ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode7

 

―――リアスside

 

 

「吹き飛びなさいっ!」

 

滅びの魔力の質を変え、学校を襲撃してくる『真魔王派』に攻撃する。

魔力を巨大な手に具現化にして、私を囲む敵に振るって薙ぎ払う。

でも、薙ぎ払った敵は消滅の魔力の手によって次々と姿を消していく。

質を変えていないから滅びの魔力によって敵は文字通り消えるのだから。

 

「おのれ、リアス・グレモリー!」

 

「部長には触れさせねぇっ!」

 

赤龍帝のイッセーが私をカバーしてくれる。ありがとう、イッセー。

 

「雷よっ!」

 

ビガッ!ガガガガガガガガガッ!

 

直ぐ近くでは、朱乃が魔力で具現化した雷を固まっている集団に放っていた。

地上に視線を向ければ、私やソーナの下僕悪魔たちが学校を守ろうと戦っている。

私たちだけじゃない。サイラオーグやシーグヴァイラも、戦える者は皆、戦っている。

 

「―――リアス」

 

「お兄さま」

 

「どうやら、ここも終わりそうだね」

 

「ええ、皆が協力して確実に敵を倒していますからね」

 

敬愛する兄であるサーゼクス・グレモリー、お兄さまと背中を合わせて敵に警戒する。

 

「お兄さま、イッセーは?」

 

「彼なら心配ない。彼らのところにも襲撃されたが、式森和樹くんが瞬殺して終わらせたよ」

 

流石は式森和樹、というべきかしら。無限に等しい魔力を完全にコントロールをしている。

 

「じゃあ、彼らはもうすぐ」

 

「ああ、ここに来るだろう」

 

お兄さまが頷いた。彼がいれば百人力どころか一万人力だわ!

と私がイッセーのことを思っていると、

お兄さまの眼前に小型の魔方陣が出現して・・・・・アザゼルの姿が映りだした。

 

『サーゼクス、最悪な展開になったぞ』

 

「・・・・・どういうことだね?」

 

『―――あいつが、兵藤一誠が暴走しだした』

 

―――っ!?

 

暴走・・・・・?彼が・・・・・?暴走したですって・・・・・?

 

『奴らが現れた。ああ、奴らだ』

 

「奴ら・・・?アザゼル、一体誰のことを言っている?」

 

『兵藤誠と兵藤一香を殺した張本人たちが兵藤一誠の前に現れた。

目的は神滅具(ロンギヌス)を奪うためだ。

あの三人と兵藤一誠の戦っている場所がRG(レーティングゲーム)を応用した異空間だからこそ、

現実世界に一切被害は出てないからいいものの、あいつが現実世界で暴走したら

この町は一瞬で廃墟と化となる。復讐の権化と化したあいつはもう、俺たちでは止まらない」

 

そっ、そんなっ・・・・・。イッセー、あなたは、あなたは・・・・・!

 

「グレートレッド・・・ガイアは次元の狭間か?」

 

『ああ、お前も知っての通り。学校側から真龍と龍神の使用を禁じられているからな。

力は使わずとも兵藤一誠の中にいるか次元の狭間に泳いでいるかのどっちかだ」

 

「できれば後者であって欲しいものだ」

 

苦虫を噛み潰したかのような表情になるお兄さま。

 

「それで、彼と一緒にいる者たちは今どうしている?」

 

『殆どの奴は式森和樹の転移魔法で体育館に送られている。

だが、何人か残っている。言わずともあいつらのことだけどな』

 

「無事なのかい?」

 

『眼中にないのか、あの三人だけ攻撃している。一応、無事だといえる』

 

そう・・・・・我を忘れているわけじゃない可能性あるのね・・・・・。

 

『だが、このままにしておくのはあまりにも危険だ。

こっちでもあいつを止める方法を考えている。そっちも頭の隅でいいから考えてくれ』

 

「分かった。こっちも考えよう。アザゼルも動いてくれ」

 

『了解、そんじゃ・・・もと同胞だったあのバカと会いに行ってくるぜ』

 

それだけの会話のやりとりでアザゼルの姿を映す小型の魔方陣は消失した。

 

「お兄さま・・・・・」

 

「リアス、彼の家にいるグレイフィアに連絡してくれ。―――緊急事態だと」

 

私は頷き、通信用の魔方陣を展開する。イッセー、どうか・・・どうか・・・・・!

 

―――清楚side

 

『GYEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAッ!!!!!』

 

一誠くんが龍になってどれぐらい時間が経ったんだろう。

私たちに目も呉れず、一誠くんの両親を殺したという三人に夢中で攻撃している。

彼の復讐の想いが籠ったその一撃は、何度も大爆発を起こし、地面に巨大なクレーターを作り、

自分の体にどれだけ深い傷を負っても決して戦いを止めようとしなかった。

 

「(一誠くん・・・・・っ!)」

 

「和樹さん・・・・・僕たちはただ、見守ることしかできないんですかね・・・・・」

 

「・・・・・一誠が尤もしたかったことの一つ。―――復讐だ。

だから、心では一誠を止めたいという気持ちがあるのに、頭の中じゃ一誠の思い通り、

好きにさせたいと思っている自分がいるんだ」

 

「私・・・・・今のイッセーくんを見ていられないよ・・・・・っ」

 

「・・・・・私もだ。見ていると悲しい気持ちになる」

 

イリナちゃんやカリンちゃんは顔を逸らす。私も今の一誠くんは一誠くんじゃないって思うよ。

 

悲しげに一誠くんを見詰める。

 

『逃がしはしないぞ、お前らぁっ!』

 

悪魔の翼を生やす二人の男性と堕天使の翼を生やす女性が、

一誠くんの攻撃を紙一重でかわしながら攻撃する。

あの三人はかなり戦い慣れているんだと素人の私でもそう思える。

 

チュッ!ドッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

一誠くんの一撃が神殿を消滅してしまった。その際に生じた爆風が私たちを襲う。

 

「くっ、かなり離れていても彼の一撃は凄まじいですね」

 

「あれ、絶対に手加減なんてしていないと思うよ。

一誠が本気・・・全力で殺そうとしているのがハッキリわかる」

 

「イッセーの全力・・・・・」

 

誰もが一度も見たことがない一誠くんの全力。と、思っていたら一誠くんが横に倒れた。

―――あの三人のヒトたち以外のもう一人のヒトが、一誠くんを魔方陣で倒したのが分かった。

復讐の対象者である三人に夢中でもう一人の存在を気付いていなかったんだと思う。

すると、倒れた一誠くんの周囲に光が生じた。

 

「あの光は一体・・・・・」

 

イリナちゃんがそう疑問を漏らした。

でも、その光は一誠くんが地面に殴ったことで消失し、再び戦い始めた。

 

「この戦いはいつまで続くんだろうか・・・・・」

 

「果てしなく続くかと思いますよ。どちらかが魔力が、戦意が無くなるまでは」

 

「・・・・・」

 

そう、私たちは一誠くんの戦いを見守ることしかできない。

もう、彼が復讐なんて考えてほしくないためにもここで、全てを終わらさせて欲しい。

そして、一誠くん。復讐が終わったら一緒に―――。

 

―――ドッッッ!!!!!

 

『っ!?』

 

『GYEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』

 

咆哮を上げる一誠くんの体に巨大な光の槍が突き刺さった。

まるで木材に釘を刺したかのような感じで一誠くんの動きを封じた。

 

「―――まったく、お前が暴れられると、おちおち話ができないじゃねぇか。

ちょっと、静かにしてくれ」

 

ドドドッ!!!!!

 

さらにまた光の槍が一誠くんの頭を貫いた。頭だけじゃない。

翼や手足、尾までも光の槍に貫かれた。

 

「よー、お前ら。見る限り大丈夫そうだな」

 

「―――アザゼル先生!?」

 

式森くんが上空から下りてきた六対十二枚の翼を生やす男性、

堕天使の総督アザゼル先生に驚愕した。彼だけじゃなく、私たちも驚いた。

 

「アザゼル先生、どうしてここに?」

 

「なんでか知らないが、この異空間を覆っていた強力な結界が消えてな。

ようやく入れるようになった。最初は入り辛くて面倒だったがな」

 

そう言いながら腕を上に伸ばし、人差し指を空に突き付けた。

その指先に大量の光の槍が発現して、

 

「あらよっと」

 

一誠くんと戦っていた四人の堕天使と悪魔に向かって腕を振り下ろすと、

それに呼応して大量の光の槍も四人に向かって行った。あの数の槍をあの人たちは避けることも

防ぐことも―――。

 

カッ!

 

と、そう思っていた私を嘲笑うかのように、

アザゼル先生の大量の槍が光のオーラに弾かれて―――こっちに来た!?

 

「あれま、跳ね返されるとは思いもしなかったぜ。式森和樹、一緒に防壁魔方陣だ」

 

「分かってますよ」

 

式森くんと一緒に私たちを包むように魔方陣を展開し、振ってくる大量の槍を防いだ。

しばらくして、アザゼル先生の槍を全て防いだと思ったら・・・・・。あの四人が飛んできた。

 

「―――いきなり俺たちに槍をぶっ放してくる非常識な奴がいると思ったらよ。

なんだ、アザゼルじゃないか」

 

「よー、久し振りじゃねぇかヴァン。昔よりかなり綺麗になったんじゃないか?」

 

「はっ、未だに独身の男に褒められても嬉しくないっての」

 

堕天使の女性とアザゼル先生が旧友と再会したような態度と会話をする。

 

「さて・・・・・お前には色々と山ほど言いたいこともあるし聞きたいことがある。

―――大人しく捕まれ」

 

「俺はまだまだしたいことがあるんでね。それをし終わるまでは捕まる気はない」

 

―――刹那。二人とも同時に光の槍を発現して投げ放った。

互いに向かう槍は互いにぶつかり合って霧散した。

すると、そこで堕天使の女性、ヴァンが怪訝な顔になった。

 

「・・・アザゼル、少しだけ弱くなったんじゃないのか?手応えがあんまり感じなかったぞ」

 

「ちっ、こちとら戦闘狂のお前とは違い、研究し続けていたんだ。

昔より弱くなったのは否定してねぇよ」

 

「なんだよ。じゃあ、その研究の成果とやらはどうなった?

どうせ、人工的な物でも作っているんだろ?」

 

ヴァンの問いに、アザゼル先生は笑みを浮かべ出して、懐から何かを取り出した。

紫色の宝玉が付いている金色の短剣を―――。

 

「それは?」

 

「俺の傑作人工神器(セイクリッド・ギア)だ。名は『堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』。こいつには五大龍王の一角『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニルをこの人工神器(セイクリッド・ギア)に封じている」

 

五大龍王・・・・・一誠くんの使い魔、『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマットと同じ龍王・・・・・。

 

「ははは・・・・・流石だなアザゼル。龍王を人工神器(セイクリッド・ギア)に封印するなんてな。

だが―――俺はその上をいく」

 

バサッ!

 

堕天使のヴァンの背に―――堕天使の象徴の黒い翼の他にドラゴンのような翼が十二枚生え出した。

 

「・・・・・ドラゴンだと?」

 

「―――とある龍王の一角が悪魔に転生した龍を俺の中に宿すことが成功した」

 

「―――ッ!?」

 

アザゼル先生が絶句の面持ちとなった。六大龍王のことは教科書で習った。

龍王と称されていた龍は六匹も存在いた。

でも、一匹の龍王はある果物でしか生きられない龍たちがいた。

 

ドラゴンアップル。その龍が食べるリンゴは人間界にも実っていたけど、

環境の激変により絶滅してしまった。

そのため、ドラゴンアップルという果物が実っている場所は冥界のとある場所でしかない。

 

でも、ドラゴンは冥界では嫌われ者。

だから―――一匹の龍王は、特別の果物でしか生存できない龍族のために

実の生っている果物の場所を得るために悪魔となってそれ以来、悪魔になったドラゴンは

最上級悪魔のドラゴンとなった。そのドラゴンの名前は―――。

 

「お前・・・・まさか『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンを!?」

 

魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーン。それが悪魔となった最上級悪魔のドラゴンの名前。

でも、どうしてそのドラゴンが堕天使ヴァンの中に?

アザゼル先生の驚愕の呟きに堕天使ヴァンが口の端を吊り上げた。

 

「ああ、そうだぜ?最上級悪魔のドラゴン、タンニーンを神器(セイクリッド・ギア)にして宿したんだ。

そんじょそこらの人工神器(セイクリッド・ギア)とは訳が違う」

 

「っ・・・!このやろう、タンニーンが行方不明だと知らされた時は訝しんでいたが、

お前らがタンニーンを退治したってことかよ!」

 

「俺たち堕天使は元々天使だった。タンニーンも悪魔になる前は龍王だった。

名前に『聖』がついているのはその昔、たしかタンニーンは光を司る龍だったよな?

だがまあ、悪魔に転生していまとなっちゃ、その面影が無くなった」

 

「―――まるでタンニーンは俺たち堕天使みたいじゃないか?」と堕天使ヴァンが面白そうに

笑みを浮かべる。アザゼル先生は表情を険しくしている。

 

「だからさ、タンニーンを神器(セイクリッド・ギア)に封印して似た者同士ということで俺の中に宿したんだ」

 

「てめぇ・・・・・どこまで神器(セイクリッド・ギア)を知っているつもりなんだ」

 

「俺が堕天使になった理由をアザゼルは知っているだろ?

神ヤハウェが作った神器(セイクリッド・ギア)を知りたいと思って色々とやらかしたことをさ」

 

「ああ、そうだったな。俺たちみたいに人間の女の魅力に魅入られて堕ちたわけじゃない。

お前は興味津々で神器(セイクリッド・ギア)を知ろうと奇跡を司る『システム』を

勝手に使ったことがバレて堕ちた」

 

「そういうこと。まったく、今はともかく俺が機械音痴だからといって『熾天使(セラフ)』だった俺を

『システム』に触れさせようとしてくれなかったんだぜ?

しかも、アレを触れただけで普通、天界から追放すると思うか?」

 

・・・・・なんだろう、天界も色々と遭ったんだね。あるんだね

というより、天使にも機械音痴みたいな天使がいるんだね。初めて知ったよ。

 

「・・・・・ともかく、タンニーンの行方不明の理由も分かった。

お前らがここにいる理由は大方、兵藤一誠の神滅具(ロンギヌス)を狙ってのことだろう?」

 

「ああ、当然だ。だから俺たちは『英雄派』に手土産として、

神器(セイクリッド・ギア)を調べさせてくれたり、

神器(セイクリッド・ギア)を頂戴しようと思っているんだよなこれが。

今は『真魔王派』に属しているけど、あんな烏合の衆ばかりの悪魔どもといつまでも

いるつもりはない」

 

「ちっ、よりによって『英雄派』と接触しようってのか。

お前らしい考えだ。んで、そいつらも同じ考えなのか?」

 

「シャガとシャーリはそうだな。だけど、ヴァルヴィは違うぜ。なんか兵藤一誠と再戦したいとさ」

 

再戦・・・・・?一誠くんと昔、どこかで会ったことがあるの?

そんな話は聞いた事がないんだけど、

 

「さてと、話しはこのへんにして・・・邪魔になりそうな独身堕天使の総督でも倒すとしようか」

 

「うっせぇっ!独身とか余計だ!俺には女なんて腐るほどいるんだよ!」

 

「そんで、何度もハーレムを築いて何度も崩壊した男が俺の目の前にいるんだけどな」

 

「・・・・・」

 

堕天使ヴァンの指摘にアザゼル先生は沈黙した。そこで―――、

 

「最低ですアザゼル先生」

 

「女の敵ね」

 

「アザゼルに好いた女が可哀想だな」

 

「背中から刺されても問題ないでしょう」

 

「こんなヒトが教師なんて最悪だ。女子生徒の皆には気を付けてもらわないと」

 

「死んじゃってくれない?」

 

「この世からいなくなってください」

 

私たち(女)はアザゼル先生に非難の声を投げた。対してアザゼル先生は顔を引き攣らせた。

 

「お、お前ら・・・・・仮にも教師の俺にそんなことを・・・・・」

 

「はははははっ!アザゼル、尊敬されてねぇのっ!」

 

腹を抱えて堕天使ヴァンが哄笑する。

 

ドッ!

 

そんな彼女を横から現れた一つの影が吹っ飛ばした。私は突然のことで目を丸くした。

 

「・・・・・よくもやってくれたなクソ堕天使」

 

「・・・・・お前」

 

「かなり痛かったぞ」

 

アザゼル先生を睨む影―――一誠くんだった。

何時の間にか元の姿に戻って堕天使ヴァンを殴り飛ばしていた。

一誠くんの瞳は憎悪と怒り、殺意と敵意で一杯だった。その瞳がとても怖かった。

 

「邪魔するなよ。せっかく俺の夢が果たせそうなんだからさ」

 

「一誠くん・・・・・」

 

「シャガとシャーリ・・・・・お前らも殺すよ。いいよな?」

 

背中に青い翼、腰にドラゴンのような尾、右手に黒い籠手と左手に赤い籠手、

 

「ほう・・・・・現赤龍帝と白龍皇の力を使えるのか。

オリジナルではないが、何かしらの理由で使えるようにできるのか?」

 

神器(セイクリッド・ギア)による効果だろう。それも奪えば分かる。―――そうだろ、ヴァン」

 

二人は揃って一誠くんに殴り飛ばされた堕天使ヴァンに向いた。

 

「・・・・・ああ、そうだな」

 

彼女は一誠くんの前に現れた。殴られた個所に痣ができていて、

一人の悪魔に放たれた淡い緑色のオーラに包まれながら真っ直ぐ彼を見据えた。

 

「気を抜いていたからって俺の顔に拳を突き付けられたのは初めてだ。―――強くなったな」

 

「この日のために俺は強くなったんだ。お前らを殺すために」

 

「はっ、そうか。じゃあ、俺たちを殺して証明してみろよ。

そうすりゃ、あの二人も喜ぶだろうさ」

 

堕天使ヴァンが不敵の笑みを浮かべた。両手に光の剣を掴んで臨戦態勢になる。

 

「ああ・・・・・そうさせてもらう。―――禁手(バランス・ブレイカー)

 

一誠くんはそう呟いた時、右の黒い籠手にある紫の宝玉から放つ黒い光に包まれた。

その光の中で一誠くんの体は鎧に包まれ、完全に鎧を着込んだ。

 

「『幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)』の禁手(バランス・ブレイカー)、―――『幻想喰龍之鎧(イリュージョン・イーター・スケイルメイル)』」

 

黒と紫色の龍を模した全身鎧。全身から異様なオーラが絶えず陽炎のように出ている。

 

『なんだ・・・・・あの姿は・・・・・清楚、あれはヤバいぞ』

 

項羽・・・・・?

 

『あの力、かなりヤバい』

 

大胆不敵な彼女が私に警告してくる。

 

「・・・・・」

 

一誠くんが徐に腕を横へ振るった。

空を切るようにして振るった腕を見ていたら―――地面が一瞬で音もなく消失した。

 

「・・・・・はっ?」

 

アザゼル先生が呆けた声を漏らす。あまりにもアッサリと地面が半分もなくなったからだと思う。

ここから消失した地面を見れば、どこまでも暗く底が見えないほどポッカリと開いた穴。

 

「―――この鎧は消滅の力を具現化にした力だ。

俺がお前らを殺したい想いを神器(セイクリッド・ギア)が応えてくれた。

この鎧を着た俺はほぼ無敵に等しいぐらい強い。どんな能力だろうが全て無効化にする」

 

「・・・・・それ、チートじゃねぇか」

 

堕天使ヴァンが頬を引き攣らせて冷や汗を流したのが分かる。

 

「死ね」

 

腕を横に伸ばした。あの腕が振るったら最後、あのヒトたちは自分が殺されたと気付くこともなく

死んじゃうのかもしれない。

 

バチッ!バチバチバチッ!

 

「・・・・・なんだ?」

 

放電するほどが聞こえる。一誠くんはその音がする方へ視線を向けた。

私も他の皆も音がする方へ視線を向けたら―――、この空間の虚空に大きな罅が生じていた。

 

「―――逃げるぞ!」

 

私たちが虚空に生じた大きな罅に気を取られていたら、何時の間にか虚空に開けた穴へ

飛びこんでいく堕天使ヴァンたち。一誠くんは一瞬遅れて腕を薙ぎ払うように振るった。

―――でも、地面が消失したその一瞬の時間の差であのヒトたちは穴の中に姿を暗ました。

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

その直後、虚空に生じていた罅がガラスのように割れてそこから巨大な深紅の龍が現れた。

だけど、全てが終わった後であった。

 

「・・・・・次は、必ず殺してやる」

 

「一誠くん・・・・・」

 

怨恨が籠った声音を聞いて私は酷く悲しかった。まだ、彼の復讐は終わらない。

彼のあんな顔はまた見ることになる。

 

「・・・・・とりあえず、現実に戻るぞお前ら」

 

アザゼル先生の声に私たちは頷いた。

 

 


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