ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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体育館裏のホーリーとダーク
Episode1


 

 

休日の日、俺は久し振りに一人で商店街にやってきている。特に用があるわけではないけど、

なんとなく商店街に来たくなった。さて、なにがあるのかな?なにが起こるかな?

密かに楽しみながら歩いていると、見覚えのある栗毛が視界に入った。

これは偶然だな。と思い見知っている人物の背後を一瞬で近づいた。

 

「よ、シア」

 

「っ!」

 

声を掛けてみると俺に振り返って目を丸くしたリシアンサス。

 

「・・・・・」

 

・・・・・ん?「あっ、イッセーくん!」て、感じな反応じゃないな・・・・・?

 

「んー・・・・・あー、うん、なるほどな」

 

よく彼女を見ればリシアンサスとは違う雰囲気、それとちょっと鋭い目つき。

よく見ないと分かり辛いほどリシアンサスと酷似している。

 

「お前、誰だ?」

 

別人のように接すると、いきなり彼女に俺の手を掴んで―――何故かカラオケに連れて行かれた

俺であった。

 

「・・・・・」

 

部屋に入るや否や彼女は隣に座るように促す。俺も座れば彼女が口を開く。

 

「初めまして、かな?」

 

「俺にとってはだけどな。初めましてというべきなのは」

 

「うん、そうだね。でも、私にとってはあなたを知っているから、

どう挨拶しようか迷っちゃうんだよね」

 

苦笑を浮かべる彼女。

 

「けど、よく私がシアじゃないってすぐに分かったわね?」

 

「長くもなく短くもない時を一緒に過ごしているからな。

これでもシアのことを見ているつもりだ」

 

「そう・・・・・」

 

「さて、質問するけど、お前はシアか?」

 

目の前の少女は、俺の質問に対して小さく笑う。それは悪意のない無邪気ない微笑みだった。

 

「名乗りたくても名乗れないわ。名前なんてないもん」

 

彼女はそう言って肩を竦めて苦笑する。

その言動に俺は怪訝な顔で「名前がない・・・?」と訊く。

 

「うん。私はいないことになっているから。名前であれなんであれ、

私に何かをくれる人なんて存在しないの」

 

・・・・・いないことになっている?ユーストマは目の前の少女のことを認識していないのか?

 

「だからまあ、裏シアとか、偽シアとか、あなたの好きな名前で呼んでくれていいよ。兵藤一誠」

 

「・・・・・お前はシアの何なんだ?自分を自虐的にそんな名前で呼んでもらう

お前はシアの何なんだ?」

 

「なんだと思う?」

 

「・・・・・」

 

俺の中には目の前の少女のような人を一人だけ心当たりがある。

 

「―――シアの内にいるもう一人のお前・・・かな?名前のない一人の少女。

いや―――、もしかしたら・・・シアと姉妹の関係かな?。

清楚のように内に覇王の、項羽の魂を宿しているし、それに―――」

 

ブツブツと俺の中の可能性を言い続けていると、横から「ストップ」と声が掛かった。

彼女を見れば呆れ顔であった。

 

「殆ど正解を言うなんて、流石だわね兵藤一誠」

 

彼女の言動はどうやら、99点ぐらい俺の仮説は当たっているということになっている。

 

「じゃあ、お前はシアのもう一人の姉妹なんだな?姉と妹、どっちだ?」、

 

「妹よ?」

 

・・・見る限りしっかりしていそうな妹なのに姉は・・・いや、これ以上は考えない方がいいな。

 

「なんとなく、言いたいことはわかるわ。取り敢えず、あなたは私のことを知ってる記念すべき

二人目ってわけだから。これからよろしく」

 

「もう一人は誰だ?」

 

「もちろんシアよ。あの子は知ってるわ、私のこと。まあ、正確に言うと、

家族は全員知ってるのよね、私のこと。だけどみんな知らない。知らないことにした」

 

・・・・・ユーストマたちは知っている?でも、『知らないことにした』とは、なんで・・・。

 

「私がいると困るから。いても意味がないから」

 

「―――――」

 

「お前は・・・・・」とリシアンサスの妹に呟いた。

それは、そろそろ教えてほしいと焦り、苛立ち、興味からではない。

―――どんな形であっても、生を受けているのに自分をそんな事を言う彼女に対しての怒りだ。

そんな俺の気持ちを露知らず、微笑みを変化させて鋭い光を宿した瞳に俺を映し、

艶めく柔らかそうな唇を動かして言葉を紡ぐ。

 

「兵藤一誠の言う通り。私はもう一人のシア。リシアンサスでありながらリシアンサスでない、

リシアンサスの中で眠っている、もう一人の存在」

 

でも―――、彼女は口を開き続ける。

 

「生まれるべく生まれた、けれど誰も望んでいなかった、シアの負の心。

天界の神族の王の娘『リシアンサス』の中にいる、魔族―――悪魔の娘」

 

淡々とした言葉で話している彼女の表情に、最後ほんの少しの陰りが混じる。

 

「・・・・・神王の跡取りとして、いてはならなかった―――」

 

「てい」

 

ズビシッ!

 

「~~~っ!?」

 

若干シリアス的な雰囲気をぶち壊さんとばかり、彼女の頭にチョップした。

当然、軽めでしたわけじゃないから、地味に痛い。

現に彼女は頭を押さえて痛みに体を震わせている。俺はそんな彼女を見据えて言う。

 

「なーんとなく、お前のことはわかった。天界も、神王も事情があっただろうし、

他人の家族の事情に俺がとやかく言う資格なんてない。けどよ。

誰がお前を生まれたことを望んでいなかった?神王の跡取りとして、いてはならなかった?

お前、そんなこと誰の口から聞いて自分の口で言っているんだ?」

 

「なん、ですって・・・・・?」

 

「確かにだ。天界に天使を束ねる王が悪魔と結婚することすら、

天界にとっても異端者扱いだろう。けど、それは両者の同意の下や冥界と天界が友好的になろうと

周りの思惑での政略結婚で二人は結ばれた」

 

一区切り付けて、また口を開く。黙って静かに俺の話を耳に傾ける

リシアンサスの妹に言い続ける。

 

「神王ユーストマも立場が立場だ。しょうがないと言えないかもしれない。

でも、お前のことを知っているのなら、あの男のことだ。

娘に溺愛しているあの男はきっとお前を受け入れる。シアのたった一人の妹として」

 

「・・・・・」

 

「それと、シアは俺たちの会話のやりとりを聞こえているか?」

 

「・・・・・うん、聞こえていると思うよ」

 

やっぱり、清楚と項羽のような感じだな。

と、そう思いながら目の前のリシアンサスの妹に向かって告げる。

 

「シア、お前とお前の妹のことは俺が何とかしてみる。お前の妹が自分の足で地面に立ち、

シアの隣に立って、一緒に未来へ歩けれるように俺が何とかしてみせる。

それまで待っていてくれるか?」

 

リシアンサスの妹とリシアンサスを同時に撫でるような感覚で、

栗毛の頭に手を置いて撫でながら言った。

 

「・・・・・」

 

目の前の少女はただ沈黙して俺を見詰めるだけであった。

 

「(さて、彼女をどうやって独立にできるか、悩みどころだな)」

 

 

―――○●○―――

 

 

―――兵藤家In図書屋

 

 

「うーん・・・・・」

 

リシアンサスの妹とカラオケから出た後、早速俺は彼女を独立できる方法を探り始めた。

 

「まずは名前だろう。名前がないって言っていたし・・・・・どんな名前にしようか」

 

一つの肉体に二つの魂を宿す存在。その二つの魂の一つを抜き取ってあらかじめ用意した

肉体に宿せる方法を、参考になるかも知れないと思いで医学の本や肉体の構造、

組織を記された本を開いて探し続ける。

その最中で彼女の名前を何にしようか悩んでいる俺だった。

 

「ユーストマとリシアンサス・・・・・」

 

この二人と強く無滑れるような名前が良いんだけど・・・・・どんな名前にしようかなぁ。

 

「―――何をなされているのですか?」

 

「ん?リーラか、どうした?」

 

邪魔にならないよう気を配り、俺の横に佇むメイドのリーラ・シャルンホルストが

「夕食の時間です」と告げた。・・・・・あ、もうこんな時間か。

何時の間にか六時が過ぎていた。

 

「・・・・・医学の本を読んでおられていたようですね。ですが、何のためにですか?」

 

俺の周りに置かれている本を一瞥して彼女から問われる。

不思議そうに訊く態度は、俺が医学の知識などなくても神器(セイクリッド・ギア)で治せるのでは?

みたいな風だろう。まあ、確かにそうなんだが・・・。

 

「清楚のような人と出会ってな。どうすればいいのか方法を探していたんだよ」

 

「清楚さまのような人・・・・・方法・・・・・・?」

 

「一つの体に二つの魂を宿す人間、と言えば分かるか?」

 

リーラは立ち上がる俺の話しを聞き、頷いた。本は後で片付ければいいだろ。

歩を進め、図書室から出て廊下を歩く。

 

「彼女のように内にいるもう一人の人格と共有し、記憶して生きていた。

でも、色々と複雑な事情を抱えてな。自分のことを生まれてはいけなかった存在だとか言いだす」

 

「一誠さま、その者をどうしようと思いなのですか?」

 

「取り敢えず、独立させようと思っている。その方法はもう考えた。

が、その方法をするためにもどうやってその方法を可能性にできないかと悩んでいるんだ」

 

一つ、と人差し指を立てる。

 

「一つの肉体に二つの魂を宿している。だから、一人の存在とするために、

二つの魂の内の一つをどうにか取り出さないといけない」

 

「だから医学の本を?」

 

「意味がないだろうけどな」

 

下へ向かう階段に辿り着き一階へ進む。

 

「肉体の方はさほど問題ないんだ。でも、どうやって魂を抜き取るかが問題なんだ。

俺の神器(セイクリッド・ギア)じゃ、魂をどうにかする力なんてないからよ」

 

一階に下りた俺たちは真っ直ぐリビングキッチンへと赴いた。

中は設けられた椅子に座っているガイアたちの姿がいた。

 

「遅かったな。何をしていたのだ?」

 

開口一番、ガイアに訊かれた。

 

「悪い、夢中になって本を読んでいた」

 

「そうか、次は気をつけるんだぞ?」

 

「ん、了解」

 

俺が席に座ったら、全員で合掌した。―――いただきます。

 

―――リシアンサスside

 

 

私はリシアンサス。皆からシアと愛称で呼ばれている天界の神王の一人娘・・・であった神族、

天使。神族とか天使とか色々と呼び方はあるけど、天界に住む者はみんな同じ呼ばれ方をするの。

悪魔も魔族と呼ばれる時もある。逆に魔族が悪魔と呼ばれることもある。どっちも神聖な存在で、

どっちも魔性な存在の意味を籠めて人族、人間たちから呼ばれている。

 

「・・・・・」

 

『シア、お前とお前の妹のことは俺が何とかしてみる。お前の妹が自分の足で地面に立ち、

シアの隣に立って、一緒に未来へ歩けれるように俺が何とかしてみせる。

それまで待っていてくれるか?』

 

「・・・イッセーくん・・・」

 

カラオケの中で私の妹と話していた会話が、脳裏に甦る。

 

「・・・・・」

 

徐にイッセーくんが撫でてくれた頭を触れた。あの時の感触はもうないけど、

私を撫でてくれたことに嬉しく感じた。

 

「―――ねえ、イッセーくんのことどう思う?」

 

私の愛用の手鏡を手にして、自分を見詰めるように呟いた。

―――そしたら、ちょっと吊り目の私が映り出す。

 

『どう思うって、なにによ?』

 

私の妹。名がない私の可哀想な妹。

 

「あの時、私たちに言ってくれたイッセーくんのあの言葉のこと」

 

『・・・・・さぁね・・・・・』

 

妹は興味なさそうに言うけど、

 

『男なら、一度言ったことを成し遂げてもらわないと男じゃないわ』

 

イッセーくんに少なからず期待している妹でした。

 

「ねぇ、もしあなたが一人のヒトとなれたら何がしたい?」

 

『何がしたい・・・・・そうね・・・・・』

 

顎に手をやって考えた妹は、悪戯めいた表情になった。

 

『兵藤一誠をからかってやることかな?』

 

と、妹は小さく微笑んだ。もう、イッセーくんにそんなことしちゃだめっすよ?だから―――、

 

「縛られても知らないからね?」

 

『・・・・・』

 

そう言ったら妹は突然黙った。

 

『流石に、私まで縛ろうとはしないよ・・・ね?』

 

「さて、どうでしょう?イッセーくんって自分に攻撃をする人は縛るようになってきたし・・・

もしかしたら、あんまりからかい過ぎるとあなたも問答無用に縛られちゃうかも」

 

クスクスと笑みを浮かべならが言ったら妹は沈黙した。

若干、冷や汗を流しているようにも見える。

 

「イッセーくんをからかい過ぎないようにね?」

 

『・・・・・気をつけるわ』

 

やんわりと注意した。妹は重々しく頷く。はい、素直でよろしいっす。

誰だって縛られたくないもんね?

 

「さて、そろそろ寝るっす。―――お休み」

 

『お休みシア。また明日』

 

うん、また明日。手鏡を置いてベッドに乗り出して体を横にする。

 

「・・・・・イッセーくん・・・・・」

 

どうか、妹のことよろしくお願いします。どうか、妹を助けてください。

瞑目した私は大好きな男の子に願い意識を落とした。

―――夢の中で妹とイッセーくんと一緒に流れる大きな川の傍にあるお花畑を駆ける夢を

みたいっすね。

 

『・・・・・シア、三途の川のことじゃないわよね?』

 

妹の声か聞こえたような気がするっす。でも、気にしないで三人と一緒に川の向こうに―――、

 

『シア!?そっち行っちゃダメよ!?お願いだから、その川の向こうにはいかないでぇー!』

 

 


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