時は必ずいっくんの傍にいた。

もう当たり前のように接していたら―――好きになっていた。

虐められても泣かないどころか前に進もうとするいっくんの言動を見て、私は好きになった。

 

「楼羅、何時までも一緒にいっくんの傍らにいようね」

 

「勿論です」

 

私たちは笑みを浮かべ、仲良く一緒に包装を作り始めた。いっくん、楽しみにしていてね?

 

 

―――ヴァーリside

 

「ルフェイ」

 

「なんでしょうか?」

 

「キミは料理を作れるよね?」

 

私、白龍皇ことヴァーリ・ルシファーは仲間であるルフェイ・ペンドラゴンに尋ねた。

とある目的のために、

 

「はい、人並みぐらいでは作れますよ」

 

「そうか、では、チョコレートを作れるかな?もうすぐバレンタインデーだから一誠に渡したい」

 

そう、それが目的だ。彼にバレンタインデーに渡すチョコを作りたい。

しかし、私は料理など一切したことがない。戦闘に関する知識が豊富でも料理での知識と

経験が皆無だ。そんな私に比べてルフェイは料理を作れる。

 

「あっ、そういえばそうでしたね。

じゃあ、一緒に作りましょうか。私もお兄さまに作りたいので」

 

「うん、よろしく頼む」

 

「ふふっ、ヴァーリさんも女の子ですね。好きな人に作りたいなんて」

 

「ルフェイも愛しい男ができると私のようになるさ」

 

「はい、そうかもしれませんね」

 

邪の無い笑みを浮かべるルフェイ。本当、彼女がこの場にいることが不思議に思う。

兄が心配で追ってきたというほどだからな。アーサーはいい妹を持って幸せだな。

 

 

―――○●○―――

 

 

―――駒王学園―――

 

 

「うわー、何か知らないけどピリピリ感じるぞ」

 

俺、兵藤一誠は和樹と龍牙と一緒に自分の教室へ向かうため廊下を歩いている。

何故か清楚たち女子陣は、『先に行ってて』と言われる。シアたちも同じだった。

首を傾げながらも駒王学園へ先に来た俺たちは、別の教室から今まで感じたことがない

緊張感を感じている。

 

「今日って試験の日でもあったっけ?」

 

「え?今日はバレンタインデーだよ?」

 

「・・・・バレンタインデー?」

 

「・・・・・まさか、知らないのですか?」

 

信じられないと言った顔で俺に向けてくる龍牙。え・・・・・なにそれ?

 

「女の人が男の人にチョコレートを渡す日ですよ」

 

「へぇ、そうなんだ?」

 

「・・・マジで知らないんだね。

いや、一誠は修行に明け暮れていたから常識的なことが知らないのかな・・・・・?」

 

うーん、まあ、その通りだけど。

 

「―――あ、あの!」

 

「はい?」

 

見知らぬ女子生徒に声を掛けられた。いや、俺じゃない。和樹にだ。

 

「こ、これ、受け取ってください!」

 

「あっ、ありがとう」

 

和樹が受け取った瞬間、見知らぬ女子生徒は顔を真っ赤にして自分の教室へと入って行った。

 

「和樹、知り合いか?」

 

「いや、知らないよ?でも、嬉しいね」

 

微笑む和樹。本当に嬉しそうだ。再び歩を進めようとしたら、

 

ザッ!

 

俺たちを囲むように見知らぬ女子生徒たちが現れた。

 

「・・・・・なんだろう、この緊張感」

 

「ええ、僕もそう思いますよ」

 

一誠に突き出される可愛くラッピングされた箱を見て俺と龍牙は緊張したのだった。

俺たちに突き出される箱を受け取ること数十秒。ようやく教室に入ったら―――

 

「「「・・・・・」」」

 

俺と和樹、龍牙の机の上に山積みされた大小の箱があった。

 

「「「なにあれ」」」

 

アレ全部チョコレートが入った箱なのか・・・・・?見知らぬ人から貰うなんて久し振りだから

緊張するんだけど・・・・・。

 

「お前ら、凄いなー。あれ、上級生たちが置いて行ったチョコレートだぞ?」

 

そう言う一人のクラスメートにも箱が置かれていた。

 

「あれ、全部?」

 

「ああ、そうだぜ。数には負けるけど俺も義理とはいえもらえて嬉しいや」

 

感無量、我が人生悔いなしと感じで笑みを浮かべ続けている男子生徒。

 

「・・・・・そう言えば、Sクラスって何かと優遇されるんだったね。

僕も一年生の頃、一時期こんな感じだったよ」

 

「なるほど、Sクラスに所属している男子生徒を手に入れようとチョコを渡すんだな?」

 

「その発想はどうかと思いますが・・・・・まあ、そんな思いを抱いている女子も

いなくはないかと思います。心から好きな人に渡す者もいるでしょうし、

片思い中の男子に渡す女子もいます」

 

ふーん、そういうもんか・・・・・?

 

「でも、どうして清楚たちは一緒に来なかったんだろう?」

 

「・・・・・一誠、キミは変なところで鈍いんだね」

 

「でも、そんなところが可愛いじゃないですか」

 

龍牙、男に可愛いとか言われても嬉しくないぞ。

 

「い、一誠さま!」

 

ん?この声は―――。振りかえると兵藤千夏と兵藤麗蘭がいた。

 

「おはよう二人とも、どうしたんだ?」

 

「今日はバレンタインデーです。なので、私たちがここにいるのは」

 

「一誠さまにチョコレートを差し上げたく参ったのです」

 

兵藤麗蘭が小さく笑んで箱を渡してきた。兵藤千夏も一拍遅れて箱を突き出してきた。

 

「私たちの愛情が籠ったチョコレートです。どうかご堪能くださいませ」

 

「ありがとう。嬉しいよ」

 

笑みを浮かべて感謝の言葉を言った。すると、二人は顔を赤くしだした。

 

「お姉さま・・・・・やはりこの方なら」

 

「そうね・・・・・私たちの全てを捧げれるわ。―――では、一誠さま。昼休みに訪れますので」

 

そう言って兵藤千夏の手を掴んでは、教室からいなくなった。

 

「一誠、モテモテだね♪」

 

「あの箱の量を見てお前も人のこと言えないだろうが」

 

「確かにあれは嬉しいけど、僕はシンシアって女性がいるからね」

 

野郎、惚気を・・・・・!と俺も人のことは言えないな。

 

「さて・・・・・このチョコの山をどうしよう」

 

「食べ尽くしかないと思うよ?」

 

「これ全部食べたら胃が危ないですよ」

 

「取り敢えず、亜空間の中に仕舞おう」と和樹が俺たちのチョコを魔方陣で仕舞ってくれた。

丁度その直後、清楚たちが教室に入ってきた。時間はHR始まる時間ギリギリだった。

 

―――昼休み―――

 

「はい、一誠くん」

 

「ん?」

 

「チョコレートだよ?」

 

「・・・・・もしかして、部屋にキッチンを創造させたのって」

 

「うん、一誠くんにチョコを作ってあげるためだよ」

 

何時も通り、屋上で昼食する俺たち。そして、清楚から小さな箱を渡された。

 

「おー、ありがとう。・・・・・なんだろう、物凄く嬉しいぞ」

 

俺は子供のように瞳を輝かせて受け取った箱を見詰めた。すると、

 

「・・・・・」

 

また清楚から別のチョコレートを突き出された。・・・・・かと思ったら項羽だった。

 

「項羽?」

 

「・・・・・清楚に無理矢理作らされた。だから、俺のも食え」

 

そう言う彼女の頬は羞恥で朱に染まっていた。照れているのか・・・・・可愛いな。

 

「イッセー!私もあなたにチョコを作ったの。食べてくれないかしら?」

 

「私もです。どうぞ」

 

リアス・グレモリーやソーナ・シトリーまでもがチョコを渡してきた。

 

「イッセーくん、私もよ!」

 

「いっくん、私たちも」

 

と、イリナや悠璃楼羅からもチョコを受け取った。

それから、リーラとネリネ、リコリス、シアや最近シアたちのクラスに

編入したキキョウからも、

 

「・・・・・はい、イッセー」

 

プリムラからもチョコを貰った。人から貰うのは今日だ何度目だろうか嬉しく思い。

 

「―――お前ら、ありがとうな」

 

満面の笑みを浮かべた。

 

「はう・・・・・」

 

「イッセーさまの笑顔・・・・・素敵です・・・・・」

 

「頑張って作った甲斐があったわね・・・・・」

 

「あの笑顔を見れるならまた作りたくなります・・・・・」

 

「イッセーくんの笑顔を見るのは初めてです」

 

「ギャ、ギャップが凄まじいわ・・・・・」

 

皆、顔を赤くして各々と呟きだす。さて、誰のから食べようかなー?

 

バンッ!

 

『待てぃ兵藤一誠っ!』

 

屋上に嫉妬集団が出現。金色の錫杖を発現してコンクリートに突き刺して結界を張った。

 

「えっと、一誠くん?」

 

「人の楽しみを邪魔しないように結界を張っただけだ。

魔王並みの攻撃をしてこない限り破られないから安心しろ」

 

そう言いながらリーラのチョコレートをパクリと食べた。

 

「うん・・・・・やっぱりリーラのお菓子は美味いな。食べても飽きないほど美味しいよ」

 

「ありがとうございます」

 

リーラは軽くお辞儀をした。でも、顔がとても嬉しそうだった。

さて、次は・・・・・ホワイトチョコレート?でも―――、

 

「イリナらしいな」

 

「ふふっ、分かってくれた?」

 

「ああ、神に仕える者として、教会の者としてやっぱり白がいいなってところだろ?」

 

「わぁ、そこまで分かってくれるなんて逆に凄いわ。そして凄く嬉しい」

 

イリナは満面の笑みを浮かべた。イリナの表情を見ながらホワイトチョコレートを

食べた俺は他の皆のチョコレートを食べ続けて行く。そして、最後に残ったのは―――、

 

「今度は妾のものを食べよ」

 

虚空から現れた羽衣狐。少し強引に受け取らされた箱を開けると―――、

羽衣狐を模したチョコレートだった。

 

「うわ、凄い・・・・・ここまでこったチョコレートは初めて見るぞ」

 

「ふふっ、そうであろう?さあ、食べるがいい」

 

俺は頷き・・・・・どこから食べればいいのか分からず悩んだ末、尻尾から食べた。

 

「・・・・・おお、イチゴ味だ」

 

「それだけではないぞ?残りの八本のチョコレートには様々な味があるのじゃ」

 

「随分と凝っているな・・・・・」

 

感嘆を漏らす俺の耳に羽衣狐が顔を寄せてきた。

 

「―――一本だけ本能を呼び覚ます媚薬も入れ込んである。九尾妖怪特性の媚薬じゃ」

 

―――――っ!?

 

なっ、あ、あんたは何を入れてんですか!?

信じられないものを見る目で羽衣狐の顔を覗き込んだら、

 

「ふふふっ、続きは夜にでも食うんじゃな。

ここで全部食べたら―――この場にいる全員を襲ってしまうからのぉ」

 

それだけ言ってポンと煙と化となって姿を消した。

 

「あの・・・・・どうかいたしましたか?」

 

「え?あ、いや・・・何でもない。最後はソーナ・シトリーのだな」

 

「ええ、味わって食べてください」

 

彼女の言葉を耳にしながら箱を開けると中身は―――。

 

「おおう・・・・・」

 

シトリー家の紋様を模したチョコレート。凄い、これも芸術的だ。

 

「凄い、食べるのが勿体ないぐらい芸術的だ」

 

「いえ、食べてください。見た目も大事ですが味も大事ですので」

 

真剣な表情でそう言われて、思わず首を縦に振った。

本当に食べるのが勿体ないぐらい芸術的だからな・・・・・。

 

「それじゃ、いただきます」

 

パクリとソーナ・シトリーのチョコを食べた。

 

「―――――――――――っ!?」

 

『っ!?』

 

俺が目を丸くしたら皆がビックリした表情を浮かべた。

 

「・・・・・ソーナ、美味しいけどチョコに何を入れたんだ?」

 

「えっと、シトリー家の領地で採れる薬草と栄養満点の食材、

それとシトリー家に伝わる愛を捧げる魔法を・・・・・」

 

「・・・・・そ、う、か」

 

―――バタリッ!

 

体から力がなくなって俺は倒れた。

 

「ちょっ、一誠っ!?」

 

「どうしたんですか!?」

 

「―――って、顔が真っ青っすよ!?」

 

「ソーナのお菓子を食べて平気だったイッセーが倒れるなんて!?」

 

「回復魔法を!」

 

「―――脈の動きが弱まっている!?」

 

「そ、そんな・・・・・!いっくん!死なないで!いっくん!」

 

あー、皆が心配している声が聞こえる。

 

「あ・・・・・・死んだ父さんと母さんが手招いている。父さん、母さん・・・そっちに行くよ」

 

「待って一誠!そっちに行っちゃダメだからね!?」

 

「いきなり倒れた友人が死ぬ寸前って洒落にならないですから!」

 

「イッセー!イッセー!イッセェェェェェェェッ!

 

リアス・グレモリーの泣き叫びを最後に目の前が真っ暗になった。

 

―――○●○―――

 

「―――はっ!?」

 

「あっ、起きたにゃん?」

 

目を一気に見開いた俺。真っ白な天井・・・・・周りを見渡せば白いカーテンに囲まれていて、

黒い着物を着込んで頭に猫耳を生やしている女性がいた。

 

「・・・・・えっと、黒歌・・・・・だよな?」

 

「ええ、黒歌よ?あなた、気を失ったって?大丈夫?」

 

「・・・・・体が動かない」

 

「一体、何を食べたら体が動けなくなるのよ」

 

いや、その前にどうしてお前がいるんだ?お前がいるということはヴァーリも近くにいるのか?

 

「どうして黒歌がここに?」

 

「ヴァーリの付き添い兼白音を見に来たのよ。

そしたら、大勢の人間に囲まれていて金色の結界の中で倒れているあなたを見つけた。

理由を聞いたらチョコレートを食べて瀕死の重体とか」

 

俺、瀕死の重体だったの?

 

「私がいなかったらあなたは死んでいたかもね。気がドンドン弱まっていたもの。

仙術を使える者じゃなきゃ、生命エネルギーを増幅させることもできなかったでしょうし、

ヴァーリの『半減』の能力と特殊な方法で毒の威力、

効果を半分にし続けていなかったら確実に死んでいたわ」

 

「・・・・・・」

 

マジで俺、死にそうだったのか・・・・・。

 

「それで、ヴァーリは?」

 

「あなたの横で寝転がっているわよ?」

 

なんですと・・・・・?改めて横を見たら―――寝息を立てて

俺にしがみついているヴァーリがいた。

 

「普通、白龍皇の能力って相手の力を半減にするものだったはずなのに、

何故か毒を半減にして治したのよね。本人に曰く『愛の力』だそうよ?

にゃははは、愛されているね?」

 

俺、二人に命を助けられたのか・・・・・。

 

「黒歌、ありがとうな。立場的に危ないのに助けてくれて」

 

「それを言うなら、こっちだって銀華の件があるわ。あの時も言ったけど、ありがとうにゃん」

 

「ああ、それと」と彼女は小さな箱を俺の胸の上に置いた。

 

「それ、ヴァーリの手作りチョコにゃん。ちゃんと食べなさい?

大丈夫、毒なんて入っていないから安心して」

 

「それ言われると困るんだがな・・・・・悪いけど食べさせてくれないか?」

 

「しょうがないわね、特別よ?」

 

ヴァーリの手作りチョコを箱から出した。指で摘まむ程度の一口サイズの大きさのチョコで、

俺の口の中にアッサリと入った。

 

「・・・・・アーモンド入りか。美味しいな」

 

「ふふっ、ヴァーリが訊いたら嬉しいでしょうけど、生憎いまは寝ているにゃん。

残念ね、ヴァーリ♪」

 

面白可笑しそうに黒歌は笑みを浮かべる。

そして、徐に上掛けの布団を捲って俺の胸、心臓辺りに手を添え出す。

 

「・・・うん、生命エネルギー、気も随分と安定している。

まだ動けないでしょうけど、もう少しで動けるようになるかもしれないわ」

 

「そうか、ありがとうな」

 

「どういたしましてにゃん。さて・・・・・私も少し寝かせてもらうわよ?」

 

そう言ってゴソゴソと着物を脱ぎだして―――全裸になった!?

そのまま彼女はヴァーリと反対側、空いている俺の右に寝転がって俺に抱きついてきた。

 

「あなたを助けるために長時間仙術を使ったから疲れたのよねー。だから癒してもらうにゃん」

 

「・・・・・」

 

しょうがない・・・・・命の恩人だから反論もできやしない。

俺の右腕は豊満な胸の谷間に挟まれ、右足も彼女の脚に挟まれて身動きが取れなくなった。

それからすぐ傍で黒歌の寝息が聞こえた。

 

「(こんな状態。絶対誰かが見たら驚くだろうな)」

 

この数分後。俺の予想は当たり、俺の様子を見に来ていた皆が驚愕の色を顔に

浮かばせたのであった。

さらに、家ではガイアたちがいまかいまかとリーラに教わりながら作った自分のチョコを持って

玄関で待っていたのは余談である。

 

―――夜

 

「・・・・・」

 

羽衣狐を模したチョコレートはたった狐の尻尾一本だけ残して食べきった。

 

「これ、食べないとダメなのか・・・・・・?」

 

このまま捨てたいと思う自分がハッキリいるのが分かる。

 

「ダメじゃ、ちゃんと食べよ」

 

俺の体を狐の尾で拘束して全裸でベッドにいる羽衣狐。

現実逃避及び、彼女から逃げることは不可能・・・・・・。

 

「・・・・・いただきます」

 

明日、学校を休むかもしれないな。と思いつつ最後の一本を口の中に入れて胃の中に送った。

刹那―――。体が急激に熱くなった。

頭の中はもう目の前にいる極上の体を誇る女を抱くことしか考えられなくなりつつある。

 

「ふふふ・・・・・さあ、妾のもとへおいで愛しい子よ・・・・・」

 

両足を全開にして俺を受け入れる気満々の彼女の姿に―――。

 

「・・・・・後悔するなよ。俺は一日じゃ犯し足りないからな」

 

「知っておる。ほら、妾の中にそれを入れるがいい」

 

「・・・・・」

 

指を弾いてこの部屋の時の流れを変えた。部屋に一時間いると外はたった一分という設定だ。

俺が思う存分に犯すために・・・・・。

 

「羽衣・・・・・!」

 

「あん!」

 


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