ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

 

 

悠璃がリシアンサスの胸に腕で突き刺した光景を見て、俺は金色の錫杖を発現し能力を発動する。

無限創造龍の錫杖(インフィニティ・クリエイション・メーカー)』。能力は無限に創造することが可能な神滅具(ロンギヌス)

 

「いっくん。終わったよ」

 

俺の妻がそう告げる。彼女の両手には青白い球体。あれがリシアンサスの妹の魂か。

 

「気分はどうだ?というか、その状態で話せれるのかすら、分からないがな」

 

魂相手に喋りかける。反応は―――。

 

『・・・・・とても、変な気分だわ』

 

あった。しかもどうやら困惑中のようで。

 

「その気分はすぐになくなるさ」

 

シャラン―――。

 

「もう少し待っていろ。お前の体を創るからな」

 

錫杖を床に軽く突けると一瞬の閃光が生じた。この力は脳裏で思い浮かんだ俺の想像を抽出して

現世に発現する。俺の想う肉体は―――リシアンサスと同じ肉体。

 

カッ!

 

光の粒子が集束して次第に人の形を成していく。

しばらくすると、光が消失して―――俺の視界にリシアンサスと同じ肉体が完成していた。

その肉体を一瞥して悠璃に視線を送る。

彼女は俺の意図に理解して頷き、魂のない抜け殻の肉体に跪いた。

両手に収まっているリシアンサスの妹の魂をそっと、抜け殻の肉体の胸に置いた。

妹の魂は水の中に沈むように抜け殻の肉体の中へと消えていく。

 

「・・・どうだ?」

 

「うん・・・・・こんなことするのは初めてだけど―――無事に肉体と魂が一致した」

 

それを聞いて安堵の胸を撫で下ろす。

 

「う・・・・・」

 

どこからか呻き声が聞こえた。

そっちに顔を向けると、魂を抜かれた際に気を失ったリシアンサスが意識を取り戻していた。

 

「シア、気分はどうだ?」

 

「・・・・・イッセーくん?」

 

「ああ、俺だ」

 

リシアンサスに寄って跪き彼女の頭を撫でる。

 

「悪いな。痛かったか?」

 

「ううん、大丈夫。でも・・・・・どうしてこんなことをしたの?」

 

「―――妹を幸せになれるようにするため、と言おうか」

 

口の端を吊り上げ、リシアンサスを床に寝転がっている妹を視界に入れさせる。

 

「・・・・・私?」

 

「の、妹だ」

 

「―――――」

 

リシアンサスは恐る恐ると眠る自分の妹の顔を触れた。

 

「名前は―――キキョウだ」

 

「キ・・・・・キョ・・・・ウ」

 

「ユーストマという花があることを知ってな。

そこでリシアンサス、キキョウと名前が載っていたんだ。

神王の家族なら、この花の名前が一番だろうって思ってさ」

 

「私の妹・・・・・キキョウちゃん・・・・・」

 

ダメだったかな?と思ったが、どうやら満更でもなさそうだった。

 

「・・・・・う」

 

お、起きるか。リシアンサスの妹、名をキキョウの顔を覗きこめば、

重たそうに目蓋を開けて肉眼で俺を捉えた。

 

「おはよう」

 

「・・・・・おはよう」

 

「どうだ、自分の体の調子は。体を動かせれるか?」

 

そう問いかけると、彼女はゆっくりと上半身を起こして自分の体の調子を確かめ始めた。

 

「・・・ええ・・・・・手も足も、動かせれる」

 

「そうか、それは良かった。これでお前は一人の存在だキキョウ」

 

「・・・・・キキョウ?」

 

「ああ、キキョウだ。それがお前の名前だキキョウ」

 

笑みを浮かべてそう呼んだ。キキョウは、リシアンサスの妹は呆然と俺を見る。

 

「私は・・・・・キキョウ・・・・・」

 

何度も何度も自分の名を言い続けるそんな彼女に手を差し伸べる。

 

「キキョウ」

 

「キキョウちゃん」

 

リシアンサスも手を差し伸べる。

 

「・・・・・」

 

キキョウは俺とリシアンサスを見詰める。どう答えていいのから迷っているような感じだった。

だから言った。

 

「行くぞ。自分の父親に会いに」

 

残す問題は家族だ。それさえ解決できればキキョウは本当の家族となれる。

彼女の足と背中に腕を差しこんで持ち上げる。

 

「・・・・・へ?」

 

「くくくっ、忘れていないか?俺は悪魔が嫌いなんだ。

だから―――お前を恥ずかしい思いをさせることが楽しいんだよなぁ♪」

 

「―――――っ!?」

 

今の状況に気付き、急にジタバタを暴れ出した。

ははは、照れるなって。曰くお姫様だっこしたままキキョウと一緒に部屋から出て一階へ赴く。

 

「いいなーいいなー。キキョウちゃん、羨ましいっす」

 

「羨ましい・・・・・変わって」

 

「私は恥ずかしいわよ!ちょっと、いい加減に私を下ろしなさいよ!?」

 

「だが断る!」

 

そうこうしているうちにリビングキッチンに繋がる扉の前に辿り着いた。

翼で扉を開け放って中に入る。

そこには、神王ユーストマと魔王フォーベシイが酒を飲んで騒いでいた。

 

「って、なんであの二人がいんの?」

 

「ごめんっす」

 

「・・・・・分かった」

 

きっと便乗してきたんだろうな。

 

「おっ、一誠殿!遅いじゃねぇか、なにをして・・・・・」

 

ユーストマが俺たちに気付いて酔っぱらった表情で声を掛けるが、

腕の中に抱えているキキョウと隣に立っているリシアンサスが視界に映ったのか、

目が飛び出す程ユーストマは驚愕の色を浮かばせた。

 

「シ、シアが・・・・・二人・・・・・だとぉっ!?」

 

「ある意味そうだ。が、―――シアの妹と言えばユーストマは分かるだろう?」

 

「なっ!?」

 

「さて、親子会談をしようじゃないかユーストマ。

長年、会話もろくにできなかったシアの妹と向き合って話し合ってみろよ」

 

キキョウを下ろして背中を軽く叩く。行って来いと暗に伝えて。

それから彼女は一歩、また一歩とユーストマに近寄る。

ユーストマも立ち上がってキキョウに近づく。

 

「「・・・・・」」

 

二人はなんともいえない雰囲気を漂わせて気まずそうに対峙する。

 

「・・・・・お前、名前はなんて言うんだ?」

 

「・・・・・キキョウよ」

 

「キキョウ・・・・・そうか」

 

途端にバツ悪そうに顔を曇らせる。すると、いきなり―――ユーストマは土下座をした。

 

「すまん!」

 

キキョウに対して真摯に謝罪の言葉を言い放った。

 

「お前には辛い思いを、寂しい思いをさせちまった。

天界の神王の立場として俺は、苦渋の決断を強いられあんな結果にしてしまった。

あれ以来、俺は深く後悔している。本当ならお前を俺のもう一人の娘として接したかった」

 

そこでユーストマは顔を上げてキキョウを見上げた。

 

「だが、今さら俺が謝ったところでお前は許さないだろう。

いや、それでも構わない。俺を恨んでもいい、憎んでもいい。

俺は親として最低のことをしたんだ。お前に父さんと呼んでもらう資格なんてない」

 

懺悔の如くキキョウに対して言い続ける。

神王としてじゃなく、一人の父親としてキキョウに独白する。

 

「・・・・・」

 

キキョウは静かに見下ろす。心中どんな想いを抱いているのか定かではないが、

しばらく様子を見守っていると「はあ・・・・・」とキキョウが溜息を吐きだした。

 

「で、言いたいことはそれだけ?」

 

「・・・・・」

 

「それだけなら今度は私から言いたいことを言わせてもらうわよ」

 

彼女は腕を組んでユーストマを見下ろしたままの状態で口を開く。

 

「最初に言うわ。別にあんたのことなんて恨んでも憎んでもいないわ」

 

「・・・・・はっ?」

 

「だって、私にはシアがいたもの。そんなシアにあんたは深い愛情を向けて接して育てていた。

父親としてはいいほうなんじゃないの?度が過ぎるところもあったけどね。

それに神王の立場も一応理解しているつもりよ。

じゃなきゃ、あんたは堕天使として生活しないといけなくなるもんね?元天界の軍神さん」

 

軍神?へぇ、ユーストマって二つ名があったんだ。知らんかったな。

 

「シアが幸せであれば私はそれで良かった。だけど、シアはそうじゃなかった。

私も幸せになって欲しいと願っていた。私はそんなこと思わなくてもいいと思っていた。

シアが幸せに生きれるなら私はそれでいいと思っていたから。

でも、そんな時。私はシアの体を借りて外に出歩いていたら兵藤一誠と出会った」

 

「っ!?」

 

「彼は言ったわ。『シア、お前とお前の妹のことは俺が何とかしてみる。

お前の妹が自分の足で地面に立ち、シアの隣に立って、一緒に未来へ歩けれるように

俺が何とかしてみせる。それまで待っていてくれるか?』・・・・・って」

 

俺に一瞥してユーストマに視線を戻したキキョウ。

 

「兵藤一誠は約束を守ってくれた。私を一人のヒトとしてシアの隣に立たせてくれた」

 

だから―――、

 

「私はあなたを恨みも憎みもしない。私を生んでくれた父親に、父さんにそんな感情を

持たないことにしているんだからね」

 

「―――――っ!?」

 

ユーストマの目が大きく見開いた。信じられない、とばかりキキョウを凝視した。

 

「まあ・・・・・そう言うわけよ」

 

キキョウは気恥ずかしそうにユーストマから顔を逸らしたのだった。

 

「・・・・・よろしく、お父さん」

 

「・・・・・」

 

お父さんと呼ばれたユーストマ。一拍した時。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

神王ユーストマが男泣きした。そして、立ち上がって勢いよくキキョウを抱きしめた。

 

「すまねぇ、すまねぇキキョウ!お前に愛情を注げれなかった分、

愛情を籠めて育ててやるからなぁっ!」

 

「ちょっ、暑苦しいし涙と鼻水が汚いわよッ!」

 

「キキョウ!キキョウ!キキョウ!キキョオオオオウッ!」

 

あー、あれを邪魔するのって野暮だよな。

と、思いながら―――リシアンサスの背中に回って手を添えた。

 

「はい?」

 

「お前も混ざってやれ」

 

ユーストマとキキョウに向かって押した。リシアンサスは俺に押されて、二人の傍に。

 

ガシッ!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!」

 

号泣し続けるユーストマの剛腕に妹共々と父親の抱擁によって身動きが取れなくなった。

 

「お、お父さん!嬉しいのは分かるけど大声で泣かないで!」

 

「いい加減に放しなさいよ!」

 

うん、やっぱりあいつは情愛というより家族愛が深いな。

 

「(・・・・・家族か)」

 

俺にも家族がいる。でも、血の繋がった家族はすでにこの世にはいない。

なんだか、あの三人を見ていると羨ましくなったな。

 

「・・・・・悠璃、お願いがある」

 

「なに?」

 

「部屋で俺を抱きしめてくれるか?」

 

言ってすぐ、気恥ずかしくなって顔を逸らした。悠璃は俺のお願いに嬉しそうに笑んだ。

 

「・・・・・ふふっ、可愛いねいっくん。うん、いいよ。昔のように楼羅と抱き合おうっか」

 

「ああ・・・・・あの時のように三人で寝よう」

 

「うん」

 

それから俺たちはリビングキッチンからいなくなって―――俺は悠璃と楼羅と抱き合いながら

夕食の時間まで過ごしたのだった。

 

 


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